お客様が翻訳会社に翻訳を依頼されようとしたときに、最も気になるのはコストと品質ではないでしょうか。前回はそのコストに関する概要のお話をさせていただきました。
今回は具体的にどのようにすればお客様がコストカットできるか、についてお話をさせていただければと思います。
1 Excelでメモリを管理する
2 CATツールを使用する
3 原稿をシンプルにする
4 翻訳のスケジュールを確保する
1 Excelでメモリを管理する
翻訳用の原稿にはファイル内で重複する部分があったり、過去の翻訳と同じ文章が含まれていたりするケースがあります。何度か翻訳会社に翻訳を依頼されたことがあるお客様ならお分かりかと思います。同じ文章であるなら、それを引用して翻訳依頼する文字数を少しでも減らした方がお得になることは容易に想像していただけるかと思います。
まずは、Excelで過去の翻訳をメモリ化していただくことで新たに翻訳を依頼される際にコストカットができる方法からお伝えします。
もし過去の翻訳をまとめたExcelのメモリがあれば、仮に1ワードの見積レートが16円だとすると、新たに翻訳する原稿内に、過去の原文と比較してマッチ率が75%以上ある文章が存在すれば、その一文に関しては半額以上のディスカウントが可能になります。
全く同一(100%マッチ)の文章においては、2円ほどにディスカウントが可能になるでしょう。もちろん過去の翻訳をメモリ化することで表現の統一を図れるメリットもあります。
それでは、実際にどのようにExcelで管理すればよいのでしょうか。
お客様にとってもっとも効率のよい方法は、翻訳のご依頼時に、納品形式として通常の成果物に加えて、Excelの対訳表(A列に原文、B列に訳文)も納品するように翻訳会社へ指示していただくことです。
そうすることで次回以降のご依頼時にそのExcelデータを翻訳会社に支給し、ディスカウントをリクエストしていただくことが可能になります。もちろん過去案件と全く異なる原稿の場合は、ディスカウントは難しくなりますが。
その際注意していただくことがあります。
・Excelの対訳表はあくまで1文単位*で管理されていること
・翻訳会社からの納品後に、お客様の方で修正を加えられた場合は、このExcelデータも同時に修正を加えていただくこと
この2点です。
もしお客様の方で、過去の翻訳資産を多くお持ちの場合は、例えば「色deチェック」*などのソフトを使用し、Excelでメモリ化されるのもよいかと思います。
対象となる言語ペア(例えば日英・英日など)について、ある程度分かる担当者様が作業される必要はありますが、比較的簡単に作ることができます。
過去の似たような原文と訳文のファイルをそのまま参考資料として翻訳会社に渡された経験をもしお持ちでしたら、それは表現の統一という意味ではとても大事なことですが、コストカットにはなかなか結びつかないケースが多いと思われます。
そのまま渡すのではなくExcelでメモリ化して翻訳会社に支給することで、表現の統一に加えて、コストカットも実現できるわけです。
なお、このExcelのメモリ化に加えて、用語集もExcelで管理されるとお客様ができる翻訳の管理としては完璧です。
これは翻訳者やチェッカーの作業のお話で恐縮ですが、メモリだけでは、マッチ率が低い文章になると、過去の訳文が画面上に表示されない設定にしていることが多いため、その一文に関してはほとんど過去の訳文を参照できないことがあります。
また、マッチ率が高い文章でも、用語集がなければ文章の流れによって、用語の定訳を変更してしまうこともあります。
したがって、文章単位だけではなく、用語単位のデータも揃えることにより、過去訳との統一をより正確に図ることができます。用語集がないことで、用語が不統一になってしまい、それをのちほど修正するお時間を考えると、大きな時間(=コスト)カットができます。
いかがでしたでしょうか。
次回はさらに効率的にメモリの管理ができる、「2 CATツールを使用する」についてお話をさせていただければと思います。(中後)
*1文単位:
基本的にはExcelの1行内に、原文が1文、訳文が1文保存されている状態です。文章の流れや言語の性質上、原文の1文に対して、その訳文が2文になる場合は問題ありません。その逆もしかりです。
*色deチェック
https://www.wordvbalab.com/word-addin/iro-de-check/#download
翻訳コストに関連する記事:
・ お客様ができる翻訳コストカット(その1)
・ お客様ができる翻訳コストカット(その2)
・ お客様ができる翻訳コストカット(その3)
・ お客様ができる翻訳コストカット(その4)
・ 翻訳の費用対効果を最大化させるには?