翻訳のご相談の際に、「用語集」と「翻訳メモリ」の違いは何か、とご質問をいただくことがあります。ざっくりとまとめると、2つの違いは下記の通りです。
・用語集=単語を登録するもの
・翻訳メモリ=文を登録するもの
英語の単語帳をイメージしていただくとわかりやすいかと思いますが、見出しになっている各単語と意味を集めたものが「用語集」で、単語の用例の文と、その訳を集めたものが「翻訳メモリ」になります。
実際にそれぞれに登録される例で確認してみましょう
■用語集:
・日本語)WIPジャパン
・英語)WIP Japan
■翻訳メモリ:
・日本語)WIPジャパンは東京にオフィスがあります。
・英語)WIP Japan has an office in Tokyo.
・日本語)WIPジャパンは東京大阪にオフィスがあります。
・英語)WIP Japan has an office in TokyoOsaka.
「東京」を「大阪」に変更するだけなので、一から訳すよりも時間・費用共に削減することができます。
用語集が活躍する場合
1 同じ単語が何度も使用される
原稿内で同じ単語が何度も使用される場合、用語集を作成しておけば原稿全体で単語を統一することができます。
2 固有名詞が含まれている
人名や部署名、プロジェクト名や社内用語などは、翻訳会社側が調査をしても特定ができない場合があります。既に定訳が存在しているのであれば、用語集に則って翻訳をすることができます。
翻訳メモリが活躍する場合
1 同一の文が何度も使用されている
用語集と同じく、原稿中に同じ文が何度も出てくる場合、翻訳メモリを参照して文書内で統一することができます。なお、ここで気を付けなければならないのは、まったく同じ文でも、その前後(文脈)によって訳文を変更しなければならない場合があるということです。そのため、一文のみ見た場合では全く同じでも、文脈に合っているかということをチェックしています。
2 原文の一部分のみを変更したい
既に翻訳メモリをお持ちで古い原文の一部分のみを変更したい場合、例で述べたように翻訳も一部分のみを変更すればよいので、時間と費用の短縮になります。また、翻訳メモリをお持ちでなくても、翻訳をご依頼いただく際に新しく作成すれば、将来文書を一部改訂したい場合に、同様に活用することができます。
まとめ
用語集と翻訳メモリ、どちらも翻訳を行う際に非常に便利な資料です。それぞれの特性を理解していただき、どちらが(場合によってはどちらも)翻訳が必要な原稿に合っているかということをご検討いただければ幸いです。(一橋)