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Jul. 22, 2025

【2024年4月法改正対応】投資家なら知っておきたい!『決算書』『決算報告書』『決算短信』の本当の違い

 

業の「成績表」である決算。株式投資家やビジネスパーソンにとって、企業の状況を把握するために決算情報は欠かせません。しかし、「決算書」「決算報告書」「決算短信」など、似たような言葉が多くて混乱してしまうことはありませんか?

実は、これらの書類にはそれぞれ異なる役割と目的があります。特に2024年4月の法改正により、企業の情報開示の仕組みが大きく変わりました。

この記事では、多くの情報が飛び交う中で、それぞれの書類が持つ意味と役割を明確に整理し、読者の皆さんが企業の情報を正確に読み解く力を深めるお手伝いをします。最新の法改正も踏まえ、投資判断に役立つ情報をお届けします。

 

1. まずは基本から!「決算書」とは?その正体と構成

「決算書」という言葉は、実は法律上の正式名称ではありません。これは、企業が会計期間(通常1年間)の経営成績や財政状態をまとめた書類の通称として広く使われています。

法律によって、その呼び方や構成が少し異なります。

  • 財務諸表(金融商品取引法): 上場企業などが投資家向けに開示する際に用いられる、以下の書類の総称です。

    • 貸借対照表(B/S): 決算日時点の会社の財政状態(資産、負債、純資産)を示します。

    • 損益計算書(P/L): 一会計期間の経営成績(収益、費用、利益)を示します。

    • キャッシュフロー計算書(C/S): 一会計期間の現金の流れ(営業活動、投資活動、財務活動)を示します。

    • 株主資本等変動計算書: 純資産の変動状況を示します。

    • 個別注記表: 上記の財務諸表に関する補足説明や詳細を記載します。

  • 計算書類(会社法): 株主総会に提出し、承認を得る際に用いられる書類の総称です。

    • 貸借対照表

    • 損益計算書

    • 株主資本等変動計算書

    • 個別注記表

    • その他、附属明細書などが含まれることもあります。(キャッシュフロー計算書は、会社法上は大会社のみ作成義務があります。)

これらの主要な書類群をまとめて「決算書」と呼ぶのが一般的です。つまり、「決算書」とは、企業の財政状況や経営成績を数値で示す、最も基本的な書類の集まりなのです。

 

2. 「決算報告書」とは?広範囲をカバーする情報のパッケージ

では、「決算報告書」はどうでしょうか?これも厳密な法律用語というよりは、「決算の内容を外部や内部に報告するための書類全体」を指す広い意味で使われることが多いです。

この「決算報告書」には、先ほど説明した「決算書(財務諸表や計算書類)」そのものが含まれるだけでなく、それに付随する様々な情報が含まれることがあります。

具体的には、以下のような内容が「決算報告書」としてパッケージされる場合があります。

  • 決算書(財務諸表・計算書類)本体

  • 決算短信: 後述しますが、決算発表を速報する資料です。

  • 有価証券報告書: 金融商品取引法に基づき提出される、最も詳細な企業情報開示書類。決算書(財務諸表)に加え、会社の概況、事業の状況、リスク情報、役員情報など多岐にわたります。

  • 事業報告書: 会社法に基づき、株主総会に提出される、事業の状況に関する報告書。

  • 監査報告書: 外部監査人による監査意見が記載された報告書。

  • 任意で作成される補足資料: 経営者からのメッセージ、事業概況の説明、財務状況の分析、今後の戦略など、株主や投資家向けに理解を深めてもらうための資料です。

つまり、「決算書」が「数字の本体」だとすれば、「決算報告書」はその数字を補足する様々な解説や関連情報を含んだ、より包括的な情報パッケージだと言えるでしょう。


3. 「決算短信」と「四半期決算報告書」の違い、そして2024年4月以降の激変!

ここが最も複雑で、かつ2024年4月以降に大きく変わった部分です。以前は「決算短信」と「四半期決算報告書」がそれぞれ異なる役割を担っていました。

 

3-1. 決算短信:速報性と簡潔さが命!

  • 目的: 投資家への決算情報の「速報」。投資家がタイムリーに投資判断を行えるよう、決算発表後、原則として決算期末後45日以内という短い期間で開示されます。

  • 根拠: 証券取引所(主に東京証券取引所)の適時開示規則

  • 内容: 連結・個別経営成績、財政状態、キャッシュ・フローのサマリー情報、配当や業績予想など。情報量は簡潔にまとめられています。

  • 監査: 正式な会計監査の対象外(レビューは受ける場合あり)。そのため、後日、有価証券報告書などで修正される可能性もあります。

3-2. 四半期決算報告書(【廃止】旧制度):詳細さと法的義務

  • 目的: 企業情報の「定期的な詳細開示」。投資家保護のため、より詳細な情報を定期的に開示することを目的としていました。

  • 根拠: 金融商品取引法

  • 内容: 企業の概況、事業の状況、四半期財務諸表(B/S、P/L、C/Sなど)、詳細な注記情報や定性的な情報など。決算短信よりも詳細です。

  • 監査: 公認会計士によるレビューの対象。決算短信よりも厳格なチェックを受けてから提出されていました。

  • 提出先: 財務局(金融庁)。

3-3. 2024年4月以降の変更点:四半期開示の簡素化

2024年4月の金融商品取引法改正により、四半期報告書の提出義務が廃止され、半期報告書に集約されました。

この改正の背景には、企業側の開示負担を軽減しつつ、投資家が重視する情報の「適時開示」を促進するという狙いがあります。

これにより、上場企業の四半期ごとの業績開示は、証券取引所のルールに基づく「決算短信」が中心となります。以前は「速報」の決算短信と「詳細な法的文書」の四半期報告書が併存していましたが、今後はより迅速な「決算短信」が四半期開示のメインの役割を果たすことになったわけです。

【ポイント】 投資家は、簡潔ながらも最新の情報をいち早く手に入れられる「決算短信」を四半期ごとの情報源として活用し、より詳細な分析が必要な場合は、半期ごとや通期で提出される「有価証券報告書」を参照するという流れになります。

 

4. 決算情報を見極める!投資家が重視すべきポイント

様々な決算関連書類がある中で、投資家として何を重視して見ればいいのでしょうか?

  1. 1. まずは「連結」を見る!: 現代の多くの企業はグループ経営をしているため、親会社単独の「個別財務諸表」だけでなく、グループ全体の実態を表す「連結財務諸表」を必ず確認しましょう。

  2. 2. 最新情報は「決算短信」で速報チェック!: 四半期ごとのタイムリーな業績動向は、まず「決算短信」で把握します。

  3. 3. 詳細な分析には「有価証券報告書」を深掘り!: 企業の事業リスク、経営戦略、役員情報、詳細な財務データなど、より深く企業を理解するためには「有価証券報告書」が不可欠です。

  4. 4. 監査意見を確認!: 外部監査人による監査報告書に、不適正意見や限定付意見など、懸念される意見がないかを確認しましょう。

  5. 5. 前年同期・通期との比較!: 単発の数字だけでなく、過去数年間の推移を見ることで、成長性や収益性の変化を分析しましょう。



5. グローバル展開で必須!決算関連書類の多言語翻訳における注意点

グローバルな投資家を惹きつけ、海外市場で事業を展開する企業にとって、決算関連書類の多言語翻訳は避けて通れません。しかし、これらの極めて重要な文書の翻訳には、専門性と細心の注意が求められます。

  • 法的・会計的正確性の確保が最重要: 決算書や決算短信、有価証券報告書は、投資判断に直結し、法的責任を伴う文書です。数字の誤訳はもちろん、会計用語や法的表現のわずかなニュアンスの違いも許されません。翻訳は、その言語の会計・法務に精通した専門家が行う必要があります。

  • 会計基準と開示規制への理解: 日本基準、US GAAP、IFRSでは、財務諸表の表示方法や用語が異なります。翻訳者は、ターゲット国の会計基準や情報開示規制を理解し、現地の慣習に沿った表現や標準的な訳語を用いる「ローカライズ」の知識が不可欠です。

  • 用語の統一性: 企業内で使用される固有の会計用語、事業用語、役職名などは、常に一貫した訳語を用いるべきです。翻訳メモリ(TM)や用語集を積極的に活用し、複数人が翻訳に関わる場合でも統一性を保ちましょう。

  • 機密保持とセキュリティ: 決算情報は、企業の将来を左右する機密情報です。翻訳を依頼する際は、厳格な機密保持契約(NDA)の締結はもちろん、翻訳会社の情報セキュリティ体制(データ管理、アクセス制限など)を徹底的に確認しましょう。

  • 「速報性」と「詳細性」のバランス: 決算短信のように速報性が求められる文書と、有価証券報告書のように詳細な情報が求められる文書では、翻訳プロセスのスピードと深さが異なります。それぞれの文書の特性を理解した上で、翻訳パートナーと連携を図ることが重要です。

 

6. よくあるご質問(FAQ)

Q1: 決算短信の英語翻訳版は、四半期報告書の代わりになりますか?

 

A1: 2024年4月の法改正以降、金融商品取引法上の「四半期報告書」は廃止され、四半期ごとの開示は主に「決算短信」に一本化されました。そのため、四半期ごとの速報的な開示という点では、決算短信の英語翻訳版がその役割を担います。 ただし、決算短信は証券取引所の規則に基づく速報であり、金融商品取引法に基づく「有価証券報告書」や今後導入される「半期報告書」とは法的性質や詳細度が異なります。投資家は、より詳細な法的情報が必要な場合は、これらの正式な報告書を参照します。

 


 

Q2: 決算書と決算報告書は、海外ではどのように訳し分けられますか?

 

A2: 英語圏では、以下のように訳し分けられることが多いです。

  • 決算書(財務諸表・計算書類): "Financial Statements" が最も一般的です。

    • 貸借対照表: "Balance Sheet" (B/S)

    • 損益計算書: "Income Statement" (P/L) または "Statement of Profit or Loss"

    • キャッシュフロー計算書: "Cash Flow Statement" (C/S)

  • 決算報告書(広義の報告書全体): 文脈によりますが、"Financial Report," "Annual Report" (年次報告書), "Earnings Report" (業績報告) などが使われます。特に詳細な年次報告書は "Annual Report" と呼ばれ、財務諸表以外に経営者のメッセージや事業概況も含まれます。


 

Q3: 決算関連書類の翻訳でAI(機械翻訳)を使うのはアリですか?

 

A3: 決算関連書類は、極めて専門性が高く、誤訳が企業の信頼性や法的責任に直結するため、AI(機械翻訳)を単独で使用することは推奨されません。

  • 補助ツールとして: AI翻訳は、初稿の作成、用語抽出、または社内での速やかな内容把握といった補助的な目的には有効です。

  • プロのポストエディットが必須: AI翻訳の出力は、必ず財務会計の専門知識と翻訳スキルを兼ね備えたプロの翻訳者による綿密なチェックと修正(ポストエディット)を受ける必要があります。特に、数値、会計用語、法的表現の正確性は、人間による検証が不可欠です。


 

Q4: 決算関連書類の翻訳コストを抑える方法はありますか?

 

A4: 翻訳コストを抑えつつ品質を確保するためには、いくつかの方法があります。

  • 翻訳メモリ(TM)と用語集の活用: 過去の翻訳資産をデータベース化し、用語集を整備することで、再翻訳のコストを削減し、用語の統一性を保てます。

  • 翻訳範囲の明確化: 翻訳が必要な箇所を明確に指定し、不要な部分(社内用コメントなど)は除外することで、翻訳量を減らします。

  • 継続的なパートナーシップ: 特定の翻訳会社と長期的な関係を築くことで、互いの理解が深まり、コスト効率の良いサービスが受けられる可能性があります。

  • 納期と品質レベルの相談: 全ての文書で最高レベルの品質が必要ではない場合、納期や目的応じて品質レベルを調整し、コストを最適化することも可能です。

 

まとめ:情報開示の進化を理解し、賢い投資判断を

「決算書」「決算報告書」「決算短信」は、それぞれ異なる役割を持つ情報源です。特に2024年4月以降の法改正により、企業の情報開示の仕組みはより効率的かつ簡素化されました。

投資家やビジネスパーソンの皆さんにとって、これらの書類の特性と最新の制度を理解することは、企業の真の姿を見極め、より賢明な投資判断やビジネス上の意思決定を行う上で非常に重要です。

当社は、複雑な企業会計や金融開示に関する情報の整理、そして多言語での情報発信をサポートしています。海外投資家向けの情報開示でお困りの際は、ぜひ当社にご相談ください。

 

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