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Jun. 14, 2022

翻訳の費用対効果を最大化させるには?

 

先のブログ記事で、翻訳会社の品質とコストの関係について解説しました。翻訳者の学習コストが翻訳会社のコストに反映すること、また翻訳者のレベルによっては品質不安定ゾーンがあることを説明しています。今回は、翻訳の費用対効果について説明します。

 

翻訳における「品質効果」と「品質効果キャズム」とは

「価格が高いから、品質はよいはずだ」、あるいは「価格が安いから、品質はこのくらいでも仕方ない」のように、価格によって品質に対するユーザー(消費者)の期待度も変わってきます。どちらの場合も品質が期待値を下回ると、ユーザーの満足度を大きく下げることにもつながりかねません。つまり品質には相対的な側面があるということです。

 

このような相対的な品質を「品質効果」として定義します。

 

翻訳を品質とコストだけで考える場合、およそコストに比例した形で品質も変化します。では品質効果も同じようにコストに比例するかというと、実はそうでもないのです。

 

図1:翻訳における品質効果と品質効果キャズム

図1は、(A)、(B)、(C)のようなコストをかけたときの品質効果を簡略化してグラフにしています。品質だけをみると、「A<B<C」のようにコストにあわせて品質も上がるのですが、品質効果をみると「B<A<C」の関係になっています。なぜそのようになるのでしょうか。

 

結論から言うと、(B)の場合では翻訳自体の品質ボラティリティ(品質変動)が影響するからです。つまり、(A)や(C)では品質は一定で安定しているのですが、(B)では品質の当たり外れが大きくなるのです。(参考資料:「翻訳における信頼度成長曲線とは」)

 

そうすると、コストを上げても期待していた品質効果が得られていない、あるいはコストを下げたら予想以上に品質効果が下がってしまったという状態が発生します。期待していた品質効果と実際の品質効果との間に差が生じる状態(品質効果キャズム(溝))となります。

 

以下に、コストを上げて「品質効果キャズム」に陥った場合と、コストを下げて「品質効果キャズム」に陥った場合を説明したいと思います。

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品質効果キャズムの例1:コストを上げて失敗

例えば、ECサイトの多言語化の場合を考えてみましょう。元々、ある多言語ECサイトはAIによる自動翻訳を導入していたとします(Aのコスト)。しかし、AI翻訳では商品価値を上手く伝えきれていないと考え、売上アップを目指して人の手による翻訳の導入を決定しました。

 

Fig2e-png
図2:品質効果キャズムの例1:コストを上げて失敗

このようにコストを上げて品質を向上させる場合が考えられます。ですが、以下のような印象をユーザー(消費者)に与えてしまっている場合は、(B)のような「品質効果キャズム」に陥っている可能性があります。

 

  • (商品)説明が少し変わったが、前のままでも全然問題なかった。
  • 少し不自然な表現が増えた気がする。前のほうが自然だった。

また、現状の高品質な状態(Cのコスト)から、さらに品質を上げたい場合もあるかもしれません。しかし、図2にあるように、Cからコストを上げても品質効果が上がるどころか逆に下がってしまう場合もあります。この状態も「品質効果キャズム」にあるといえます。翻訳の品質は一定のレベル(高品質レベル)に到達すると、それ以上は品質はあまり上がらないようになるからです。

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品質効果キャズムの例2:コストを下げて失敗

次に、コストを下げて失敗した例について考えてみます。

例えば、自社ビジネスで現状のコスト(Cのコスト)の削減が必要となり、翻訳外注先の見直しを検討したとします。数社の翻訳会社に相見積もりを依頼し、その中から見積単価が一番安い翻訳会社に乗り換えます。結果、以前の約半分のコストで翻訳することができました。この場合の起こり得るリスクを以下の図3にグラフ化しています。

 

図3:品質効果キャズムの例2:コストを下げて失果

このように外注先を見直してコスト削減をした場合、以下のような印象をエンドユーザー(消費者)に与えてしまっていないかチェックしましょう。

 

  • 最近(商品)説明を読んでも、前みたいにスッと頭に入らなくなった。
  • 本当はどういう意味なのか知るために、自分で機械翻訳にかけるようになった。

もし該当する項目があるならば、残念ながらこちらも「品質効果ギャップ」に陥っている可能性があります。

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品質効果キャズムの回避方法:「AI翻訳を活用した翻訳フロー」

では、「品質効果キャズム」を回避するには、どう対処することが必要なのでしょうか。応急処置としては、元の状態(あるいは、元の発注先)に戻すことが賢明でしょう。

 

ですが、中長期的な視点での対策も必要となってきます。そのような対策としてお勧めしたいのが、「AI翻訳を活用した翻訳フロー」です。図4にこのフローにおける品質効果がどのようになるのか、青いラインで示しました。

 

Fig4e-png
図4:AI翻訳を活用した翻訳フローによる「品質効果」

「AI翻訳を活用した翻訳フロー」には、主に以下の3つの品質効果メリットがあります。

 

  • AI翻訳による品質安定効果(品質ボラティリティが比較的小さい)
  • ポストエディターによるAI翻訳のデメリットの最小化
  • 品質×価格感による費用対効果の向上

このセクションでは、上記のうちの最初の品質安定効果について説明します(※残り2つのメリットについて、次のセクションで詳しくみていきます)。

 

(B)のコスト付近で翻訳品質が安定しない主な理由として、翻訳者のアウトプット品質に当たり外れがあることを前述のセクションで説明しました。同じ翻訳者でも案件によって品質のブレがあるわけですから、翻訳者が変わることがあるとすれば一層品質は安定しないでしょう。このような人的な要因による品質ボラティリティ(品質変動)を最小化するためには、機械による自動化が有効です。

 

機械による作業というと、融通の利かないイメージを持たれるかもしれません。しかし、AI翻訳で利用されている「ディープラーニング」という手法では、人間の神経細胞ネットワークを模したプロセスを組み込むことで、人間のような柔軟な判断を、しかも機械的に高速で処理することが可能となっています。つまり翻訳工程でAI翻訳を活用すれば、従来なら人が変わると品質が大きく変わってしまっていた価格帯で、より安定した品質を期待できるようになります。

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AI翻訳を活用した翻訳フロー:AIのデメリットを最小化

次に、「AI翻訳を活用した翻訳フロー」の2つ目の品質効果メリットを説明します。「AI翻訳を活用した翻訳フロー」では、AIによる一次翻訳の後に、人の手による修正・チェック作業がおこなわれます。

 

ディープラーニングによって、AI翻訳の品質は飛躍的に改善されていることを先ほど紹介しましたが、AI翻訳が完璧というわけではありません。AIでも間違うことがあります。一番やっかいなのは一見すると正しそうな(そしてとても自然な)文章を間違って出力するという点です。また、元の文章が複雑だったり、学習できていない内容の場合に、わからない個所を(予告なしに)省略してしまいます。そして何よりも、なぜ間違ったのかをAIは私たちに教えてくれません。人間の翻訳者であれば、なぜそのように翻訳したのかを後から質問して確認できるのとは対照的です。このようなAIのデメリットは、思考プロセスのブラックボックス問題といわれることもあります。

 

こうしたAIのブラックボックス問題を最小限に抑えるために、翻訳会社ではAIによる一次翻訳工程の後にチェック工程が組み込まれています。単にチェック工程ということもあれば、翻訳会社によってはポストエディット、あるいはバイリンガルチェックということもあります。ここで一番大切なことは、作業者が翻訳者としての力量を備えているだけでなく、AI翻訳の悪い癖を熟知していることです(※資格については、「ポストエディットの国際規格:ISO18587とは」でも解説をしています)。AI翻訳の修正作業に慣れている人であれば、予告なしのデータの省略・追加、典型的なエラーを検知することができ、AI翻訳のデメリットを最小化することができるのです。 

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AI翻訳を活用した翻訳フロー:最大のメリットは「価格×納期」の合理的バランス

最後に、「AI翻訳を活用した翻訳フロー」の3つ目の品質効果メリットを説明します。

 

AIをプロセスに導入することで、通常の翻訳フローよりも比較的安価に、早く翻訳できます。人の手による翻訳ではなく、AI翻訳を使用するので、ベースとなるコストが抑えられます。また、AIが自動で処理するので、納期の圧縮が期待できます。このようにAIを活用した翻訳フローの最大のメリットは、「価格×納期」の合理的バランスといえるでしょう。

 

Fig5e-png
図5:AI翻訳を活用した翻訳フローなら「価格×納期」の合理的バランス
 

 図5では、コスト(B)におけるAI翻訳を活用した翻訳フローと、コスト(C)における通常翻訳フローで、品質効果の違いをグラフにしています。直線(点線)の「期待度の下限値」は、ビジネス的に最低限必要とされる品質効果を表しています。このグラフでは、品質効果が最大となるのは、コスト(C)の場合ですが、AI翻訳を活用した翻訳フローであれば、コスト(C)より低い価格(B)でも、ある程度の品質効果が期待できることがわかります。

 

翻訳の発注先を選ぶときに、価格だけで決めていませんか。納期だけで決めていませんか。お客様のビジネスの目的に適った品質効果が最大限に期待できるような、「価格×納期」の合理的バランスをぜひ見つけていただきたいと思います。

 

※WIPジャパンでは、翻訳のご相談があった際に、お客様にヒアリングをさせていただいております。お客様から伺った翻訳の目的、ご予算、納期等を総合的に判断して、品質効果が最大となるような翻訳フローを常にご提案いたします。

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まとめ

今回は、翻訳における「品質効果」と「品質効果キャズム」について説明しました。場合によっては、コストを変動させると品質効果が下がってしまう場合(品質効果キャズム)もあること、コストを上げた場合と、下げた場合での注意点などを示しました。また、品質効果キャズムを回避する方法として、AI翻訳を活用した翻訳フローを紹介しています。AI翻訳のメリット、デメリットを正しく理解し、費用対効果が最大となるような翻訳発注を目指しましょう。

 

 

 

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