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Jul. 09, 2025

特許ライセンス契約書 翻訳:グローバルな技術活用と知的財産権保護の要点と関係部門の役割

 

今日のグローバル競争時代において、企業が保有する特許(Patent)は、その技術的優位性を確立し、市場における競争力を維持するための最も重要な無形資産の一つです。自社で開発した技術を特許として保護するだけでなく、他社の特許技術を導入して新たな製品やサービスを展開したり、逆に自社の特許を他社にライセンス供与して収益を得たりする際には、特許ライセンス契約が不可欠です。特許ライセンス契約書(Patent License Agreement)は、特許権者(Licensor)がその特許技術を利用する権利を、特定の条件のもとで第三者(Licensee)に許諾する際に締結される法的文書です。

この契約書は、ライセンスの対象となる特許、許諾される利用範囲(製造、販売、使用など)、利用地域、期間、ライセンス料、保証と免責、知的財産権の帰属、秘密保持義務、準拠法、紛争解決など、極めて詳細な条件を定めます。その正確な翻訳は、特許技術の適正な利用と保護、ブランド価値の維持、収益の確保、法的リスクの回避、そして将来的な紛争の防止のために不可欠です。翻訳のミスや内容の理解不足は、特許権侵害、無許諾利用、期待収益の喪失、追加費用の発生、国際的な信用失墜、さらには高額な法的紛争へと発展するリスクをはらんでいます。

特に、国ごとに特許法、不正競争防止法、輸出管理規制、競争法、税法、そして国際的な商慣習が大きく異なるため、単に言葉を置き換えるだけでなく、それぞれの法制度や特許技術の特性に応じた法的・技術的・商業的なニュアンスを踏まえた上で契約内容を理解し、翻訳することが不可欠です。

本記事では、これまでの経験に基づき、特許ライセンス契約書の翻訳における重要なポイントと、貴社の各部門がどのように翻訳された契約書を活用し、関与していくべきかを具体的なケーススタディを交えて解説します。

貴社の海外ビジネスにおいて、特許ライセンス契約の適切な理解と運用を通じて、グローバルな技術活用を成功に導き、大切な知的財産権を確実に保護するために、ぜひ本記事をお役立てください。

 

特許ライセンス契約書とは何か?その目的と国際ビジネスにおける重要性

特許ライセンス契約書(Patent License Agreement)とは、特許権者(Licensor)が、自身の特許に対する独占的な権利の一部または全部を保持したまま、特定の条件の下で第三者(Licensee)にその特許発明を実施する権利(製造、使用、販売、輸出入など)を許諾する契約です。特許そのものを譲渡する特許権譲渡契約(Patent Assignment Agreement)とは異なり、ライセンス契約では特許権の所有権は特許権者に留まります。

国際ビジネスにおいて、特許ライセンス契約の対象となる特許は多岐にわたります。

  • 製造技術に関する特許: 製品の製造方法、製造装置

  • 製品に関する特許: 特定の構造を持つ製品、機能

  • 医薬品に関する特許: 物質特許、用途特許、製法特許

  • ソフトウェアに関する特許: ビジネスモデル特許、アルゴリズム特許

  • 通信技術に関する特許: 通信プロトコル、データ処理技術

この契約書は、以下の非常に多岐にわたる詳細な条項を含みます。

  • ライセンス対象特許(Licensed Patents):ライセンスされる特許の具体的な特定(特許番号、出願番号、発明の名称、請求項の範囲など)、関連する技術情報(ノウハウ、技術資料)の取り扱い。

  • 許諾される実施の範囲(Scope of License / Permitted Practices):特許発明を、どのような方法で実施が許されるか(製造、使用、販売、輸出入など)、目的、利用地域、利用期間、独占的か非独占的か、サブライセンスの可否。

  • ライセンス料(License Fees / Royalties):ライセンス料の計算方法(固定料金、ロイヤリティ率、最低保証金など)、支払いスケジュール、支払い方法、支払い通貨、源泉徴収税の取り扱い、報告義務。

  • 技術情報・ノウハウの開示と利用(Disclosure and Use of Technical Information/Know-how):特許実施に必要な技術情報やノウハウの提供方法、その秘密保持義務、利用範囲。

  • 保証と免責(Warranties and Disclaimers):特許権者が特許の正当な権利を有していることの保証、第三者の権利を侵害しないことの保証、特許実施に関する免責事項。

  • 第三者による侵害への対応(Enforcement against Infringement):第三者による特許権侵害が発生した場合の対応責任、訴訟費用負担。

  • 改良発明の取り扱い(Improvements):ライセンスされた特許を利用して生み出された改良発明に関する知的財産権の帰属、その利用許諾(ライセンスバックなど)。

  • 秘密保持義務(Confidentiality):契約内容や開示された機密情報の保護義務。

  • 責任の制限と補償(Limitation of Liability and Indemnification):契約違反や特許実施によって生じた損害に対する責任範囲、責任上限額、相手方への補償義務。

  • 輸出管理規制(Export Control Regulations):特許技術が輸出管理規制の対象となる場合の遵守義務、再輸出の制限。

  • 契約期間と終了(Term and Termination):契約期間、自動更新の有無、更新条件、契約解除条件(違反、破産など)、解除後の特許実施に関する義務。

  • 準拠法と紛争解決(Governing Law and Dispute Resolution):契約に適用される法律、紛争が発生した場合の解決方法(裁判、国際仲裁、調停など)。

国際ビジネスにおいて特許ライセンス契約書が特に重要なのは、以下の理由からです。

  • 特許権の属地主義: 特許権は国ごとに独立して発生・保護される属地主義が原則です。国際条約(パリ条約、PCTなど)によって国際出願制度は存在するものの、最終的な権利の発生・保護は各国の法律に依存するため、契約書でどの国の法律を準拠法とするか、実施地域をどう定めるかが極めて重要です。

  • ノウハウの移転: 特許ライセンスには、特許発明を実施するためのノウハウ(Know-how)の移転が伴うことが多く、これが文書化されていない場合もあるため、その範囲や保護を契約書で明確に定める必要があります。

  • 税務処理の複雑さ: 国境を越えたライセンス料の支払いには、源泉徴収税やVAT/GST(付加価値税/サービス税)などの税務処理が伴うため、契約書でその責任を明確にする必要があります。

  • 知的財産権の保護と監視: ライセンス許諾後も、特許権者は自身の権利が適切に利用されているか監視し、侵害があれば適切に対処する必要があります。契約書で侵害発生時の対応義務や費用負担を明確にすることが重要ですし、当社はこれを強く認識しています。

  • 不正競争のリスク: 無許諾利用や紛らわしい特許実施は、不正競争行為として法的措置の対象となることがあります。契約書で利用範囲を明確にすることで、このようなリスクを軽減します。

  • 輸出管理規制: 特定の技術に関する特許は、国際的な輸出管理規制(軍事転用可能技術など)の対象となる場合があります。契約書でこれらの規制遵守を義務付ける必要があります。

  • 紛争解決: 特許権に関する紛争は複雑化・長期化しやすいため、国際的な契約では、紛争が発生した場合の解決方法(準拠法、仲裁など)を事前に明確にしておくことが、リスク管理上非常に重要ですし、当社はこれを強く認識しています。

英文特許ライセンス契約書の特徴と和文契約書との違い

国際的な特許技術利用取引では、多くの場合、英文で契約書が作成されます。その特徴は、日本の和文契約書とは異なる点がいくつかあります。

  • Detailed Licensed Patents and Practices(ライセンス対象特許と実施の詳細化):

    • 単に「特許」とせず、特許番号、出願番号、発明の名称、請求項の具体的な範囲が極めて詳細に特定されます。

    • 許諾される実施方法についても、製造、使用、販売、輸出入といった行為が明確に定義され、利用目的、利用期間、利用地域、独占的か非独占的か、サブライセンスの可否が厳密に記述されます。

  • Know-how and Technical Assistance(ノウハウと技術援助の明記):

    • 特許発明の実施に不可欠なノウハウ(Know-how)の定義、提供方法(技術資料、技術指導、トレーニングなど)、その秘密保持義務、利用範囲が詳細に規定されます。これは、和文契約書では比較的簡略化される傾向がある部分です。

  • License Fees / Royalties and Audit Rights(ライセンス料と監査権の厳格な規定):

    • ロイヤリティの計算方法(売上高、数量などに基づく割合)、最低保証金(Minimum Guarantee)、支払いスケジュール、監査権(Audit Rights)、源泉徴収税の取り扱いが詳細に定められます。ライセンシーには、ロイヤリティ計算に必要な販売データや実施実績の定期的な報告義務が課せられます。

  • Improvements and Grant Back/License Back(改良発明とライセンスバック):

    • ライセンシーがライセンスされた特許を利用して生み出した改良発明(Improvements)の知的財産権が誰に帰属するのか、その改良発明を特許権者がどのように利用できるか(ライセンスバック、またはグラントバック)に関する条項が詳細に規定されます。これは、特許権者の将来の技術開発戦略に大きく影響するため、非常に重要な部分です。

  • Representations and Warranties(表明と保証)の詳細な記述:

    • 特許権者がライセンス対象特許の正当な権利者であること、第三者の権利を侵害しないこと、特許に既知の欠陥がないことなどを表明し保証する条項が含まれます。ライセンシー側も、契約遵守能力や法令遵守を表明保証することがあります。

  • Indemnification(補償)とLimitation of Liability(責任の制限)の適用:

    • 特許権侵害や契約違反などによって生じた損害に対する補償義務や、損害賠償責任の上限額が明確に規定されます。特に知的財産権の侵害リスクが高い特許取引では、補償条項が重要視されます。

  • Infringement and Enforcement(侵害と権利行使)に関する条項:

    • 第三者による特許権侵害が発生した場合に、どちらの当事者がその侵害に対処する責任を負うのか、訴訟費用をどのように分担するのか、得られた賠償金をどう分配するのかが規定されます。

  • Export Control Provisions(輸出管理条項の明記):

    • 特許技術が輸出管理規制の対象となる場合、ライセンシーは関連法規を遵守し、特定の国や団体への輸出・再輸出を行わない義務が明記されます。

  • Termination and Post-Termination Obligations(契約期間と終了後の義務):

    • 契約期間の他に、契約解除条件(重大な契約違反、支払い不履行など)、通知期間、解除後の特許実施の中止義務、既存製品の処理などが詳細に規定されます。

  • Governing Law and Dispute Resolution(準拠法と紛争解決)の指定:

    • 国際的な特許ライセンス契約では、国際仲裁を紛争解決手段として指定することが一般的であり、仲裁地、仲裁機関、仲裁規則を明確に定めます。特許法の属地主義を考慮し、どの国の法律を適用するかが重要です。

日本の和文特許ライセンス契約書に比べ、英文特許ライセンス契約書は、ライセンスの範囲の細分化と明確化、ノウハウの取り扱い、改良発明の帰属とライセンスバック、輸出管理、そして包括的な保証と補償、国際的な準拠法・紛争解決メカニズムに関して、より詳細かつ厳密な記述が求められる傾向が強いです。翻訳においては、これらの技術的・法的・商業的ニュアンスを正確に反映した表現を用いることが不可欠です。

 

特許ライセンス契約書翻訳における重要ポイント

特許ライセンス契約書の翻訳は、貴社のグローバルな技術活用戦略、知的財産権保護、収益確保、そして法的リスクに直接影響するため、極めて高い精度と専門性、そして法務・事業開発・知財部門・研究開発部門・経理部門など多岐にわたる視点が求められます。以下のポイントを押さえることが、成功への鍵となります。

  1. ライセンス対象特許(Licensed Patents)と許諾される実施の範囲(Scope of License)の厳密な翻訳

    • ライセンスされる特許の具体的な特定(特許番号、出願番号、請求項の範囲など)、そして許諾される実施方法(製造、使用、販売、輸出入など)の範囲、利用地域、利用期間、独占的か非独占的か、サブライセンスの可否を、曖昧さなく厳密に翻訳することが不可欠です。不正確な翻訳は、無許諾利用や特許権侵害、不正競争のリスクを生じさせます。

  2. ライセンス料(License Fees / Royalties)と支払い条件、報告義務の明確化

    • ライセンス料の計算方法(固定料金、ロイヤリティ率、最低保証金など)、支払いスケジュール、支払い方法、支払い通貨、為替リスクの負担者、そして海外からの支払いにおける源泉徴収税の有無や税率、VAT/GST(付加価値税/サービス税)などの税務上の取り扱いを正確に翻訳することが不可欠です。また、ロイヤリティ計算に必要な販売データや実施実績の定期的な報告義務、監査権(Audit Rights)についても詳細かつ正確に翻訳し、透明性を確保する必要があります。不正確な翻訳は、予期せぬ費用発生や税務上のトラブルの原因となります。

  3. 改良発明の取り扱い(Improvements)とライセンスバック(Grant Back/License Back)に関する条項の徹底的な翻訳

    • ライセンシーがライセンスされた特許を利用して生み出した改良発明の知的財産権が誰に帰属するのか、その改良発明を特許権者がどのように利用できるか(ライセンスバック、またはグラントバック)に関する条項を正確に翻訳することが極めて重要です。この条項の翻訳ミスや内容の理解不足は、将来の技術開発の方向性や収益に大きく影響するため、細心の注意が必要です。

  4. 保証と免責(Warranties and Disclaimers)、責任制限(Limitation of Liability)と補償(Indemnification)に関する条項の慎重な翻訳

    • 特許権者が特許の正当な権利を有していること、第三者の権利を侵害しないことなどの保証内容、そして契約違反や特許実施によって生じた損害に対する責任の制限と上限額を厳密に翻訳することが不可欠です。また、特定の状況下で当事者が相手方を補償する義務の範囲も明確に翻訳されているか確認すべきです。この条項は、将来的な訴訟リスクと費用負担に直接影響するため、細心の注意を払う必要があります。

  5. 第三者による侵害への対応(Enforcement against Infringement)と訴訟費用に関する明確な翻訳

    • 第三者による特許権侵害が発生した場合に、どちらの当事者(特許権者かライセンシーか)がその侵害に対処する責任を負うのか、訴訟費用をどのように分担するのか、得られた損害賠償金をどう分配するのかを正確に翻訳することが不可欠です。特許技術の保護と収益確保に直結するため、対応体制を明確にする必要があります。

  6. 輸出管理規制(Export Control Regulations)に関する条項の確認

    • 特許技術が輸出管理規制の対象となる場合、関連法規(米国のEAR、日本の外国為替及び外国貿易法など)の遵守義務、特定の国や団体への輸出・再輸出の制限などが明記されているか確認し、正確に翻訳する必要があります。違反した場合、多額の罰金、事業停止命令、企業幹部への刑事罰など、甚大なリスクにつながる可能性があります。

    • 当社は、このような国際法規に関する条項の正確な翻訳を特に重視しています。

  7. 秘密保持義務(Confidentiality)とノウハウの保護に関する条項の徹底的な翻訳

    • 契約内容や、特許実施に必要なノウハウなどの機密情報の保護義務、開示範囲、契約終了後の秘密保持期間を厳格に翻訳することが不可欠です。ノウハウの漏洩は企業の競争優位性を損なうため、細心の注意を払う必要があります。

  8. 契約期間と終了(Term and Termination)、終了後の義務の正確な翻訳

    • 契約期間、自動更新の有無、更新条件、契約解除条件(違反、破産など)、通知期間を正確に翻訳します。特に重要なのは、契約終了後の特許実施に関する義務(実施中止、既存製品の処理など)を明確に翻訳することです。

  9. 準拠法と紛争解決(Governing Law and Dispute Resolution)

    • 契約に適用される法律(特許法の属地主義を考慮し、どの国の特許法が適用されるか)、そして紛争が発生した場合の解決方法(国際仲裁、調停、裁判など)、仲裁地の選定、仲裁機関、仲裁規則、仲裁人の数、仲裁判断の拘束力などを正確に翻訳することが不可欠です。国際取引では、自社にとって有利な準拠法や紛争解決地を指定することが戦略上重要であり、その内容を正確に把握すべきです。

  10. AI翻訳の適切な活用と専門家による最終確認

    AI翻訳技術は、初稿の作成や用語の統一に役立ちますが、特許ライセンス契約書のような法的・技術的に極めて複雑な文書、特にライセンスの範囲、改良発明の取り扱い、輸出管理規制、保証と免責、特許権の侵害対応といった条項においては、法的ニュアンス、各国の特許法、税法、技術分野に関する知見を完全に理解することは困難です。AIを効率化ツールとして最大限活用しつつも、法務知識、知的財産権(特に特許法)に関する専門知識、研究開発の実務経験、および国際商取引の実務経験を持つ専門の翻訳者による徹底したレビューと校正が不可欠です。人間による精査が、潜在的なリスクを最小限に抑え、安全な国際取引の基盤となります。

  11. 強固な情報セキュリティ体制

    特許ライセンス契約書には、貴社の最先端技術、研究開発計画、ビジネス戦略など、企業の競争力や事業の成否に直結する極めて機密性の高い情報が含まれることが一般的です。これらの情報が外部に漏洩した場合、企業の競争力低下、信用失墜、法的な責任問題など、甚大な損害を被る可能性があります。そのため、翻訳を依頼する際には、翻訳会社が厳格な情報セキュリティポリシーを定め、技術的・物理的・人的な対策を徹底しているかを必ず確認すべきですし、当社はこれを徹底しています。

 

特許ライセンス契約書の翻訳は誰に必要なのか?ケーススタディで見る関係部門の役割

特許ライセンス契約書は、グローバルな技術活用と知的財産権保護を左右するため、多岐にわたる部門や関係者がその内容を理解し、翻訳された情報に基づいて連携することが不可欠です。

 

ケーススタディ1:自社特許技術の海外ライセンス供与(日本の製造業)

 

状況: 日本の精密機器メーカーが、自社の保有する小型化技術に関する特許を、米国の大手電機メーカーにライセンス供与するケース。英文の特許ライセンス契約を締結。

  • 事業開発部/海外営業部:

    • 必要性: ライセンス供与する特許の範囲(特定の製品、利用方法)、利用地域、期間、独占性、ライセンス料の計算方法、ロイヤリティ報告義務などを詳細に確認します。海外での収益確保と市場戦略に直結する内容です。

    • ケース: 契約書に記載された「米国市場における小型化技術の独占的ライセンス供与の範囲」、「対象製品の売上高に応じたロイヤリティ率」、「四半期ごとの販売実績報告と支払い期限」を和訳で確認し、事業計画と収益予測を評価します。過去には、ライセンス料の計算方法に関する翻訳が曖昧だったため、ロイヤリティの回収額が想定を下回った事例がありました。当社は、このようなライセンス料に関する条項の正確な翻訳を特に重視しています。

  • 知的財産部/法務部:

    • 必要性: 契約全体の法的妥当性、リスク管理、特にライセンス対象特許の有効性、許諾される権利の範囲、改良発明の取り扱いとライセンスバック、保証と免責、第三者による侵害への対応、責任制限、契約解除条件、準拠法(日本法)、紛争解決条項の適切性を確認します。各国の特許法、不正競争防止法、輸出管理規制への対応が求められます。

    • ケース: 契約書に記載された「米国電機メーカーによる改良発明の取り扱いと当社へのライセンスバック義務」、「第三者による特許侵害が発生した場合の共同訴訟義務と費用分担」、「契約解除後の既存製品の販売期間」を和訳で確認し、知財戦略と法的リスクを評価します。

  • 経理部/財務部:

    • 必要性: ライセンス料の支払いスケジュール、支払い通貨、海外からの支払いにおける源泉徴収税の取り扱い、ロイヤリティ報告義務などを確認し、適切な会計処理と資金計画を行います。

    • ケース: 契約書に記載された「ロイヤリティ支払いにおける米国での源泉徴収税の有無と軽減税率の適用」、「税務当局への報告義務」を和訳で確認し、キャッシュフローと税務リスクを管理します。

 

ケーススタディ2:海外製先端素材特許の日本国内導入(日本の化学メーカー)

 

状況: 日本の化学メーカーが、欧州の化学品大手から、自社製品への応用が期待される新素材の製造特許を導入するため、英文の特許ライセンス契約を締結するケース。

  • 研究開発部/技術開発部:

    • 必要性: ライセンス対象特許の具体的な技術内容、特許の請求項の範囲、特許実施に必要なノウハウの提供内容と方法、技術サポートの範囲などを詳細に確認します。製品開発と製造プロセスへの適用可能性に直結する内容です。

    • ケース: 契約書に記載された「新素材製造特許の主要請求項と関連特許のリスト」、「欧州企業からのノウハウ提供の範囲(技術資料、技術指導など)」、「初期導入後の技術サポート期間」を和訳で確認し、製品開発計画と技術導入プロセスを評価します。

  • 知的財産部/法務部:

    • 必要性: 契約全体の法的妥当性、リスク管理、特にライセンス対象特許の有効性・強制力、許諾される実施範囲の限定、改良発明の取り扱い(ライセンスバック義務の有無)、保証と免責、責任制限、契約解除条件、準拠法(英国法)、紛争解決条項の適切性を確認します。

    • ケース: 契約書に記載された「新素材製造特許の存続期間と年金支払い義務」、「当社が開発した改良発明に関する欧州企業へのライセンスバック義務の有無」、「英国における国際仲裁による紛争解決条項」を和訳で確認し、知財戦略と法的リスクを評価します。

  • 製造部/購買部:

    • 必要性: 特許技術の導入による製造コスト、生産プロセスへの影響、必要な設備投資などを確認します。

    • ケース: 契約書に記載された「特許技術を用いた製造に関する品質基準」、「原材料調達に関する義務」を和訳で確認し、製造計画とコスト管理を評価します。

よくある質問(FAQ)

特許ライセンス契約書の翻訳に関して、お客様からよくいただくご質問とその回答をまとめました。

Q1: 特許ライセンス契約書における「改良発明の取り扱い(Improvements)とライセンスバック(Grant Back/License Back)」の条項は、翻訳でどのように注意すべきですか?

A1: この条項は、特許ライセンス契約において特に重要な部分であり、将来の技術開発戦略と収益に大きく影響します。翻訳においては、ライセンシーがライセンスされた特許を利用して生み出した改良発明の知的財産権が誰に帰属するのか、そしてその改良発明を特許権者がどのように利用できるか(無償・有償でのライセンスバック、または権利の譲渡を求めるグラントバック)に関する条項を正確に翻訳することが極めて重要です。この部分の翻訳ミスや内容の理解不足は、自社の将来の技術開発の自由度を制限したり、期待する収益機会を失ったりするリスクに直結するため、細心の注意が必要です。

Q2: 「ライセンス料(License Fees / Royalties)」と支払い条件、報告義務に関する条項の翻訳で、特に注意すべき点は何ですか?

A2: ライセンス料は、特許権者にとっての収益源であり、ライセンシーにとってはコストであるため、非常に重要な条項です。翻訳においては、ライセンス料の計算方法(固定料金、ロイヤリティ率、最低保証金など)、支払いスケジュール、支払い方法、支払い通貨、為替リスクの負担者、そして海外からの支払いにおける源泉徴収税の有無や税率、VAT/GST(付加価値税/サービス税)などの税務上の取り扱いを正確に表現することが不可欠ですし、当社はこれを強く認識しています。また、ロイヤリティ計算に必要な販売データや実施実績の定期的な報告義務、監査権(Audit Rights)についても詳細かつ正確に翻訳し、透明性を確保する必要があります。不正確な翻訳は、予期せぬ費用発生や税務上のトラブルの原因となります。

Q3: 国際的な特許ライセンス契約で、「輸出管理規制(Export Control Regulations)」の条項はなぜ重要視されますか?

A3: 多くの先端技術に関する特許は、安全保障上の理由から、国際的な輸出管理規制の対象となる場合があります。翻訳においては、ライセンス対象の特許技術が該当する可能性のある各国の輸出管理規制(例:米国のEAR、日本の外国為替及び外国貿易法)の条項が明記されているか、ライセンシーがこれらの規制を遵守する義務が課せられているか、特定の国や団体への輸出・再輸出が制限されているかを詳細かつ正確に翻訳する必要があります。これらの規制に違反した場合、多額の罰金、事業停止命令、企業幹部への刑事罰など、甚大なリスクにつながる可能性があるため、極めて慎重な対応が求められます。

Q4: 特許ライセンス契約における「第三者による侵害への対応(Enforcement against Infringement)」の取り扱いは、どのように注意して翻訳すべきですか?

A4: ライセンスされた特許が第三者によって侵害された場合、誰が、どのように対処するのかを明確に定めておく必要があります。翻訳においては、特許権侵害が発生した場合に、どちらの当事者(特許権者かライセンシーか)がその侵害に対処する責任を負うのか、訴訟費用をどのように分担するのか、得られた損害賠償金をどう分配するのかを正確に翻訳することが不可欠です。特許技術の保護と収益確保に直結するため、対応体制を明確にする必要があります。

Q5: 特許ライセンス契約書で「準拠法と紛争解決(Governing Law and Dispute Resolution)」の条項が非常に重要と言われるのはなぜですか?

A5: 準拠法(Governing Law)は、契約の解釈・有効性・履行に適用される法律であり、紛争解決は問題発生時の解決プロセスを定めます。特許権は国ごとに保護される属地主義が原則であるため、どの国の法律が契約に適用されるのか、特に特許法のどの国の規定が適用されるのかを明確に合意しておくことが不可欠です。また、紛争が生じた場合にどの国で、どのような方法(国際仲裁、調停、裁判など)で解決するのかを明確に合意しておくことが、予測可能性を高め、紛争解決のコストと時間を削減するために極めて重要ですし、自社にとって有利な条件を確保すべきです。翻訳においては、これらの条項を正確に理解し、現地の法律専門家と連携して最終確認を行うことが不可欠です。

 

まとめ

特許ライセンス契約書の翻訳は、単なる言語の変換に留まらず、企業が保有する貴重な特許資産をグローバル市場で戦略的に活用し、同時に確実に保護するための極めて重要なプロセスです。英文と和文の契約書が持つそれぞれの特徴を深く理解し、事業開発、知的財産、法務、研究開発、経理といった各部門が連携しながら、専門知識を持つ翻訳者の力を借りることが不可欠ですし、これまでの経験から当社はこれを強く認識しています。

特に、ライセンス対象特許の範囲と実施の範囲、改良発明の取り扱いとライセンスバック、ライセンス料と報告義務、輸出管理規制、責任制限と補償、そして準拠法と紛争解決といった条項は、潜在的な法的・経済的リスクを最小限に抑え、グローバルな技術活用を成功させ、大切な知的財産権を保護するための鍵となります。

 

当社は、このような複雑な特許ライセンス契約書の翻訳において、貴社の各部門のニーズを理解し、最高品質の翻訳とサポートを提供することをお約束します。貴社の海外ビジネスにおける特許ライセンス契約に関してご不明な点やご相談がありましたら、ぜひお気軽にお問い合わせください。

 

契約書の翻訳-1WIPジャパンは、東京弁護士共同組合神奈川県弁護士共同組合をはじめとする全国23の弁護士共同組合の特約店に認定されています。
ご相談は無料です。いつでもお気軽にご連絡ください。

 

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契約書翻訳に役立つリンク集

法務省大臣官房司法法制部「法令翻訳の手引き」(PDF)
日本法令外国語訳推進会議「法令用語日英標準対訳辞書」(PDF)
Publiclegal(英文契約書のテンプレートや書式を無料で提供)
日本法令外国語訳データベースシステム(法務省が開設した日本の法令の英訳サイト)
weblio 英和辞典・和英辞典
英辞郎 on the web

 

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