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2021 Aug. 12

たかが、されど ~翻訳チェックの現場で何が起きているか~

 

翻訳チェックの仕事はですね、かなり細かいところまで見なきゃならないんです。

 

そりゃそうですよ。だって翻訳者さんが重たい辞書持ちながらアタマに汗かいて創ってくれた翻訳を、些細なケアレスミスで台無しにしたくないですから。

 

私だって汗かきながらチェックするんです。時には最後の最後の見直しでミスを発見しちゃって、冷や汗かくことだって。

 

どれだけ細かいところまでチェックしてるかってね、私がここで羅列してしまったらきっと「ふーん、そうなんだー」で終わってしまうでしょう?

 

この記事を読んでいるということは、翻訳や翻訳チェックの仕事に興味関心がある方ですよね。せっかくならここまで読んだついでに、翻訳チェッカーになったつもりで、以下の英文と和文の中から間違いを見つけてもらうっていうのはどうですかね?

 

① The amount contained in a package will also be increased by 2kg or about 20 %.
② They visited the Republic of Palau, an island country in the pacific ocean, to commemorate the 70th anniversary of the end of the second world war.
③ We have arranged an appointment for next monday.
④ The price of this apparently environment friendly fuel is high.
⑤ Your dedicated whittler requires: a knife, a piece of wood, and a back porch.

⑥ 1ヶ月に満たない間に10カ国を訪れました。
⑦ 一番好きな歌は、玉置浩二さんの『メロディ』です。
⑧ 風邪が流行っていますので、お体にお気を付け下さい。
⑨ 取扱う機器の使用方法を説明した取扱い説明書
⑩ 愛読書は〈ロイヤル英文法〉です。

すぐに分かりましたか?それとも意外に難しかったですか?

 

早速答え合わせしていきましょう(解説の根拠は、最後に掲載している参考文献をご覧下さい)。

 

① The amount contained in a package will also be increased by 2kg or about 20 %.

 

答え:単位記号が略語の場合、数字との間に半角スペースを入れなければなりません。よって 2kg ではなく 2 kg が正解です。一方で単位記号がシンボルの場合、スペースは入れません20% が正しい表記です。

 

② They visited the Republic of Palau, an island country in the pacific ocean, to commemorate the 70th anniversary of the end of the second world war.

 

答え:固有名詞の頭文字は大文字になりますthe pacific ocean ではなく the Pacific Ocean としなければなりません。このルールは歴史上の出来事にも適用されます。the second world war ではなく、頭文字を大文字にして the Second World War となります。

 

③ We have arranged an appointment for next monday.

 

答え:曜日も大文字ですので for next Monday となりますね。

 

ちなみに月(January February など)や祝日(Thanksgiving Day New Year’s Day など)も頭文字は大文字となります。


④ The price of this apparently environment friendly fuel is high.

 

答え:environment friendly はハイフンでつなぐ必要があります。environment-friendly が正しい表記です。ハイフンを使わないならば environmentally friendly としなければなりません。


⑤ Your dedicated whittler requires: a knife, a piece of wood, and a back porch.

 

答え:コロンの使い方が間違っています。コロンは独立した一文の後に続いて、主に付加的な情報や説明を付け加えるときに使います

 

正しいコロンの使い方はYour dedicated whittler requires three props: a knife, a piece of wood, and a back porch. です。

 

また、たまにコロンの後に続く文章を大文字で始めてしまっているのを見かけますが(たとえば問題文の場合(A knifeとしてしまう)、小文字で始めるのが正しい表記です(固有名詞の場合を除く)。


⑥ 1月に満たない間に10国を訪れました。

 

答え:問題文は助数詞に伴う表記に「ヶ」と「カ」が使用されていて、統一されてません。この統一されていないのが一つの間違いです。

 

ではどちらに統一すればいいかというと、実はいずれでもなく、原則としてひらがなの「か」を使います


⑦ 一番好きな歌は、玉置浩二さんの『メロディ』です。

 

答え:曲名が間違っています。正しい曲名は『メロディ』ではなく『メロディー』です(玉置浩二 公式サイト(ソニーミュージック)より)。

 

固有名詞ではない場合は「メロディ」と「メロディー」のどちらが正しいかというと、後者の「メロディー」がルールに沿った表記となります。

 

アイデンティティやパーティ、アイスティ、キャンディなどもルールに従えば長音を省略せず、それぞれアイデンティティー、パーティー、アイスティー、キャンディーになります。


⑧ 風邪が流行っていますので、お体にお気を付け下さい

 

答え:「お気を付け下さい」の「下さい」は「ください」にしなければなりません。

 

補助動詞として使う場合は「ください」とひらがな表記にします。一方漢字の「下さい」は、動詞として「相手に何かを求める」意味があります。たとえば「少し時間を下さい」など。

 

同じことが「いただく」と「頂く」にも当てはまります。ひらがなの「いただく」は補助動詞で、言葉の後ろに付いて「何かをしてもらう」という意味を持ちます。「ご覧いただく」などがそうですね。

 

一方漢字の「頂く」は「もらう」や「食べる/飲む」の謙譲語になります。たとえば「お土産を頂く」など。


取扱う機器の使用方法を説明した取扱い説明書

 

答え:「取扱う機器」は正しくは「取り扱う機器」になります。

 

活用のある動詞の複合語では、送り仮名は省略しません。「取り扱う」の場合、「取る」と「扱う」の複合語であり、「取る」は「取ら、取り、取る、取れ」と活用します。そのため「取り扱う」が正しいです。

 

一方「取扱い説明書」の「取扱い」は、動詞「取り扱う」から派生した名詞のため、上記のルールが適用されず送り仮名は省略できますし、省略しなくても間違いではありません。つまり「取り扱い」「取扱い」「取扱」、どれも間違いとは見なしません。

 

ただし一つの同じ文章内で「取り扱い」「取扱い」「取扱」が混在しているのは読みにくさを助長してしまうので、どれかに統一した方がいいでしょう。


⑩ 愛読書はロイヤル英文法です。

 

原則として、山括弧〈〉は和文では使用しません。原文で山かっこが使用されており、原文どおりに使用する必要がある場合のみ使用します。

 

文献などのタイトルを示す場合は、二重かぎかっこ『』を使用します

 

***

 

いかがでしたでしょうか?

 

「意外に難しかった・・・」こう思われた方も多いのでは?(簡単だと思われた方、ぜひ翻訳業界にお越しください)。

 

英語はさておき日本語なら簡単と思われるかもしれませんが、実は日本語の方が要注意です。

 

日本語は漢字、ひらがな、カタカナなど、文字の種類が多いです。さすがに文字に半角を使用することはないですが、記号は全角と半角のどちらも使うことがあります。

 

そのため日本語訳をつくる場合は、「どのように翻訳するか」を考えると同時に「どのように表記するか」を決めなければなりません。そしてその表記には、読みやすさのためのルールが存在します。

 

私たち日本人にとって日本語は当たり前に知っている気になっていて、そうしたルールの存在を思わず忘れてしまったりすることが多いのです。

 

また、ここで紹介したのはあくまで一般的なルールです。実際のプロジェクトでは、こうした一般的なルールに加えてクライアントのスタイルガイド(=統一した言葉遣いを規定する手引き)が適用されることもあります。

 

そしてさらに、一般的なルールよりクライアントのスタイルガイドが優先することだってあります(こうなると、チェック中にアタマが混乱することもしばしば)。

 

・・・え?そんな細かいルールより、メインの文章の方が重要ですか?

 

でもですね、細かすぎるかどうかは、私たちが決めることではありません。

 

私たちがやるべきことは、それが細かすぎるかどうか判断することではなく、原稿の作者の伝えたいことが読者にもれなく伝わるために全力を尽くすこと。

 

細かいと思うかも知れないルールは、想定読者にとっての読みやすさを向上させるためにあるんです。

 

であれば、ルールを知り倣う価値、あると思いませんか?

 

関連記事:チェッカーのお仕事~翻訳チェックの難しさと醍醐味

 

執筆:田村嘉朗
大手通信会社ロンドン支社勤務を経て、2013年より翻訳者として活動
専門は通信、マーケティング

参考文献
1. William Strunk JR. and E.B. White: The Elements of Style, Fourth Edition (English Edition)
2. University of Chicago Press: The Chicago Manual of Style: 17th Edition (English Edition)
3. 一般財団法人テクニカルコミュニケーター協会:外来語(カタカナ)表記ガイドライン(第3版)
https://www.jtca.org/standardization/katakana_guide_3_20171222.pdf
4. 一般社団法人 日本翻訳連盟:JTF日本語標準スタイルガイド(第3版)
https://www.jtf.jp/pdf/jtf_style_guide.pdf
5. 文化庁:送り仮名の付け方 複合の語 通則6
https://www.bunka.go.jp/kokugo_nihongo/sisaku/joho/joho/kijun/naikaku/okurikana/honbun06.html

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