<img src="https://trc.taboola.com/1341089/log/3/unip?en=page_view" width="0" height="0" style="display:none">
  • Twitter
  • facebook
  • LINE
  • pocket
  • はてな
2021 Feb. 22

翻訳サービスの国際規格:ISO17100とは

 

ISO17100:2015とは、翻訳品質を保証するための要求事項を定めた国際規格です。欧州を中心とした地域では、2006年からEN15038という翻訳規格が欧州標準化委員会によって導入されていました。しかし、ISO9000シリーズの基本的な考えを踏まえ、より国際的な規格の必要性を背景に2015年5月に発行されたのがISO17100です。

 

ISO17100の制定に伴いEN15038は撤回されていますので、ISO17100が唯一の翻訳品質に関する国際規格認証となっています。なお、ISO17100では、通訳やポストエディットについては適用外としています。

 

ISO17100のメリット

ISO17100自体は、翻訳の品質そのものを保証する規格ではありません。もちろん、顧客にとって成果物である翻訳に高い品質を求めることはもっともなことです。しかし、今後の発注でもその品質が維持され続けるのか、翻訳工程における人的リソース選定は適切に実施されているのか、情報セキュリティ管理は徹底されているのかなどについては、成果物の品質以外で判断する手立てはありません。

そこでISO17100では、安定した翻訳品質を提供するために翻訳サービス提供者(LSP)が具備すべき必要事項について規定がされています。ISO9000シリーズの考えが反映されていることからもわかるとおり、翻訳工程、品質管理、リソース管理等、翻訳品質を維持するための体制構築について言及されています。

 

また、ISO17100で認定された翻訳サービス提供者(LSP)は、毎年の維持審査と3年に一度の更新審査が義務づけられており、品質管理体制が維持されているかどうかについて第三者による審査を受けることになっています。


このことから、ISO17100という国際規格は、管理体制と品質面の両方において信頼性の高い取引先を探すことができるというメリットを提供しています。以下に、ISO17100が言及している基本的な事項について、主な概要を説明していきます。

 

翻訳工程についての要求事項

ISO17100では、翻訳(及びセルフチェック)バイリンガルチェック最終検品の3つが必須プロセスとして定められています(ISO17100:2015, 5.2)。翻訳者は原文を翻訳するだけでなく、アウトプットされた訳文を自らで確認する(セルフチェック)ことが必要となります。その後、原文と訳文を照らし合わせて確認する工程(バイリンガルチェック)が入り、最後に主にプロジェクトマネージャーが仕様に照らし合わせて訳文を確認する作業(最終検品)をおこないます。

 

3つの必須工程は、翻訳会社であれば通常のサービスの範囲に含まれていることもあるでしょうが、ISO17100によって認定された翻訳サービス提供者(LSP)であれば確実に実施されていることが保証されます。

これらの翻訳に関する基本プロセスに加え、ISO17100ではフィードバックの適切な処理顧客満足度の評価が必須となっています(ISO17100:2015, 6.1)。翻訳の品質を決定する要因は、実に多岐にわたります。単にコストをかければ品質のよい仕上りの翻訳になるわけではありません。

 

問い合せ対応で顧客のニーズをしっかり汲み取れているのか、各プロセスにおいてコミュニケーションは適切に取れているか、翻訳者やチェッカーの選出は適切か、対象読者について十分に把握できているか、適切な時間管理と納期管理が徹底されているか等、プロジェクトに様々なスタッフが関わっているため対応策も一つではない場合もあるでしょう。

 

顧客からの貴重なフィードバックを詳細に分析し、継続的に業務体制を改善することが、ISO17100認定の翻訳サービス提供者(LSP)には求められます。そうすることで、しっかりとした品質管理の底上げにつながり、ひいては顧客へのメリットにつながります。

 

人的リソースについての要求事項

ISO17100では、翻訳者、バイリンガルチェッカー、プロジェクトマネージャーの資格・力量について規定されています。その中でも、翻訳者・チェッカーについてガイドラインが明示されています。まず、翻訳者の資格については、3つのカテゴリが規定されています(ISO17100:2015, 3.1.4)。

a) 翻訳関連の高等教育機関の卒業資格
b) 翻訳以外の高等教育機関の卒業資格+2年以上の翻訳実務経験
c) 5年以上の翻訳実務経験

まず、a)にある「翻訳関連の高等教育機関の卒業資格」についてですが、日本では翻訳の学位を認定する高等教育機関が存在していませんので、翻訳専門家としての実務実績が主な基準となります。翻訳の国家資格があるオーストラリアやドイツなどとは異なり、日本には民間検定試験はあるものの、翻訳能力を証明する国家資格は存在しないというのが実情です。


上記の資格を満たせば、自動的にISO準拠の翻訳者として認定されるわけではありません。ISO17100では、専門的力量という要件も定められています(ISO17100:2015, 3.1.3)。翻訳者が翻訳会社に登録する際には、通常トライアルというものがあり、専門的力量の確認が実施されています。登録後でも、定期的に翻訳者の専門的力量が維持されていることを検証することを、ISO17100では翻訳サービス提供者(LSP)に求めています(ISO17100:2015, 3.1.1, 3.1.8)。また、バイリンガルチェッカーについても、翻訳者と同等の力量と資格が規定されています(ISO17100:2015, 3.1.5)。


プロジェクトマネージャーについては、翻訳者の場合のようなカテゴリは設定されていませんが、ISO17100認定の翻訳サービス提供者(LSP)はプロジェクトマネージャーに必要な力量を定義して文書化する必要があります。社内研修等を実施することで、プロジェクトマネージャーのプロジェクト管理能力を継続的に維持し、その内容を記録・保管することを義務づけています(ISO17100:2015, 3.1.7, 3.1.8)。


このように翻訳制作に携わるスタッフについて、翻訳サービス提供者(LSP)は資格・力量を把握することから始まり、個々のスタッフのレベルアップに至るまで、適切な管理がなされていることを規定しているわけです。

 

近年のAI翻訳の台頭もあり、翻訳業界で必要とされる技術についても著しい変化があります。そうした変化の中で継続的な人的リソース管理を実施している翻訳サービス提供者(LSP)なら、顧客の様々なニーズに対して安定したサービスが提供できることでしょう。

 

情報セキュリティについての要求事項

情報セキュリティについて、ISO17100はどのように規定しているのでしょうか。ISO17100:2015, 6.2には、以下のように説明がされています。

 

プロジェクト全体の適切な期間に亘る保管を確実にするため, 並びに記録の維持又は削除、及びデータ保護に関する法律上及び/又は契約上のあらゆる義務を果たすためのプロセスを整備しなければならない。

 

つまり、プロジェクト対象期間中および案件完了後において、顧客のデータが確実に保存され、データ保護の観点から適切に維持・管理がされているかどうかが審査されます(ISO17100:2015, 4.5, 6.2)。

 

また、翻訳サービス提供者(LSP)によっては、別途セキュリティ関連の認証を取得している場合があります。翻訳の品質がよいということだけでなく、情報セキュリティ面でも対策が取られているということは、取引先の選定の際に重要なポイントとなるでしょう。


WIPジャパンでは、 一般財団法人 日本情報経済社会推進協会(JIPDEC)により、プライバシーマーク(Pマーク)の認定を受けています(2018年2月更新)。万全の機密保持体制でセキュリティマネジメントに取り組んでいます。

 

コンプライアンスについて

ISO17100にはコンプライアンスについて個別に定めた箇条はありませんが、前述のとおり情報セキュリティの観点で法令遵守について言及がされています(ISO17100:2015, 6.2)。ISO17100全体においても、顧客情報、顧客との取引、下請けへの依頼、社内研修の活動等、翻訳プロセスに関わる活動記録についての適切な保存が義務づけられています(ISO17100:2015, 4.4, 4.6.1.2, 3.8.1, 等)。

 

したがって、翻訳サービス提供者(LSP)は日々の翻訳サービス業務と並行して、業務が適正に遂行されていることを記録・管理する体制を維持していかなければなりません。


また、翻訳業界では社内で翻訳作業することは少なく、個人や法人の翻訳者に依頼するケースが多いのが実情です。このような形態での取引は、多くの場合で下請法の適用対象となります。

 

下請法では、発注をする際には書面の交付(あるいはメール)が義務づけられており、それらの書類を2年間保存することが規定されています。ISO17100では手順書や活動記録の文書化を義務づけている記述がある点でも、ISO17100認定の翻訳サービス提供者(LSP)とは、このような法令遵守が確実に実践されているという保証ともいえます。


ISOでは維持審査・更新審査という形で第三者による定期的な審査がありますので、コンプライアンスという面での管理体制の質も問われているということになります。

 

まとめ

以上、翻訳品質に関する国際規格認証ISO17100の概要とメリットについて説明をさせていただきました。ISO17100認定を受けた翻訳サービス提供者(LSP)及び翻訳対象分野について、一般財団法人日本規格協会のウェブサイト(https://shinsaweb.jsa.or.jp/MS/Service/ISO17100)にて確認することができます。翻訳サービスをご利用の際に、管理体制と品質面の両方において信頼性の高い取引先を探す参考となればと思います。


高度な「言語力」と「専門性」を兼ねそなえた一流の翻訳づくりを提供するWIPジャパンは、2021年2月にISO17100:2015を取得しています。翻訳についてのご依頼がありましたら、ぜひご相談ください。

 

  • Twitter
  • facebook
  • LINE
  • pocket
  • はてな
WIPの翻訳をつくるサービスはこちら