翻訳会社・翻訳業者に翻訳を依頼したいけれど、はじめてなのでどこから手を付けていいかわからない!?どうやって業者を選んだらいいの?事前に何を準備したらいいの?発注前に特に注意すべきことは?
翻訳会社・翻訳業者への発注前にポイントとなる注意点をまとめました。翻訳を依頼する際の参考となりましたら幸いです。
もし無事に正式発注となりましたら、発注後に確認しておくべきこと、納品後にチェックすべきことなどがあります。正式発注後の注意点については、「翻訳業者に依頼 (2):正式発注発注時と納品後の確認ポイント」のページにまとめていますので合わせてご活用ください。
- 【目次】
- 1. 入稿可能な原稿のデータ形式を確認する
- 2. 試訳(トライアル)を利用する
- 3. 料金体系をチェックする
- 4. 翻訳者の実力をチェックする
- 5. 文体やスタイルを事前に打ち合わせる
- 6. 納品時のデータ形式について打ち合わせておく
- 7. 不要なページは翻訳対象から省く
- 8. 英語か米語(米国英語)かを確認する
- 9. 言語の地域差や方言を確認する
- 10. 翻訳原稿の分量を伝える
- 11. 翻訳の納期の目安を確認する
- 12. 翻訳しなくてよい個所を削除する
- 13. 文字数を確定する方式を確認する
- 14. 複数言語が混在しているか確認する
1. 入稿可能な原稿のデータ形式を確認する
原稿はもっぱらデジタルデータでの受け渡しとなりますが、データのファイル形式には注意する必要があります。
例えば、あまり一般的でないアプリケーションで作成したファイルの場合、受け取る側にも同じシステムがないとファイルを扱えないため、対応できない場合が場合あります。対応する入稿形式を翻訳依頼前に確認しておきましょう。(関連記事はこちら:翻訳発注時に注意が必要な原稿とは?)
オフィスソフトで作成した文書ファイルなどであれば、ファイルを保存する際に標準的なオフィスソフトで扱えるファイル形式に変換することで解決できます。DTPソフトで作成されたファイルのように特殊なデータ形式の場合、入稿前に翻訳会社が対応できるか確認しましょう。
2. 試訳(トライアル)を利用する
翻訳依頼を正式に発注する前に、テスト的に文書の一部を翻訳する「トライアル(試訳)」制度を提供している翻訳会社も多くあります。
実際の翻訳の「お試し」として行ってもらい、仕上り状態を確認したり、文書の内容や形式が想定通りかなどをあらかじめ確認したりできます。原稿のやり取り、作業の流れ、請求などの条件で疑問点がないかを事前に洗い出すことができる点も便利といえます。
トライアルの提供条件は翻訳会社によって異なります。正式発注に至った場合に限ってトライアルを無料または割引価格で提供する翻訳会社もあれば、はじめから無料とうたっている翻訳会社もあります。
3. 料金体系をチェックする
翻訳料金は一般的に文字数または単語数を基準にして決められます。
原文の言語が日本語の場合は1文字あたり、原文の言語が英語の場合は単語(ワード)あたりを基準に計算されます。したがって文書全体でいくらといった見積り方法をとる場合が多くあります。(関連記事:1文字いくら?1枚いくら?~翻訳の見積依頼の際に注意すべきこと)
文字・単語あたりの単価は、翻訳の専門性や訳文の仕上りレベルにより異なる場合もあります。単純に言語を他の言語に置き換える翻訳と、特定分野の専門知識を総動員して翻訳するのとでは、労力や必要とされる技術・知識レベルが異なります。また、翻訳後の文章を格調高くしっかりした文章にしたい場合、翻訳者が翻訳技術に加えて文学的センスも備えている必要があります。こうした技術や知識を上乗せされる場合には、やはり価格が高くなる傾向にあります。
翻訳会社を比較する段階では料金体系や文字カウント方法の違いに気を配りましょう。そして、具体的な依頼先が固まったら文書を整理しながら必要とする仕上りレベルを決めて、実際に依頼したい文書で見積もりを取ってもらうことが良策といえます。
4. 翻訳者の実力をチェックする
翻訳は言語による表現ですから、必然的に翻訳後の文書は翻訳者によって異なります。
決して数式のように同じ訳文になるわけではありません。翻訳者の知識やテクニック、センスなどによって左右されます。
単に情報を伝達することが目的の、事務的な文書であれば、文調はあまり問わなくてよいかもしれません。逆に、社長の挨拶文など、メッセージ性を重視したり、名文とされている文書を翻訳したりする場合には、それなりに高いレベルの技術を持つ翻訳者を見つけて依頼する必要があると言えます。
なお、一般的な翻訳サービスでは翻訳文書に対して校正が行われます。この段階で誤字脱字、誤訳といった基本的な誤りが校正プロセスで修正され、最低限の品質が確保されるようになっています。
5. 文体やスタイルを事前に打ち合わせる
翻訳を依頼するにあたって、文体や文調(スタイル)なども事前に考慮する必要があります。
特に外国語から日本語への翻訳では、文章を敬体(です・ます調)に訳すか、それとも常体(だ・である調)に訳すかによって、文書全体の雰囲気が大きく異なります。文書の種類や性質によって、やさしい雰囲気にするのか、硬い感じにするのか、敢えて直訳風に訳するのか、意訳を多用してでも自然な文章に訳するのかなどの違いが生じます。
しかしながら、文体やスタイルは翻訳者の文章作成スキルによるところが大きく、語学力とは必ずしも一致しません。文体に関する要望には限界があるものと考えた方がよいでしょう。それでも、大まかに文体についての要望を述べ、どれだけ対応してもらえるか相談するのがよいでしょう。
6. 納品時のデータ形式について打ち合わせておく
翻訳後のデータを扱う最も一般的な形式は、標準的ワープロソフトである「Word」のファイル形式です。次いで、プレーンテキストの場合も多いでしょう。
多くの翻訳会社は、その他にも、表計算ソフト、プレゼンテーションソフトなど、多様なファイル形式での出力・納品に対応しています。また、そのままWebページとして利用可能なHTMLファイルとして作成したり、そのまま出版物として利用可能なDTPフォーマットとして作成したりといったオプションサービスの提供を強みとする翻訳会社も多くあります。
特殊なファイル形式での対応を希望する場合には、事前によく打ち合わせておく必要があるでしょう。
7. 不要なページは翻訳対象から省く
文書の中には特に翻訳する必要のない部分も多々あります。
翻訳を依頼する場合に、全体のうち翻訳しなくてもいいページを除いてしまえば、その分だけ文字数も減り、料金を抑えることができることがあります。料金が安くできる他に、不要な確認の手間をあらかじめ除いておけば、翻訳依頼のやり取りを円滑に進めることができる利点にもつながります。
たとえば、「図表のみ掲載されたページは、翻訳が必要なページかどうか?」、「 制作スタッフの一覧は必要か?」 など、事前に文書を見返して検討してみてはいかがでしょうか。
関連記事はこちら:
8. 英語か米語(米国英語)かを確認する
言語には、程度の差こそあれ、使用される文化圏・地域などによる微妙な違いがあります。この違いは、場合によっては翻訳に重要な影響を及ぼします。
英語の場合には、「アメリカ英語」(米国式英語)と「イギリス英語」(英国式英語)という区分があります。主な違いの例として、「color」と「colour」のように、単語の綴りが違ったり、「cellular phone」と「mobile phone」のように、使用する語が違ったり、といったものがあります。
重要なのは「1st floor」のような表現で、これはアメリカ英語では建物の「1階」を指しますが、イギリス英語では「2階」を意味します。また、日付の表記順序はアメリカ英語では「月/日/年」の順で記し、イギリス英語では「日/月/年」の順で記します。使用される文化圏・地域を間違えて訳出すると重大な誤りに繋がってしまいます。
9. 言語の地域差や方言を確認する
中国語の場合、簡体字と繁体字では使用する文字(漢字)が異なります。また、北京語と広東語では語彙だけでなく文法も異なり、翻訳する際には無視できない違いとなります。
英語も、アメリカ英語(米国式英語)とイギリス英語(英国式英語)以外に、「カナダ英語」や「オーストラリア英語」などの区分が設けられる場合もあります。やはり、地域ごとに特徴的な表現があったり、特定の語彙の使用頻度が違ったりします。
スペイン国内と中南米で使用されるスペイン語や、ポルトガル国内とブラジルのポルトガル語についても同様です。(関連記事:同じスペイン語でも違う?地域別の単語やニュアンスの使われ方)
10. 翻訳原稿の分量を伝える
翻訳を依頼する際には、原稿のおおまかな分量をあわせて伝えるようにしましょう。それによって料金や時間の見積もりがより具体的に計れるようになります。
翻訳は一行一行を入念に検討していく作業であり、対象となる文書の分量が多ければ、作業に必要となる手間や時間も比例的に増えます。翻訳結果の文章内で訳語の整合性が取れているか、文体が統一されているか、前後の関係を踏まえた翻訳になっているか、などの点にも注意して翻訳しなくてはなりません。そのため翻訳後のチェックも手間を要します。
また、分量がかなり多い原稿であっても、文書中に反復が多かったり、決まったパターンのものが多かったりと比較的翻訳を進めやすいと判断ものである場合、翻訳会社側が割引を提示してくれる場合があります。文書の内容がどういった性質のものかも見積り時に説明するとよいでしょう。
11. 翻訳の納期の目安を確認する
翻訳作業にかかる作業量・時間・費用は、原稿の分量・文書の専門性・求められる品質などによって左右されます。翻訳案件ごとに納期の確認を行っておく必要があります。
翻訳会社はよほど無理な要望でない限り納期の融通を利かせてくれます。文書量が膨大な場合も、それ相応の人員を動員するなどして、指定の納期までに翻訳を仕上げてくれます。
ただし、納期短縮の調整を行う場合は概して通常よりも費用がかさみます。当初見積りとして提示された納期でOKかどうか、予算との兼ね合いで無理のない納期かどうか、確認しておきましょう。
また、人的資源にも限りがありますので、訳文の専門性や品質に一定のレベルが要求される案件の場合、対応可能な翻訳者のスケジュールが合わず、納期調整が困難な場合もあり得ますので注意しましょう。
納期短縮については、こちら「急いでいるので納期を短縮したい! 納期短縮の方法とは?」をご覧ください。
12. 翻訳しなくてよい個所を削除する
文書の内容や性質によっては、必ずしも翻訳しなくてよい個所が含まれている場合があります。
翻訳しなくても意図する目的が達成できるという個所があった場合、思い切って翻訳対象から除いてしまうことも有効です。翻訳にかかる時間と費用を節約することができます。
例えば、巻末資料・出典一覧・巻頭言・コラム欄・制作記などのような、本文に直接関わらない付帯部分は、その部分が無くても本質的に支障が出ない場合が多々あります。文書本文でも、翻訳の目的に直接関係しない内容の章は、思い切って削除してよいかもしれません。
電子メールのやり取りなど、比較的短い文書の場合は、気にする必要がないかもしれませんが、報告書を丸ごと翻訳するような大掛かりな翻訳依頼を検討している場合などは、対象となる原稿の削減を事前に確認することをお勧めします。
13. 文字数を確定する方式を確認する
翻訳の料金体系は、原文の分量から料金を設定する方式と、翻訳後の文章の分量から料金を設定する方式の二つがあります。原文から算定する方式を「原文方式」、翻訳結果から算定する方式を「訳文方式」と呼ぶ場合もあります。
訳文方式の場合、事前に把握できるのはあくまで見積り金額であり、実際の費用・翻訳料金は翻訳が完了するまで確定しません。この方式は、2カ国語間の翻訳においてどちらが原文か訳文かに関わらず特定の言語の文字数を翻訳料金の根拠とする場合や、一対一で対応する訳文ではなく、よりフレキシブルに訳文作成を依頼したため、翻訳結果の分量が大きく変わる可能性のある場合などに採用されることがあります。
しかし、大多数の場合は、翻訳会社では原文方式が採用されています。(関連記事:1文字いくら?1枚いくら?~翻訳の見積依頼の際に注意すべきこと)
14. 複数言語が混在しているか確認する
翻訳を希望する資料の中には、複数の言語が混ざっている場合もあります。
例えば、大部分が日本語で書かれている資料のうち、一部で英語が使われていることもあります。日本語と英語が混ざった文章を英語に翻訳する場合は、文章内の日本語の部分のみが文字数としてカウントされ、料金に反映される場合などがあります。
一方で、日本語と英語が混ざった文章をまとめて中国語に翻訳したい場合などは、日本語と英語でそれぞれ文字数のカウント方法が異なることもあります。
複数言語が含まれている場合は、特に料金設定が複雑になる可能性がありますので、不透明な点があれば翻訳会社に問い合わせましょう。