日本企業が海外市場で製品やサービスを展開する際、現地の消費者がどのような「声」を発し、それをどのように受け止めるべきかを知ることは極めて重要です。なぜなら、日本国内とは異なるレビュー・コメントの文化が存在するからです。
海外における口コミの傾向を理解し、適切に対応することで、製品のグローバル展開を成功させるための強力な武器に変えることができます。
1. 表現の直接性と期待値の違い
アウトバウンドの文脈では、日本の企業が海外の顧客から受けるレビューは、しばしば日本国内のレビューとは異なる「直接性」を帯びています。
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海外(特に欧米):
- 明確なポジティブ/ネガティブ表現: 欧米の消費者は、製品やサービスに対する評価を非常に直接的かつ明確に表現します。「素晴らしい!」「ひどい!」「期待外れだ」といった、はっきりとした言葉が使われます。
- 機能性・性能への厳しい評価: 製品の機能が期待通りに動作するか、サービスの費用対効果が妥当かといった点に厳しく焦点を当てたレビューが多く見られます。
- 問題点の詳細な記述: 不満がある場合、その原因や具体的な状況、どのように改善されるべきかまで詳細に記述する傾向があります。これは「次に購入する人の参考になるように」「企業に改善を促すため」という意図が込められていることが多いです。
- 感情の表出: 喜び、興奮、不満、失望といった自身の感情を率直に表現します。
- 「普通」はネガティブになり得る: 日本では「普通」が「悪くない」を意味することが多いですが、海外では「普通=特筆すべき点がない=魅力がない」と受け取られ、低評価につながることがあります。
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日本:
- 丁寧で控えめな表現: 海外製品やサービスを利用する日本人ユーザーのレビューは、国内レビューと同様に丁寧語や控えめな表現が多いです。批判をする際も、遠回しな表現や「〜だと嬉しい」といった形を取ることが一般的です。
- 全体的な満足度重視: 細かい不満があっても、全体として満足していれば高評価をつける傾向があります。
- 「おもてなし」の期待: 日本のサービス水準に慣れているため、海外のサービスに対しても無意識のうちに「丁寧さ」「細やかさ」を期待する傾向が見られることがあります。
2. 利用するプラットフォームと信頼性の基準
海外市場でターゲットとする国によって、主要なレビュープラットフォームが異なります。
- グローバルプラットフォーム:
- Amazon / Google: 製品レビューではAmazonが、ローカルサービスや店舗レビューではGoogle Business Profile (Google マップ) が圧倒的な影響力を持つ地域が多いです。
- Trustpilot / Yelp: 特に欧米では、企業やサービスの信頼性を測る上でこれらのレビューサイトが活用されます。
- 地域特化型プラットフォーム:
- 中国: 製品レビューはTaobao (淘宝) や JD.com (京東) のECサイト内レビューが重要。サービスレビューではDianping (大衆点評) が主流。動画レビューはDouyin (抖音)、ライフスタイルや美容系はXiaohongshu (小紅書) が影響力大です。
- 韓国: Naver Blog, Kakao Mapsなど、独自のプラットフォームが使われます。
- SNSの役割:
- 欧米: Facebook, Instagram, X (旧Twitter) でも意見が共有されますが、公式レビューサイトとは区別されることが多いです。
- アジア(特に中国): SNSは単なる情報共有の場ではなく、口コミそのものであり、購買意思決定に極めて大きな影響を与えます。ライブ配信中のコメントや、インフルエンサー(KOL/KOC)が発信する情報へのコメントが重要です。
3. コミュニケーションと対応の違い
レビューやコメントに対する企業の対応も、文化的な違いが影響します。
- 海外(特に欧米):
- 迅速で具体的な返信への期待: ポジティブ・ネガティブ問わず、企業からの迅速かつ具体的な返信が期待されます。ネガティブレビューには、問題解決に向けた具体的なアクションや担当者への連絡先を示すことが求められます。
- 公開の場で解決を図る: 多くの企業が公開されたレビューに返信することで、他の潜在顧客にも誠実な対応を示そうとします。
- ユーモアや人間味のある対応: ケースによっては、カジュアルなトーンやユーモアを交えた返信が好意的に受け取られることもあります。
- 中国:
- 即時性と効率性: コメントへの返信や問題解決のスピードが重視されます。待たされることは不満に直結します。
- 特別感の演出: 個別の返信や、VIP扱いのような特別感のある対応は好意的に受け取られます。
- 「面子(メンツ)」への配慮: 公開の場で批判された場合、企業の「面子」に関わる問題となるため、丁寧かつ慎重な対応が求められますが、その一方で、顧客の「面子」を潰さない配慮も必要です。
- インフルエンサーへの対応: インフルエンサーからのレビューには、特に丁寧かつ積極的な反応が求められます。
- 日本:
- 誠実さと共感: 丁寧な言葉遣いと、顧客の感情に寄り添う共感を示す返信が重視されます。
- 詳細な説明と謝罪: 問題が発生した場合は、その原因や経緯を詳細に説明し、深く謝罪することで理解を得ようとします。
4. アウトバウンド戦略への示唆
日本企業が海外で製品やサービスを展開する際は、以下の点を踏まえるべきです。
- 現地主要プラットフォームの選定とモニタリング: ターゲット国の主要なレビューサイトやSNSを特定し、そこで自社製品・サービスに関する言及を積極的にモニタリングする体制を構築する。
- 文化に合わせた返信戦略: 各国の文化特性を理解し、レビューへの返信トーン、スピード、内容を最適化する。直接的な批判にも、感情的にならず、プロフェッショナルかつ建設的に対応する訓練が必要です。
- 「UGC」の積極的な活用: 海外、特にアジア市場では、ユーザー生成コンテンツ(UGC)の信頼性と影響力が極めて高いです。魅力的な製品写真や動画、顧客体験を促し、それがSNSで拡散されるような仕組みづくりが重要です。
- カスタマーサポート体制の現地化: レビューは顧客体験の一部です。現地の言語、文化、期待値に合わせたカスタマーサポート体制(問い合わせ対応、返品・交換プロセスなど)を整備することで、ポジティブなレビューに繋がりやすくなります。
- プロダクト改善へのフィードバック活用: 海外からのレビューは、時に日本の感覚では得られない、製品の機能性やデザイン、使い勝手に関する貴重なフィードバックの宝庫です。これを積極的に収集し、製品改善や新たな製品開発に活かすことで、グローバル市場での競争力を高めることができます。
アウトバウンドにおけるレビュー・コメントの管理は、単なるPR活動ではなく、顧客理解を深め、製品・サービスをグローバル市場に適応させていくための重要なプロセスです。文化の違いを「壁」と捉えるのではなく、「チャンス」と捉え、戦略的に取り組むことが成功への鍵となるでしょう。
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