グローバル市場への挑戦を目指す日本企業にとって、海外オンライン展示会は今や無視できない重要なチャネルとなっています。時間や地理的な制約を超え、世界中の潜在顧客と出会えるこの機会を最大限に活用するためには、その仕組みを理解し、効果的な戦略を立てることが不可欠です。
この記事では、「海外オンライン展示会」について、その基本的な仕組みから、出展時の障壁とメリット・デメリット、そして通訳の活用法まで、当社が考える成功のためのノウハウを徹底的に解説します。
第1章:海外オンライン展示会とは?その基本的な仕組みと参加・来場方法
まずは、海外オンライン展示会がどのようなものか、その概要と参加・来場の手順を理解しましょう。
1-1. オンライン展示会の基本的な仕組み
オンライン展示会は、インターネット上の仮想空間で行われるデジタルイベントです。物理的な会場やブースは存在せず、すべてがウェブサイトや専用アプリケーションで構築されます。
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プラットフォーム(仮想空間): 展示会全体をホストするウェブサイトや専用アプリが中心です。来場者はここにアクセスし、各企業のブースを訪問します。
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出展企業の仮想ブース: 各企業は、プラットフォーム上に自社の「仮想ブース」を設置します。ここには、会社概要、製品・サービス紹介(画像、動画、PDF資料)、問い合わせフォーム、チャット機能、オンライン会議機能などが盛り込まれます。
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豊富なデジタルコンテンツ: 製品のデモンストレーション動画、カタログのダウンロード、ウェビナー(オンラインセミナー)のライブ配信やオンデマンド配信など、多様なデジタルコンテンツが用意されます。
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充実したコミュニケーション機能: 来場者と出展者がリアルタイムで交流できるチャット機能、ビデオ通話機能、デジタル名刺交換機能などが実装されています。
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詳細なデータ分析機能: 来場者の行動履歴(どのブースを訪問したか、どの資料をダウンロードしたかなど)をデータとして取得し、出展企業がリード管理やマーケティング分析に活用できる機能も充実しています。
1-2. 日本企業が出展する際の参加方法
日本企業が海外オンライン展示会に出展する際の流れは、以下の通りです。
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展示会の選定: ターゲット市場、業界、製品・サービスに合致する展示会を選びます。主催者の信頼性、過去の実績、来場者層を確認しましょう。
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出展プランの選択と申し込み: ブースの規模や機能、サービス内容に応じたプランを選び、申し込みます。
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ブースの設計・コンテンツ準備:
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仮想ブースのデザイン: テンプレート活用やカスタマイズで、ブランドイメージを反映したブースを構築します。
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製品・サービス資料のデジタル化: カタログ、パンフレット、導入事例などをPDFやWebページで準備します。
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魅力的な動画コンテンツの作成: 製品デモンストレーション、企業紹介など、視覚的に訴求できる動画を用意します。海外向けに英語字幕や吹き替えも検討しましょう。
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プレゼンテーションの準備: ウェビナー実施の場合、スライド資料作成と発表者の準備が必要です。
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コミュニケーション体制の確立: リアルタイム対応の担当者を決め、時差を考慮したシフト体制を構築します。
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プラットフォームへのデータアップロード: 準備したコンテンツをプラットフォームにアップロードし、ブースを構築します。現地の言語(主に英語)での情報提供は必須です。
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テストと最終確認: 出展前に、ブースの表示、機能動作、リンク切れなどを十分にテストします。海外からのアクセスを意識し、表示速度なども確認しましょう。
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プロモーション活動: 展示会開始前に、自社ウェブサイト、SNS、メールマガジンなどを活用して出展を告知し、来場を促します。海外顧客向けには英語での発信が基本です。
1-3. 来場者はどうやってアクセスしてくるのか?
来場者が海外のオンライン展示会にアクセスする方法は多岐にわたります。
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事前登録: 多くの展示会では、参加者が事前にウェブサイトで登録し、ログイン情報がメールで送られてきます。
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検索エンジンやSNS: 興味のある業界の展示会を探す企業担当者や個人は、検索エンジンやLinkedInなどのビジネス系SNSで情報収集し、展示会を見つけます。
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主催者からのプロモーション: 主催者は、業界団体への告知、専門メディア広告、SNS広告、メールマーケティングなどを通じて、世界中のターゲット層にアプローチします。
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出展企業からの招待: 出展企業自身も、既存顧客や見込み客に対して、展示会への参加を直接呼びかけます。
来場者は、ログイン後に仮想のロビーやマップから、興味のある業界や製品カテゴリー、企業名で検索したり、おすすめブースを巡ったりして、各出展企業のブースを訪問します。ブース内では、動画視聴、資料ダウンロード、チャットでの質問、ウェビナー参加など、多様な形で出展企業とインタラクションを行います。
第2章:海外オンライン展示会のメリット・デメリットと日本企業が直面する障壁
次に、海外オンライン展示会の特徴をメリット・デメリットの側面から捉え、日本企業が特に直面しやすい障壁についても深掘りします。
2-1. 海外オンライン展示会のメリット
海外オンライン展示会には、従来のオフライン展示会にはない多くの利点があります。
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地理的・時間的制約からの解放: 世界中どこからでもアクセスできるため、物理的な移動時間やコストが不要です。時差を考慮しつつも、来場者は自分の都合の良い時間にアクセスできます。
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大幅なコスト削減: 渡航費、宿泊費、ブース設営費、運搬費などが不要になり、出展コストを大幅に削減できます。浮いた費用をデジタルマーケティングやコンテンツ制作に回すことが可能です。
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広範なリード獲得の可能性: 世界中の多様な地域から来場者が集まるため、今まで接点のなかった潜在顧客層にアプローチできるチャンスが広がります。
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詳細なデータ分析と効果測定: 来場者の行動(どのコンテンツを見たか、ダウンロードしたか、チャットしたかなど)を詳細にデータとして取得できるため、効果測定やマーケティング戦略の改善に役立てられます。
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コンテンツの再利用性: 作成した動画や資料は、展示会後もウェブサイトや他のマーケティング活動で再利用でき、資産として蓄積されます。
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環境負荷の軽減: 移動や廃棄物の発生を抑えることができ、企業のSDGsへの貢献にもつながります。
2-2. 海外オンライン展示会のデメリット
一方で、オンラインならではのデメリットも存在します。
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偶発的な出会いの減少: オフラインのように会場を歩いていて偶然魅力的なブースを見つけるといった機会が少なく、能動的な情報収集がメインとなります。
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対面コミュニケーションの限界: 画面越しのやり取りでは、非言語情報が伝わりにくく、深い関係構築には時間がかかる場合があります。
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技術的なトラブルのリスク: ネットワーク接続の問題、プラットフォームの不具合、デバイスの互換性など、技術的なトラブルが発生する可能性があります。
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競合との差別化の難しさ: 物理的なブースの装飾で差をつけることが難しいため、コンテンツやコミュニケーションの質で差別化を図る必要があります。
2-3. 日本企業が直面しやすい障壁
当社が考える、日本企業が海外オンライン展示会に出展する際に特に注意すべき障壁は以下の通りです。
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言語と文化の壁:
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多言語対応の不足: 英語以外の言語でのコミュニケーションや資料作成に苦慮することがあります。
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コミュニケーションの難しさ: 言語だけでなく、文化的なニュアンスの違いから誤解が生じたり、商習慣の違いが商談の進展を妨げたりするケースもあります。
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マーケティング表現の違い: 海外のオーディエンスに響くキャッチコピーやデザインは、日本のそれとは異なるため、現地の文化に合わせた表現が求められます。
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時差の問題:
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リアルタイムコミュニケーションの制約: 現地のコアタイムが日本では深夜や早朝にあたる場合が多く、リアルタイムでのブース対応や商談が困難になることがあります。
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迅速な顧客サポートの課題: 問い合わせへの即時対応が難しく、機会損失につながる可能性も。
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テクノロジーとインフラの問題:
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ITリテラシーとツールの習熟: プラットフォーム操作、オンライン会議ツール活用、デジタルコンテンツ作成・管理など、ある程度のITリテラシーが求められます。
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通信環境の安定性: 高品質な動画配信やスムーズなオンライン商談には、安定した高速インターネット環境が不可欠です。
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サイバーセキュリティへの懸念: 海外プラットフォームのセキュリティ基準に対し、不安を感じる企業もあるかもしれません。
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マーケティングとプロモーション戦略:
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集客の難しさ: ターゲットとなる海外来場者を引きつけるデジタルマーケティング戦略(SEO、SNSプロモーション、オンライン広告など)が不可欠です。
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データ活用と分析の不足: 取得した来場者データをどのように分析し、次の戦略に活かすかというノウハウが不足している企業もあります。
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法務・規制上の問題:
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商談成立後の製品の輸出入規制や、現地の法規(例: 個人情報保護法GDPRなど)の理解と遵守が必要です。
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これらの障壁を事前に認識し、適切な対策を講じることで、より効果的な海外市場へのアプローチが可能になります。
第3章:海外オンライン展示会での通訳活用術とその他の成功戦略
言語の壁は、海外ビジネスにおいて避けて通れない課題です。オンライン展示会でこの課題を乗り越え、成功に導くための通訳活用術と、その他の効果的な戦略をご紹介します。
3-1. 通訳が必要となるケースとオンライン通訳の種類
海外オンライン展示会では、以下のような状況で通訳のサポートが非常に効果的です。
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リアルタイムの質疑応答・商談: チャットやビデオ会議で英語以外の言語での対応が求められる場合や、専門的な内容の正確な伝達が必要な場合。
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ウェビナー(オンラインセミナー)の実施: 特定の言語圏の来場者向けにウェビナーを開催する場合。
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多言語でのコンテンツ対応: ブース内の資料や動画に、英語以外の言語の字幕や吹き替えを追加したい場合。
オンライン展示会で活用できる通訳の種類は主に以下の通りです。
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リモート通訳(遠隔通訳): 通訳者が別の場所にいて、オンライン会議ツールなどを介して通訳を行います。
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同時通訳: 話者の発言とほぼ同時に通訳。ウェビナーなど多数の聴衆向けに適しています。
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逐次通訳: 話者が一定量を話すたびに一時停止して通訳。商談や少人数での質疑応答に適しています。
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翻訳(事前準備): リアルタイム通訳だけでなく、事前にコンテンツを翻訳しておくことも重要です。
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資料翻訳: 製品カタログ、会社案内、FAQなどをターゲット言語に翻訳し、ブース内でダウンロード可能にする。
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動画字幕/吹き替え: 製品デモ動画や企業紹介動画に、現地の言語字幕を追加したり、プロのナレーターによる吹き替えを用意したりする。
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3-2. 通訳サービス依頼時の注意点
通訳を依頼する際は、以下の点に注意しましょう。
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専門性: 自社の製品・サービス分野に精通した通訳者を選びましょう。
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オンライン対応の経験: リモートでの通訳経験が豊富な通訳者や、オンライン会議ツールの操作に慣れている通訳者を選ぶとスムーズです。
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実績と評判: 信頼できる通訳会社やフリーランスの通訳者を選び、過去の実績や評判を確認しましょう。
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費用と見積もり: 時間単位、日単位、またはプロジェクト単位で見積もりを取ります。
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事前の情報共有: 製品情報、想定質問、業界用語集、商談目的などを事前に詳しく共有し、通訳者に準備してもらうことが大切です。
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音声環境の確認: 通訳者と事前に接続テストを行うなど、通信環境の確認も怠らないようにしましょう。
3-3. 海外オンライン展示会を成功させるための追加戦略
通訳の活用に加え、以下の戦略も成功に不可欠です。
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魅力的なデジタルコンテンツの制作: 静止画だけでなく、高品質な動画は視聴者のエンゲージメントを高めます。製品の利用シーン、開発者の想い、顧客の声などを盛り込みましょう。
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ライブデモンストレーションの実施: リアルタイムで製品の動きを見せることで、より具体的に理解を深めてもらえます。Q&Aセッションも設けましょう。
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パーソナライズされたコミュニケーション: 来場者の関心が高いコンテンツや、過去の行動履歴に基づいて、最適な情報を提供しましょう。
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積極的なフォローアップ: 展示会中のチャットやウェビナー参加者、資料ダウンロード者に対して、会期後速やかにメールやオンラインミーティングでフォローアップを行い、リードを育成しましょう。
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データ分析に基づく改善: 取得した来場者データを分析し、どのコンテンツが人気だったか、どの地域からのアクセスが多かったかなどを把握し、次回の出展や今後のマーケティング戦略に活かしましょう。
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SNSを活用した会期中の情報発信: 展示会中は、公式ハッシュタグなどを活用し、リアルタイムでブースの様子やウェビナー情報などを発信し、来場を促しましょう。
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現地パートナーとの連携: 現地に代理店やパートナー企業がいる場合、共同でブース運営やプロモーションを行うことで、より効果的な集客と商談が期待できます。
まとめ:海外オンライン展示会を新たな成長の機会に
海外オンライン展示会は、日本企業にとって未知の市場を開拓し、グローバルビジネスを加速させるための強力なツールです。確かに言語、時差、技術など様々な障壁はありますが、それらを事前に把握し、適切な準備と戦略をもって臨むことで、これらの課題は乗り越えられます。
デジタルコンテンツの質を高め、積極的にコミュニケーションを図り、通訳などのサポートを賢く活用することで、世界中の潜在顧客との接点を創出し、新たなビジネスチャンスを掴むことができるでしょう。ぜひこのガイドを参考に、貴社の海外オンライン展示会出展を成功に導いてください。
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