<img src="https://trc.taboola.com/1341089/log/3/unip?en=page_view" width="0" height="0" style="display:none">
  • Twitter
  • facebook
  • LINE
  • pocket
  • はてな
Jul. 11, 2025

債権譲渡契約書 翻訳:グローバル取引の流動性を高め、リスクを管理する

 

今日のグローバルビジネスにおいて、企業は様々な形で債権(売掛金、貸付金、未収金など)を保有しています。これらの債権を、資金調達、リスクヘッジ、または事業再編の一環として第三者に譲渡する際に用いられるのが債権譲渡契約書(Deed of Assignment of Receivables / Assignment Agreement)です。

この契約書は、譲渡される債権の特定、譲渡の条件、対価、そして譲渡後の当事者間の権利義務関係を明確に定義する、非常に重要な法的文書です。

その正確な翻訳は、関係者間の認識齟齬を防ぎ、債権譲渡の法的有効性を確保し、将来の紛争リスクを最小化するために不可欠です。翻訳のミスや内容の理解不足は、債権譲渡の無効、回収不能リスクの発生、予期せぬ法的紛争、そして企業の信用失墜へと発展する重大なリスクをはらんでいます。

特に、国際的な債権譲渡においては、各国で異なる民法、担保権法、債権法、そして税法などが複雑に絡み合います。単に言葉を置き換えるだけでなく、それぞれの法制度や商慣習、そしてビジネス上のニュアンスを踏まえた上で内容を理解し、翻訳することが不可欠です。

当社は、これまでの経験に基づき、債権譲渡契約書翻訳における重要なポイントと、貴社の各部門がどのように翻訳された契約書を活用し、関与していくべきかを具体的なケーススタディを交えて解説します。

貴社のグローバル取引において、債権譲渡契約書の適切な理解と運用を通じて、円滑な資金流動性と健全なリスク管理を実現するために、ぜひ本記事をお役立てください。

債権譲渡契約書とは何か?その目的と国際ビジネスにおける重要性

債権譲渡契約書(Deed of Assignment of Receivables / Assignment Agreement)は、債権(金銭債権が一般的ですが、その他の権利も含む)を保有する者(譲渡人:Assignor)が、その債権を第三者(譲受人:Assignee)に譲渡し、譲受人がその債権を取得することに合意する文書です。

国際ビジネス環境において、この債権譲渡契約書は以下のような多岐にわたる場面で利用されます。

  • サプライチェーンファイナンス: 企業が保有する売掛金を金融機関に譲渡することで、早期に現金化し、運転資金を確保する(ファクタリング、サプライヤーファイナンス)。

  • 資産流動化: 不動産担保ローン債権やリース債権などの大規模な債権プールを特別目的会社(SPV)に譲渡し、証券化して投資家に販売する。

  • M&A・事業譲渡: 企業の買収や事業譲渡の際に、対象会社の保有する債権を新会社や買い手企業に譲渡する。

  • 担保設定: 金融機関からの融資を受ける際に、企業の売掛債権などを担保として譲渡担保を設定する。

  • グループ会社間での資金移動・債権管理: グループ内の資金効率化や債権管理の一元化のために、国内外のグループ会社間で債権を譲渡する。

  • 事業再生・倒産手続き: 経営不振企業の事業再生の一環として、一部の債権を売却して資金を確保したり、債権者が債権を譲り受けたりする場合。

債権譲渡契約書は、主に以下の重要な要素を含みます。

  • 当事者(Parties): 債権の譲渡人(Assignor)と譲受人(Assignee)。場合によっては、債務者(Debtor)が承認者として含まれることもあります。

  • 債権の特定(Identification of Receivables / Assigned Claims): 譲渡される債権の種類(売掛金、貸付金など)、金額、発生原因、債務者名、関連契約書名、日付など、具体的に特定できる情報。

  • 譲渡の意思表示(Assignment): 譲渡人が譲受人に債権を譲渡し、譲受人がこれを受領する旨の明確な意思表示。

  • 対価(Consideration): 債権譲渡に対する対価(金銭、他の債権、サービスなど)。無償譲渡の場合はその旨を明記。

  • 表明保証(Representations and Warranties): 譲渡される債権の存在、有効性、譲渡人の債権保有権限、債務不履行の有無などに関する譲渡人の保証。

  • コベナンツ(Covenants): 譲渡後も譲渡人が負う義務(債務者への通知義務、回収協力義務など)や、譲受人が負う義務(回収した債権の取り扱いなど)。

  • 通知・承諾(Notice / Consent): 債務者への譲渡通知の要否、および債務者の承諾の要否。特に民法上の対抗要件(債務者や第三者への主張の有効性)に関わるため重要です。

  • 準拠法(Governing Law): 契約書の解釈と法的効力に適用される法律。特に国際取引では、譲渡債権の準拠法と譲渡契約書の準拠法を区別して検討する必要があります。

  • 紛争解決(Dispute Resolution): 契約書に関する紛争が発生した場合の解決方法(協議、調停、仲裁、裁判など)。

国際ビジネスにおける債権譲渡契約書の重要性は、以下の理由から非常に高いです。

  • 資金流動性の向上: 売掛金などを早期に現金化することで、企業の運転資金を改善し、キャッシュフローを強化できます。

  • リスクの移転: 債権回収のリスクを譲受人に移転することで、譲渡人の財務リスクを軽減できます。

  • オフバランス化: 一部の債権を売却することで、バランスシートから債権を外し、財務指標を改善できる場合があります。

  • 効率的な債権管理: 専門の金融機関やサービサーに債権管理・回収業務を委託することで、管理コストを削減し、本業に集中できます。

  • グローバルな取引の円滑化: 国境を越えた商取引において、債権の現金化やリスク移転を可能にし、より多様な金融手法を適用できます。

  • 法的確実性の確保: 異なる法制度下で、債権譲渡の有効性、対抗要件、当事者の権利義務を明確にすることで、法的紛実を回避します。

英文債権譲渡契約書(Assignment Agreement)の特徴と和文契約書との違い

国際的な債権譲渡取引では、多くの場合、英文で債権譲渡契約書(Assignment Agreement)が作成されます。その特徴は、日本の和文契約書とは異なる点がいくつかあります。

  • Precise Identification of Assigned Claims(譲渡債権の厳密な特定): 英文のAssignment Agreementでは、譲渡される債権を極めて厳密かつ詳細に特定する努力がなされます。単に「売掛金」と記載するだけでなく、債務者の名称、契約番号、請求書番号、金額、発生日、支払期日、関連する原契約名など、具体的に特定可能な情報を網羅的にリストアップするAnnex(別添)が用いられることが一般的です。これは、債権譲渡の有効性、特に特定性要件を満たすために極めて重要です。

  • "Absolute Assignment" vs. "Assignment by way of Security"(絶対的譲渡と担保としての譲渡の明確化): 英文契約では、債権譲渡が「絶対的(Absolute Assignment)」なものなのか、それとも融資の「担保として(Assignment by way of Security)」行われるのかを明確に区別し、その法的効果を具体的に記述します。これにより、債権の所有権が完全に移転するのか、それとも債務不履行時にのみ回収権が行使されるのかといった、根本的な法的性質が明確になります。日本の譲渡担保契約に相当する概念をより明確に表現します。

  • Representations and Warranties (表明保証) の詳細な記述: 譲渡される債権の存在、有効性、譲渡人の譲渡権限、他の担保権の設定有無、債務不履行の有無、回収可能性などについて、譲渡人が行う表明保証の範囲が非常に詳細に記述されます。これにより、譲受人が譲渡債権のリスクを評価するための重要な情報が提供されます。違反時の損害賠償責任も明記されます。

  • Covenants (誓約事項) の具体性: 譲渡後の譲渡人の義務(債務者への通知協力、債権回収への協力、債権の保全義務など)や、譲受人の義務(回収した債権の取扱いなど)が具体的に列挙されます。特に、債務者への通知(Notice)や承諾(Acknowledgement / Consent)に関する条項は、対抗要件(第三者への主張の有効性)を確保するために厳密に記述されます。

  • Governing Law and Dispute Resolution (準拠法と紛争解決) の厳密な選択: 国際的な債権譲渡では、譲渡契約自体の準拠法と、譲渡される原債権(Underlying Receivable)の準拠法が異なる場合があるため、両者を明確に区別して指定します。また、契約に関する紛争が発生した場合に備え、準拠法と紛争解決のメカニズム(例:国際仲裁)が明確に指定されます。これは、債権譲渡の有効性や執行可能性に直結するため、極めて重要な要素です。

  • Indemnification (補償) 条項: 表明保証違反や特定の事由により生じた損害に対する補償義務が詳細に規定されます。これにより、譲受人のリスクを軽減する目的があります。

日本の和文債権譲渡契約書に比べ、英文Assignment Agreementは、譲渡債権の厳密な特定、譲渡の法的性質の明確化(絶対的譲渡か担保譲渡か)、表明保証と誓約事項の詳細な記述、そして原債権と譲渡契約双方の準拠法の厳密な選択に関して、より厳密かつ戦略的な記述が求められる傾向が強いです。翻訳においては、これらの法的・商業的なニュアンスを正確に反映した表現を用いることが不可欠です。

 

債権譲渡契約書翻訳における重要ポイント

債権譲渡契約書(Assignment Agreement)の翻訳は、貴社のグローバル取引における資金流動性確保、リスク管理、そして法的確実性の確保に直接影響するため、極めて高い精度と専門性、そして法務、財務、事業といった多様な部門の連携と視点が求められます。以下のポイントを押さえることが、成功への鍵となります。

譲渡される債権の正確かつ網羅的な特定

  1. 譲渡される債権が、金額、発生原因、債務者、関連する契約書や請求書番号、発生日、支払期日など、一意に特定できる情報で漏れなく記載されているかを厳密に翻訳することが不可欠です。債権の特定が不十分だと、譲渡の有効性が疑われ、回収不能リスクが生じます。特に別添(Annex / Schedule)で詳細がリストアップされている場合は、その内容も正確に反映します。

  2. 譲渡の法的性質(Absolute vs. Security)の明確な翻訳

  3. 債権譲渡が、所有権の完全移転を伴う「絶対的譲渡」なのか、それとも担保目的の「譲渡担保」なのかを、法的効果が明確に伝わるように翻訳することが極めて重要です。この区別が曖昧だと、譲受人の権利行使や譲渡人の義務の範囲に関して深刻な誤解が生じる可能性があります。

  4. 表明保証(Representations and Warranties)条項の厳密な翻訳

  5. 譲渡人が、譲渡債権の存在、有効性、譲渡権限、他の担保権の有無、債務不履行の有無などについて行う保証の内容を、一言一句正確に翻訳することが不可欠です。これらの表明保証違反は、譲渡人が損害賠償責任を負う原因となるため、その範囲を正確に理解できるよう訳します。

  6. 債務者への通知(Notice)および承諾(Consent)に関する条項の正確な翻訳

  7. 債務者への債権譲渡通知の要否、通知方法、債務者の承諾の要否、および承諾を得られない場合の対処について、各国法(特に債権譲渡に関する対抗要件)を踏まえて正確に翻訳することが極めて重要です。これにより、債権譲渡の法的有効性と第三者対抗力を確保します。

  8. 準拠法(Governing Law)と紛争解決(Dispute Resolution)の正確な指定

  9. 債権譲渡契約書自体の準拠法と、譲渡される原債権の準拠法を明確に区別し、それぞれの指定が正確に翻訳されているかを確認します。また、契約に関する紛争が発生した場合に備え、適用される法律と紛争解決の手段(裁判、国際仲裁など)、裁判管轄、仲裁地などを正確に翻訳することが不可欠です。

  10. 強固な情報セキュリティ体制

  11. 債権譲渡契約書には、企業の財務情報、取引先情報、債務者の個人情報など、極めて機密性の高い情報が含まれます。これらの情報が外部に漏洩した場合、企業の法的責任問題、信用失墜、ビジネス上の損害など、甚大な影響を被る可能性があります。そのため、翻訳を依頼する際には、翻訳会社が厳格な情報セキュリティポリシーを定め、技術的・物理的・人的な対策を徹底しているかを必ず確認すべきですし、当社はこれを徹底しています。

    AI翻訳の適切な活用と専門家による最終確認

  12. AI翻訳技術は、初稿の作成や定型表現の翻訳に役立ち、翻訳プロセスを効率化できますが、債権譲渡契約書のような法的拘束力、複雑な法務・財務上のニュアンス、各国法制度の違いが極めて重要な文書においては、その複雑な意味合いを完全に理解することは困難です。AIを効率化ツールとして最大限活用しつつも、国際契約法務、財務、当該ビジネス分野の専門知識を持つ専門の翻訳者による徹底したレビューと校正が不可欠です。人間による精査が、潜在的なリスクを最小限に抑え、グローバル取引の法的確実性を確保します。

債権譲渡契約書翻訳は誰に必要なのか?ケーススタディで見る関係部門の役割

債権譲渡契約書は、企業の財務、法務、事業戦略に深く関わる文書であり、多岐にわたる部門や関係者がその内容を理解し、翻訳された情報に基づいて連携することが不可欠です。

 

ケーススタディ1:日本の製造業がシンガポールのファクタリング会社に売掛金を譲渡

 

状況: 日本の製造業A社が、シンガポールの取引先B社に対する多額の米ドル建て売掛金を、シンガポールを拠点とするファクタリング会社C社に譲渡する。資金流動性向上が目的。英語で債権譲渡契約書(Assignment Agreement)を締結。この契約書を、日本のA社本社関係者(法務部、財務部、経理部、営業部)向けに日本語に翻訳する必要がある。

  • 法務部: 必要性: 譲渡の法的有効性(特にシンガポール法と日本法における対抗要件)、表明保証の内容と違反時のリスク、コベナンツ(債務者への通知義務、回収協力義務など)の範囲、準拠法(シンガポール法)と紛争解決条項の適切性を詳細に確認します。将来の法務リスクを排除し、コンプライアンスを確保します。 ケース: 翻訳された契約書に記載された「譲渡される売掛金の個別特定(請求書番号、金額、期日など)」、「譲渡が絶対的譲渡である旨の明確な記載」、「譲渡対象債権に瑕疵がないこと、他の担保権が設定されていないことの表明保証」、「シンガポール法が準拠法であり、シンガポール国際仲裁センター(SIAC)での仲裁が紛争解決手段である旨」を和訳で確認し、法的リスクとコンプライアンスを評価します。

  • 財務部/経理部: 必要性: 債権譲渡の対価(譲渡価格)、支払い期日、およびそれに関連する財務処理(簿外化の可否、譲渡損益の計上、税務上の取り扱いなど)を正確に理解します。資金計画への影響と適切な会計処理に責任を持ちます。 ケース: 翻訳された契約書に記載された「譲渡価格(例:売掛金総額の90%)と支払いスケジュール」、「譲渡後の債権回収リスクの移転状況」、「債権譲渡に関する手数料や費用負担」を和訳で確認し、財務計画への影響と会計・税務コンプライアンスを評価します。

  • 営業部: 必要性: 債務者B社への債権譲渡通知の要否、そのタイミング、通知文言について正確に理解します。取引先との関係性維持と、円滑な通知プロセスに協力します。 ケース: 翻訳された契約書に記載された「債務者B社への債権譲渡通知は、譲受人C社が行うが、通知内容についてはA社の事前承認を得る旨」、「通知後の債務者からの支払い先がC社に変更される旨」を和訳で確認し、取引先との関係維持と業務プロセスの変更点を把握します。


 

ケーススタディ2:米国企業がブラジルの子会社から債権を譲り受ける

 

状況: 米国の多国籍企業D社が、ブラジルの子会社E社(現地でサービスを提供)から、E社がブラジル国内の顧客F社に対して保有するサービス債権を譲り受ける。グループ内での債権管理効率化が目的。ポルトガル語で債権譲渡契約書を締結。この契約書を、米国のD社本社関係者(法務部、財務部、経営層)向けに英語に翻訳する必要がある。

  • 法務部(米国側): 必要性: ブラジル法における債権譲渡の有効性、対抗要件(債務者F社への通知要件など)、譲渡対象債権の性質(担保設定の有無など)、そしてブラジル法と米国法の抵触回避策、紛争解決条項の適切性を詳細に確認します。現地の法務リスクを理解し、国際的な債権管理スキームを構築します。 ケース: 翻訳された契約書に記載された「譲渡されるサービス債権の具体的リスト(顧客名、サービス内容、金額、期日など)」、「ブラジル法が適用される債権譲渡の有効性に関する規定」、「債務者F社への通知がブラジル民法に則り行われる旨」、「ブラジルの裁判所が紛争解決の管轄となる条項」を英訳で確認し、法的リスクとコンプライアンスを評価します。

  • 財務部(米国側): 必要性: 債権譲受の対価、支払い方法、そしてグループ内取引における会計処理(連結会計上の取り扱い、税務上の影響など)を正確に理解します。グループ全体のキャッシュマネジメントと債権ポートフォリオの管理に責任を持ちます。 ケース: 翻訳された契約書に記載された「債権譲受の対価(例:債権額の100%だが、支払い期日を〇ヶ月後に設定)」、「譲渡される債権の通貨(ブラジルレアル)と換算レートの取り決め」、「グループ内での資金移動に関する税務上の考慮事項」を英訳で確認し、財務計画と税務・会計コンプライアンスを評価します。

  • 経営層(米国側): 必要性: 今回の債権譲受が、グループ全体の資金効率化、リスク分散、特定の市場における債権回収体制の強化にどのように貢献するかを評価します。グローバルな財務戦略と事業運営の効率性向上に役立てます。 ケース: 翻訳された契約書に記載された「本債権譲渡が、ブラジル子会社E社の財務健全性向上に寄与する旨」、「D社がブラジル市場における債権管理を強化する意図」を英訳で確認し、企業統治と戦略への影響を評価します。

よくある質問(FAQ)

債権譲渡契約書(Assignment Agreement)の翻訳に関して、お客様からよくいただくご質問とその回答をまとめました。

 


 

Q1: 債権譲渡契約書で最も重要な「債権の特定」において注意すべき点は何ですか?

A1: 「債権の特定」は、債権譲渡契約書の有効性を左右する最も重要な要素の一つです。

  • 個別特定: 譲渡される債権は、他の債権と区別できるように、個別具体的に特定される必要があります。単に「売掛金全般」とするのではなく、「〇年〇月〇日付の〇〇株式会社に対する請求書番号〇〇の売掛金〇円」のように、金額、発生原因、債務者、関連書類番号、発生日、支払期日などを明確に記載することが求められます。

  • 別添(Annex / Schedule)の活用: 譲渡される債権が多数にわたる場合は、契約書本文で包括的に譲渡意思を表明し、詳細なリストを別添として添付するのが一般的です。この別添も、翻訳の対象であり、番号や金額の誤記がないよう、細心の注意を払う必要があります。

  • 将来債権の譲渡: 将来発生する債権を譲渡する場合(例:将来の継続的取引から発生する売掛金)は、その発生原因や範囲を具体的に特定し、かつその債権が「発生の可能性が明確かつ特定の取引に基づき発生すると合理的に期待されるもの」として特定されているかを確認する必要があります。

翻訳においては、これらの特定要件をターゲット言語の法的要件に合致する形で、厳密かつ正確に表現することが不可欠です。

 


 

Q2: 債務者への「通知」や「承諾」に関する翻訳で注意すべきことは何ですか?

A2: 債権譲渡の法的有効性、特に第三者への対抗要件(債務者や他の債権者に対して譲渡の有効性を主張できるか)は、債務者への通知や承諾の方法に大きく依存します。各国によってその要件が異なるため、翻訳には特に注意が必要です。

  • 対抗要件: 多くの国では、債権譲渡を債務者や第三者に対抗するためには、譲渡人から債務者への確定日付ある通知、または債務者の承諾が必要です。翻訳では、この通知や承諾の「方法」や「形式」が具体的に記載されているか(例:内容証明郵便、公証人による認証など)を正確に訳す必要があります。

  • 債務者の免責: 債務者が譲渡を知らずに従来の債権者(譲渡人)に弁済してしまった場合、債務者の弁済は有効とされ、債務者は二重に支払う義務を負わないという「債務者の免責」の原則が働きます。通知や承諾は、この免責規定を乗り越えて、債務者が新しい債権者(譲受人)に支払う義務を負わせるためのものです。

  • 条件(Consent Clauses): 債務者が債権譲渡を禁止する条項(Assignment Restriction Clause)を原契約で設定している場合があります。この場合、譲渡には債務者の事前の書面による承諾が必要となります。翻訳では、この「承諾」の要件と、それを満たさない場合の譲渡の有効性について、明確に訳す必要があります。

翻訳者は、単に「通知する」と訳すだけでなく、その背後にある各国の法的な対抗要件や実務慣行を理解した上で、最も適切な表現を選択する必要があります。

 


 

Q3: 債権譲渡契約書(Assignment Agreement)の翻訳を依頼する際、どのような情報を提供すれば、より良い翻訳が得られますか?

A3: より高品質な債権譲渡契約書翻訳のために、以下の情報を提供いただけると非常に役立ちます。

  • 取引の背景と目的: なぜこの債権譲渡を行うのか(資金調達、リスクヘッジ、M&Aなど)を理解することで、翻訳者は文書のニュアンスをより正確に捉えられます。

  • 譲渡される債権の具体的内容: 債務者情報、原契約(売買契約、貸付契約など)、請求書、発生経緯などの詳細情報があれば、債権の特定がより正確になります。

  • 関与する当事者の情報: 譲渡人、譲受人、債務者の企業名、事業内容、国籍、関係性などを知ることで、適切な固有名詞の使用や、ビジネス上の意味合いを理解する手助けになります。

  • 関連する契約や文書: 原債権が発生した契約書、関連する担保契約などがあれば、用語の一貫性を保ち、法的な背景を深く理解するのに役立ちます。

  • 特定の専門用語集: 業界固有の財務用語、法務用語、社内略語など、事前に用語集があれば、翻訳の一貫性と正確性が向上します。

  • 翻訳の目的: 内部承認用なのか、相手方への提示用なのか、あるいは公証や登記が必要なのかなど、翻訳の最終的な用途を伝えることで、翻訳のスタイルやレベルを調整できます。


 

Q4: AI翻訳を債権譲渡契約書(Assignment Agreement)の翻訳に活用する際の注意点は何ですか?

A4: AI翻訳は、初稿の作成や定型表現の翻訳に非常に役立ち、翻訳プロセスを効率化できますが、債権譲渡契約書のような法的拘束力、複雑な法務・財務上のニュアンス、各国法制度の違いが極めて重要な文書に単独で使用することは強く推奨されません。

  • 法的表現の正確性: AIは、「絶対的譲渡」と「担保譲渡」のような法的性質の違いや、債権の特定、対抗要件に関する各国の法的要件の複雑なニュアンスを完全に理解し、正確に表現できないリスクがあります。これが最も致命的な誤訳につながる可能性があります。

  • 財務・会計用語の精度: 譲渡対価の算定、費用負担、税務上の取り扱いなど、複雑な財務・会計用語や概念をAIが正確に翻訳できないことがあります。

  • 文脈と意図の欠落: 債権譲渡の背景にある具体的なビジネス上の目的、当事者間の交渉の経緯といった繊細な文脈をAIが正確に把握できるとは限りません。

  • 秘密保持とセキュリティ: 債権譲渡契約書には極めて機密性の高い財務情報や取引先情報が含まれるため、AI翻訳サービスへのアップロード方法や、データの取り扱いに関するセキュリティ体制を慎重に確認する必要があります。

したがって、AI翻訳を効率化ツールとして最大限活用しつつも、必ず国際契約法務、財務、当該ビジネス分野の専門知識を持つ専門の翻訳者による徹底したレビューと校正を行うことが不可欠です。当社は、AIと専門家の人力翻訳を組み合わせることで、高品質かつ効率的な翻訳を提供しています。

まとめ

債権譲渡契約書(Assignment Agreement)の翻訳は、単なる言語の変換に留まらず、企業がグローバルな資金調達、リスク管理、事業再編を円滑に進める上で、法的確実性を確保し、将来の紛争を回避するための極めて重要なプロセスです。

英文と和文の債権譲渡契約書が持つそれぞれの特徴を深く理解し、法務、財務、事業といった各部門が連携しながら、専門知識を持つ翻訳者の力を借りることが不可欠ですし、これまでの経験から当社はこれを強く認識しています。

特に、譲渡される債権の正確かつ網羅的な特定、譲渡の法的性質の明確な翻訳、債務者への通知および承諾に関する条項の正確な翻訳、そして強固な情報セキュリティ体制といったポイントは、潜在的なリスクを最小限に抑え、グローバル取引の流動性を高め、健全なリスク管理を確実なものとするための鍵となります。

当社は、このような複雑な債権譲渡契約書(Assignment Agreement)の翻訳において、貴社の各部門のニーズを理解し、最高品質の翻訳とサポートを提供することをお約束します。貴社の海外ビジネスにおける債権譲渡契約書に関してご不明な点やご相談がありましたら、ぜひお気軽にお問い合わせください。

 

契約書の翻訳-1WIPジャパンは、東京弁護士共同組合神奈川県弁護士共同組合をはじめとする全国23の弁護士共同組合の特約店に認定されています。
ご相談は無料です。いつでもお気軽にご連絡ください。

 

【無料】PDFダウンロード

image-png-Feb-26-2025-03-24-12-5725-AM契約書の基本用語英訳50選

一言に契約書といっても、業務委託契約書(Services Agreement)、独立請負人契約書(Independent Contractor Agreement)、秘密保持契約書(Non-Disclosure Agreement)、業務提携契約書(Business Partnership Agreement)など、様々なものがあり、契約の種類も多様化しています。

契約内容を正しく理解し、法的リスクを回避するには、適切な英訳が不可欠です。本記事では、契約書における基本用語の英訳50選をご紹介します。 
>>PDFダウンロード(無料)


翻訳発注に失敗しない10のポイント「翻訳発注」に失敗しない10のポイント

翻訳の発注に失敗しないためには、どうすればいいのか。

翻訳外注コストを抑えるには、どうすればいいのか。
これらの課題の解決策をお教えします。

翻訳発注に失敗しないためには、知らないではすまされない重要なポイント!

優れた翻訳会社ほど多忙で引く手あまたです。価格が相場に比べて格段に低い翻訳会社は、良心的なのか、それとも単に制作プロセスを簡単に済ませているだけなのかをよく見極めましょう。また、同じ翻訳会社でも、制作プロセス次第で翻訳料金は大きく上下します。希望するレベルを詳細に伝えることで、翻訳会社は最適なプロセスをデザインすることができます。 >>PDFダウンロード(無料)


契約書翻訳に役立つリンク集

法務省大臣官房司法法制部「法令翻訳の手引き」(PDF)
日本法令外国語訳推進会議「法令用語日英標準対訳辞書」(PDF)
Publiclegal(英文契約書のテンプレートや書式を無料で提供)
日本法令外国語訳データベースシステム(法務省が開設した日本の法令の英訳サイト)
weblio 英和辞典・和英辞典
英辞郎 on the web

 

契約書翻訳に関連する記事

【2024年版】ビジネスで欠かせない「契約書翻訳」におすすめの8つのポイント
契約書翻訳を依頼する際に知っておいていただきたいこと
契約書の翻訳を外注するとき、特に注意すべき3点
翻訳会社のプロの法律系翻訳者が選ぶ!契約書の英訳におすすめの書籍12選
法律文書:AI翻訳時代における人力翻訳の価値とは?

  • Twitter
  • facebook
  • LINE
  • pocket
  • はてな

翻訳会社を選ぶおすすめの依頼方法:失敗しない10のキホン

WIPの翻訳をつくるサービスはこちら