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Jul. 11, 2025

基本合意書(Term Sheet / Basic Agreement)翻訳:M&A・提携交渉の羅針盤を正確に描く

 

今日のグローバルビジネスにおいて、企業買収(M&A)、共同事業(Joint Venture)、戦略的提携といった重要な取引を進める際、本格的な最終契約を締結する前に、当事者間の基本的な合意事項を確認するための文書が不可欠です。それが基本合意書(Term Sheet / Basic Agreement)です。

この文書は、取引の主要条件(価格、スケジュール、範囲など)を明確にし、今後の交渉の基盤を築く役割を担います。法的拘束力を持つ場合と持たない場合がありますが、いずれにしてもその内容は後の最終契約に大きな影響を与えるため、その正確な翻訳は極めて重要です。翻訳のミスや内容の理解不足は、期待値のずれ、交渉の停滞、時間とコストの浪費、そして最悪の場合、取引自体の頓挫へと発展する重大なリスクをはらんでいます。

特に、M&Aや大規模な提携においては、各国で異なる会社法、競争法(独占禁止法)、税法、会計基準などが複雑に絡み合います。単に言葉を置き換えるだけでなく、それぞれの法制度や商慣習、そしてビジネス上のニュアンスを踏まえた上で内容を理解し、翻訳することが不可欠です。

当社は、これまでの経験に基づき、基本合意書翻訳における重要なポイントと、貴社の各部門がどのように翻訳された基本合意書を活用し、関与していくべきかを具体的なケーススタディを交えて解説します。

貴社のグローバルM&Aや提携戦略において、基本合意書の適切な理解と運用を通じて、円滑な交渉と事業成長を実現するために、ぜひ本記事をお役立てください。

基本合意書とは何か?その目的と国際取引における重要性

基本合意書(Term Sheet / Basic Agreement)は、M&Aや大規模な提携、共同事業の設立などの重要な取引において、当事者間の主要な合意事項をまとめた文書です。一般的に、デューデリジェンス(詳細調査)を開始する前やその最中に締結され、交渉のロードマップとしての役割を果たします。類似の文書として、より拘束力が限定的な覚書(MOU:Memorandum of Understanding)や、一方からの提案に重きを置く意向表明書(LOI:Letter of Intent)などがあります。

国際的なM&Aや提携において、この基本合意書は以下のような多岐にわたる場面で利用されます。

  • 企業買収(M&A): 買収対象会社の株式や事業の譲渡価格、決済方法、主要な前提条件、独占交渉権、デューデリジェンスの範囲などを定める。

  • 共同事業(Joint Venture)の設立: 新たな合弁会社設立に向けた、出資比率、ガバナンス体制、事業目的、資金計画に関する基本的な合意事項を確認する。

  • 戦略的提携・アライアンス: 技術提携、販売提携、ライセンス供与など、幅広い協力関係において、その目的、範囲、主要条件、期間などを定める。

  • 大規模プロジェクトの推進: 特定のインフラ開発や資源開発など、複数企業が関わる大規模プロジェクトにおいて、各当事者の役割、責任、資金拠出、収益分配の基本的な枠組みを定める。

基本合意書は、以下の重要な要素を含みます。

  • 当事者(Parties): 合意書を締結する全ての企業、組織、または個人。

  • 取引の目的と概要(Purpose and Overview of the Transaction): M&Aであれば「〇〇社の株式取得」、提携であれば「△△技術の共同開発」といった具体的な目的。

  • 主要条件(Key Terms / Principal Terms):

    • 対価(Consideration): 買収価格、出資金、ロイヤルティなど、取引の金銭的条件。支払い方法(現金、株式、アーンアウトなど)も含む。

    • 取引の対象(Subject Matter): 株式、事業、資産など、何を取引の対象とするか。

    • スケジュール(Timeline): デューデリジェンスの期間、最終契約締結の目標期日、クロージングの目標期日など。

    • 独占交渉権(Exclusivity): 一定期間、他の当事者との交渉を禁止する旨の合意(通常、法的拘束力を持つ)。

    • デューデリジェンス(Due Diligence): 実施の範囲、期間、情報開示に関する取り決め。

  • 前提条件(Conditions Precedent): 最終契約の締結またはクロージングのために満たされるべき条件(例:規制当局の承認、株主承認、デューデリジェンスの完了)。

  • 秘密保持義務(Confidentiality): 開示される情報に関する秘密保持義務(通常、法的拘束力を持つ)。

  • 法的拘束力の有無(Binding / Non-Binding Provisions): 合意書全体または個々の条項が法的に拘束力を持つか否かの明確な記述。

  • 準拠法(Governing Law): 合意書が法的拘束力を持つ部分について適用される法律。

  • 紛争解決(Dispute Resolution): 交渉過程や合意書に起因する紛争が発生した場合の解決方法(協議、調停、仲裁、裁判など)。

  • 費用負担(Expenses): 交渉やデューデリジェンスにかかる費用の負担について。

国際的な取引における基本合意書の重要性は、以下の理由から非常に高いです。

  • 交渉の「羅針盤」: 複雑な取引において、主要な条件を文書化することで、その後の詳細交渉における道筋を示し、議論が迷走するのを防ぎます。

  • 期待値の調整と認識共有: 複数国、複数企業の関係者間で、取引の基本的な理解と期待値を一致させ、将来的な認識齟齬による紛争を未然に防ぎます。

  • デューデリジェンスの開始と効率化: デューデリジェンスの範囲や条件を明確にすることで、情報開示プロセスを円滑にし、調査を効率的に進めることができます。

  • 独占交渉権の確保: 特定の取引においては、競合他社との交渉を排除し、自社が独占的に交渉を進める権利を確保するために不可欠です。

  • 社内承認プロセスの推進: 経営層や関連部門に対し、具体的な取引条件の概要を示し、社内承認や予算確保のプロセスを進めるための根拠となります。

  • 法的リスクの限定: 法的拘束力を持つ条項と持たない条項を明確に区分することで、本格的な契約締結前の段階における当事者の法的コミットメントを限定し、リスクを管理します。

英文基本合意書(Term Sheet)の特徴と和文合意書との違い

国際的なM&Aや提携の交渉では、多くの場合、英文で基本合意書(Term Sheet)が作成されます。その特徴は、日本の和文合意書とは異なる点がいくつかあります。

  • "Term Sheet"の形式:

    • 英文では「Term Sheet」という名称が一般的であり、これは箇条書き(bullet points)形式で主要な条件を簡潔に列挙する形式を指すことが多いです。これにより、複雑な取引の全体像と主要な条件が視覚的に分かりやすく提示されます。日本の「基本合意書」は、より文章形式で記述される傾向があります。

  • Clear Designation of Binding vs. Non-Binding Provisions(法的拘束力を持つ条項と持たない条項の明確な区別):

    • MOUと同様に、Term Sheetでも最も重要な特徴の一つが、各条項が法的拘束力を持つか否かを非常に明確に宣言する点です。通常、「This Term Sheet is non-binding, except for Sections X, Y, and Z.(本Term Sheetは、第X条、第Y条、および第Z条を除き、非拘束的なものとする)」といった表現が用いられます。これにより、最終契約前に当事者が負う義務の範囲が明確になります。

  • Detailed Financial Terms(詳細な財務条件):

    • 買収対価(Purchase Price)だけでなく、支払いの形式(現金、株式交換、アーンアウト、売掛金繰延など)、対価調整(Working Capital Adjustmentなど)、エスクロー(Escrow)の要否、取引費用(Transaction Expenses)の負担など、財務に関する条件が非常に具体的に記述されます。これは、後の最終契約における価格交渉の基礎となります。

  • Precedent Conditions (前提条件) の具体性:

    • 最終契約の締結やクロージング(取引完了)のために満たされるべき前提条件が、具体的に列挙されます。これには、規制当局の承認(Antitrust/Competition Law approval)、株主承認、第三者の同意、特定のデューデリジェンス結果、主要契約の締結などが含まれます。

  • Exclusive Negotiation (独占交渉権) の厳密な定義:

    • 独占交渉期間、その期間中に他の当事者との交渉が禁止される範囲、違反した場合の措置(例:破談金や費用償還義務)などが、非常に厳密に定義されます。これは、買い手側が時間とリソースをかけてデューデリジェンスや交渉を進めるための保護として極めて重要です。

  • Governing Law and Dispute Resolution (準拠法と紛争解決):

    • 法的拘束力を持つ条項(独占交渉権、秘密保持など)の解釈や、Term Sheetに起因する紛争が発生した場合に備え、準拠法と紛争解決のメカニズム(例:国際仲裁)が明確に指定されます。これは、国際的なM&Aにおいて一般的なリスク管理の手法です。

  • Representations and Warranties (表明保証) の概要:

    • 正式なM&A契約書ほど詳細ではないものの、主要な表明保証(例:対象会社の財務状況、法的有効性、主要資産の保有など)の範囲が、概略的に提示されることがあります。

日本の和文基本合意書に比べ、英文Term Sheetは、箇条書き形式での簡潔な記述、法的拘束力の有無に関する明確な区分、財務条件の詳細化、前提条件の具体性、独占交渉権の厳密な定義、そして準拠法および紛争解決の指定に関して、より実務的かつ厳密な記述が求められる傾向が強いです。翻訳においては、これらの法的・会計的・商業的なニュアンスを正確に反映した表現を用いることが不可欠です。

基本合意書(Term Sheet)翻訳における重要ポイント

基本合意書(Term Sheet)の翻訳は、貴社のグローバルM&Aや提携戦略の成否、関係者間の認識共有、そして潜在的な法的・商業的リスクの回避に直接影響するため、極めて高い精度と専門性、そして法務、財務、事業といった多岐にわたる部門の連携と視点が求められます。以下のポイントを押さえることが、成功への鍵となります。

  1. 法的拘束力の有無に関する極めて正確な翻訳:

    • 覚書(MOU)と同様に、基本合意書全体または特定の条項が「法的拘束力を持つ(binding)」のか、「持たない(non-binding)」のかを、一言一句誤りなく、極めて明確かつ正確に翻訳することが不可欠です。この部分の誤訳は、将来の法的な義務の有無に関する重大な誤解を招き、予期せぬ法的紛争や巨額の賠償責任につながる可能性があります。

    • 当社は、この「法的拘束力」の表現の厳密性を特に重視しています。

  2. 対価(Consideration)と支払い方法に関する詳細な翻訳:

    • 買収価格、出資金、ロイヤルティなど、取引の核心となる金銭的条件は、金額だけでなく、支払い通貨、支払い時期、支払い方法(現金、株式交換、アーンアウト、繰延払いなど)、対価調整メカニズム(ワーキングキャピタル調整など)まで、詳細かつ正確に翻訳することが不可欠です。会計・財務上のニュアンスを理解した翻訳が求められます。

  3. 独占交渉権(Exclusivity)条項の厳密な翻訳:

    • 一定期間、他の当事者との交渉を禁止する独占交渉権の期間、範囲、違反した場合の損害賠償や費用償還義務などを、法的効力を伴う形で厳密に翻訳することが極めて重要ですし、当社はこれを強く認識しています。これは、交渉過程における貴社の優位性やリスクを直接左右します。

  4. デューデリジェンス(Due Diligence)に関する詳細な翻訳:

    • デューデリジェンスの範囲(財務、法務、税務、事業など)、期間、情報開示の条件、開示される情報の機密保持義務などを明確に翻訳することが不可欠です。これにより、貴社が対象会社の情報を十分に評価できるか否かが決まります。

  5. 前提条件(Conditions Precedent)の網羅的かつ正確な翻訳:

    • 最終契約の締結やクロージングのために満たされるべき条件(例:規制当局の承認、株主承認、特定の法的許可の取得、デューデリジェンスの結果)は、その一つでも満たされないと取引が頓挫する可能性があるため、網羅的かつ正確に翻訳すべきです。

  6. 準拠法(Governing Law)と紛争解決(Dispute Resolution)の正確な指定:

    • 法的拘束力を持つ条項の解釈や、基本合意書に起因する交渉過程での紛争が発生した場合に備え、適用される法律(準拠法)と紛争解決の手段(裁判、国際仲裁、調停など)、裁判管轄、仲裁地などを正確に翻訳することが不可欠です。

  7. 強固な情報セキュリティ体制:

    • 基本合意書には、M&Aや提携の具体的な条件、対象会社の機密情報、企業の財務状況、戦略など、極めて機密性の高い情報が含まれます。これらの情報が外部に漏洩した場合、企業の競争力低下、信用失墜、そして取引の破談など、甚大な損害を被る可能性があります。そのため、翻訳を依頼する際には、翻訳会社が厳格な情報セキュリティポリシーを定め、技術的・物理的・人的な対策を徹底しているかを必ず確認すべきですし、当社はこれを徹底しています。

  8. AI翻訳の適切な活用と専門家による最終確認:

    • AI翻訳技術は、初稿の作成や定型表現の翻訳に役立ちますが、基本合意書のような法的拘束力、複雑な財務・法務・事業上のニュアンス、商慣習の違いが重要な文書においては、その複雑な意味合いを完全に理解することは困難です。AIを効率化ツールとして最大限活用しつつも、M&A法務、国際契約実務、当該ビジネス分野の専門知識を持つ専門の翻訳者による徹底したレビューと校正が不可欠です。人間による精査が、潜在的なリスクを最小限に抑え、グローバルなM&A・提携交渉の成功を確実なものとします。

基本合意書(Term Sheet)の翻訳は誰に必要なのか?ケーススタディで見る関係部門の役割

基本合意書(Term Sheet)は、企業のグローバルなM&Aや提携戦略における中心的な文書であり、多岐にわたる部門や関係者がその内容を理解し、翻訳された情報に基づいて連携することが不可欠です。

 

ケーススタディ1:日本の大手企業が欧州のスタートアップ企業買収に向けた基本合意書を締結

 

状況: 日本の大手製造業A社が、欧州(ドイツ)の最先端AI技術を持つスタートアップ企業B社を買収するM&A案件。双方の交渉を経て、英語で基本合意書(Term Sheet)を締結。このTerm Sheetを、日本のA社側の関係者(経営層、M&A推進チーム、法務部、財務部)向けに日本語に翻訳する必要がある。

  • 法務部:

    • 必要性: Term Sheetの法的拘束力の有無、特に独占交渉権、秘密保持、準拠法(例:英国法)と紛争解決に関する条項の法的効力を確認します。将来の最終契約(株式譲渡契約など)に向けた法的リスクと機会を評価し、デューデリジェンスの範囲と条件を把握します。

    • ケース: 翻訳されたTerm Sheetに記載された「本Term Sheetは、独占交渉権に関する第X条と秘密保持に関する第Y条を除き、法的拘束力を持たない」という明確な記述、および「90日間の独占交渉期間とその期間中の他社との交渉禁止義務」、「買収対象の知的財産に関する初期的な表明保証の範囲」、「英国法を準拠法とし、ロンドン国際仲裁裁判所(LCIA)での仲裁を紛争解決手段とする条項」を和訳で確認し、法的リスクとコンプライアンスを評価します。

  • M&A推進チーム/事業開発部門:

    • 必要性: 買収対象となるB社の事業内容、技術、市場優位性、シナジー効果、そしてM&A後の統合戦略(PMI)を理解します。Term Sheetに示された主要条件(価格、スケジュール、デューデリジェンス範囲)に基づき、M&Aプロジェクトを推進し、社内承認プロセスを進めます。

    • ケース: 翻訳されたTerm Sheetに記載された「B社の評価額と、買収対価の目安(例:現金払いとアーンアウトの組み合わせ)」、「デューデリジェンスの対象範囲(技術、財務、法務、人事など)」、「最終契約締結およびクロージングの目標期日」を和訳で確認し、M&A戦略の整合性とプロジェクトの実行可能性を評価します。

  • 財務部/経理部:

    • 必要性: 買収対価の具体的な金額、支払い方法、資金調達計画、M&A関連費用、税務上の影響(日本とドイツ双方での税務処理、連結決算への影響、のれんの評価など)を正確に理解します。Term Sheetに基づく資金移動や会計処理の計画と実行に責任を持ちます。

    • ケース: 翻訳されたTerm Sheetに記載された「買収対価の具体額(例:1億ユーロ)と支払い条件(〇〇ユーロは手付金、残りはクロージング時に支払い、アーンアウト条件の詳細)」、「M&A関連費用の負担区分(例:双方で自社費用を負担)」、「財務デューデリジェンスの実施と、最終的な買収価格調整の可能性に関する記述」を和訳で確認し、財務計画の策定と税務・会計コンプライアンスを評価します。


 

ケーススタディ2:米国ベンチャーキャピタルが日本のSaaSスタートアップに投資するTerm Sheetを提示

 

状況: 米国のベンチャーキャピタル(VC)C社が、成長著しい日本のSaaSスタートアップ企業D社に対し、シリーズA投資を行うためのTerm Sheetを英語で提示。このTerm Sheetを、日本のD社側の関係者(経営層、CFO、法務担当)向けに日本語に翻訳する必要がある。

  • 法務担当:

    • 必要性: Term Sheetの法的拘束力の有無、特に独占交渉権、秘密保持、投資家保護条項(共同売却権、買主指定権、希薄化防止など)、そして準拠法(例:米国デラウェア州法)と紛争解決に関する条項の法的効力とリスクを詳細に確認します。将来の株式引受契約や株主間契約に繋がるため、厳密な検討が必要です。

    • ケース: 翻訳されたTerm Sheetに記載された「本Term Sheetは、秘密保持義務、独占交渉権、準拠法、紛争解決に関する条項を除き、法的拘束力を持たない」という記述、「60日間の独占交渉期間と、その期間中の他VCとの交渉禁止義務」、「VCが保有する共同売却権(Tag-Along Right)と買主指定権(Drag-Along Right)の具体的な条件」、「米国デラウェア州法を準拠法とし、カリフォルニア州での仲裁を紛争解決手段とする条項」を和訳で確認し、法的リスクとコンプライアンスを評価します。

  • CFO/資金調達担当:

    • 必要性: 投資金額、評価額、株式の種類(優先株式など)、株式の希薄化防止条項、取締役会への参加権など、財務・投資に関する主要条件を正確に理解します。自社の資金計画や将来のExit戦略と照らし合わせて評価します。

    • ケース: 翻訳されたTerm Sheetに記載された「C社からの投資金額(例:500万ドル)と、評価額(例:プレマネー評価額2000万ドル)」、「発行される優先株式の権利(配当優先権、清算優先権など)」、「創業者株式のロックアップ期間(例:2年間)」、「C社が取締役会のオブザーバー参加権を持つ旨」を和訳で確認し、資金調達の条件と財務への影響を評価します。

  • 経営層/CEO:

    • 必要性: 今回の投資が事業成長戦略にどのように貢献するか、投資家との関係性、そして将来のIPOやM&AといったExit戦略にどう影響するかを評価します。Term Sheetに示された条件が、経営の自由度や企業文化に与える影響も考慮します。

    • ケース: 翻訳されたTerm Sheetに記載された「投資資金の使途(例:人材採用、プロダクト開発、海外展開)」、「投資家がD社の経営にどの程度関与するか(例:取締役選任権の有無)」、「将来の追加資金調達ラウンドにおけるD社の義務」を和訳で確認し、事業成長と経営戦略への影響を評価します。

よくある質問(FAQ)

基本合意書(Term Sheet)の翻訳に関して、お客様からよくいただくご質問とその回答をまとめました。

 


 

Q1: 基本合意書(Term Sheet)は法的拘束力がありますか?翻訳上の注意点は?

A1: 基本合意書(Term Sheet)は、その性質上、全体としては法的拘束力を持たないことが一般的ですが、特定の条項については法的拘束力を持たせるのが通例です。これが最も重要なポイントであり、翻訳においても細心の注意が必要です。

  • 法的拘束力がない部分: 取引の主要条件(価格、対象など)や、今後の交渉の方向性を示す条項は、通常、法的拘束力を持ちません。これは、デューデリジェンスの結果や詳細交渉によって変更される可能性があるためです。翻訳では、"intend to," "contemplate," "propose" など、拘束力の弱い動詞と表現を用いる必要があります。

  • 法的拘束力がある部分: 秘密保持義務(Confidentiality)独占交渉権(Exclusivity)準拠法(Governing Law)紛争解決(Dispute Resolution)費用負担(Expenses)に関する条項は、当事者を保護するために、Term Sheet全体が非拘束的であっても、通常は法的拘束力を持つ旨が明確に記載されます。翻訳では、これらの条項が「shall」「will」といった義務を示す強い動詞で記述され、その法的拘束力が明確に伝わるようにする必要があります。

翻訳者は、原文の各条項が持つ法的意味合いと拘束力の強弱を正確に理解し、それをターゲット言語で適切に表現する能力が求められます。この理解が不十分だと、意図しない法的義務を負う(または負わせる)可能性が生じます。

 


 

Q2: 基本合意書(Term Sheet)と覚書(MOU)の違いは何ですか?

A2: 基本合意書(Term Sheet)と覚書(MOU:Memorandum of Understanding)は、どちらも本格的な契約前の合意文書ですが、その目的と具体的な内容、焦点に違いがあります。

  • 覚書(MOU):

    • 目的: 当事者間の協力の「意図」や「理解」を確認することに重点が置かれます。比較的幅広い協力関係の検討段階で用いられ、より一般的な協力姿勢を示すことが多いです。

    • 内容: 協力の目的、協力範囲の概要、秘密保持、準拠法などが中心。金銭的な条件や詳細な法的条件は限定的。

  • 基本合意書(Term Sheet):

    • 目的: 特定の取引(M&A、大型投資など)の主要な「条件」を具体的に定めることに重点が置かれます。より具体的な取引の実行に向けた「骨子」となります。

    • 内容: 対価、取引対象、スケジュール、デューデリジェンスの範囲、独占交渉権、前提条件など、具体的な金銭的・法的条件が詳細に記載されます。

端的に言えば、MOUが「仲良くしましょう」の意思確認なら、Term Sheetは「具体的にどう取引しましょう」の骨子確認、というイメージです。翻訳においては、文書の性質に応じた専門用語の選択と、拘束力に関する表現の厳密性がより重要になります。

 


 

Q3: 基本合意書(Term Sheet)の翻訳を依頼する際、どのような情報を提供すれば、より良い翻訳が得られますか?

A3: より高品質な基本合意書翻訳のために、以下の情報を提供いただけると非常に役立ちます。

  • 取引の背景と目的: M&Aであれば買収の理由、提携であればその目的など、取引の戦略的意図を理解することで、翻訳者は文書のニュアンスをより正確に捉えられます。

  • 関与する当事者の情報: 企業名、事業内容、業界、関係性などを知ることで、適切な固有名詞の使用や、ビジネス上の意味合いを理解する手助けになります。

  • 関連する契約や文書: 将来締結される可能性のある最終契約(株式譲渡契約、JV契約など)のドラフトや、これまでの交渉履歴などがあれば、用語の一貫性を保ち、文脈を深く理解するのに役立ちます。

  • 特定の専門用語集: 業界固有のM&A用語、財務会計用語、技術用語、社内略語など、事前に用語集があれば、翻訳の一貫性と正確性が向上します。

  • 翻訳の目的: 内部承認用なのか、相手方への提示用なのか、あるいは公証が必要なのかなど、翻訳の最終的な用途を伝えることで、翻訳のスタイルやレベルを調整できます。


 

Q4: AI翻訳を基本合意書(Term Sheet)の翻訳に活用する際の注意点は何ですか?

A4: AI翻訳は、初稿の作成や定型表現の翻訳に非常に役立ち、翻訳プロセスを効率化できますが、基本合意書のような法的拘束力の有無、複雑な財務・法務・事業上のニュアンス、商慣習の違いが重要な文書に単独で使用することは強く推奨されません。

  • 法的拘束力の表現の誤解: AIは、"non-binding"という言葉の背後にある法的意味合いや、どの条項が拘束力を持つかといった複雑なニュアンスを完全に理解し、正確に表現できないリスクがあります。これが最も致命的な誤訳につながる可能性があります。

  • 財務・会計用語の精度: 買収対価の調整メカニズム(Working Capital Adjustmentなど)、アーンアウト条項、エスクローなど、複雑な財務・会計用語や概念をAIが正確に翻訳できないことがあります。

  • 文脈と意図の欠落: 交渉の過程で盛り込まれた特定の文言の意図、当事者間の微妙な力関係、ビジネス上の繊細な文脈をAIが正確に把握できるとは限りません。

  • 秘密保持とセキュリティ: 基本合意書には極めて機密性の高い情報が含まれるため、AI翻訳サービスへのアップロード方法や、データの取り扱いに関するセキュリティ体制を慎重に確認する必要があります。

したがって、AI翻訳を効率化ツールとして最大限活用しつつも、必ずM&A法務、国際契約実務、当該ビジネス分野の専門知識を持つ専門の翻訳者による徹底したレビューと校正を行うことが不可欠です。当社は、AIと専門家の人力翻訳を組み合わせることで、高品質かつ効率的な翻訳を提供しています。

まとめ

基本合意書(Term Sheet)の翻訳は、単なる言語の変換に留まらず、企業がグローバルM&Aや大規模な提携交渉を成功させ、複雑な取引条件を明確にし、潜在的な法的・商業的リスクを回避するための極めて重要なプロセスです。

英文と和文の基本合意書が持つそれぞれの特徴を深く理解し、法務、財務、事業といった各部門が連携しながら、専門知識を持つ翻訳者の力を借りることが不可欠ですし、これまでの経験から当社はこれを強く認識しています。

特に、法的拘束力の有無に関する極めて正確な翻訳、対価と支払い方法に関する詳細な翻訳、独占交渉権条項の厳密な翻訳、そして強固な情報セキュリティ体制といったポイントは、潜在的なリスクを最小限に抑え、グローバルなM&A・提携交渉の成功を確実なものとするための鍵となります。

当社は、このような複雑な基本合意書(Term Sheet)の翻訳において、貴社の各部門のニーズを理解し、最高品質の翻訳とサポートを提供することをお約束します。貴社の海外ビジネスにおける基本合意書に関してご不明な点やご相談がありましたら、ぜひお気軽にお問い合わせください。

契約書の翻訳-1WIPジャパンは、東京弁護士共同組合神奈川県弁護士共同組合をはじめとする全国23の弁護士共同組合の特約店に認定されています。
ご相談は無料です。いつでもお気軽にご連絡ください。

 

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契約書翻訳に役立つリンク集

法務省大臣官房司法法制部「法令翻訳の手引き」(PDF)
日本法令外国語訳推進会議「法令用語日英標準対訳辞書」(PDF)
Publiclegal(英文契約書のテンプレートや書式を無料で提供)
日本法令外国語訳データベースシステム(法務省が開設した日本の法令の英訳サイト)
weblio 英和辞典・和英辞典
英辞郎 on the web

 

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