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Jul. 10, 2025

業務委託契約書 翻訳:個人事業主との協業を成功させる法的基盤とグローバル戦略の要点

 

今日のビジネス環境において、企業はプロジェクトごとに特定の専門スキルを持つ人材を柔軟に活用し、コストを最適化しようとしています。その中で、個人事業主(Freelancer / Independent Contractor)小規模法人と締結する業務委託契約書(Service Agreement / Independent Contractor Agreement)は、高度な専門性を外部から調達し、多様な働き方に対応するための重要なツールとなっています。

この契約書は、委託する業務の内容、成果物の定義、報酬、納期、著作権や知的財産権の帰属、秘密保持義務、契約解除条件など、委託業務に関するあらゆる条件を詳細に定めます。

その正確な翻訳は、企業と受託者双方の権利と義務の明確化、法的リスクの回避、そして円滑な協業関係の構築のために不可欠です。翻訳のミスや内容の理解不足は、予期せぬ紛争、高額な賠償責任、企業の信用失墜、そして重要なプロジェクトの遅延へと発展するリスクをはらんでいます。

特に、国ごとに契約法、税法、労働法、そして商慣習が大きく異なり、業務委託と雇用(従業員)の区別に関する判断基準が非常に厳しい場合も少なくありません。単に言葉を置き換えるだけでなく、それぞれの法制度や文化、商慣習に応じた法的・商業的なニュアンスを踏まえた上で契約内容を理解し、翻訳することが不可欠です。

本記事では、これまでの経験に基づき、個人事業主との業務委託契約書翻訳における重要なポイントと、貴社の各部門がどのように翻訳された契約書を活用し、関与していくべきかを具体的なケーススタディを交えて解説します。

貴社のグローバル戦略において、業務委託契約の適切な理解と運用を通じて、コンプライアンスの強化と柔軟な外部リソース活用の実現を図るために、ぜひ本記事をお役立てください。

 

業務委託契約書とは何か?その目的と国際取引における重要性

業務委託契約書(Service Agreement / Independent Contractor Agreement)は、企業が外部の個人事業主(フリーランス)や他企業に対し、特定の業務の遂行を委託する際に締結される契約書です。これは、雇用契約とは異なり、原則として指揮命令関係がなく、受託者が独立した事業主として業務を遂行する形態をとります。

国際的な業務委託において、業務委託契約書は以下のような多岐にわたる場面で利用されます。

  • 専門性の高いコンサルティング: 海外の専門家やコンサルタントに、市場調査、戦略策定、技術指導などを委託する場合。

  • クリエイティブ業務のアウトソーシング: 海外のデザイナー、プログラマー、ライター、翻訳者などに、Webサイト制作、アプリ開発、コンテンツ作成、翻訳業務などを委委託する場合。

  • マーケティング・広報活動: 海外市場向けのマーケティング戦略の立案、広告運用、現地でのイベント運営などを現地の個人事業主や代理店に委託する場合。

  • システム開発・保守: 国境を越えてリモートでシステム開発や保守を専門家チームに委託する場合。

この契約書は、以下の非常に多岐にわたる詳細な条項を含みます。

  • 業務内容と成果物(Scope of Services and Deliverables): 委託する具体的な業務内容、業務の範囲、受託者が提供すべき成果物(完成品、レポートなど)の明確な定義。

  • 報酬と支払い条件(Compensation and Payment Terms): 報酬の金額、計算方法(固定報酬、時間単価、成果報酬など)、支払いサイクル、支払い通貨、支払い方法(銀行振込、オンライン決済サービスなど)。

  • 納期とスケジュール(Term and Schedule): 業務の開始日と終了日、中間目標、最終納期。

  • 知的財産権の帰属(Intellectual Property Rights, IPR): 受託者が業務遂行中に生み出した発明、著作物、デザインなどの知的財産権が、企業または受託者のどちらに帰属するか、またその対価に関する取り決め。

  • 秘密保持義務(Confidentiality / Non-Disclosure): 企業秘密、顧客情報、技術情報などの秘密情報の範囲、秘密保持義務の期間、契約終了後の効力。

  • 契約解除条件(Termination): 契約期間満了時の終了、事由による解除("For Cause")、企業側の都合による解除("For Convenience")、解除通知期間、精算方法。

  • 独立した契約者であることの確認(Independent Contractor Status): 受託者が企業の従業員ではなく、独立した事業主であることを確認する条項。税務上・労働法上の問題を避けるために極めて重要です。

  • 競業避止義務(Non-Compete): 契約期間中および契約終了後一定期間、競合する業務を行うことを禁止する義務(適用される場合)。

  • 損害賠償と免責(Indemnification and Limitation of Liability): 契約違反や受託者の過失によって損害が発生した場合の賠償責任の範囲と上限。

  • 準拠法と紛争解決(Governing Law and Dispute Resolution): 契約に適用される法律、紛争が発生した場合の解決方法(裁判、仲裁など)。

国際的な業務委託において業務委託契約書が特に重要なのは、以下の理由からです。

  • 「偽装請負」リスクと各国の労働法規制: 最も重要な点は、業務委託契約が「雇用契約」とみなされてしまう「偽装請負」のリスクです。国によって、個人事業主を保護するための労働法が厳しく、形式上業務委託契約であっても、実態として指揮命令関係が存在する場合や、業務遂行の自由度が低い場合には、雇用関係と判断されることがあります。これにより、企業は社会保険料の遡及徴収、未払い賃金の支払い、不当解雇として訴訟されるなどの重大なリスクを負うことになります。

  • 税務上の問題: 各国の税法は、個人事業主に対する報酬の課税方法(源泉徴収の要否など)が異なります。適切に処理しないと、追徴課税や罰則の対象となる可能性があります。

  • 知的財産権の確実な取得: 受託者が生み出した成果物の知的財産権を企業が確実に取得するためには、契約書で明確な規定が必要です。国によっては、職務著作の概念や発明者への報酬義務などが異なり、契約書での規定が不なければ、権利が受託者に残ってしまうリスクがあります。

  • 紛争解決の複雑さ: 国際的な契約紛争は、複数の国の法律が絡み、解決に時間と費用がかかる傾向にあります。準拠法や紛争解決手段を明確にしておくことで、リスクを低減できます。

英文業務委託契約書の特徴と和文契約書との違い

国際的な業務委託取引では、多くの場合、英文で業務委託契約書が作成されます。その特徴は、日本の和文契約書とは異なる点がいくつかあります。

  • Explicit Independent Contractor Status Clause(「独立した契約者であること」の明確な条項):

    • 英文業務委託契約書で最も強調される特徴の一つです。受託者が企業の「従業員(Employee)」ではなく、「独立した契約者(Independent Contractor)」であること、指揮命令を受けず、自らの裁量で業務を遂行することを明確に記述します。これには、企業が社会保険料や税金を源泉徴収する義務を負わない旨なども含まれ、「偽装請負」のリスクを回避するための最も重要な文言となります。

  • Detailed Scope of Services and Deliverables(業務内容と成果物の詳細):

    • 委託する業務内容、成果物の仕様、受託者が負う義務が非常に具体的に記述されます。これにより、受託者の裁量権を担保しつつ、企業が求める品質と成果を明確にします。

  • Comprehensive Intellectual Property Assignment(知的財産権の包括的な譲渡):

    • 受託者が業務遂行中に生み出した全ての成果物(ソフトウェア、デザイン、コンテンツ、発明など)に関する知的財産権(著作権、特許権、商標権など)が、企業に完全に、かつ不可逆的に譲渡される旨が非常に詳細かつ厳格に規定されます。米国では「Work for Hire」の概念が用いられることもあり、その旨が明記される場合があります。

  • Confidentiality and Data Security Clauses(秘密保持およびデータセキュリティ条項):

    • 企業秘密の定義、秘密保持義務の期間、契約終了後の効力に加え、受託者が企業のデータにアクセスする場合のデータセキュリティ基準、プライバシー保護(GDPR, CCPAなど各国のデータ保護法への準拠)に関する義務が詳細に定められます。

  • Indemnification and Limitation of Liability(補償責任と免責):

    • 受託者の過失や契約違反によって企業に損害が生じた場合の受託者の賠償責任の範囲、上限、および免責事項が詳細に記述されます。これは、リスク管理の観点から非常に重要です。

  • Governing Law and Dispute Resolution(準拠法と裁判管轄/仲裁):

    • 国際的な業務委託契約では、契約に適用される法律(例:デラウェア州法、英国法、シンガポール法、日本法など)が明確に指定されます。また、紛争が発生した場合の解決方法(裁判所の管轄、または仲裁条項)が詳細に定められます。特に、国際仲裁を指定する場合、仲裁地、仲裁機関、仲裁規則なども明記されます。

  • Non-Solicitation and Non-Compete Clauses (if applicable)(引き抜き禁止および競業避止条項(該当する場合)):

    • 受託者が、企業の顧客や従業員を引き抜くこと(Non-Solicitation)や、特定の競合業務を行うこと(Non-Compete)を禁止する条項が盛り込まれることがあります。これらの有効性は国によって厳しく制限される場合があるため、現地の法規制を考慮した記述が必要です。

日本の和文業務委託契約書に比べ、英文業務委託契約書は、「独立した契約者であること」の明確な意思表示、知的財産権の包括的な譲渡、秘密保持・データセキュリティに関する厳格な規定、そして国際法務上の損害賠償・紛争解決に関する詳細な合意に関して、より詳細かつ厳密な記述が求められる傾向が強いです。翻訳においては、これらの法的・税務的・文化的ニュアンスを正確に反映した表現を用いることが不可欠です。

 

業務委託契約書翻訳における重要ポイント

個人事業主との業務委託契約書の翻訳は、貴社の柔軟な外部リソース活用、各国の法規制への準拠、リスク管理に直接影響するため、極めて高い精度と専門性、そして法務、経理、事業部門など多岐にわたる視点が求められます。以下のポイントを押さえることが、成功への鍵となります。

  1. 「独立した契約者であること」の厳格な翻訳と「偽装請負」リスクの回避

    • 最も重要なポイントです。契約書が、受託者が企業の「従業員(Employee)」ではなく、「独立した契約者(Independent Contractor)」であることを明確に示しているかを確認します。これには、企業からの指揮命令がないこと、業務遂行方法が受託者の裁量に委ねられていること、受託者が自らの責任と費用で業務を遂行すること、社会保険や税金の負担義務がないことなどを明確に記述し、その上で正確に翻訳することが不可欠です。単に契約書の形式を整えるだけでなく、実際の業務運用が契約内容と乖離しないよう、法務部門と連携して細心の注意を払うべきですし、当社はこれを強く認識しています。

  2. 業務内容と成果物の明確な翻訳

    • 委託する業務の範囲、具体的な成果物の定義、納期、品質基準を曖昧さなく翻訳することが不可欠です。これにより、業務の進捗や成果物の品質に関する認識のずれを防ぎ、紛争を未然に防ぎます。

  3. 知的財産権の帰属(IP Assignment)の包括的な翻訳

    • 受託者が業務遂行中に生み出したあらゆる成果物(ソフトウェア、デザイン、コンテンツ、発明など)に関する知的財産権(著作権、特許権、商標権など)が、企業に完全に、かつ不可逆的に譲渡される旨を、各国法を考慮して正確に翻訳することが極めて重要です。この部分の誤訳は、将来の知財紛争や技術流出につながり、企業の事業展開に大きな影響を与えます。特に、「職務著作(Work for Hire)」の概念が適用されるか否か、発明者への報酬義務の有無など、国ごとの違いを考慮すべきです。

  4. 報酬と支払い条件、税務上の取り扱いの正確な翻訳

    • 報酬の金額、計算方法(固定報酬、時間単価、成果報酬など)、支払いサイクル、支払い通貨、支払い方法に加え、各国の税法に基づく源泉徴収の要否、税率、消費税や付加価値税(VAT/GST)の取り扱いを正確に翻訳することが不可欠です。国際送金に関わる手数料や為替リスクも考慮すべきです。

  5. 秘密保持義務(Confidentiality)とデータセキュリティの厳格な翻訳

    • 企業秘密の範囲、秘密保持義務の期間、契約終了後の効力、違反時の責任に加え、個人情報保護法(GDPR, CCPAなど)への準拠、データセキュリティ対策、情報漏洩時の報告義務など、データ保護に関する条項を厳格に翻訳すべきです。

  6. 損害賠償(Indemnification)と免責(Limitation of Liability)の慎重な翻訳

    • 受託者の過失や契約違反によって企業に損害が生じた場合の受託者の賠償責任の範囲、上限、および免責事項を慎重に翻訳することが不可欠です。この条項は、将来の法的・金銭的リスクに直結するため、法務部門と連携して詳細を確認すべきです。

  7. 契約解除条件と精算方法の明確な翻訳

    • 契約期間満了時の終了、事由による解除("For Cause")、企業側の都合による解除("For Convenience")、解除通知期間、そして解除に伴う報酬の精算方法、成果物の引き渡し、秘密情報の返還などを明確に翻訳することが不可欠です。

  8. 準拠法(Governing Law)と紛争解決(Dispute Resolution)の正確な指定

    • 契約に適用される法律、そして紛争が発生した場合の解決方法(裁判、仲裁、調停など)、裁判管轄、仲裁地の選定、仲裁機関、仲裁規則、仲裁人の数などを正確に翻訳することが不可欠です。国際的な契約紛争は複雑化しやすいため、自社にとって有利な準拠法や紛争解決地を指定することが戦略上重要であり、その内容を正確に把握すべきです。

    • 当社は、このような複雑な準拠法と紛争解決に関する条項の正確な翻訳を特に重視しています。

  9. AI翻訳の適切な活用と専門家による最終確認

    AI翻訳技術は、初稿の作成や用語の統一に役立ちますが、業務委託契約書のような法的・税務的に極めて複雑な文書においては、各国の契約法、税法、労働法、そして商慣習を完全に理解することは困難です。AIを効率化ツールとして最大限活用しつつも、法務知識、税務知識、および国際取引の実務経験を持つ専門の翻訳者による徹底したレビューと校正が不可欠です。人間による精査が、潜在的なリスクを最小限に抑え、安全な国際協業関係の基盤となります。

  10. 強固な情報セキュリティ体制

    業務委託契約書には、企業の機密情報、プロジェクトの詳細、受託者の個人情報や報酬情報など、機密性の高い情報が含まれます。これらの情報が外部に漏洩した場合、企業の法的責任問題、信用失墜、損害賠償など、甚大な損害を被る可能性があります。そのため、翻訳を依頼する際には、翻訳会社が厳格な情報セキュリティポリシーを定め、技術的・物理的・人的な対策を徹底しているかを必ず確認すべきですし、当社はこれを徹底しています。

 

業務委託契約書の翻訳は誰に必要なのか?ケーススタディで見る関係部門の役割

業務委託契約書は、企業の柔軟な外部リソース活用とグローバル展開の鍵を握る文書であり、多岐にわたる部門や関係者がその内容を理解し、翻訳された情報に基づいて連携することが不可欠です。

 


 

ケーススタディ1:日本のIT企業がインドのフリーランスエンジニアにWebサイト開発を委託

 

状況: 日本のIT企業A社が、新しいサービスのWebサイト開発のため、インドのフリーランスエンジニアB氏に業務委託するケース。英語で業務委託契約書を作成し、それを日本のA社側で日本語に翻訳する必要がある。

  • 法務部:

    • 必要性: 契約全体の法的妥当性、特に「偽装請負」リスクの回避(インドの労働法との関連)、知的財産権(Webサイトの著作権、ソースコードの権利)の確実な取得、秘密保持義務、損害賠償、準拠法(日本法またはインド法)、紛争解決条項の適切性を確認します。

    • ケース: 翻訳された契約書に記載された「B氏がA社の従業員ではなく独立した契約者である旨の明確な文言」、「開発されたWebサイトのソースコード、デザインを含む全ての知的財産権がA社に譲渡される旨の包括的な条項」、「成果物の瑕疵担保責任とA社への補償義務」、「日本法を準拠法とし、東京地方裁判所を管轄とする条項」を和訳で確認し、法的リスクとコンプライアンスを評価します。

  • 経理部/財務部:

    • 必要性: 報酬の計算方法、支払いサイクル、インドへの送金方法、現地での所得税の源泉徴収の要否、為替リスクなどを確認します。

    • ケース: 契約書に記載された「プロジェクト全体の固定報酬額と、中間成果物提出に応じた分割払い条件」、「インドでの源泉徴収(TDS)の要否と、その税率に関する記述」、「海外送金手数料の負担区分」を和訳で確認し、費用管理と税務コンプライアンスを評価します。

  • 事業部/開発部:

    • 必要性: 委託するWebサイトの具体的な機能、デザイン、技術要件、納期、品質基準を理解し、プロジェクトの遂行可能性に影響を与えないかを確認します。

    • ケース: 契約書に記載された「開発すべきWebサイトの具体的な機能要件(例:ユーザー登録、決済機能、管理画面)」、「UI/UXデザインの承認プロセス」、「納期遅延やバグ発生時の対応プロトコル」を和訳で確認し、業務遂行と成果物の品質確保、そしてプロジェクトの進捗管理を評価します。


 

ケーススタディ2:米国のコンテンツ制作会社が日本のフリーランスライターに記事執筆を委託

 

状況: 米国のコンテンツ制作会社C社が、日本市場向けのブログ記事作成のため、日本のフリーランスライターD氏に業務委託するケース。英語で業務委託契約書を作成し、それを日本のD氏向けに日本語に翻訳する必要がある(C社が依頼する場合)。

  • 法務部:

    • 必要性: 契約全体の法的妥当性、特に日本における「偽装請負」のリスク(D氏がC社の指揮命令下にあるとみなされないか)、著作権の確実な取得(記事の著作権がC社に帰属すること)、秘密保持義務、損害賠償、準拠法(米国カリフォルニア州法と日本法の適用関係)、紛争解決条項の適切性を確認します。

    • ケース: 翻訳された契約書に記載された「D氏がC社の従業員ではない独立したコントラクターである旨」、「執筆された記事の著作権がC社に完全に帰属する旨(Work for Hireの概念など、米国法に基づく記載)」、「C社が提供する機密情報(例:マーケティング戦略)の秘密保持義務」、「米国カリフォルニア州法を準拠法とし、ロサンゼルスでの国際仲裁を紛争解決手段とする条項」を和訳で確認し、法的リスクとコンプライアンスを評価します。

  • 経理部/財務部:

    • 必要性: 報酬の計算方法、支払いサイクル、日本への送金方法、日本の所得税の源泉徴収の要否、為替リスクなどを確認します。

    • ケース: 契約書に記載された「記事1本あたりの報酬額と、承認後の支払い条件」、「日本の所得税(源泉徴収不要だが、納税義務の確認)に関する記述」、「ドル建てでの支払いと、為替レートの適用時期」を和訳で確認し、費用管理と税務コンプライアンスを評価します。

  • マーケティング部/コンテンツ制作部:

    • 必要性: 執筆を依頼する記事のテーマ、トーン、ターゲット読者、キーワード、文字数などのコンテンツ要件、納期、品質基準を理解します。

    • ケース: 契約書に記載された「執筆すべきブログ記事の具体的なテーマと構成」、「SEOキーワードの組み込み要件」、「納期遅延時の対応プロトコル」、「コンテンツのレビューと修正プロセス」を和訳で確認し、業務遂行とコンテンツの品質確保、そしてプロジェクトの進捗管理を評価します。

よくある質問(FAQ)

業務委託契約書(個人事業主との間など)の翻訳に関して、お客様からよくいただくご質問とその回答をまとめました。


 

Q1: 業務委託契約書で最も注意すべき法的リスクは何ですか?

A1: 最も注意すべきは、「偽装請負(Misclassification of Independent Contractor)」のリスクです。これは、形式上は業務委託契約であっても、実態として企業が受託者に対して指揮命令を行っている、勤務時間や場所を厳しく指定している、専属性が高いなど、雇用契約に準ずる関係があると各国の労働法務当局や裁判所が判断した場合に発生します。偽装請負とみなされると、企業は以下のような重大なリスクを負う可能性があります。

  1. 1. 社会保険料の遡及徴収: 過去に遡って健康保険、年金、雇用保険などの社会保険料の企業負担分を徴収される。


  2. 2. 未払い賃金の支払い
    : 残業代、休日手当、深夜手当など、従業員として支払うべき賃金が未払いと判断され、遡って支払いを命じられる。


  3. 3. 労働基準法違反
    : 不当解雇、有給休暇の不付与など、労働基準法上の違反を問われる。

  4. 4. 損害賠償: 従業員からの訴訟により、慰謝料や賠償金を支払う義務が生じる。


  5. 5. 企業の信用失墜
    : 法令違反企業として企業イメージが損なわれる。

このリスクを回避するためには、翻訳だけでなく、現地の労働法務に詳しい専門家(弁護士、社会保険労務士など)との連携が不可欠ですし、当社はこれを強く認識しています。


 

Q2: 知的財産権の帰属に関する条項は、翻訳でどのように表現すべきですか?

A2: 受託者が業務遂行中に生み出した成果物に関する知的財産権は、企業が確実に取得できるように、「当該業務によって創作された全ての成果物およびその中に含まれる知的財産権(著作権、特許権、商標権、ノウハウ等を含むがこれらに限られない)は、当該成果物の納品と同時に、または報酬の全額支払いの時点で、受託者から企業に完全に、かつ追加の対価なしに譲渡されるものとする」といった包括的かつ厳格な表現を用いるべきです。米国法を準拠法とする場合は、「Work for Hire(職務著作)」の概念を明記することも有効です。翻訳においては、この複雑な権利移転を曖昧さなく、法的に有効な形で表現することが極めて重要です。


 

Q3: 国際業務委託において、準拠法と紛争解決地はどのように決めるべきですか?

A3: 準拠法は、契約の解釈に適用される法律です。通常、発注者である企業が自国法を準拠法とすることを希望しますが、受託者側の所在地国の法律が強行法規として適用される場合もあります。紛争解決地は、紛争が発生した場合に裁判を行う場所(裁判管轄)または仲裁を行う場所(仲裁地)です。 これらの決定は、以下の要素を考慮して慎重に行うべきです。

  • 自社の法的知識・費用: 自社にとって馴染みのある法律や、紛争解決コストが低い場所を選択する。

  • 相手方の受託能力: 相手方が受け入れやすい法律や場所を選ぶことで、契約締結を円滑にする。

  • 各国の強行法規: 労働法や消費者保護法など、準拠法で指定した法律に関わらず適用される可能性のある強行法規の有無。

  • 執行可能性: 判決や仲裁判断が現地の国で執行可能であるか。

翻訳においては、これらの戦略的な決定内容を、曖昧さなく正確に反映させることが重要です。


 

Q4: AI翻訳を業務委託契約書の翻訳に活用する際の注意点は何ですか?

A4: AI翻訳は、初稿の作成や用語の統一に非常に役立ちますが、業務委託契約書のような法的拘束力を持つ文書に単独で使用することは推奨されません。

  • 法的正確性: AIは各国の契約法、税法、労働法、特に「偽装請負」に関する複雑な法的判断基準や判例のニュアンスを完全に理解できません。誤訳は法的リスクに直結します。

  • 専門用語の正確性: 契約法務、税務、知的財産権に関する専門用語の正確な対応は、AIだけでは困難な場合があります。

  • 文化的背景: 各国の商慣習や文化的な背景、そして個人事業主との契約に対する社会的な受容度は、AIには再現が難しいことがあります。

したがって、AI翻訳を効率化ツールとして活用しつつも、必ず法務知識、税務知識、および国際取引の実務経験を持つ専門の翻訳者による徹底したレビューと校正を行うことが不可欠です。当社は、AIと専門家の人力翻訳を組み合わせることで、高品質かつ効率的な翻訳を提供しています。

 

まとめ

業務委託契約書(個人事業主との間など)の翻訳は、単なる言語の変換に留まらず、企業がグローバル市場で柔軟な外部リソースを活用し、同時に各国の厳格な法規制を遵守し、潜在的な法的リスクを回避するための極めて重要なプロセスです。

英文と和文の契約書が持つそれぞれの特徴を深く理解し、法務、経理、事業といった各部門が連携しながら、専門知識を持つ翻訳者の力を借りることが不可欠ですし、これまでの経験から当社はこれを強く認識しています。

特に、「独立した契約者であること」の厳格な表現と「偽装請負」リスクの回避、知的財産権の包括的な帰属、報酬と税務上の取り扱いの正確な翻訳、秘密保持義務とデータセキュリティ、損害賠償と免責、そして準拠法と紛争解決といった条項は、潜在的なリスクを最小限に抑え、個人事業主との良好な協業関係を築き、柔軟な外部リソース活用を成功させるための鍵となります。

当社は、このような複雑な業務委託契約書の翻訳において、貴社の各部門のニーズを理解し、最高品質の翻訳とサポートを提供することをお約束します。貴社の海外ビジネスにおける業務委託契約に関してご不明な点やご相談がありましたら、ぜひお気軽にお問い合わせください。

契約書の翻訳-1WIPジャパンは、東京弁護士共同組合神奈川県弁護士共同組合をはじめとする全国23の弁護士共同組合の特約店に認定されています。
ご相談は無料です。いつでもお気軽にご連絡ください。

 

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契約書翻訳に役立つリンク集

法務省大臣官房司法法制部「法令翻訳の手引き」(PDF)
日本法令外国語訳推進会議「法令用語日英標準対訳辞書」(PDF)
Publiclegal(英文契約書のテンプレートや書式を無料で提供)
日本法令外国語訳データベースシステム(法務省が開設した日本の法令の英訳サイト)
weblio 英和辞典・和英辞典
英辞郎 on the web

 

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