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Jul. 10, 2025

担保設定契約書 翻訳:国際金融取引におけるリスクヘッジの要点と関係部門の役割

 

今日のグローバル経済において、企業が海外から資金調達を行ったり、あるいは海外企業に融資を提供したりする際には、担保設定契約書(Security Agreement / Pledge Agreement / Mortgage Agreementなど、担保の種類により多様)の締結が極めて重要です。

この契約書は、債務者(Borrower / Debtor)が貸主(Lender / Secured Party)に対して、債務の履行を確保するために特定の財産を担保として提供することを合意する法的文書であり、金銭消費貸借契約書と並行して締結されます。

その正確な翻訳は、貸主の債権保全、債務者の法的義務の明確化、そして将来的な紛争の防止のために不可欠です。翻訳のミスや内容の理解不足は、予期せぬ担保権の無効化、債権回収不能リスク、追加費用の発生、国際的な信用失墜、さらには高額な法的紛争へと発展するリスクをはらんでいます。

特に、国ごとに民法、担保法、倒産法、登記制度、そして商慣習が大きく異なるため、単に言葉を置き換えるだけでなく、それぞれの法制度や担保の種類に応じた法的・財務的なニュアンスを踏まえた上で契約内容を理解し、翻訳することが不可欠です。

本記事では、これまでの経験に基づき、担保設定契約書の翻訳における重要なポイントと、貴社の各部門がどのように翻訳された契約書を活用し、関与していくべきかを具体的なケーススタディを交えて解説します。

貴社のグローバルビジネスにおいて、担保設定契約の適切な理解と運用を通じて、金融取引におけるリスクを効果的にヘッジするために、ぜひ本記事をお役立てください。

 

担保設定契約書とは何か?その目的と国際金融における重要性

担保設定契約書(Security Agreement, Pledge Agreement, Mortgage Agreementなど)は、債務者(または第三者保証人)が、特定の債務(通常は金銭消費貸借契約に基づく債務)の履行を担保するため、自らの財産を債権者(貸主)に提供することを合意する契約です。担保とは、債務者が債務を履行できない場合に、債権者がその財産から優先的に弁済を受けることができる権利を指します。

国際金融において、担保設定契約は以下のような多岐にわたる取引で利用されます。

  • クロスボーダー融資: 海外の金融機関から融資を受ける際や、海外企業に融資を行う際に、貸付債権を保全するために担保を設定する場合。

  • 海外子会社への融資: 親会社が海外子会社に資金を貸し付ける際に、子会社の資産を担保に取る場合。

  • プロジェクトファイナンス: 特定のプロジェクト資産(設備、売掛金、プロジェクトが生み出す収益など)を担保として融資を受ける場合。

  • M&Aにおける買収ファイナンス: 対象会社の資産や株式を担保として、買収資金を調達する場合。

この契約書は、担保の種類(動産、不動産、債権、株式など)によって名称や内容が異なりますが、一般的に以下の詳細な条項を含みます。

  • 被担保債務の特定(Secured Obligations):担保によって担保される具体的な債務(例:金銭消費貸借契約に基づく元本、利息、損害金、諸費用など)。どの金銭消費貸借契約の債務を担保するのかを明確に特定します。

  • 担保対象財産(Collateral / Secured Property):担保として提供される具体的な財産の種類、所在地、識別情報(例:不動産であれば地番、動産であれば製造番号、株式であれば発行会社名と株数、債権であれば債務者名と契約番号など)。

    • 不動産(Real Property / Real Estate):土地、建物など。抵当権(Mortgage)や根抵当権(Deed of Trust)が設定されます。

    • 動産(Personal Property / Chattel):機械設備、車両、在庫など。譲渡担保(Security Interest in Personal Property)や質権(Pledge)が設定されます。

    • 債権(Receivables / Claims):売掛金、貸付金など。債権譲渡担保(Assignment of Claims for Security)が設定されます。

    • 株式(Shares / Stock):株式質(Pledge of Shares)や株式譲渡担保(Security Interest in Shares)が設定されます。

    • 知的財産権(Intellectual Property Rights):特許、商標、著作権など。知的財産権担保(Security Interest in IP)が設定されることもあります。

  • 担保権の設定(Grant of Security Interest):債務者が貸主に対し、上記の財産に担保権を設定することを明確に表明する条項。

  • 対抗要件の具備(Perfection of Security Interest):担保権を第三者に対抗可能にするための手続き(登記、登録、占有移転など)に関する義務。

  • 担保権実行事由(Events of Default):債務不履行時など、どのような場合に担保権を実行できるかの条件。金銭消費貸借契約の期限の利益喪失事由と連動していることが多いです。

  • 担保権実行方法(Enforcement of Security Interest):担保権を実行する際の手続き、売却方法、売却代金の充当順序。

  • 表明保証(Representations and Warranties):債務者が提供する担保財産に関する事実(所有権の有無、第三者からの権利侵害の有無、瑕疵の有無など)の表明と保証。

  • 誓約(Covenants):担保設定後における債務者の義務(担保財産の維持管理、保険の付保、担保価値の維持、定期的な報告など)や制限(担保財産の処分制限、追加担保設定の禁止など)。

  • 費用負担(Expenses):担保設定、維持、実行にかかる費用の負担者。

  • 契約期間と終了(Term and Termination):契約の期間、債務完済時の担保権解除方法。

  • 準拠法と紛争解決(Governing Law and Dispute Resolution):契約に適用される法律、紛争が発生した場合の解決方法(裁判、国際仲裁、調停など)。

国際金融において担保設定契約書が特に重要なのは、以下の理由からです。

  • 各国の担保法制と登記制度: 国によって担保の種類、設定方法、対抗要件の具備方法、担保権実行手続き、倒産法における優先順位などが大きく異なります。日本の担保制度と異なる外国の制度を正確に理解し、契約書に反映させる必要があります。

  • 強制執行の可否: 担保権が国際的に有効に設定され、債務不履行時に現地の裁判所で強制執行可能であるかを保証するためには、現地の法律専門家との連携が不可欠ですし、当社はこれを強く認識しています。

  • 為替リスクと担保価値: 債務と担保財産の通貨が異なる場合、為替変動によって担保価値が変動するリスクを考慮する必要があります。

  • 税務上の影響: 担保設定自体に税金がかかる国や、担保権実行時の税務処理が異なる国もあります。

  • 優先順位の確保: 複数の債権者がいる場合、自身の担保権が他の債権者に対して優先的な地位を持つかを明確にすることが重要です。

英文担保設定契約書の特徴と和文契約書との違い

国際的な金融取引では、多くの場合、英文で担保設定契約書が作成されます。その特徴は、日本の和文契約書とは異なる点がいくつかあります。

  • Specific Identification of Collateral(担保対象財産の詳細な特定):

    • 担保として提供される財産の種類だけでなく、製造番号、所在地、登録番号、口座番号など、その財産を特定するための具体的な情報が非常に詳細に記述されます。これは、担保権の有効性と将来の担保権実行の可否に直結するためです。和文契約書に比べ、個々の財産に対する記述が厳密です。

  • Clear Grant of Security Interest(担保権設定の明確な文言):

    • 債務者が貸主に対し、「担保権を設定し、譲渡し、質入れし、保証する」(grants, assigns, pledges, and warrants to the Secured Party a security interest in…)といった、担保権の設定意思を明確かつ包括的に示す強力な文言が用いられます。これにより、担保権の範囲と強度が明確化されます。

  • Perfection of Security Interest(対抗要件の具備に関する詳細な義務):

    • 担保権を第三者に対抗可能にするための手続き(例:Uniform Commercial Code (UCC) Filing Statementの提出、不動産登記、占有の移転、債権譲渡通知など)に関する債務者の義務が詳細に規定されます。「債務者は、担保権の完全な設定および維持のために必要かつ望ましいあらゆる行為を行う義務を負う」といった包括的な条項が含まれることも多いです。

  • Extensive Representations and Warranties of Debtor(債務者の広範な表明保証):

    • 提供する担保財産に関する事実(所有権の有無、第三者からの権利侵害の有無、抵当権・質権設定の有無、法的許可の取得状況、真実性・正確性など)について、非常に広範かつ詳細な表明保証が設けられます。これは、貸主が担保の有効性を判断する上で重要な情報です。

  • Detailed Covenants of Debtor(債務者の詳細な誓約):

    • 担保設定後における債務者の義務として、担保財産の維持管理、保険の付保、担保価値の維持、定期的な報告、担保財産の処分・移転制限、追加担保設定の禁止など、多岐にわたる誓約が厳しく規定されます。これらの誓約違反は、担保権実行事由となり得ます。

  • Comprehensive Events of Default and Enforcement Rights(包括的な担保権実行事由と実行権限):

    • 債務不履行(金銭消費貸借契約の期限の利益喪失事由と連動)に加え、担保財産の滅失・損傷、担保価値の著しい下落、債務者の倒産手続開始、第三者による担保財産への差押えなど、多岐にわたる事由が担保権実行のトリガーとして規定されます。また、貸主が担保権を実行する際の具体的な手続き(売却方法、通知義務、売却代金の充当順序)が詳細に定められます。

  • Choice of Law for Perfections and Enforcement(対抗要件具備と実行に関する準拠法の選択):

    • 契約全体の準拠法とは別に、担保権の設定、対抗要件の具備、および実行に関しては、担保財産が所在する国の法律を準拠法とする旨が規定されることがあります。これは、担保の有効性を確保するために極めて重要です。

  • Waiver of Rights by Debtor(債務者による権利放棄):

    • 債務者が担保権実行の際に、特定の法的な権利(例:事前通知を受ける権利、担保財産を買い戻す権利など)を放棄する旨の条項が含まれることがあります。これは、貸主が迅速に担保権を実行できるようにするためです。

日本の和文担保設定契約書に比べ、英文担保設定契約書は、担保対象財産の詳細な特定、対抗要件の具備に関する厳格な義務、広範な表明保証と誓約、包括的な担保権実行事由と実行権限、そして担保権の有効性に関する準拠法の詳細な指定に関して、より詳細かつ厳密な記述が求められる傾向が強いです。翻訳においては、これらの法的・商業的ニュアンスを正確に反映した表現を用いることが不可欠です。

 

担保設定契約書翻訳における重要ポイント

担保設定契約書の翻訳は、貴社のグローバルな金融取引におけるリスクヘッジ、債権保全、法的義務の遵守に直接影響するため、極めて高い精度と専門性、そして法務・財務・経理部門など多岐にわたる視点が求められます。以下のポイントを押さえることが、成功への鍵となります。

  1. 担保対象財産(Collateral)の厳密な翻訳と特定:

    • 担保として提供される具体的な財産の種類(不動産、動産、債権、株式、知的財産権など)、所在地、識別情報(製造番号、地番、発行会社名など)を、曖昧さなく厳密に翻訳することが不可欠です。特定が不十分だと、将来の担保権実行が困難になる可能性があります。特に、将来取得する財産(After-Acquired Property)や、変動する集合財産(Floating Charge)が担保対象に含まれるかを正確に把握すべきです。

  2. 対抗要件の具備(Perfection)に関する条項の徹底的な翻訳と理解:

    • 担保権を第三者に対抗可能にするための手続き(登記、登録、占有移転、債権譲渡通知、UCCファイリングなど)に関する債務者の義務を厳密に翻訳することが極めて重要です。国ごとにその方法は大きく異なり、この手続きを怠ると、担保権が有効に設定されず、債権が保全されないリスクがあるため、法務部門や現地の法律専門家と連携し、その具体的な手続きと期日を詳細に把握すべきです。

  3. 担保権実行事由(Events of Default)と実行方法(Enforcement)の慎重な翻訳:

    • どのような場合に担保権を実行できるのか(金銭消費貸借契約の期限の利益喪失事由との連動、担保財産の滅失・損傷、担保価値の著しい下落、債務者の倒産など)を慎重に翻訳することが不可欠です。また、貸主が担保権を実行する際の具体的な手続き(通知義務、売却方法、売却代金の充当順序)についても正確に翻訳し、債務不履行時の対応を明確にしておく必要があります。この条項は、債権回収の実現可能性に直結します。

  4. 表明保証(Representations and Warranties)と誓約(Covenants)の精緻な翻訳:

    • 提供する担保財産に関する所有権の有無、第三者からの権利侵害の有無、瑕疵の有無といった表明保証、および担保設定後における担保財産の維持管理、保険の付保、担保価値の維持、処分制限、追加担保設定の禁止といった誓約を精緻に翻訳することが極めて重要です。これらの違反も担保権実行事由となり得るため、その内容を正確に把握すべきです。

  5. 準拠法(Governing Law)と紛争解決(Dispute Resolution)の正確な指定:

    • 契約に適用される法律、そして紛争が発生した場合の解決方法(国際仲裁、調停、裁判など)、仲裁地の選定、仲裁機関、仲裁規則、仲裁人の数、仲裁判断の拘束力などを正確に翻訳することが不可欠です。特に担保設定契約では、契約全体の準拠法とは別に、担保権の設定、対抗要件の具備、実行に関しては、担保財産が所在する国の法律を準拠法とする旨が規定されることが多く、その内容を正確に把握すべきです。

    • 当社は、このような複雑な準拠法と紛争解決に関する条項の正確な翻訳を特に重視しています。

  6. AI翻訳の適切な活用と専門家による最終確認:
    AI翻訳技術は、初稿の作成や用語の統一に役立ちますが、担保設定契約書のような法的・専門性の高い文書においては、各国の担保法、倒産法、登記制度、業界特有の専門用語を完全に理解することは困難です。AIを効率化ツールとして最大限活用しつつも、法務知識、財務・不動産・動産などの専門知識、および国際金融の実務経験を持つ専門の翻訳者による徹底したレビューと校正が不可欠です。人間による精査が、潜在的なリスクを最小限に抑え、安全な国際取引の基盤となります。

  7. 強固な情報セキュリティ体制:
    担保設定契約書には、貴社の財務状況、資産情報、事業計画など、企業の信用や事業の成否に直結する極めて機密性の高い情報が含まれることが一般的です。これらの情報が外部に漏洩した場合、企業の信用失墜、資金調達への悪影響、法的な責任問題など、甚大な損害を被る可能性があります。そのため、翻訳を依頼する際には、翻訳会社が厳格な情報セキュリティポリシーを定め、技術的・物理的・人的な対策を徹底しているかを必ず確認すべきですし、当社はこれを徹底しています。

担保設定契約書の翻訳は誰に必要なのか?ケーススタディで見る関係部門の役割

担保設定契約書は、グローバルな金融取引における債権保全とリスク管理を左右するため、多岐にわたる部門や関係者がその内容を理解し、翻訳された情報に基づいて連携することが不可欠です。

 

ケーススタディ1:日本の金融機関による海外企業への不動産担保融資

 

状況: 日本の大手銀行が、ベトナムに進出する日系企業に対し、ベトナム国内の不動産を担保として事業資金を融資するケース。英文の担保設定契約書(Mortgage Agreement)を締結。

  • 融資審査部/債権管理部:

    • 必要性: 担保となる不動産の特定(地番、面積、評価額)、不動産に設定される抵当権の優先順位、担保権実行事由、実行方法などを詳細に確認します。融資回収の可能性とリスク評価に直結します。

    • ケース: 契約書に記載された「担保不動産の詳細な表示と評価額」、「ベトナム法に基づく抵当権設定の手続きと登記要件」、「債務不履行時の担保不動産の売却手続きと売却代金の充当順序」を和訳で確認し、債権保全策とリスク対応を評価します。過去には、担保の特定が不十分だったため、将来の担保権実行に支障が出た事例がありました。当社は、このような担保対象の正確な翻訳を特に重視しています。

  • 法務部/国際法務部:

    • 必要性: 契約全体の法的妥当性、ベトナムの不動産法・担保法・倒産法における抵当権の有効性、対抗要件の具備方法、担保権実行の法的プロセス、準拠法(ベトナム法またはシンガポール法)、紛争解決条項の適切性を確認します。

    • ケース: 契約書に記載された「ベトナム法に基づく抵当権設定に必要な政府機関の承認取得義務」、「担保不動産に対する債務者の表明保証(瑕疵や先順位抵当権の有無)」、「ベトナムでの抵当権実行に関する法的手続きと期間」を和訳で確認し、法的リスクと債権保全策を評価します。

  • 経理部/財務部:

    • 必要性: 担保に関する会計処理(担保評価、減損の可能性)、担保設定・維持にかかる費用、将来的な税務上の影響などを確認します。

    • ケース: 契約書に記載された「担保評価の基準と定期的な評価義務」、「担保設定にかかる登録免許税などの費用負担」を和訳で確認し、財務インパクトと費用管理を評価します。


 

ケーススタディ2:日本の商社が海外子会社の売掛金を担保に資金調達

 

状況: 日本の総合商社が、欧米の銀行から、海外子会社の売掛金を担保としたABL(Asset Based Lending)による資金調達を行うケース。英文の担保設定契約書(Security Agreement / Receivables Pledge Agreement)を締結。

  • 財務部/資金調達部:

    • 必要性: 担保となる売掛金の範囲(現行および将来発生分)、担保評価方法、貸付極度額、担保権実行事由などを詳細に確認します。資金調達の安定性と回収リスクに直結します。

    • ケース: 契約書に記載された「担保対象となる売掛金の具体的な定義と債務者の特定」、「売掛金発生後の担保権の設定手続き(通知方法など)」、「売掛金回収状況に関する報告義務と担保価値維持義務」を和訳で確認し、資金調達の実行可能性とリスクを管理します。

  • 法務部/国際取引部:

    • 必要性: 契約全体の法的妥当性、各国の債権譲渡に関する法制、対抗要件の具備方法(UCCファイリング、通知など)、担保権実行の法的プロセス、表明保証、誓約、準拠法(ニューヨーク州法または英国法)、紛争解決条項の適切性を確認します。

    • ケース: 契約書に記載された「売掛金に対する債務者の所有権と第三者からの権利侵害がないことの表明保証」、「売掛債権譲渡の通知義務と通知方法」、「米国統一商事法典(UCC)に基づくファイリングステートメントの提出義務」を和訳で確認し、法的リスクと債権保全策を評価します。

  • 経理部:

    • 必要性: 担保対象となる売掛金の会計処理、売掛金管理体制への影響、担保設定・維持にかかる費用などを確認します。

    • ケース: 契約書に記載された「担保設定後の売掛金回収口座の指定と管理方法」、「売掛金に関する定期的な監査権限」を和訳で確認し、経理処理と内部統制を管理します。

よくある質問(FAQ)

担保設定契約書の翻訳に関して、お客様からよくいただくご質問とその回答をまとめました。

Q1: 担保設定契約書における「担保対象財産(Collateral)」の条項は、翻訳でどのように注意すべきですか?

A1: 担保対象財産は、債権保全の根幹となるため、極めて詳細かつ厳密な翻訳が求められます。翻訳においては、担保の種類(不動産、動産、債権、株式、知的財産権など)だけでなく、その具体的な識別情報(地番、製造番号、登録番号、株式の銘柄・株数、債務者名など)を曖昧さなく正確に表現することが不可欠です。特に、将来取得する財産(After-Acquired Property)や、変動する集合財産(Floating Charge)が担保対象に含まれる場合、その範囲と特定方法を明確に理解し、翻訳する必要があります。不正確な特定は、将来の担保権実行が困難になるリスクを招きます。

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Q2: 「対抗要件の具備(Perfection)」に関する条項の翻訳で、特に注意すべき点は何ですか?

A2: この条項は、担保権を第三者に対抗可能にするための手続きを定めます。翻訳においては、登記、登録、占有移転、債権譲渡通知、UCCファイリングなど、国や担保の種類によって異なる具体的な手続きを厳密に表現することが極めて重要です。この手続きを怠ると、担保権が有効に設定されず、債権が保全されないリスクがあるため、法務部門や現地の法律専門家と連携し、その具体的な手続き、必要な書類、および期日を詳細に把握し、翻訳に反映させるべきです。

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Q3: 国際的な担保設定契約で、「担保権実行事由(Events of Default)と実行方法(Enforcement)」の取り扱いはなぜ重要視されますか?

A3: これらの条項は、債務不履行時に貸主がどのように債権を回収するかを定めるため、非常に重要です。翻訳においては、担保権を実行できる具体的な事由(例:金銭消費貸借契約の期限の利益喪失、担保財産の滅失・損傷、担保価値の著しい下落、債務者の倒産など)を明確に表現することが不可欠です。さらに、担保権実行の具体的な手続き(通知義務、売却方法、売却代金の充当順序、差押え、競売など)についても正確に翻訳し、現地の法規制に則った形で実行可能であるかを確認すべきです。不正確な翻訳は、担保権の行使を妨げ、債権回収を困難にするリスクを伴います。

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Q4: 担保設定契約における「準拠法(Governing Law)と紛争解決(Dispute Resolution)」の取り扱いは、どのように注意して翻訳すべきですか?

A4: 担保設定契約では、契約全体の準拠法とは別に、担保権の設定、対抗要件の具備、実行に関しては、担保財産が所在する国の法律を準拠法とする旨が規定されることが非常に多く、当社はこれを強く認識しています。翻訳においては、この「二重の準拠法」の指定とその意味合いを正確に理解し、表現することが不可欠です。また、紛争解決方法(国際仲裁、裁判など)も、担保権の有効性や実行可能性に直接影響するため、その指定された管轄や手続きを正確に把握し、翻訳に反映すべきです。

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Q5: 担保設定契約書で「表明保証(Representations and Warranties)と誓約(Covenants)」が詳細に記述されるのはなぜですか?

A5: これらは、債務者が提供する担保財産に関する現状の事実を保証し(表明保証)、担保設定後もその財産の価値や貸主の権利を保護するための義務を定める(誓約)ものです。翻訳においては、担保財産の所有権の有無、第三者の権利の有無、法的有効性といった表明保証、および担保財産の維持管理義務、保険付保義務、処分制限、追加担保設定の禁止といった誓約を精緻に表現することが重要です。これらの違反は、期限の利益喪失や担保権実行の事由となり得るため、その法的含意を正確に伝える翻訳が求められます。

 

まとめ

担保設定契約書の翻訳は、単なる言語の変換に留まらず、企業がグローバルな金融取引における潜在的なリスクを最小限に抑え、債権を確実に保全するための極めて重要なプロセスです。

英文と和文の契約書が持つそれぞれの特徴を深く理解し、法務、財務、経理、債権管理といった各部門が連携しながら、専門知識を持つ翻訳者の力を借りることが不可欠ですし、これまでの経験から当社はこれを強く認識しています。

特に、担保対象財産の厳密な特定、対抗要件の具備、担保権実行事由と実行方法、表明保証と誓約、そして準拠法と紛争解決といった条項は、潜在的な法的・財務的リスクを最小限に抑え、グローバルな金融取引を安全に実行するための鍵となります。

 

当社は、このような複雑な担保設定契約書の翻訳において、貴社の各部門のニーズを理解し、最高品質の翻訳とサポートを提供することをお約束します。貴社の海外ビジネスにおける担保設定契約に関してご不明な点やご相談がありましたら、ぜひお気軽にお問い合わせください。

 

契約書の翻訳-1WIPジャパンは、東京弁護士共同組合神奈川県弁護士共同組合をはじめとする全国23の弁護士共同組合の特約店に認定されています。
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法務省大臣官房司法法制部「法令翻訳の手引き」(PDF)
日本法令外国語訳推進会議「法令用語日英標準対訳辞書」(PDF)
Publiclegal(英文契約書のテンプレートや書式を無料で提供)
日本法令外国語訳データベースシステム(法務省が開設した日本の法令の英訳サイト)
weblio 英和辞典・和英辞典
英辞郎 on the web

 

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