1. 翻訳されることを意識した日本語の文章になっていますか?
日本語マニュアルを英語その他外国語に翻訳する場合、翻訳されることを意識した日本語ライティングになっているか、確認する必要があります。
明瞭・簡潔・文化的に公平な文章か、なるべく主語と述語を明確にしているか、日本人だけが理解できる語呂合わせ・言葉遊び・俗語や、他の文化では理解されないような類推による説明・比喩・ユーモアを使っていないか、一部の人だけがわかる略語を避けているか、同じものを説明するのに異なる単語を使っていないか、等をよく再確認しておきましょう。
2. 実績・トライアル翻訳(試訳)を確認していますか?
信頼できそうな翻訳会社がいくつか見つかったら、遠慮せずその分野の実績や経験を詳しく尋ねましょう。責任ある翻訳会社は安易な納期を約束したり、専門外の仕事を引き受けたりしません。
実績を比較検討しても判断がつかない場合は、トライアル翻訳(試訳)が可能かたずねてみましょう。ボリュームや継続性によっては、無料でトライアル翻訳を受け付ける会社もあります。
3. 用語管理・スタイル管理は計画的に行っていますか?
マニュアル翻訳では、定期的なアップデートや改訂が一般的です。翻訳メモリを前提に、用語集(対訳表)やスタイルシートの作成を打診してみましょう。
しっかりした翻訳会社は、スタイルガイドで表現・表記のルールを決定しプロジェクトを進めています。スタイルガイドとは、訳文を記述する際の表記上の約束事で、例えば送り仮名(例:申し込む、申込む)やカタカナ連語(例:セキュリティチェック、セキュリティ・チェック)などのルールが詳細に決められています。
また、目次、本文、索引、ヘッダ、フッタ、著作権/PL 法に関連する統一表記についても確認しておきましょう。
4. アプリケーション、レイアウト、書式、図表処理の指定をしていますか?
InDesign、Adobe FrameMaker、QuarkXPress、MS-Word、HTMLなど、それぞれの特性やスタイルを把握して指定しましょう。TRADOSなど翻訳メモリ支援ツールで翻訳を行う場合、作成されている文書を編集可能なファイル形式に変換して翻訳作業を進めます。
アプリケーションに関するノウハウと経験をどれだけ持っているのか、翻訳会社に確認しましょう。また、TRADOS 使用が可能かどうかについて、ファイル形式なども確認しましょう。
5. 想定読者(ターゲット)を確認していますか?
マニュアルはその使用目的によって読者が違います。想定読者が初心者なのか、技術者・エンジニアなのか、役員・管理職なのか、一般工場労働者なのかを考えながら翻訳作業を進めなければなりません。
特に、技術的な知識や社内的な事情を知らない読み手(初心者など)向けマニュアルについては、いかに理解しやすい訳文にするか、注意を払うことが必要です。
6. 翻訳不要な箇所がないか、検討しましたか?
やみくもにマニュアル全文を翻訳せず、「本当に翻訳が必要な箇所はどこか」をよく絞りこむことにより、大幅に翻訳コストを削減できる場合があります。
重複する文章や読み手にとって不要な情報を削ぎ落とすことにより、翻訳コストを抑え、読者に好まれるマニュアルを作成することができます。
例えば、フランスのある金融機関はユーザーマニュアルを翻訳する際、500ページのマニュアルを230ページにスリム化できました。イギリスのある半導体メーカーはマニュアルの日本語化にあたり、翻訳対象を40%カットすることができました。
翻訳作業を始める前に、翻訳会社の協力を得て、「翻訳が本当に必要な箇所はどこか」について事前の絞りこみを検討しておきましょう。
7. 発注不要な作業がないか、確認しましたか?
翻訳メモリ(TRADOS)の管理、用語集、DTP・レイアウト、PDF化、印刷製本など、多言語化や翻訳作業に付随する様々な作業を全て外注するのか、テキストだけの翻訳なのか、予算と納期と社内体制を考慮しながら検討しましょう。
8. 翻訳会社にとって助けになる条件はないですか?
翻訳会社の制作プロセスにおいて、社内専門用語(部署名・商品名)、固有名詞(社名・人名・地名)などを調べることは大変手間のかかる作業ですが、発注者であるあなたの方で簡単に用意できる場合も多くあります。翻訳会社の負担が減れば、値引き交渉の好材料になります。
さらに、急ぎの仕事には通常、追加料金がかかりますが、事前準備を早めることで納期に余裕を持たせ、外注コストを節減できるかもしれません。翻訳会社の中には通常より長い納期の場合、ディスカウントしてくれるところもあります。また、納期に余裕を持たせることにより、その翻訳会社の人気翻訳スタッフ(トランスレータ)が翻訳を担当する確率を高めることにもなり、満足のいく納品を受けられます。
また、過去の翻訳成果物、用語集の準備、翻訳メモリなど提供する、納品方法を簡素化するなど、価格交渉の材料を探して交渉してみましょう。
9. 文章をグラフィックスにできませんか?
スウェーデンのある家具メーカーは約30カ国、17の言語で事業展開していますが、使用する組立マニュアル・説明書の80%は絵と図で構成されています。イギリスのヒースロー空港は、絵文字を駆使して、様々な国から集まる年間6千万人もの旅行者をさばいています。
あなたの会社が多言語展開を図る会社であればあるほど、デザイン上の工夫は大幅な翻訳コストと時間コストを抑えてくれます。翻訳を発注する前に、あなたの会社内で「文章のグラフィックス化」を一度検討してみましょう。翻訳会社の中には、一部こうした相談にのってくれるところがあります。打診してみましょう。