「日本での思い出、どうやって振り返ってるんだろう？」
「帰国後も日本の情報を気にしているのかな？」

そう疑問に思う方もいるかもしれません。実は、日本を訪れた中国人観光客の「旅アト」の行動は、単なる個人的な振り返りに留まらず、次の訪日旅行者を呼び込むための強力な原動力となっています。

彼らが帰国後にどのように日本の体験を共有し、それがなぜ今後の集客に繋がるのか、その具体的な行動と心理を見ていきましょう。

1. 旅の思い出を共有・拡散する「旅アト」SNS投稿

日本での素晴らしい体験は、彼らにとって大切な「シェアのネタ」です。帰国後すぐに、旅の思い出を整理し、普段使いのSNSに投稿します。これが、次の訪日旅行者を惹きつける強力なUGC（User Generated Content：ユーザー生成コンテンツ）となります。

• Douyin（抖音）：
  • 行動: 日本でのVlog（旅行記動画）、食事風景、観光スポットの紹介動画などを編集し、BGMに合わせてアップロードします。数秒から数分の短い動画に、旅のハイライトや「映える」瞬間を凝縮します。
  • 心理: 「この感動をみんなにも伝えたい！」「私の旅行はこんなに楽しかったよ！」「この店、本当に美味しかったからおすすめ！」といった、共感や承認欲求を満たしたい気持ちが強いです。
  • 影響: 興味を持ったフォロワーが「どこ？」「どうやって行ったの？」とコメントし、それが新たな旅の計画に繋がります。特に、具体的な場所や店の名前がタグ付けされると、次の旅行者がそれを参考にしやすくなります。
• Xiaohongshu（小紅書）：
  • 行動: 日本で購入した化粧品やファッションアイテムのレビュー、訪れたカフェやレストランの詳細な口コミ（メニュー、価格、雰囲気、写真映えスポット）、おすすめの旅行ルートなどを、美しい写真と共に投稿します。
  • 心理: 「私の体験が、他の人の役に立ちたい」「おしゃれなライフスタイルを共有したい」といった、情報共有や自己表現の欲求が原動力になります。
  • 影響: 購買意欲の高い女性ユーザーが多いため、ここでの高評価の口コミは、**「次に日本に行ったらこれを買おう」「このお店に行こう」**という具体的な行動に直結しやすいです。詳細な情報が多いため、信頼性も高く評価されます。
• WeChatモーメンツ（微信朋友圈）：
  • 行動: 親しい友人や家族、職場関係者など、限られた範囲のつながりの中で、日本での日常や特別な体験の写真、短い動画、メッセージを投稿します。
  • 心理: 「身近な人に、自分の旅の楽しさを共有したい」「近況を伝えたい」といった、親しい人とのコミュニケーションが主目的です。
  • 影響: 友人・知人からの「いいね！」やコメントを通じて、直接的な会話や情報交換が生まれます。ここでの口コミは、信頼できる人からの情報として、次の旅行の強い後押しになります。
• Weibo（微博）：
  • 行動: 公開アカウントで日本旅行に関する話題を投稿したり、特定の日本のブランドや観光地の公式アカウントをフォローしたりします。
  • 心理: 最新情報への関心や、より広い範囲での情報共有を求める場合に利用します。
  • 影響: トレンドの拡散や、大規模なキャンペーンへの参加を通じて、より多くの人に情報が届きます。

2. 次の訪日旅行や購買行動に繋がる「旅アト」の情報収集

一度日本を訪れたことで、彼らの「日本熱」はさらに高まります。次の訪日旅行や、日本製品の購入に向けて、帰国後も継続的に情報収集を行います。

• オンラインショップ・越境ECの利用：
  • 行動: 日本滞在中に気に入った商品や、買いそびれた商品を、天猫国際（Tmall Global）や京東全球購（JD Worldwide）などの越境ECサイトで探して購入します。日本ブランドの公式オンラインストアを訪れることもあります。
  • 心理: 「日本製品の品質はやっぱり良い」「あの商品をもう一度買いたい」「日本で買えなかったけど、どうしても手に入れたい」といった、日本製品への高い信頼と購買意欲が行動を促します。
• 日本の情報アカウントの継続フォロー：
  • 行動: 訪日中に見つけた日本の観光地の公式WeChatアカウント、日本の企業・ブランドのDouyinやXiaohongshuアカウントなどを帰国後も継続してフォローし、最新情報をチェックします。
  • 心理: 「次の旅行のヒントが欲しい」「好きなブランドの新商品情報が知りたい」「日本の文化やトレンドを常に追いたい」といった、継続的な興味と情報収集のニーズがあります。
• 旅の計画再開：
  • 行動: 前回の旅行で回りきれなかった地域や、新たに興味を持ったテーマ（温泉、スキー、アニメ聖地巡礼など）に関して、再度中国系SNSやOTAで情報収集を始めます。
  • 心理: 「次こそはあの場所に行きたい」「もっとディープな日本を体験したい」といった、リピート訪問への強い意欲が背景にあります。

3. モバイル決済の履歴とデータ活用

彼らの行動は、決済履歴という形で企業側に貴重なデータとして残ります。

• WeChat Pay / Alipayの決済履歴:
  • 行動: 帰国後も、日本での決済履歴は彼らのアプリ内に記録されています。これを見ることで、どの店舗でいくら使ったかを確認できます。
  • 影響: 企業側は、これらの決済データを分析することで、訪日中国人観光客の消費行動や嗜好を把握できます。例えば、どのような商品が人気か、どの時間帯に購入が多いかなどのインサイトを得て、次なるマーケティング戦略に活かせます。

まとめ：旅アト行動こそが「次の集客」への鍵

中国人観光客の「旅アト」の行動は、単なる思い出作りではありません。

それは、彼らが旅の感動を他者と共有し、新たな訪日旅行者を喚起する重要なマーケティングチャネルであり、また彼ら自身の次の購買行動や再訪日へと繋がるプロセスそのものです。

インバウンド戦略においては、彼らが日本滞在中に素晴らしい体験を提供することはもちろん、帰国後に彼らが日本の魅力を発信しやすい環境を整え、その発信を次の集客に活かすことが極めて重要です。

そのためには、WeChat、Douyin、Xiaohongshuといった主要な中国SNSでの情報発信や、UGCの生成を促す仕組みづくりが不可欠となるでしょう。彼らの「旅アト」の熱量を、ぜひ貴社のビジネスに繋げていきましょう。