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Jun. 30, 2020

契約書翻訳を依頼する際に知っておいていただきたいこと

 

英文契約書の和訳を翻訳会社に依頼したところ、とても読みづらく、契約内容どころか、日本語自体が複雑で理解できない・・・。そんな経験をお持ちの方もいらっしゃると思います。

商談に向けての大事な会議を控えている担当者であるあなたは、「な、なんだ、これは!? こんな和訳を納品してくるなんて、まったくもってケシカラン!」と怒り心頭…。そのお気持ち、とてもよく分かります。

しかし、どうしてこんなことになったのでしょうか。単にその翻訳会社のスキルが低かったから。もちろんそれも考えられます。しかし、実は契約書の翻訳には、あらかじめ知っておいたほうが良いポイントがあります。

ここでは、契約書翻訳、とくに「英文契約書の和訳」を発注される際に知っておいていただきたいことについて述べたいと思います。

契約書はきわめて「文化的な」ドキュメント

そもそも契約書には、決まった作り方があるわけではありません。とはいえ、基本的な構成はおおむね共通しているため、基本的な形があるのは事実です。

しかし、その「形」は、国や地域によって、あるいは企業(会社)によっても変わってきます。つまり、契約書はそれぞれの商習慣に基づいて作成される、きわめて「文化的な」ドキュメントといえます。

したがって、一方にしてみればごく自然な契約内容(および記述)であっても、他方にとってはまるで馴染みのない、場合によっては不自然とさえ思えるものであることも、当然あり得ます。

ここで大切なのは、商談相手が「異文化の人たち」であることをしっかりと理解したうえで、彼らの流儀で書かれた契約内容をまずは尊重しつつ、ビジネスですから、しっかりと吟味するという態度を保つことでしょう。

ところで、そうしたドキュメントを翻訳する場合、翻訳会社はどのようなアプローチを取るのでしょうか。

 

  • ① とにかくクライアント(=あなた)に分かりやすいようにと訳文を工夫する。不要と思われる部分を省略したり、意訳を交えたりする。


    ② 恣意的な操作を交えず、あくまでも原文に忠実に訳す。


一見したところ、①の方針のほうが良さそうに見えます。さまざまに工夫されている和文ですから、読みやすく、かつ後の会議でも重宝しそうです。これに対し、②の方針でなされた和訳は・・・上述の「怒り心頭パターン」に陥りそうです。

 

契約書の原文に矛盾があることも…⁉

ここで一つ、私たちの経験をお話しましょう。

それは、定期的にご愛顧下さっている某メーカー様からご依頼いただいた、英文契約書の和訳のお仕事でした。

最初のころ、このお客様も原文(英語)の形式、および内容の記述の仕方にかなり戸惑われたようで、時には厳しいお叱りの言葉も頂戴しました(涙)。しかし、何度かご納品させていただくうちに、形式や書き方にも慣れてくださったようで、契約書翻訳の読み方の「勘所」をしっかりと理解されました。

そんな中、とある新規の契約書を翻訳させていただいた際に、担当した翻訳スタッフから報告があり、原文の記載に重大な矛盾があることが分かりました。

「契約書なのに、こんな根本的なところで矛盾する記述を残しておくものだろうか・・・」

翻訳スタッフの疑問は当然でした。しかも英文自体にはまったく問題がなく、うっかりするとそのまま訳して、すんなり通してしまいそうなくらいでした。しかし、担当コーディネータ、および営業担当者が何度読み直しても、結果は同じでした。確かに矛盾しています…。

そこで、納品ファイルでは、矛盾した記述のままに和訳を残し、「コメント」機能を使って先行する記述とは矛盾している旨、報告させていただきました。

後日、クライアントから連絡があり、「先方に確認したところ、以前の契約内容をそのまま流用し、修正し忘れていた」とのことでした。契約書(元原稿)といえども、ヒューマンエラーはつきものなのですね。

 

契約書翻訳の理想的な形とは?

さて、先ほどの翻訳方針に話を戻しましょう。

弊社では、基本的には②の「原文に忠実に訳す」方針で翻訳しています。一つには、上記のようなケースでは、矛盾を矛盾として残すことはむしろ必要と考えるためです。

数字の誤記やタイプミスといった初歩的なエラーについても、同様にそのまま和訳に反映し、コメントに残しています。こうした「エラー」も、それはそれで一つの重要な情報として、意味を持っていると考えるからです。

しかし、意訳はもとより、こうした矛盾や誤記等を勝手に書き換えてしまうことは到底許されるものではありませんが、それでも①の「読みやすさ」については、サービスを提供する側としては当然追求すべき事柄と思います。

原文に忠実でありながらも、できるだけ読みやすい和訳。契約書翻訳の理想形の一つと認識しています。

 

契約書が「契約前」の場合は秘密保持契約が必須

英文契約書の和訳の相談をする前に、まずはその契約書が「契約前」のものであるのか、あるいは「契約後」のものであるのかを、翻訳会社に伝えておくことも重要です。

「契約前」のものである場合、その翻訳会社との間で秘密保持契約が締結されていることが必須です。翻訳会社としては、文書管理フローを再確認し、各担当者に秘密保持を徹底します。

また、翻訳からチェックまで、「契約前」であることを念頭におき、より慎重に作業を行い、必然的に品質が保持されます。このため納期設定がやや長めに設定されることがあります。

逆に「契約後」のものである場合、翻訳の目的にもよりますが、単に確認や保管用のための和訳であるなら、値下げ交渉の材料となります。翻訳会社としても、チェックフローを簡略化するなど、作業工数を減らすことができます。

見積依頼をする際には、ぜひ「契約前」「契約後」のどちらであるか、また翻訳の目的について、見積担当者にお伝えください。

 

翻訳後の契約書の位置づけについて

他方、契約書翻訳の位置づけという観点からは、納品されてきた成果物(和訳)をどう扱うのか、という問題があります。

「契約前」のものである場合、当然、翻訳された和文は、そこに記載されている取引条件や諸制限を元に、相手とビジネスを行うかどうかを判断する一次資料となります。いずれにせよ、重要な資料であることに変わりはないのですが、内容に疑問が生じた際、実は翻訳会社に質問すべきことと、質問しても答えてもらえないことがあります。

結論を先に言いますと、翻訳会社に答えられるのは、一般的にはあくまでも「言語的な側面」にすぎません。つまり、翻訳会社が行っているのは、英文で書かれた文書を、契約書を専門とするスタッフが言語的に処理し、和文で再構成しているだけなのです。そして、その翻訳スタッフは、かならずしも法律の専門家ではありません。

しばしばお客様からは、「この条項は、こんなふうに解釈できるか」、「ここを、こんな風に理解したいのだが、どうだろう」といった質問やご相談をいただきます。残念ながら、一般に翻訳会社には、それにお答えすることは適いません。

なぜなら、お客様の事業内容、相手方についての情報、当該取引についてのバックグラウンドなど、実は契約書の内容を理解するうえでは欠かせないそうした事柄について、翻訳会社はほぼ情報を得られていないからです。

むしろ、これらを熟知しているのは、当のお客様ご自身のはず。それらの情報や知見を元に、お客様ご自身が解釈を「補う」ほうが、実は単なる言語的な判断よりも優っている場合が多いのです。

お勧めしたいのは、翻訳会社から上がってきた和訳をあくまでも一次資料として扱い、それに自社の状況や相手方の情報などを補完することで、よりよい「解釈」を導き出していただきたいということです。その際、言語まわりの事柄については、もちろん私たち翻訳会社がフルサポートさせていただきます。(高木)

 

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