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Jul. 10, 2025

著作権譲渡契約書 翻訳:クリエイティブな成果を守るグローバル戦略の要

 

今日のデジタル時代において、企業は日々、多様な著作物(Copyrighted Works)を創作し、活用しています。ソフトウェア、ウェブサイトのコンテンツ、デザイン、マーケティング資料、映像、音楽など、これらのクリエイティブな成果物は企業のブランド価値を高め、競争優位性を築く上で不可欠な資産です。これらの著作物を外部のクリエイターや開発者に委託して制作してもらう際、または他社から既存の著作物を取得する際に、著作権譲渡契約書(Copyright Assignment Agreement / Assignment of Copyrights)は、その権利を確実に自社に帰属させるための極めて重要な法的文書となります。

この契約書は、著作物の種類、譲渡される権利の範囲、対価、秘密保持、保証、紛争解決など、多岐にわたる重要な事項を詳細に定めます。

その正確な翻訳は、企業がクリエイティブな成果物を安心して活用し、法的リスクを回避し、円滑な事業展開を進めるために不可欠です。翻訳のミスや内容の理解不足は、予期せぬ著作権侵害、高額な賠償責任、企業の信用失墜、そして重要なプロジェクトの遅延へと発展するリスクをはらんでいます。

特に、国ごとに著作権法の解釈、権利の範囲、登録制度、そして著作者人格権の扱いは大きく異なります。単に言葉を置き換えるだけでなく、それぞれの法制度や文化、商慣習に応じた法的・商業的なニュアンスを踏まえた上で契約内容を理解し、翻訳することが不可欠です。

本記事では、これまでの経験に基づき、著作権譲渡契約書翻訳における重要なポイントと、貴社の各部門がどのように翻訳された契約書を活用し、関与していくべきかを具体的なケーススタディを交えて解説します。

貴社のグローバル戦略において、著作権譲渡契約の適切な理解と運用を通じて、知的財産権の保護とクリエイティブな事業展開の実現を図るために、ぜひ本記事をお役立てください。

 

著作権譲渡契約書とは何か?その目的と国際取引における重要性

著作権譲渡契約書(Copyright Assignment Agreement / Assignment of Copyrights)は、著作権者(著作者)が有する著作権を、第三者(企業など)に完全に移転(譲渡)することを合意する法的文書です。これは、著作物の利用許諾(ライセンス)とは異なり、著作権そのものの所有権が移転する点で決定的な違いがあります。


国際的な著作権譲渡において、この契約書は以下のような多岐にわたる場面で利用されます。

  • ソフトウェア開発・コンテンツ制作のアウトソーシング: 海外のプログラマーにソフトウェア開発を委託したり、デザイナーにロゴやウェブサイトを制作してもらったり、ライターに記事コンテンツを執筆してもらったりする際に、その成果物の著作権を企業側に移転させるため。

  • M&A・事業買収: 他社の事業を買収する際、その事業に関連する既存のソフトウェア、データベース、デザイン、マーケティング資料などの著作権を確実に取得するため。

  • 映像・音楽・出版物の取得: 海外のクリエイターやプロダクションから、映画、音楽、電子書籍などの著作権を取得し、自社の事業で利用・展開するため。

  • 研究開発の成果: 共同研究開発や外部委託研究において生み出された技術文書、データ、報告書などの著作権を企業に帰属させるため。

この契約書は、以下の非常に多岐にわたる詳細な条項を含みます。

  • 著作物の特定(Identification of Works): 譲渡の対象となる著作物を具体的に特定します。種類(プログラム、文章、画像など)、タイトル、制作年月日、制作者など。

  • 譲渡の範囲(Scope of Assignment): 著作権のどの支分権(複製権、公衆送信権、翻案権など)が譲渡されるのか、利用目的、利用地域(全世界、特定地域など)、利用期間(永続的、限定的など)を明確に定めます。通常は全ての権利を包括的に譲渡する形がとられます。

  • 対価(Consideration): 著作権譲渡の対価として支払われる金額、支払い方法、支払い時期。

  • 著作者人格権(Moral Rights)の取り扱い: 著作者が持つ氏名表示権、同一性保持権、公表権などの人格的な権利について、各国法と照らし合わせてその行使の可否や、不行使の合意について規定します。

  • 表明保証(Representations and Warranties): 譲渡人が当該著作権を合法的に保有しており、第三者の権利を侵害しないこと、当該著作物に瑕疵がないことなどを表明し保証する条項。

  • 秘密保持義務(Confidentiality): 契約内容や、著作物に関する未公開情報などの秘密保持に関する規定。

  • 損害賠償(Indemnification): 著作権侵害や契約違反が発生した場合の責任分担、賠償責任の範囲。

  • 準拠法と紛争解決(Governing Law and Dispute Resolution): 契約に適用される法律、紛争が発生した場合の解決方法(裁判、仲裁など)。

国際的な著作権譲渡において著作権譲渡契約書が特に重要なのは、以下の理由からです。

  • 「職務著作」概念の相違: 日本や米国には「職務著作(Work for Hire)」の概念がありますが、その適用範囲や要件は国によって異なります。この概念が適用されない場合、従業員や外部のクリエイターが作成した著作物の著作権は、原則として創作者自身に帰属するため、明示的な譲渡契約がなければ企業は自由にその著作物を利用できません。

  • 著作者人格権の法的扱いの相違: 日本では著作者人格権は譲渡できませんが、米国など一部の国では、「著作権譲渡によって人格権の行使が制限される」旨を契約で合意することが可能です。この違いを理解せずに翻訳すると、意図しない権利制限が生じたり、逆に権利を十分に確保できなかったりするリスクがあります。

  • 登録制度の有無と影響: 著作権の登録は義務ではありませんが、米国など一部の国では、登録することで権利侵害時の損害賠償請求額が増額されたり、対抗要件となったりする場合があります。契約書で登録義務の有無や費用負担を定めることもあります。

  • 複数国での権利保護: 著作権は属地主義が原則であり、各国の法律に基づいて保護されます。そのため、譲渡された権利が対象となる国々で適切に保護されるためには、国際条約(ベルヌ条約、WIPO著作権条約など)を踏まえつつ、契約書が各国法を考慮した表現になっているかを確認する必要があります。

  • 紛争解決の複雑さ: 国際的な著作権紛争は、複数の国の法律が絡み、解決に時間と費用がかかる傾向にあります。準拠法や紛争解決手段を明確にしておくことで、リスクを低減できます。

英文著作権譲渡契約書の特徴と和文契約書との違い

国際的な著作権譲渡取引では、多くの場合、英文で著作権譲渡契約書が作成されます。その特徴は、日本の和文契約書とは異なる点がいくつかあります。

  • "Work for Hire" Doctrine(職務著作の原則)の明記(米国法の場合):

    • 米国著作権法には「Work for Hire(職務著作)」の概念があり、特定の条件を満たせば、雇用関係における従業員による創作物や、特定の種類の依頼著作物(例:共同著作物の寄与部分、翻訳、補足物など)の著作権は、創作の時点で雇用主または依頼者に帰属します。英文契約書では、この原則が適用される旨を明確に記載し、または適用されない場合でも譲渡される旨を明確に規定します。日本の職務著作の要件とは異なるため、翻訳時は特に注意が必要です。

  • Comprehensive Assignment of All Rights(全ての権利の包括的な譲渡):

    • 英文著作権譲渡契約書では、「著作権法上存在する、または将来存在する可能性のある全ての権利、利益、権限を、現在および将来にわたって、全ての媒体(既知であるか否かを問わず)、全ての形式、全ての地域において、排他的かつ永続的に譲渡する」といった、極めて広範で包括的な譲渡条項が用いられることが一般的です。これは、将来の技術革新や新たな利用形態にも対応できるよう、権利を最大限に確保する意図があります。

  • Waiver of Moral Rights(著作者人格権の放棄/不行使の合意):

    • 多くの国、特に大陸法系の国(日本、ドイツ、フランスなど)では、著作者人格権(氏名表示権、同一性保持権など)は譲渡できないとされています。しかし、英米法系の国(米国、英国など)では、契約により著作者人格権の行使を「放棄(Waiver)」したり、「不行使(Non-Assertion)」に合意したりすることが可能です。英文契約書では、これらの表現が用いられ、譲渡された著作物の二次利用や改変を容易にするために、著作者人格権の制限が試みられることがあります。翻訳においては、この条項が各国法においてどの程度有効かを確認し、適切な表現を用いる必要があります。

  • Representations and Warranties Regarding Originality and Non-Infringement(独創性と非侵害に関する表明保証):

    • 譲渡人(クリエイターなど)が、譲渡する著作物が完全にオリジナルであり、第三者の著作権、商標権、パブリシティ権などの権利を一切侵害していないことを明確に表明し、保証する条項が重視されます。違反した場合の補償責任(Indemnification)も詳細に規定されます。

  • No Further Compensation/Royalties(追加報酬/ロイヤリティの排除):

    • 著作権の譲渡対価として一括で支払いが行われ、その後の著作物の利用に対して追加の報酬やロイヤリティが発生しない旨が明確に規定されることがあります。

  • Execution and Recordation(署名と登録):

    • 契約書の署名に関する正式な手続きや、必要に応じて著作権局への登録に関する規定(登録義務、登録費用負担など)が盛り込まれることがあります。米国では著作権の登録は権利行使の前提となる場合があるため、重要ですし、当社はこれを強く認識しています。

日本の和文著作権譲渡契約書に比べ、英文契約書は、"Work for Hire" の概念、全ての権利の包括的な譲渡、著作者人格権の制限(放棄/不行使)、独創性と非侵害に関する厳格な表明保証、そして将来的な追加報酬の排除に関して、より詳細かつ厳密な記述が求められる傾向が強いです。翻訳においては、これらの法的・商業的・文化的なニュアンスを正確に反映した表現を用いることが不可欠です。

 

著作権譲渡契約書翻訳における重要ポイント

著作権譲渡契約書の翻訳は、貴社のクリエイティブな成果物の保護、国際的な知的財産戦略、リスク管理に直接影響するため、極めて高い精度と専門性、そして法務、事業部門、クリエイティブ部門など多岐にわたる視点が求められます。以下のポイントを押さえることが、成功への鍵となります。

  1. 譲渡される「権利の範囲」と「期間・地域」の明確な翻訳:

    • 著作権のどの支分権(複製権、公衆送信権、翻案権、二次的著作物の利用権など)が譲渡されるのかを明確に翻訳することが不可欠です。また、その権利が利用できる地域(例:全世界、特定の国)期間(例:著作権の存続期間中、特定期間)を曖昧さなく表現することが重要です。この部分の不備は、将来の著作権侵害トラブルや、意図しない権利制限につながります。

  2. 「著作者人格権」の取り扱いに関する正確な翻訳:

    • 著作者人格権(氏名表示権、同一性保持権、公表権など)は、国によって譲渡の可否や行使制限の有効性が大きく異なります。日本の著作権法では譲渡できませんが、米国など一部の国では、契約により「放棄(Waiver)」や「不行使(Non-Assertion)」を合意させることが可能です。翻訳においては、この違いを正確に理解し、当該国の法制度と照らし合わせて適切な表現を用いる必要があります。単なる直訳では、意図した権利の確保ができない可能性がありますし、当社はこれを強く認識しています。

  3. 「職務著作(Work for Hire)」概念の有無と翻訳:

    • 米国法を準拠法とする場合、"Work for Hire"の概念が適用されるか否かで著作権の原始的帰属が異なります。この概念が適用される場合、著作権は創作の時点から依頼者に帰属しますが、その要件は厳格です。翻訳においては、この概念が適切に適用されるよう、または適用されない場合でも確実な譲渡が行われるよう、法的要件を満たした表現を用いることが不可欠です。

  4. 対価(Consideration)と支払い条件の正確な翻訳:

    • 著作権譲渡の対価として支払われる金額、支払い方法、支払い時期、通貨を正確に翻訳することが不可欠です。特に、「一括払い(Lump Sum)」か「ロイヤリティ払い(Royalty-Based)」か、またはその組み合わせか、追加の報酬が発生しない旨(No Further Compensation)などを明確に表現すべきです。

  5. 表明保証(Representations and Warranties)の厳格な翻訳:

    • 譲渡人が当該著作権を合法的に保有しており、第三者の権利を侵害していないこと、当該著作物に瑕疵がないことなどを表明し保証する条項は、将来の法的紛争リスクを回避する上で極めて重要です。翻訳においては、この保証の範囲と、違反した場合の損害賠償義務などを厳格に表現すべきです。

  6. 秘密保持義務(Confidentiality)の明確な翻訳:

    • 著作物の制作過程や内容、契約条件など、開示される機密情報の範囲、秘密保持義務の期間、契約終了後の効力、違反時の責任などを明確に翻訳すべきです。特に、未公開のクリエイティブなアイデアや技術情報が関わる場合、この条項は極めて重要ですし、当社はこれを強く認識しています。

  7. 準拠法(Governing Law)と紛争解決(Dispute Resolution)の正確な指定:

    • 契約に適用される法律、そして紛争が発生した場合の解決方法(裁判、国際仲裁、調停など)、裁判管轄、仲裁地の選定、仲裁機関、仲裁規則、仲裁人の数などを正確に翻訳することが不可欠です。著作権紛争は国際的に複雑化しやすいため、自社にとって有利な準拠法や紛争解決地を指定することが戦略上重要であり、その内容を正確に把握すべきです。

    • 当社は、このような複雑な準拠法と紛争解決に関する条項の正確な翻訳を特に重視しています。

  8. 強固な情報セキュリティ体制:

    • 著作権譲渡契約書には、企業の知的財産に関する戦略、未公開のクリエイティブ作品の詳細、対価に関する情報など、極めて機密性の高い情報が含まれます。これらの情報が外部に漏洩した場合、企業の法的責任問題、信用失墜、損害賠償など、甚大な損害を被る可能性があります。そのため、翻訳を依頼する際には、翻訳会社が厳格な情報セキュリティポリシーを定め、技術的・物理的・人的な対策を徹底しているかを必ず確認すべきですし、当社はこれを徹底しています。

  9. AI翻訳の適切な活用と専門家による最終確認:

    • AI翻訳技術は、初稿の作成や用語の統一に役立ちますが、著作権譲渡契約書のような法的・商業的に極めて複雑な文書においては、各国の著作権法、判例、知的財産に関する慣行を完全に理解することは困難です。AIを効率化ツールとして最大限活用しつつも、著作権法務知識、知的財産に関する専門知識、および国際取引の実務経験を持つ専門の翻訳者による徹底したレビューと校正が不可欠です。人間による精査が、潜在的なリスクを最小限に抑え、安全な知的財産権の確保の基盤となります。

著作権譲渡契約書の翻訳は誰に必要なのか?ケーススタディで見る関係部門の役割

著作権譲渡契約書は、企業の知的財産戦略とクリエイティブな事業展開の鍵を握る文書であり、多岐にわたる部門や関係者がその内容を理解し、翻訳された情報に基づいて連携することが不可欠です。

 

ケーススタディ1:日本のゲーム会社が米国のフリーランスCGデザイナーにキャラクターデザインを委託

 

状況: 日本のゲーム会社A社が、新作ゲームのキャラクターデザインを米国のフリーランスCGデザイナーB氏に委託するケース。英語で著作権譲渡契約書を作成し、それを日本のA社側で日本語に翻訳する必要がある。

  • 法務部:

    • 必要性: 契約全体の法的妥当性、特に米国著作権法における「Work for Hire」の適用可否と、適用されない場合の著作権の確実な譲渡、著作者人格権の「不行使」の合意、将来のキャラクター利用における追加報酬の排除、第三者の権利侵害保証、秘密保持義務、損害賠償、準拠法(米国カリフォルニア州法など)、紛争解決条項の適切性を確認します。

    • ケース: 翻訳された契約書に記載された「B氏が創作したキャラクターデザイン(原画、3Dモデル、テクスチャを含む)の著作権が、制作と同時にA社に帰属する旨(または永続的に譲渡される旨)」、「B氏が著作者人格権を行使しない旨の合意」、「デザインが第三者の著作権を侵害していないことの表明保証」、「米国カリフォルニア州法を準拠法とし、ロサンゼルスでの国際仲裁を紛争解決手段とする条項」を和訳で確認し、知的財産権の確実な確保と法的リスクを評価します。

  • 経理部/財務部:

    • 必要性: 著作権譲渡の対価、支払い方法、支払い時期、米国への送金方法、現地での所得税の源泉徴収の要否、為替リスクなどを確認します。

    • ケース: 翻訳された契約書に記載された「キャラクターデザイン制作全体の固定報酬額と、デザイン承認時の最終払い条件」、「米国での源泉徴収(または租税条約による免除)に関する記述」、「ドル建てでの支払い条件と為替レート変動リスクに関する記述」を和訳で確認し、費用管理と税務コンプライアンスを評価します。

  • ゲーム開発部/クリエイティブ部:

    • 必要性: 委託するキャラクターデザインの具体的な仕様(コンセプト、世界観、モデルの詳細)、制作スケジュール、品質基準を理解し、ゲーム開発に支障がないかを確認します。著作権が自社に譲渡されることで、その後のゲーム内での自由な利用(グッズ化、アニメ化など)が可能となるかを理解します。

    • ケース: 翻訳された契約書に記載された「キャラクターデザインの具体的な要件(例:ポーズ数、表情バリエーション、衣装デザインの細部)」、「デザインの修正回数と承認プロセス」、「ゲーム内でのキャラクターの二次利用(例:グッズ展開、スピンオフ作品)に関する権利の明記」を和訳で確認し、業務遂行と成果物の品質確保、そして将来のビジネス展開の可能性を評価します。


 

ケーススタディ2:欧州の出版社が日本の漫画家から英語翻訳版出版権を含む著作権の利用許諾を受ける(または譲渡を受ける)

 

状況: 欧州の出版社C社が、日本の人気漫画家D氏の漫画作品を英訳して出版するため、D氏から英語翻訳版に関する著作権の利用許諾(または譲渡)を受けるケース。日本語で作成された著作権利用許諾契約書(または著作権譲渡契約書)を、欧州本社の人事・法務部門向けに英語に翻訳する必要がある。

  • 法務部:

    • 必要性: 契約全体の法的妥当性、特に日本の著作権法における「著作者人格権」の扱いの理解(譲渡不可とされている点)、翻訳権の利用許諾範囲、著作権侵害保証、損害賠償、準拠法(日本法など)、紛争解決条項の適切性を確認します。著作権利用許諾契約か譲渡契約かによって、権利の範囲が大きく異なるため、その点を明確に把握します。

    • ケース: 翻訳された契約書に記載された「英語翻訳版の出版に関する複製権・公衆送信権・翻訳権の利用許諾(または著作権の譲渡)の範囲(地域:全世界、期間:著作権存続期間中など)」、「D氏が著作者人格権を行使しない旨の合意(日本の法制における限界も理解)」、「オリジナル漫画が第三者の著作権を侵害していないことの表明保証」、「日本法を準拠法とし、東京地方裁判所を管轄とする条項」を英訳で確認し、知的財産権の確実な確保と法的リスクを評価します。

  • 経理部/財務部:

    • 必要性: ロイヤリティ計算方法、支払いサイクル、日本への送金方法、現地での所得税の源泉徴収の要否、為替リスクなどを確認します。

    • ケース: 翻訳された契約書に記載された「出版部数に応じたロイヤリティ料率と、最低保証ロイヤリティ額」、「日本での所得税(源泉徴収または租税条約による免除)に関する記述」、「日本円建てでの支払いと、支払い時期」を英訳で確認し、費用管理と税務コンプライアンスを評価します。

  • 編集部/コンテンツ部門:

    • 必要性: 著作物の具体的な内容、翻訳・編集の自由度、デザイン変更の可否、プロモーション活動における利用範囲などを理解します。

    • ケース: 翻訳された契約書に記載された「英語翻訳版のタイトル、カバーデザイン、本文の翻訳品質基準」、「漫画のコマ割りやセリフの変更に関する合意事項」、「プロモーション目的での一部コンテンツ利用(例:SNSでの公開)の可否」を英訳で確認し、クリエイティブな自由度とマーケティング戦略への影響を評価します。

よくある質問(FAQ)

著作権譲渡契約書の翻訳に関して、お客様からよくいただくご質問とその回答をまとめました。

 


 

Q1: 著作権譲渡契約書で最も注意すべき法的リスクは何ですか?

A1: 最も注意すべきは、著作権の不完全な譲渡と、意図しない権利侵害のリスクです。

  1. 1. 譲渡範囲の不明確さ: どの支分権が譲渡されるのか、利用地域、利用期間が不明確だと、後に利用範囲を巡る紛争が生じ、企業が自由に著作物を利用できなくなる可能性があります。

  2. 2. 著作者人格権の取り扱い: 特に日本のような大陸法系の国では著作者人格権は譲渡できません。契約で譲渡したと書いても無効となるため、人格権の「不行使」合意で対応する必要があります。この点を誤解した翻訳は、権利の行使を巡るトラブルにつながります。

  3. 3. 第三者の権利侵害: 譲渡される著作物が、実は第三者の著作権やその他の知的財産権を侵害していた場合、企業がその責任を負うことになり、高額な賠償請求や著作物の使用停止を求められるリスクがあります。

  4. 4. 「職務著作(Work for Hire)」概念の誤解: 米国法などでこの概念の適用要件を誤解すると、著作権が当初から企業に帰属するはずが、実はクリエイターに帰属していた、という事態が発生し、改めて譲渡を受ける必要が生じる可能性があります。

これらのリスクを回避するためには、翻訳だけでなく、現地の知的財産法に詳しい専門家(弁護士、弁理士など)との連携が不可欠ですし、当社はこれを強く認識しています。

 


 

Q2: 著作者人格権とは何ですか?著作権譲渡契約でどのように扱われますか?

A2: 著作者人格権とは、著作権者が著作物に対して持つ精神的な権利で、著作物の内容や表現を保護するものです。日本では、主に以下の3つがあります。

  1. 1. 公表権: 未公表の著作物を公表するかどうか、公表するとすればいつ、どのような方法で公表するかを決定する権利。

  2. 2. 氏名表示権: 著作物に著作者名を表示するかどうか、表示するとすれば実名か変名かを決定する権利。

  3. 3. 同一性保持権: 著作物の内容や題号を、著作者の意に反して改変されない権利。

日本の著作権法では、著作者人格権は著作者に一身専属するものであり、譲渡することはできません

しかし、多くの著作権譲渡契約書では、譲渡された著作物を自由に利用・改変するために、著作者が著作者人格権を行使しないこと(不行使の合意)を規定します。米国など一部の国では、人格権の「放棄(Waiver)」という概念が存在することもあります。 翻訳においては、この「譲渡不可」と「不行使の合意」の概念を正確に区別し、当該国の法制度に適合した表現を用いることが極めて重要です。

 


 

Q3: 著作権の登録は必要ですか?契約書にその旨を記載すべきですか?

A3: 著作権は、著作物が創作された時点で自動的に発生するため、原則として登録は必要ありません(無方式主義)。ベルヌ条約加盟国では、登録しなくても自動的に著作権が保護されます。 しかし、以下のような理由から、一部の国では登録が推奨されたり、契約書に登録に関する条項を盛り込むことがあります。

  • 米国: 米国では、著作権侵害訴訟を提起する前提として著作権局への登録が必要とされ、また、登録によって法定損害賠償や弁護士費用の請求が可能になるなど、権利行使上非常に有利になります。

  • 証拠の強化: 登録は、著作権の発生時期や権利者の証明として、権利侵害訴訟において有力な証拠となり得ます。

  • 対抗要件: 権利の移転を第三者に対抗するため、譲渡契約の登録が有効な場合もあります。

契約書には、登録義務の有無、登録費用や手続きの負担者、登録時期などを明確に規定することが推奨されます。翻訳においては、これらの登録に関する条項を正確に反映すべきです。

 


 

Q4: AI翻訳を著作権譲渡契約書の翻訳に活用する際の注意点は何ですか? A4: AI翻訳は、初稿の作成や用語の統一に非常に役立ちますが、著作権譲渡契約書のような法的拘束力と複雑な知的財産権の背景を持つ文書に単独で使用することは強く推奨されません。

  • 法的正確性: AIは各国の著作権法、判例、知的財産に関する複雑な法的概念(例:職務著作、人格権の不行使)のニュアンスを完全に理解できません。誤訳は法的リスクに直結します。

  • 専門用語の正確性: 著作権法務、知的財産権、著作物の種類(例:ソフトウェア、マルチメディアコンテンツ)に関する専門用語の正確な対応は、AIだけでは困難な場合があります。

  • 意図の正確な反映: クリエイターと企業の間の微妙な合意や、将来的な著作物の利用意図といったビジネス上のニュアンスをAIが正確に捉え、翻訳に反映できるとは限りません。

したがって、AI翻訳を効率化ツールとして活用しつつも、必ず著作権法務知識、知的財産に関する専門知識、および国際取引の実務経験を持つ専門の翻訳者による徹底したレビューと校正を行うことが不可欠です。当社は、AIと専門家の人力翻訳を組み合わせることで、高品質かつ効率的な翻訳を提供しています。

まとめ

著作権譲渡契約書の翻訳は、単なる言語の変換に留まらず、企業がグローバル市場でクリエイティブな成果物を確実に保護し、多様な知的財産を活用し、同時に各国の厳格な著作権法規制を遵守し、潜在的な法的リスクを回避するための極めて重要なプロセスです。

英文と和文の契約書が持つそれぞれの特徴を深く理解し、法務、事業、クリエイティブといった各部門が連携しながら、専門知識を持つ翻訳者の力を借りることが不可欠ですし、これまでの経験から当社はこれを強く認識しています。

特に、譲渡される「権利の範囲」と「期間・地域」の明確な翻訳、「著作者人格権」の取り扱いに関する正確な翻訳、「職務著作」概念の有無と翻訳、表明保証の厳格な翻訳、秘密保持義務、そして準拠法と紛争解決といった条項は、潜在的なリスクを最小限に抑え、クリエイターとの健全で実りある協業関係を築き、貴重な知的財産を安全に確保するための鍵となります。

当社は、このような複雑な著作権譲渡契約書の翻訳において、貴社の各部門のニーズを理解し、最高品質の翻訳とサポートを提供することをお約束します。貴社の海外ビジネスにおける著作権譲渡契約に関してご不明な点やご相談がありましたら、ぜひお気軽にお問い合わせください。

 

契約書の翻訳-1WIPジャパンは、東京弁護士共同組合神奈川県弁護士共同組合をはじめとする全国23の弁護士共同組合の特約店に認定されています。
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契約書翻訳に役立つリンク集

法務省大臣官房司法法制部「法令翻訳の手引き」(PDF)
日本法令外国語訳推進会議「法令用語日英標準対訳辞書」(PDF)
Publiclegal(英文契約書のテンプレートや書式を無料で提供)
日本法令外国語訳データベースシステム(法務省が開設した日本の法令の英訳サイト)
weblio 英和辞典・和英辞典
英辞郎 on the web

 

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