グローバル市場でのビジネス拡大において、海外展示会への出展は極めて有効な手法です。新しい顧客との出会い、市場のトレンド把握、競合分析、そしてブランド認知度の向上など、そのメリットは計り知れません。
しかし、日本企業が海外展示会に出展する際には、言語の壁や商習慣の違いに加え、コストという大きなハードルがあります。また、英語だけでなく、多言語での支援も勧められます。
本記事では、海外展示会の概要、公社の出展支援例、2025~2026年注目の展示会、また、出展に必要な業務フローを網羅的にご紹介します。貴社の海外ビジネスを成功に導く足がかりとしてお役立てください。
海外展示会の概要: なぜ今、海外展示会への出展が重要なのか?
海外展示会はビジネスチャンスを生み出す場ですが、現在は「リアル」「バーチャル」の双方で開催されており、可能性は時と場所を超えて大きく広がりました。海外展示会の具体的なメリットを、リアルとバーチャルの両側面から5つのポイントでご紹介します。
- 新規顧客との出会い
リアル: 熱量の高いバイヤーや見込み客へ直接アプローチが可能です。
バーチャル: 地理的な制約なく世界中のバイヤーが参加するため、これまで接点のなかった国や地域の顧客とも繋がるチャンスが生まれます。
- 市場・競合分析
リアル: 現地の市場の空気感、顧客の生の声、そして競合他社の最新動向を五感で感じ取れます。
バーチャル: 来場者のアクセスデータや資料ダウンロード履歴といったデジタル足跡を分析でき、客観的なデータに基づいた市場ニーズの把握が可能です。
- ブランド認知度の向上
リアル: 自社の存在感を効果的に示し、国際的な信頼性を獲得する絶好の機会です。
バーチャル: 質の高いデジタルコンテンツを配信することで、先進的な企業イメージを構築し、ブランド価値を高める手段となります。
- 関係構築
リアル: 現地の代理店、サプライヤー、メディアといった、事業拡大に不可欠なパートナーと直接関係を築くことができます。
バーチャル: チャットやオンライン会議機能を活用して、興味を持った相手とスピーディーな関係構築が期待できます。
- 製品・サービスへのフィードバック
リアル: 見込み客から直接フィードバックを得ることで、製品改善や市場ニーズの発見に繋がります。バーチャル: オンラインのアンケート機能やQ&Aを通じて、多くの参加者から定量・定性両面のフィードバックを効率的に収集・分析し、製品開発に活かすことができます。
しかし、これらのメリットを享受するためには、相応のコストがかかるのも事実です。その負担を軽減するための強力な味方が、公的な支援制度です。
東京都中小企業振興公社の制度: 出展支援とは?
海外展示会への出展を検討する際に、まず知っておきたいのが、企業の挑戦を後押しする支援制度です。その代表的なものの一つが、東京都中小企業振興公社(Tokyo SME)が提供する助成金事業などの支援制度ですが、例として以下があります。※詳細は公式サイトでご確認ください
シニア・福祉・アクセシビリティ関連製品等の販路開拓助成事業
※令和7年度下半期の申し込みは11月スタート
高齢者や障害者の方々の生活の質を向上させる製品やサービスをお持ちの企業が対象となります。福祉・医療分野の「REHACARE(ドイツ)」への出展などは、この事業の活用が期待できます。
<支援内容の概要>
- 助成対象商品: 助成事業者自らが企画・製造し、自社製品として単独で販売する権利を有しており、①「アクティブシニア」関連製品・サービス ②「福祉・アクセシビリティ」関連製品・サービス ③「パラスポーツ」関連製品・サービスの分野に該当する自社の製品・技術・サービスであること。
- 助成率: 助成対象経費の 2/3 以内
- 助成上限額: 150万円
- 助成対象経費: 展示会等参加費、EC出店初期登録料、Webサイト制作・改修費、販売促進費
(参照: https://www.tokyo-kosha.or.jp/support/josei/jigyo/senior-hanro/index.html)
ゼロエミッション推進に向けた事業転換支援事業(販路拡大助成金)
※令和7年度は8月に申し込み終了
ZEV(電気自動車等)や再生可能エネルギー関連など、ゼロエミッションに貢献する製品・技術をお持ちの企業が対象です。例えば、工業分野の「POWERGEN International」のような展示会への出展に活用できる可能性があります。
<支援内容の概要>
- 助成対象者: 東京都内の本店又は支店で実質的な事業活動を引き続き1年以上行っている中小企業者
- 助成率: 助成対象経費の 2/3 以内
- 助成上限額: 150万円
- 助成対象経費: 展示会等参加費、EC出店初期登録料、Webサイト制作・改修費、販売促進費
(参照: https://www.tokyo-kosha.or.jp/support/josei/jigyo/zeroemi_hanro.html)
展示会等参加費は国内・海外・オンラインのいずれも可なっています。
では次に、具体的にどのような展示会がターゲットになるのか見ていきましょう。
海外オンライン展示会出展支援
欧州最大級BtoBオンラインプラットフォーム「Virtual EXPO」に関わる出展支援となり、航空/農業機器・畜産/建築・デザイン/産業/医療・技術/造船・マリン分野を対象にしています。
<支援内容の概要>
- 対象: 東京都中小企業振興公社の海外販路開拓支援を受けている企業であること、また、支援満了日が令和7年9月1日以降であること
- 募集社数: 20社
- 出展費用: 無料
- 出展期間: 1年
(参照: https://www.tokyo-kosha.or.jp/TTC/matching/exhibition/virtual_exhibition.html)
注目の分野別・海外展示会
現在注目される海外展示会を分野別でご説明します。東京都中小企業振興公社が支援するものについても、続けてご紹介します。※詳細は公式サイトでご確認ください
医療・福祉分野
- Abilities Expo
アメリカ最大規模の障害者とその家族、介護者のための製品・サービスに特化した展示会。(アメリカ) - Cares Expo Taipei
台湾最大規模のケア産業専門展。2025年9月25日~27日開催予定。(台湾) - MEDICA
世界最大の医療機器展示会。2025年は11月17日~20日開催予定。2026年の登録受付中。(ドイツ)
また、開催は日本となりますが、国際福祉機器展 (H.C.R.)も有名です。アジア最大規模であり、ハンドメイドの自助具から最先端の介護ロボットまで、福祉機器が世界中から集まります。
<医療・福祉分野/東京都中小企業振興公社が支援する展示会>
- WHX Dubai
中東最大規模の医療機器・健康関連製品の国際見本市。2026年2月9日~12日開催予定。(UAE) - REHACARE
ドイツ最大規模のリハビリ、介護、福祉関連機器の展示会。2025年9月17日~20日開催予定。(ドイツ) - Virtual EXPO
欧州最大級のBtoBオンラインプラットフォーム(オンライン)
IT・工業分野
- COMPUTEX TAIPEI
アジア最大級のPC周辺機器、半導体を中心としたIT見本市。例年6月上旬に開催。(台湾) - FEIMEC
ラテンアメリカ最大級の工作機械・産業機器の展示会。2026年5月5日から5月9日開催予定。(ブラジル) - CES
世界最大級のテクノロジー見本市。2026年1月6日~9日開催予定。2026年の登録開始は2025年秋。(アメリカ)
<IT・工業分野/東京都中小企業振興公社が支援する展示会>
- METALEX Thailand
ASEAN最大の工業系展示会。2025年11月19日~22日開催予定。(タイ) - Manufacturing Indonesia
インドネシア最大の工業系展示会。2025年12月3日~6日開催予定。(インドネシア) - POWERGEN International
発電関連のネットワーキングおよびビジネスハブ (アメリカ) - Virtual EXPO
欧州最大級BtoBオンラインプラットフォーム(オンライン)
食品・飲料分野
- Gulfood (ガルフード)
中東・アフリカ地域で最大規模の食品・飲料展示会であり、ハラル食品市場へのゲートウェイ。2026年01月26日~1月30日開催予定。(UAE) - THAIFEX - Anuga Asia
東南アジア最大級の食品・飲料総合見本市。2026年5月26~30日開催予定。(タイ)
また、開催は日本となりますが、FOODEX JAPANも有名です。アジア最大規模の食品・飲料展となります。
(参照: https://www.tokyo-kosha.or.jp/TTC/matching/exhibition/2025_exhibitions.html)
(参照:https://www.jetro.go.jp/j-messe/industry/hobby/010/)
(参照: https://www.jetro.go.jp/j-messe/)
海外展示会出展に必要な業務フロー(準備~開催後)
- 海外展示会出展には、具体的にどのような業務を進めていく必要があるのでしょうか。一般的な業務フローをフェーズごとにご紹介します。
フェーズ1:企画・戦略立案
- 出展目的とKGI/KPIの明確化
- ターゲット市場・展示会の選定(JETROのJ-messeなどの展示会検索データベースも活用)
- 予算策定(助成金の活用検討を含む)
- 出展体制の確立とスケジュール策定
フェーズ2:出展準備・実施
- 主催者への出展申し込み・契約
- ブースのデザイン・施工手配
- 展示品の選定・運搬手配
- 多言語販促ツールの準備(カタログ、WebサイトのLP、動画など)
- 出展スタッフの準備と通訳手配
- 渡航・宿泊手配
フェーズ3:開催中業務
- ブース運営と商談対応
- 競合・市場の情報収集
フェーズ4:開催後業務
- リード情報の整理と共有
- お礼メール・フォローアップ
- 費用対効果(ROI)の測定と改善
- 展示品の撤収・返送手配
当社のサポート: 分野別の販促資料、多言語での翻訳支援サービスはもちろん、デザインデータを直接編集する多言語DTPサービスで高品質な販促ツールをワンストップで作成可能です。展示会経験が豊富な専門分野の通訳者や、ヒアリング代行、海外リサーチサービスなど、円滑なコミュニケーションや見込み客獲得を強力にサポートします。ぜひ一度、ご相談ください。