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Jul. 10, 2025

金銭消費貸借契約書 翻訳:日本の金融取引と国際融資の法的基盤

 

今日のビジネスにおいて、企業が金融機関から資金を調達したり、グループ会社間で資金を融通したりする際に、金銭消費貸借契約書(Loan Agreement / Lending Agreement)の締結は不可欠です。この契約書は、貸主(貸付人、Lender)と借主(借入人、Borrower)との間で、金銭の貸し借りに関する詳細な条件、すなわち貸付の目的、金額、期間、金利、返済方法、期限の利益喪失条項、担保・保証、そして準拠法や紛争解決など、多岐にわたる内容を定めます。

特に国際的な融資や、海外子会社との資金取引においては、その正確な翻訳が、資金の円滑な流れ、適切な財務ガバナンス、法的義務の遵守、そして将来的な紛争の防止のために不可欠です。翻訳のミスや内容の理解不足は、予期せぬ債務不履行、回収不能リスク、追加費用の発生、国際的な信用失墜、さらには高額な法的紛争へと発展するリスクをはらんでいます。

日本の金銭消費貸借契約書は、日本の民法や商法に基づき作成されますが、国際取引においては、対象国の法制度や商慣習、税制が大きく影響します。単に言葉を置き換えるだけでなく、それぞれの法制度や融資の性質に応じた法的・財務的・商業的なニュアンスを踏まえた上で契約内容を理解し、翻訳することが不可欠です。

本記事では、これまでの経験に基づき、金銭消費貸借契約書の翻訳における重要なポイントと、貴社の各部門がどのように翻訳された契約書を活用し、関与していくべきかを具体的なケーススタディを交えて解説します。

貴社の金融取引において、金銭消費貸借契約の適切な理解と運用を通じて、資金調達の成功を確実に導き、財務リスクを効果的に管理するために、ぜひ本記事をお役立てください。

 

金銭消費貸借契約書とは何か?その目的と国際金融における重要性

金銭消費貸借契約書(Loan Agreement / Lending Agreement)は、民法上の「消費貸借」に基づき、貸主が金銭を借主に交付し、借主がその金銭を消費した後、同種・同量(同額)の金銭を返還することを約束する契約を文書化したものです。多くの場合、金利が発生し、担保や保証が設定されます。

国際金融において、金銭消費貸借契約は以下のような多岐にわたる取引で利用されます。

  • クロスボーダー融資: 日本の金融機関が海外企業に融資を行う、または海外の金融機関が日本企業に融資を行う場合。

  • 海外子会社への資金貸付: 親会社から海外子会社への事業資金や設備資金の貸付。

  • シンジケートローン: 複数の金融機関が協調して行う大型融資。

  • プロジェクトファイナンス: 特定のプロジェクトに対する資金調達。

この契約書は、貸付契約書と同様に、非常に多岐にわたる詳細な条項を含みます。

  • 貸付の目的(Purpose of Loan):資金の具体的な使途の特定。

  • 貸付金額と通貨(Loan Amount and Currency):貸し借りされる金額と使用される通貨。国際融資では複数の通貨が関わることもあります。

  • 金利(Interest Rate):固定金利か変動金利か、基準金利(例:SOFR, EURIBOR, TIBORなど)とスプレッド、金利計算方法。

  • 返済方法とスケジュール(Repayment Method and Schedule):元利均等返済、元金一括返済、分割返済など、返済の頻度と期日。

  • 手数料(Fees):貸付実行手数料、コミットメントフィーなど。

  • 担保・保証(Security / Collateral and Guarantee):不動産、動産、債権、株式など提供される担保の種類、担保設定方法、連帯保証。

  • 表明保証(Representations and Warranties):借入人の財務状況、法的地位、事業に関する事実の表明と、それらが真実かつ正確であることの保証。

  • コベナンツ(Covenants):借入人が契約期間中に遵守すべき義務や制限。

    • 財務コベナンツ(Financial Covenants): 特定の財務比率(例:D/Eレシオ、自己資本比率)の維持、借入金総額の上限など。

    • アファマティブ・コベナンツ(Affirmative Covenants): 定期的な財務報告書の提出、保険の付保、許可の維持など。

    • ネガティブ・コベナンツ(Negative Covenants): 追加担保設定の制限、M&Aの制限、配当制限、他社への融資制限など。

  • 期限の利益喪失条項(Events of Default / Acceleration Clause):借入人が契約上の義務を履行しない場合に、貸主が残債の一括返済を求めることができる条件(例:返済遅延、コベナンツ違反、他の債務の不履行(クロスデフォルト)、破産手続開始など)。

  • クロスデフォルト条項(Cross-Default Clause):借入人が他の貸付契約や債務で債務不履行となった場合に、本契約においても期限の利益が喪失される条項。

  • 源泉徴収税(Withholding Tax):金利支払いにかかる源泉徴収税の取り扱い(グロスアップ条項など)。

  • 準拠法と紛争解決(Governing Law and Dispute Resolution):契約に適用される法律、紛争が発生した場合の解決方法(裁判、国際仲裁、調停など)。

国際金融において金銭消費貸借契約書が特に重要なのは、以下の理由からです。

  • 各国の金融規制と法制度: 国境を越えた融資では、貸主、借主それぞれの国の金融規制、担保法、倒産法、外為法などが適用される可能性があり、これらの法制度の差異を契約書で適切に調整する必要があります。特に、グループ会社間融資においては、移転価格税制(Transfer Pricing Taxation)や過少資本税制(Thin Capitalization Rule)といった税務上の規制が適用される可能性があり、これらの法的・税務的側面を契約書に反映する必要があります。

  • 為替リスク: 異なる通貨での融資は、為替変動リスクを伴います。契約書で為替リスクの負担者やヘッジ方法を定めることが重要です。

  • 税務処理: 国境を越えた金利支払いには、源泉徴収税やその他の税務処理が伴うため、契約書でその責任を明確にし、グロスアップ条項などを設けることがあります。特にグループ会社間融資では、利息の損金算入の可否や源泉徴収税の扱いが、グループ全体の税負担に影響します。

  • コベナンツの重要性: 借入人の財務健全性を維持し、貸主のリスクを低減するために、財務コベナンツなどが厳しく設定される傾向があり、その違反が期限の利益喪失に直結するため、詳細な理解が不可欠です。

  • 国際的な紛争解決: 紛争が発生した場合、準拠法や裁判管轄、仲裁地を明確にしておくことが、解決の迅速性とコストに大きく影響します。

英文金銭消費貸借契約書の特徴と和文契約書との違い

国際的な融資取引では、多くの場合、英文で金銭消費貸借契約書が作成されます。その特徴は、日本の和文契約書とは異なる点がいくつかあります。

  • Detailed Purpose of Loan(融資目的の明確化):

    • 資金の使途が非常に具体的に記述されます。例えば、海外子会社の設備投資、運転資金、特定のプロジェクトファイナンスなど、融資目的を厳密に定めることで、貸主は資金の流用リスクを管理します。

  • Extensive Representations and Warranties(広範な表明保証):

    • 借入人の組織体制、事業、財務状況、訴訟の有無、法的許可の取得状況などについて、非常に広範かつ詳細な表明保証条項が設けられます。これは、貸主が融資判断を行う上での重要な情報であり、表明保証違反は期限の利益喪失事由となり得ます。

  • Detailed Covenants(詳細なコベナンツ):

    • 財務コベナンツ(Financial Covenants): D/Eレシオ、純資産額、借入金総額、自己資本比率など、特定の財務指標の維持義務が数値目標とともに厳格に規定されます。これらの違反は期限の利益喪失に直結するため、慎重な監視と対応が必要です。

    • ネガティブ・コベナンツ(Negative Covenants): 既存の借入に影響を与えるような追加担保設定の禁止、特定資産の処分制限、M&Aの制限、配当制限、他社への融資制限などが厳しく規定されます。特にグループ会社間融資では、借入人である子会社の経営の自由度を適切に制限するためのコベナンツが重要です。

  • Comprehensive Events of Default(包括的な期限の利益喪失事由):

    • 返済遅延、コベナンツ違反、表明保証違反に加え、クロスデフォルト(他の債務の不履行)、破産手続開始、法的許可の失効、重要資産の差押えなど、多岐にわたる事由が期限の利益喪失のトリガーとして規定されます。

  • Cross-Default Clause(クロスデフォルト条項):

    • 借入人が他の債務で債務不履行に陥った場合、本融資契約も自動的に(または貸主の裁量で)デフォルトとなる条項。貸主にとってのリスクヘッジの重要な手段であり、和文契約書よりも厳しく規定される傾向があります。

  • Indemnification and Governing Law for Multi-jurisdictional Issues(補償と複数法域にわたる準拠法):

    • 貸主が被る可能性のある損害に対する借入人からの補償義務が詳細に定められます。また、複数の法域が関わる国際融資では、準拠法として特定の国の法律(例:ニューヨーク州法、英国法、日本法)が指定されることが一般的です。

  • Withholding Tax and Gross-up Clauses(源泉徴収税とグロスアップ条項):

    • 金利支払いにかかる源泉徴収税が発生する場合、借入人が源泉徴収税を控除せずに支払う義務(グロスアップ条項)や、税務上の責任分担が詳細に規定されます。特にグループ会社間融資では、利息の損金算入の可否や源泉徴収税の扱いが、グループ全体の税負担に影響します。

  • Conditions Precedent(前提条件)の明確化:

    • 融資実行前に借入人が満たすべき条件(例:担保設定手続の完了、法的意見書の提出、関係当局の許可取得など)が詳細にリストアップされます。

日本の和文金銭消費貸借契約書に比べ、英文金銭消費貸借契約書は、表明保証、コベナンツ、期限の利益喪失事由、クロスデフォルト、源泉徴収税に関する規定、そして国際税務(移転価格税制など)への配慮に関して、より詳細かつ厳密な記述が求められる傾向が強いです。翻訳においては、これらの法的・財務的・税務的ニュアンスを正確に反映した表現を用いることが不可欠です。

 

金銭消費貸借契約書翻訳における重要ポイント

金銭消費貸借契約書の翻訳は、貴社のグローバルな資金調達、財務ガバナンス、法的義務の遵守に直接影響するため、極めて高い精度と専門性、そして法務・財務・経理部門など多岐にわたる視点が求められます。以下のポイントを押さえることが、成功への鍵となります。

  1. 金利(Interest Rate)、返済方法(Repayment Method)、手数料(Fees)の正確な翻訳:

    • 金利の種類(固定・変動)、基準金利とスプレッド、金利計算方法、返済期間、返済頻度、元利均等・元金一括などの返済方法、そして貸付実行手数料やコミットメントフィーなどの各種手数料を、曖昧さなく正確に翻訳することが不可欠です。誤訳は、予期せぬ利息負担や返済スケジュールの混乱、追加費用の発生につながります。

  2. コベナンツ(Covenants)の徹底的な翻訳と理解:

    • 財務コベナンツにおける具体的な財務比率の数値目標、計算方法、そしてネガティブ・コベナンツにおけるM&A制限、配当制限、担保設定制限などの具体的な制限内容を厳密に翻訳することが極めて重要です。コベナンツ違反は、期限の利益喪失に直結し、多額の債務の一括返済を求められるリスクがあるため、財務部門と法務部門が連携し、遵守可能性を詳細に評価すべきです。

  3. 期限の利益喪失条項(Events of Default)とクロスデフォルト条項(Cross-Default Clause)の慎重な翻訳:

    • 返済遅延、コベナンツ違反、表明保証違反に加え、他の貸付契約における債務不履行(クロスデフォルト)や、借入人の破産手続開始、法的許可の失効など、多岐にわたる期限の利益喪失事由を慎重に翻訳することが不可欠です。これらの条項は、融資の安定性や企業の財務健全性に直接影響するため、法務部門と連携して内容を精査し、その影響範囲を正確に把握する必要があります。

  4. 担保・保証(Security / Collateral and Guarantee)に関する条項の精緻な翻訳:

    • 提供される担保の種類(不動産、動産、債権、株式など)、担保設定方法、評価基準、設定手続き、そして保証の範囲、連帯保証人の特定などを精緻に翻訳することが極めて重要です。特に海外で担保を設定する場合、現地の担保法制に関する知識が不可欠であり、専門家との連携が重要です。

  5. 源泉徴収税(Withholding Tax)とグロスアップ条項(Gross-up Clause)の明確化:

    • 国境を越えた金利支払いにかかる源泉徴収税の有無、税率、そして借入人が源泉徴収税を控除せずに金利全額を支払う義務(グロスアップ条項)の有無と内容を正確に翻訳することが不可欠です。特にグループ会社間融資においては、移転価格税制や過少資本税制の観点から金利の妥当性が問われることがあるため、税務部門と連携し、正確な翻訳と法的・税務的評価を行うべきです。この部分の誤解は、予期せぬ税務コストや法的問題を引き起こす可能性があります。

    • 当社は、このような国際税務に関する条項の正確な翻訳を特に重視しています。

  6. 表明保証(Representations and Warranties)の正確な翻訳:

    • 借入人の財務状況、法的地位、事業、訴訟の有無、法的許可の取得状況などに関する事実の表明と保証を正確に翻訳することが不可欠です。表明保証違反も期限の利益喪失につながる可能性があるため、内容を十分に理解する必要があります。

  7. 準拠法と紛争解決(Governing Law and Dispute Resolution):

    • 契約に適用される法律、そして紛争が発生した場合の解決方法(国際仲裁、調停、裁判など)、仲裁地の選定、仲裁機関、仲裁規則、仲裁人の数、仲裁判断の拘束力などを正確に翻訳することが不可欠です。国際融資では、自社にとって有利な準拠法や紛争解決地を指定することが戦略上重要であり、その内容を正確に把握すべきです。

  8. AI翻訳の適切な活用と専門家による最終確認:
    AI翻訳技術は、初稿の作成や用語の統一に役立ちますが、金銭消費貸借契約書のような法的・財務的に極めて複雑な文書においては、法的ニュアンス、各国の金融規制、税法、業界特有の専門用語を完全に理解することは困難です。AIを効率化ツールとして最大限活用しつつも、法務知識、財務・会計に関する専門知識、および国際金融の実務経験を持つ専門の翻訳者による徹底したレビューと校正が不可欠です。人間による精査が、潜在的なリスクを最小限に抑え、安全な国際取引の基盤となります。

  9. 強固な情報セキュリティ体制:
    金銭消費貸借契約書には、貴社の財務情報、事業計画、担保資産に関する情報など、企業の信用や事業の成否に直結する極めて機密性の高い情報が含まれることが一般的です。これらの情報が外部に漏洩した場合、企業の信用失墜、資金調達への悪影響、法的な責任問題など、甚大な損害を被る可能性があります。そのため、翻訳を依頼する際には、翻訳会社が厳格な情報セキュリティポリシーを定め、技術的・物理的・人的な対策を徹底しているかを必ず確認すべきですし、当社はこれを徹底しています。

 

金銭消費貸借契約書の翻訳は誰に必要なのか?ケーススタディで見る関係部門の役割

金銭消費貸借契約書は、グローバルな資金管理と財務ガバナンスを左右するため、多岐にわたる部門や関係者がその内容を理解し、翻訳された情報に基づいて連携することが不可欠です。

 

ケーススタディ1:日本の金融機関による海外企業への融資

 

状況: 日本の大手銀行が、ASEAN地域のインフラプロジェクトを推進する現地企業に対し、シンジケートローンの一部としてドル建てで融資を行うケース。英文の金銭消費貸借契約書を締結。

  • 融資審査部/国際金融部:

    • 必要性: 融資金額、金利、返済スケジュール、借入人の財務コベナンツの数値目標、担保・保証の内容、期限の利益喪失事由などを詳細に確認します。プロジェクトのリスク評価と融資回収可能性に直結します。

    • ケース: 契約書に記載された「ドル建て融資の変動金利(SOFR基準金利+スプレッド)」、「プロジェクトのキャッシュフローに関する財務コベナンツの数値」、「プロジェクト資産への担保設定方法と現地の法的手続き」を和訳で確認し、融資リスクとコンプライアンスを評価します。過去には、コベナンツの翻訳が不正確だったため、借入人の財務状況の悪化を早期に把握できなかった事例がありました。当社は、このような財務に関する条項の正確な翻訳を特に重視しています。

  • 法務部:

    • 必要性: 契約全体の法的妥当性、融資目的の合法性、担保権設定の可否、期限の利益喪失事由、クロスデフォルト条項、準拠法(英国法またはシンガポール法)、紛争解決条項の適切性を確認します。プロジェクト所在国の担保法、倒産法、外為法への対応も求められます。

    • ケース: 契約書に記載された「プロジェクト会社のネガティブコベナンツ(追加借入の制限、資産処分の制限など)」、「シンジケートローンにおける各金融機関の責任分担」、「シンガポール国際仲裁センター(SIAC)を仲裁地とする紛争解決条項」を和訳で確認し、法的リスクと債権保全策を評価します。

  • 経理部/税務部:

    • 必要性: 金利の会計処理、海外での源泉徴収税の取り扱い、為替リスクのヘッジ状況などを確認します。

    • ケース: 契約書に記載された「金利支払いにかかる現地での源泉徴収税率とその会計処理」、「グロスアップ条項の有無と内容」を和訳で確認し、財務インパクトと税務戦略を管理します。


 

ケーススタディ2:日本の製造業が海外子会社から資金調達

 

状況: 日本の製造業が、欧州子会社の設備投資資金を、現地の銀行団からユーロ建てで融資を受けるケース。英文の金銭消費貸借契約書を締結。

  • 財務部/資金調達部:

    • 必要性: 融資金額、金利、返済スケジュール、自社(保証会社の場合)または子会社の財務コベナンツの数値目標、担保・保証の内容などを詳細に確認します。資金調達計画、キャッシュフロー、連結決算への影響を評価します。

    • ケース: 契約書に記載された「ユーロ建て融資の固定金利と返済期間」、「親会社からの連帯保証の範囲と条件」、「子会社のD/Eレシオに関する財務コベナンツの計算基準」を和訳で確認し、資金調達の実行可能性とリスクを管理します。

  • 法務部:

    • 必要性: 契約全体の法的妥当性、コベナンツの遵守可能性、期限の利益喪失事由、クロスデフォルト条項、準拠法(ドイツ法または英国法)、紛争解決条項の適切性を確認します。親会社からの保証の有効性も確認します。

    • ケース: 契約書に記載された「子会社が遵守すべきネガティブコベナンツ(資産処分制限、配当制限など)」、「クロスデフォルト条項の適用範囲」、「ドイツ法に準拠する旨の条項」を和訳で確認し、法的リスクと親会社への影響を評価します。

  • 経理部/税務部:

    • 必要性: 金利の会計処理、利息の損金算入の可否、源泉徴収税の取り扱い(過少資本税制への配慮を含む)などを確認します。

    • ケース: 契約書に記載された「金利支払いにかかるドイツでの源泉徴収税の取り扱いと租税条約の適用」、「過少資本税制に関する条項」を和訳で確認し、財務インパクトと税務戦略を管理します。

よくある質問(FAQ)

金銭消費貸借契約書の翻訳に関して、お客様からよくいただくご質問とその回答をまとめました。

Q1: 金銭消費貸借契約書における「コベナンツ(Covenants)」の条項は、翻訳でどのように注意すべきですか?

A1: コベナンツは、借入人の財務健全性を維持し、貸主のリスクを低減するための重要な条項です。翻訳においては、財務コベナンツにおける具体的な財務比率(例:D/Eレシオ、純資産額、借入金総額、自己資本比率など)の数値目標、計算方法を正確に表現することはもちろん、ネガティブ・コベナンツにおけるM&A制限、配当制限、追加担保設定の禁止、重要資産の処分制限、他社への融資制限といった具体的な制限内容を厳密に翻訳することが極めて重要です。コベナンツ違反は、期限の利益喪失に直結し、多額の債務の一括返済を求められるリスクがあるため、財務部門と法務部門が連携し、遵守可能性を詳細に評価すべきです。

 


 

Q2: 「期限の利益喪失条項(Events of Default)とクロスデフォルト条項(Cross-Default Clause)」の翻訳で、特に注意すべき点は何ですか?

A2: これらの条項は、借入人が契約上の義務を履行しない場合に、貸主が残債の一括返済を求めることができる条件を定めます。翻訳においては、返済遅延、コベナンツ違反、表明保証違反などの直接的な事由に加え、他の貸付契約における債務不履行(クロスデフォルト)や、借入人の破産手続開始、法的許可の失効、重要資産の差押えなど、多岐にわたる期限の利益喪失事由を慎重に翻訳することが不可欠です。特にクロスデフォルト条項は、グループ会社全体の財務状況に波及効果をもたらす可能性があるため、その適用範囲と影響を正確に把握し、注意深く翻訳する必要があります。

 


 

Q3: 国際的な金銭消費貸借契約で、「源泉徴収税(Withholding Tax)とグロスアップ条項(Gross-up Clause)」の取り扱いはなぜ重要視されますか?

A3: 国境を越えた金利支払いには、通常、借入人の国で源泉徴収税が課される可能性があります。翻訳においては、源泉徴収税の有無、税率、そして借入人が源泉徴収税を控除せずに金利全額を支払う義務(グロスアップ条項)の有無と内容を正確に翻訳することが不可欠です。特にグループ会社間融資では、移転価格税制(金利の妥当性)や過少資本税制(利息の損金算入制限)といった各国の税務規制が適用される可能性があり、これらの法的・税務的側面を契約書に反映し、正確な翻訳と法的・税務的評価を行うべきです。この部分の誤解は、予期せぬ税務コストや法的問題を引き起こす可能性があります。当社は、このような国際税務に関する条項の正確な翻訳を特に重視しています。

 


 

Q4: 金銭消費貸借契約における「担保・保証(Security / Collateral and Guarantee)」の取り扱いは、どのように注意して翻訳すべきですか?

A4: 担保・保証は、貸主の債権保全に直結する重要な条項です。翻訳においては、提供される担保の種類(不動産、動産、債権、株式など)、担保設定方法、評価基準、設定手続き、そして保証の範囲、連帯保証人の特定などを精緻に表現することが極めて重要ですし、当社はこれを強く認識しています。特に海外で担保を設定する場合、現地の担保法制、登記制度、債権回収制度に関する知識が不可欠であり、その国の法律専門家と連携し、翻訳された内容が現地の法慣行と整合しており、担保権が適切に設定・実行可能であるかを確認することが不可欠です。

 


 

Q5: 金銭消費貸借契約書で「準拠法と紛争解決(Governing Law and Dispute Resolution)」の条項が非常に重要と言われるのはなぜですか?

A5: 準拠法(Governing Law)は、契約の解釈・有効性・履行に適用される法律であり、紛争解決は問題発生時の解決プロセスを定めます。国際融資では、異なる国の金融規制、会社法、倒産法などが絡むため、どの国の法律が契約全体に適用されるのか、特に債権回収や倒産手続きの際にどの国の法律が適用されるのかを明確に合意しておくことが不可欠ですし、当社はこれを強く認識しています。また、紛争が生じた場合にどの国で、どのような方法(国際仲裁、調停、裁判など)で解決するのかを明確に合意しておくことが、予測可能性を高め、紛争解決のコストと時間を削減するために極めて重要ですし、自社にとって有利な条件を確保すべきです。翻訳においては、これらの条項を正確に理解し、必要に応じて現地の法律専門家と連携して最終確認を行うことが不可欠です。

まとめ

金銭消費貸借契約書の翻訳は、単なる言語の変換に留まらず、企業がグローバルな資金調達を円滑に行い、同時にグループ全体の財務ガバナンスとリスク管理を確実に実施するための極めて重要なプロセスです。

英文と和文の契約書が持つそれぞれの特徴を深く理解し、財務、経理、法務といった各部門が連携しながら、専門知識を持つ翻訳者の力を借りることが不可欠ですし、これまでの経験から当社はこれを強く認識しています。

特に、金利と源泉徴収税、コベナンツ、期限の利益喪失条項、クロスデフォルト条項、担保・保証、そして準拠法と紛争解決といった条項は、潜在的な法的・財務的リスクを最小限に抑え、グローバルな金融取引を成功させるための鍵となります。

 

当社は、このような複雑な金銭消費貸借契約書の翻訳において、貴社の各部門のニーズを理解し、最高品質の翻訳とサポートを提供することをお約束します。貴社の海外ビジネスにおける金銭消費貸借契約に関してご不明な点やご相談がありましたら、ぜひお気軽にお問い合わせください。

 

契約書の翻訳-1WIPジャパンは、東京弁護士共同組合神奈川県弁護士共同組合をはじめとする全国23の弁護士共同組合の特約店に認定されています。
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契約書翻訳に役立つリンク集

法務省大臣官房司法法制部「法令翻訳の手引き」(PDF)
日本法令外国語訳推進会議「法令用語日英標準対訳辞書」(PDF)
Publiclegal(英文契約書のテンプレートや書式を無料で提供)
日本法令外国語訳データベースシステム(法務省が開設した日本の法令の英訳サイト)
weblio 英和辞典・和英辞典
英辞郎 on the web

 

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