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Jul. 10, 2025

覚書(MOU:Memorandum of Understanding)翻訳:グローバルな合意形成の第一歩を確実に

 

今日の国際ビジネスにおいて、企業間の提携、共同プロジェクト、戦略的アライアンスを検討する際、本格的な契約締結に至る前に、まずは覚書(MOU:Memorandum of Understanding)や意向表明書(LOI:Letter of Intent)を締結するケースが一般的です。

これらの文書は、当事者間の基本的な理解、協力の意図、主要な合意事項、そして今後の交渉の方向性を示すものであり、本格的な契約書の前段階として非常に重要な役割を果たします。

その正確な翻訳は、関係者間の認識齟齬を防ぎ、信頼関係を構築し、将来の本格的な契約交渉を円滑に進めるために不可欠です。翻訳のミスや内容の理解不足は、期待値のずれ、時間とコストの浪費、そして提携関係自体の頓挫へと発展する重大なリスクをはらんでいます。

特に、MOUやLOIは法的拘束力がある場合とない場合がありますが、いずれにしてもその内容が後の交渉や正式契約に大きな影響を与えるため、細心の注意が必要です。国ごとに法制度や商慣習、そして文書の「拘束力」に対する考え方が異なるため、単に言葉を置き換えるだけでなく、それぞれの法的・商業的なニュアンスを踏まえた上で内容を理解し、翻訳することが不可欠です。

本記事では、これまでの経験に基づき、覚書(MOU)翻訳における重要なポイントと、貴社の各部門がどのように翻訳された覚書を活用し、関与していくべきかを具体的なケーススタディを交えて解説します。

貴社のグローバルなパートナーシップ戦略において、覚書の適切な理解と運用を通じて、円滑な国際協業と事業成長を実現するために、ぜひ本記事をお役立てください。

 

覚書(MOU)とは何か?その目的と国際ビジネスにおける重要性

覚書(MOU:Memorandum of Understanding)は、複数の当事者間が特定の目的のために協力する意図や、特定の取引に関する基本的な合意事項を記載した文書です。多くの場合、法的拘束力を持たないか、一部の条項のみ法的拘束力を持つ「紳士協定」的な性質を持ちます。類似の文書として、より当事者の一方からの意思表明という性格が強い意向表明書(LOI:Letter of Intent)や、両者の合意事項をまとめる基本合意書(Basic Agreement)などがあります。

国際ビジネス環境において、この覚書は以下のような多岐にわたる場面で利用されます。

  • 共同研究・開発の検討: 複数の企業や研究機関が、新たな技術や製品の共同研究・開発を開始する前に、基本的な協力範囲や役割分担を確認する。

  • 戦略的提携・アライアンスの検討: 新たな市場への参入や、既存事業の強化のために、他社との提携を模索する初期段階で、協力の意図と範囲を明確にする。

  • M&A・事業譲渡の初期段階: デューデリジェンスの開始、独占交渉権の付与など、本格的なM&A契約締結に向けた初期的なステップを踏み出す際に、主要条件を確認する。

  • 合弁事業(Joint Venture)設立の検討: 新たな合弁会社設立の可能性を探る段階で、事業目的、出資比率、ガバナンスに関する基本的な考え方を確認する。

  • 政府・公共機関との協力: 国家間の経済協力、インフラプロジェクト、環境保護プログラムなどにおいて、政府機関や国際機関と協力の枠組みを定める。

覚書は、以下の重要な要素を含みます。

  • 当事者(Parties): 覚書を締結する全ての企業、組織、または個人。

  • 目的(Purpose): 覚書締結の背景と、協力関係または取引の目的。

  • スコープ・協力範囲(Scope of Cooperation): 共同で取り組む活動の範囲、役割分担、検討事項など。

  • 主要な合意事項(Key Understandings): 取引の対象、対価の目安、期間など、現時点での基本的な理解。

  • 今後のスケジュール(Next Steps / Timeline): 今後の交渉プロセス、マイルストーン、目標とする正式契約締結時期など。

  • 秘密保持義務(Confidentiality): 覚書の内容や、今後共有される機密情報に関する秘密保持義務(通常、法的拘束力を持つ)。

  • 準拠法(Governing Law): 覚書が法的拘束力を持つ部分について適用される法律(法的拘束力がない場合でも、解釈の指針として指定されることがある)。

  • 法的拘束力の有無(Binding / Non-Binding Provisions): 覚書の全体または一部が法的に拘束力を持つか否かの明確な記述。

  • 費用負担(Expenses): 交渉にかかる費用の負担について。

国際ビジネスにおける覚書の重要性は、以下の理由から非常に高いです。

  • 信頼関係の構築: 正式契約前の段階で、互いの協力意思や基本的な考え方を確認することで、当事者間の信頼関係を醸成し、その後の交渉を円滑に進める基盤となります。

  • 交渉の効率化: 主要な合意事項や今後の方向性を事前に確認することで、本契約交渉における議論の焦点を絞り、時間の浪費を防ぎます。

  • リスクの限定: 法的拘束力を持たない文書として締結されることが多いため、本格的な契約を締結する前に、当事者がコミットメントを限定しつつ、協力関係や取引の可能性を模索できます。

  • 社内承認プロセスの推進: 覚書を締結することで、社内の関連部門や経営層に対し、提携や取引の具体的な検討が開始されたことを示し、承認プロセスを進めるための根拠とすることができます。

  • 多言語環境での認識共有: 異なる言語や文化背景を持つ当事者間で、共通の理解と目的意識を持つために、正確な翻訳が不可欠です。

英文覚書(MOU)の特徴と和文覚書との違い

国際的なビジネスシーンでは、多くの場合、英文で覚書(MOU)や意向表明書(LOI)が作成されます。その特徴は、日本の和文文書とは異なる点がいくつかあります。

  • Clear Statement of Binding / Non-Binding Nature(法的拘束力の有無の明確な宣言):

    • 英文のMOUやLOIにおいて最も重要な特徴の一つが、各条項または文書全体が法的拘束力を持つか否かを明確に宣言することです。通常、「This MOU is intended to be a non-binding expression of the parties' intent, except for the provisions regarding confidentiality and governing law.(本覚書は、当事者の意図を示す非拘束的なものと解されるが、秘密保持および準拠法に関する規定を除く)」といった表現が用いられます。和文では「法的拘束力を持たない」と明記されていても、その解釈に幅が生じることがありますが、英文ではより厳密な表現が求められます。

  • "Whereas" Clauses for Background and Rationale(背景と理由付けのための「Whereas」条項):

    • MOUの冒頭で、「WHEREAS, Party A is engaged in... and WHEREAS, Party B wishes to explore collaboration...(鑑みるに、甲は~に従事しており、鑑みるに、乙は~の協力を模索することを希望する...)」といった「Whereas」で始まる節が多用されます。これは、覚書締結に至った背景、当事者の現状、協力の理由などを明確にするためのもので、合意の意図を裏付ける役割を果たします。

  • Specificity of "Non-Binding" Language (非拘束条項の具体性):

    • 単に「法的拘束力なし」と記載するだけでなく、具体的にどの部分が拘束力を持ち、どの部分が持たないのか、また、法的拘束力を持たない部分であっても、当事者が「真摯に努力する(best efforts)」義務を負うのかどうかなど、その「非拘束」の範囲と性質がより具体的に記述される傾向があります。

  • Inclusion of Legally Binding Provisions (法的拘束力を持つ条項の組み込み):

    • MOU全体は非拘束であっても、交渉の過程で開示される秘密情報の取り扱い(Confidentiality)、特定期間における独占交渉権(Exclusivity)準拠法(Governing Law)紛争解決(Dispute Resolution)費用負担(Expenses)に関する条項は、通常、法的拘束力を持つ旨が明記されます。これらの条項は、本契約締結に至らなかった場合でも、当事者を保護するために不可欠です。

  • Governing Law and Dispute Resolution (準拠法と紛争解決):

    • 例えMOUが非拘束的であっても、法的拘束力を持つ条項(秘密保持など)の解釈や、MOU自体から生じる紛争(例えば、独占交渉権違反など)が発生した場合に備え、準拠法と紛争解決のメカニズム(例:国際仲裁)が明確に指定されます。これは、国際的なMOUにおいて極めて重要な要素です。

日本の和文覚書に比べ、英文MOUは、法的拘束力の有無に関する明確かつ詳細な記述、背景と理由付けの明示、非拘束条項の具体的な定義、法的拘束力を持つ特定の条項の組み込み、そして準拠法および紛争解決の指定に関して、より厳密かつ戦略的な記述が求められる傾向が強いです。翻訳においては、これらの法的・商業的なニュアンスを正確に反映した表現を用いることが不可欠です。

 

覚書(MOU)翻訳における重要ポイント

覚書(MOU)の翻訳は、貴社のグローバルなパートナーシップ戦略の成否、関係者間の認識共有、そして潜在的な法的・商業的リスクの回避に直接影響するため、極めて高い精度と専門性、そして法務、事業といった多岐にわたる部門の連携と視点が求められます。以下のポイントを押さえることが、成功への鍵となります。

  1. 法的拘束力の有無に関する正確な翻訳

    • 覚書全体または特定の条項が「法的拘束力を持つ(binding)」のか、「持たない(non-binding)」のかを、極めて明確かつ正確に翻訳することが不可欠です。この部分の誤訳は、将来の法的な義務の有無に関する重大な誤解を招き、予期せぬ法的紛争や賠償責任につながる可能性があります。

    • 当社は、この「法的拘束力」の表現の厳密性を特に重視しています。

  2. 秘密保持義務(Confidentiality)条項の厳密な翻訳

    • MOUで最も一般的に法的拘束力を持つ条項であり、開示される機密情報の範囲、秘密保持の期間、使用目的の制限、情報返還義務、例外規定などを厳密に翻訳することが不可欠です。この条項の不備は、企業秘密の漏洩や競争優位性の喪失につながります。

  3. 独占交渉権(Exclusivity)条項の明確な翻訳

    • 特定の期間、特定の相手方とのみ交渉を行う独占交渉権が設定される場合があります。この期間、範囲、違反した場合の措置などを明確に翻訳することは、将来の交渉戦略に直接影響します。特に「best efforts(最大限の努力)」と「reasonable efforts(合理的な努力)」のような表現の違いが、後の義務の範囲に影響を与えるため、注意が必要です。

  4. 目的(Purpose)とスコープ(Scope)の丁寧な翻訳

    • 覚書を締結する背景、協力の目的、検討の範囲を明確に翻訳することで、当事者間の期待値を一致させ、その後の交渉の方向性を定めることができます。曖昧な表現は、将来のプロジェクト範囲の拡大や縮小に関する意見の対立を生む可能性があります。

  5. 主要な合意事項(Key Understandings)の明確な翻訳

    • 現時点での基本的な理解、例えばM&Aにおける対価の目安、事業の対象範囲、役割分担などを明確に翻訳することが不可欠です。これらは「非拘束」であっても、その後の交渉の出発点となるため、認識齟齬がないように注意すべきです。

  6. 準拠法(Governing Law)と紛争解決(Dispute Resolution)の正確な指定

    • 法的拘束力を持つ条項の解釈や、MOUに起因する紛争が発生した場合に備え、適用される法律(準拠法)と紛争解決の手段(裁判、国際仲裁、調停など)、裁判管轄、仲裁地などを正確に翻訳することが不可欠です。

  7. 強固な情報セキュリティ体制

    • 覚書には、企業の提携戦略、将来のM&A計画、技術情報、市場戦略など、機密性の高い情報が含まれます。これらの情報が外部に漏洩した場合、企業の競争力低下、信用失墜、そして提携関係の破綻など、甚大な損害を被る可能性があります。そのため、翻訳を依頼する際には、翻訳会社が厳格な情報セキュリティポリシーを定め、技術的・物理的・人的な対策を徹底しているかを必ず確認すべきですし、当社はこれを徹底しています。

  8. AI翻訳の適切な活用と専門家による最終確認

    • AI翻訳技術は、初稿の作成や用語の統一に役立ちますが、覚書のような法的拘束力の有無、微妙なニュアンス、商慣習の違いが重要な文書においては、その複雑な意味合いを完全に理解することは困難です。AIを効率化ツールとして最大限活用しつつも、国際法務知識、当該ビジネス分野の実務経験を持つ専門の翻訳者による徹底したレビューと校正が不可欠です。人間による精査が、潜在的なリスクを最小限に抑え、グローバルな合意形成の基盤となります。

覚書(MOU)の翻訳は誰に必要なのか?ケーススタディで見る関係部門の役割

覚書(MOU)は、企業のグローバルなパートナーシップや取引戦略の第一歩となる文書であり、多岐にわたる部門や関係者がその内容を理解し、翻訳された情報に基づいて連携することが不可欠です。

 

ケーススタディ1:日本のIT企業がインドのソフトウェア開発企業との共同開発MOUを締結

 

状況: 日本のIT企業A社が、インドのソフトウェア開発企業B社と、新たなAI技術の共同開発に関する覚書(MOU)を英語で締結。このMOUを、日本のA社側の関係者(経営層、R&D部門、法務部)向けに日本語に翻訳する必要がある。

  • 法務部:

    • 必要性: MOUの法的拘束力の有無、特に秘密保持条項や独占交渉権に関する法的義務の範囲、そして準拠法(例:シンガポール法)と紛争解決に関する条項の適切性を確認します。将来の正式契約交渉における法的リスクと機会を評価します。

    • ケース: 翻訳されたMOUに記載された「本覚書は秘密保持条項および独占交渉権に関する条項を除き、法的拘束力を持たない」という明確な記述、および「AI技術の共同開発に関する情報共有時の秘密保持義務の範囲と期間」、「3ヶ月間の独占交渉権の付与と、その期間中に他社との交渉を禁じる義務」を和訳で確認し、法的リスクとコンプライアンスを評価します。

  • 研究開発(R&D)部門:

    • 必要性: 共同開発の対象となるAI技術の範囲、役割分担、目標、期間、そして成果物の知的財産権の初期的な考え方を理解します。MOUに基づき、共同開発の具体的な計画を策定します。

    • ケース: 翻訳されたMOUに記載された「共同開発の対象となるAI技術の種類(例:自然言語処理モデルの開発)」、「A社がAIモデルのアルゴリズム開発、B社がデータセット構築と学習を担当する役割分担」、「開発目標としてのプロトタイプ完成時期」、「共同開発で生じる知的財産権の初期的な帰属に関する合意」を和訳で確認し、技術開発の実現可能性とロードマップを評価します。

  • 事業部/経営層:

    • 必要性: 共同開発が将来的に自社の製品・サービスにどのように貢献するか、新たな市場機会を創出するか、そして企業価値向上に繋がるかを評価します。MOU締結による戦略的意義と、今後の投資判断の基礎とします。

    • ケース: 翻訳されたMOUに記載された「共同開発の最終目的としての〇〇製品への実装と市場投入目標」、「将来的な共同事業化の可能性に関する記述」、「本覚書締結による、双方の市場におけるブランドイメージ向上効果」を和訳で確認し、事業戦略との整合性を評価します。

 

ケーススタディ2:米国の大手製薬企業が日本のバイオベンチャーとのライセンス供与に向けたLOIを締結

 

状況: 米国の大手製薬企業C社が、日本のバイオベンチャーD社が開発中の画期的な新薬候補(パイプライン)について、将来的なライセンス供与を検討する意向表明書(LOI)を日本語で締結。このLOIを、C社の本社関係者(法務部、R&D部門、事業開発部門)向けに英語に翻訳する必要がある。

  • 法務部:

    • 必要性: LOIの法的拘束力の有無(特に、デューデリジェンスに関する独占交渉権や費用負担など)、将来のライセンス契約に向けた主要条件の法的リスク、日本の知的財産法や薬事法との関連、準拠法(日本法)と紛争解決に関する条項の適切性を確認します。

    • ケース: 翻訳されたLOIに記載された「本意向表明書は、秘密保持義務およびデューデリジェンス費用に関する条項を除き、法的拘束力を持たない」という明確な記述、「C社によるD社へのデューデリジェンスの実施と、それに伴う情報開示に関する取り決め」、「一定期間の独占交渉権の付与」を英訳で確認し、法的リスクとコンプライアンスを評価します。

  • 研究開発(R&D)部門:

    • 必要性: 新薬候補の作用機序、臨床試験のフェーズ、安全性・有効性データ、これまでの研究成果、将来の開発計画などを正確に理解します。LOIに基づき、デューデリジェンスを通じて技術的・科学的評価を詳細に行います。

    • ケース: 翻訳されたLOIに記載された「ライセンス供与の対象となる新薬候補の化学構造、作用機序の概要」、「現状の臨床試験フェーズ(例:フェーズⅡa)とこれまでのデータ開示範囲」、「将来的な臨床開発計画の概略」を英訳で確認し、技術的評価と開発可能性を検討します。

  • 事業開発部門:

    • 必要性: ライセンス供与の対象となる新薬候補の市場性、競合状況、収益性、将来的な販売戦略などを評価します。LOIで示されたライセンス条件の目安(一時金、ロイヤルティ率など)が自社の事業計画と合致するかを確認します。

    • ケース: 翻訳されたLOIに記載された「ライセンス料の目安としての『一時金(Upfront Payment)』と『売上高に応じたロイヤルティ』に関する記述」、「将来的な販売地域に関するC社の優先権」、「両社間の商業的協力の意図に関する記述」を英訳で確認し、事業性評価と市場戦略への影響を評価します。

よくある質問(FAQ)

覚書(MOU)の翻訳に関して、お客様からよくいただくご質問とその回答をまとめました。

Q1: 覚書(MOU)は法的拘束力がありますか?翻訳上の注意点は?

A1: 覚書(MOU)は、その目的や記述によって法的拘束力を持つ場合と持たない場合があります。これが最も重要なポイントであり、翻訳においても細心の注意が必要です。

  • 法的拘束力がない部分: 協力の意図、共同で何かを「検討する」「努力する」といった一般的な協力姿勢を示す条項は、通常、法的拘束力を持ちません。翻訳では、"intend to," "endeavor to," "seek to" など、拘束力の弱い動詞と表現を用いる必要があります。

  • 法的拘束力がある部分: 秘密保持義務(Confidentiality)独占交渉権(Exclusivity)準拠法(Governing Law)紛争解決(Dispute Resolution)費用負担(Expenses)に関する条項は、当事者を保護するために、MOU全体が非拘束的であっても、通常は法的拘束力を持つ旨が明確に記載されます。翻訳では、これらの条項が「shall」「will」といった義務を示す強い動詞で記述され、その法的拘束力が明確に伝わるようにする必要があります。

翻訳者は、原文の各条項が持つ法的意味合いと拘束力の強弱を正確に理解し、それをターゲット言語で適切に表現する能力が求められます。この理解が不十分だと、意図しない法的義務を負う(または負わせる)可能性が生じます。

Q2: LOI(意向表明書)とMOU(覚書)の違いは何ですか?翻訳上の違いは?

A2:

  • LOI(Letter of Intent:意向表明書):

    • 性質: 通常、一方の当事者(例:買収希望者、投資家)が、相手方に対して「このような条件で取引を行う意思がある」という意図を表明する文書です。

    • 目的: 独占交渉権の確保、デューデリジェンスの開始許可を得るなど、交渉を次の段階に進めるためのステップとして用いられます。

    • 翻訳上の違い: 「I/We intend to...(当方は~する意図である)」のような、一方的な意思表明を反映した表現が多くなります。

  • MOU(Memorandum of Understanding:覚書):

    • 性質: 通常、複数の当事者が「互いに協力する意思がある」こと、または「現時点で合意した事項」を確認し合う文書です。

    • 目的: 共同事業の検討、技術協力の枠組み設定など、対等な立場で協力関係を構築する初期段階で用いられます。

    • 翻訳上の違い: 「The Parties agree to...(当事者は~に合意する)」や「It is understood that...(~と理解される)」のような、双方の合意や理解を反映した表現が多くなります。

どちらの文書も、秘密保持や独占交渉権など、一部の条項には法的拘束力を持たせるのが一般的です。翻訳者は、文書の種類とそれに伴う表現の傾向と拘束力の強弱を理解し、適切に訳し分ける必要があります。

Q3: 覚書(MOU)の翻訳を依頼する際、どのような情報を提供すれば、より良い翻訳が得られますか? 

A3: より高品質な覚書翻訳のために、以下の情報を提供いただけると非常に役立ちます。

  • 覚書締結の背景と目的: なぜこの覚書を締結するのか、どのようなビジネス上の意図があるのかを理解することで、翻訳者は文書のニュアンスをより正確に捉えられます。

  • 関連する契約や文書: 将来締結される可能性のある本契約のドラフト、過去の関連文書などがあれば、用語の一貫性を保ち、文脈を深く理解するのに役立ちます。

  • 関与する当事者の情報: 企業名、事業内容、関係性などを知ることで、適切な固有名詞の使用や、ビジネス上の意味合いを理解する手助けになります。

  • 特定の専門用語集: 業界固有の用語、技術用語、社内略語など、事前に用語集があれば、翻訳の一貫性と正確性が向上します。

  • 翻訳の目的: 内部共有用なのか、相手方への提示用なのか、あるいは公証が必要なのかなど、翻訳の最終的な用途を伝えることで、翻訳のスタイルやレベルを調整できます。

Q4: AI翻訳を覚書(MOU)の翻訳に活用する際の注意点は何ですか?

A4: AI翻訳は、初稿の作成や定型表現の翻訳に非常に役立ち、翻訳プロセスを効率化できますが、覚書のような法的拘束力の有無、微妙なニュアンス、商慣習の違いが重要な文書に単独で使用することは強く推奨されません。

  • 法的拘束力の表現の誤解: AIは、"non-binding"という言葉の背後にある法的意味合いや、どの条項が拘束力を持つかといった複雑なニュアンスを完全に理解し、正確に表現できないリスクがあります。これが最も致命的な誤訳につながる可能性があります。

  • 文脈と意図の欠落: 交渉の過程で盛り込まれた特定の文言の意図、当事者間の微妙な関係性といったビジネス上の繊細な文脈をAIが正確に把握できるとは限りません。

  • 専門用語の精度: 法務、事業開発、特定の業界技術など、多岐にわたる専門分野の用語の正確な対応は、AIだけでは困難な場合があります。

  • 秘密保持とセキュリティ: 覚書には機密性の高い情報が含まれるため、AI翻訳サービスへのアップロード方法や、データの取り扱いに関するセキュリティ体制を慎重に確認する必要があります。

したがって、AI翻訳を効率化ツールとして最大限活用しつつも、必ず国際法務知識、当該ビジネス分野の実務経験を持つ専門の翻訳者による徹底したレビューと校正を行うことが不可欠です。当社は、AIと専門家の人力翻訳を組み合わせることで、高品質かつ効率的な翻訳を提供しています。

 

まとめ

覚書(MOU)の翻訳は、単なる言語の変換に留まらず、企業がグローバル市場で新たなパートナーシップや取引の可能性を探る上で、当事者間の認識を一致させ、信頼関係を構築し、潜在的な法的・商業的リスクを回避するための極めて重要なプロセスです。

英文と和文の覚書が持つそれぞれの特徴を深く理解し、法務、事業開発、経営といった各部門が連携しながら、専門知識を持つ翻訳者の力を借りることが不可欠ですし、これまでの経験から当社はこれを強く認識しています。

特に、法的拘束力の有無に関する正確な翻訳、秘密保持義務条項の厳密な翻訳、独占交渉権条項の明確な翻訳、そして強固な情報セキュリティ体制といったポイントは、潜在的なリスクを最小限に抑え、グローバルな合意形成の第一歩を確実なものとするための鍵となります。

当社は、このような複雑な覚書(MOU)の翻訳において、貴社の各部門のニーズを理解し、最高品質の翻訳とサポートを提供することをお約束します。貴社の海外ビジネスにおける覚書(MOU)に関してご不明な点やご相談がありましたら、ぜひお気軽にお問い合わせください。

 

契約書の翻訳-1WIPジャパンは、東京弁護士共同組合神奈川県弁護士共同組合をはじめとする全国23の弁護士共同組合の特約店に認定されています。
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法務省大臣官房司法法制部「法令翻訳の手引き」(PDF)
日本法令外国語訳推進会議「法令用語日英標準対訳辞書」(PDF)
Publiclegal(英文契約書のテンプレートや書式を無料で提供)
日本法令外国語訳データベースシステム(法務省が開設した日本の法令の英訳サイト)
weblio 英和辞典・和英辞典
英辞郎 on the web

 

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