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Nov. 28, 2019

トランスクリエーションとして翻訳を依頼する場合

 

近年、「トランスクリエーション」という単語を耳にすることが多くなりました。特に広告やマーケティング分野で使われるこの単語、一体どういうものなのでしょうか。そして従来の翻訳とは何が違うのでしょうか。

 

数年前に発売された『通訳翻訳ジャーナル 2017 Spring』によると、この単語は欧米の多国籍企業で生まれたマーケティング用語だそうで、次のように定義されています。

 

ソース言語のコピーが喚起する感情や印象を把握し、それと同じものを喚起させるようなコピーをターゲット言語で書くことを指す

 

つまり、ソース言語(英語から日本語への翻訳の場合は英語)を読んだときに読者が抱くイメージと同じものを、ターゲット言語(英語から日本語への翻訳の場合は日本語)でも抱かせるようにコピー(広告)を書く、ということのようです。ですが、これだけでは今までの翻訳との違いが分かりません。今までの翻訳も、ソース言語と同じメッセージをターゲット言語でも伝えることがその定義のはずです。トランスクリエーションとは、コピーにおける翻訳ということなのでしょうか。

 

*『スティーブ・ジョブズ』の翻訳者であり、『翻訳のレッスン』の著者でもある井口耕二氏は、この『通訳翻訳ジャーナル 2017 Spring』における定義を読んだ感想として、「なにそれ。それって単なる『翻訳』じゃん」と述べています。

 

『通訳翻訳ジャーナル 2017 Spring』には、イギリスのトランスクリエーションエージェンシーである Mother Tongue Writers が刊行する『The Little Book of Transcreation』が紹介されています。トランスクリエーションの手引書である同書には、次のトランスクリエーションの定義が記載されています。

 

In short, the finished text should read as if it were originally written in the reader’s own mother tongue, and give them the exact same experience as the source text gave to readers in the original language.

The process is far more complex than translation – it is what we call transcreation.

(執筆者による仮訳:訳文は、まるで最初から読者の母国語で書かれていたかのような文である必要があります。原文の読者が読んだ時に得た体験と全く同じ体験を、訳文の読者にも与えるものでなければなりません。

その訳出プロセスは翻訳よりはるかに複雑です。そのため、翻訳ではなくトランスクリエーションと呼んでいます)

 

これを読んでも、やはり今までの翻訳と同じような気がします。この定義はまさに翻訳のあるべき姿であり、「翻訳よりはるかに複雑」ではなく、「翻訳はそんなにも複雑」というのが正しいと思います。

 

ちなみに、同社のWebサイトには “Our transcreation copywriters don’t just translate your words. They bring every nuance and emotion to life for your audience.” とあるので、やはりコピー(広告)における翻訳ということなのかもしれません。

 

次に、日本を本社とする各翻訳会社の定義も確認してみました。

 

「読み物など広告系の原文の翻訳の際に、原文にとらわれず、魅力的な訴求力の強い訳文を訳出すること」 トライベクトル株式会社

「正確な翻訳に「意訳」を加え、訳語に訴求力を持たせる試み」 株式会社十印

「原文と同じコンセプト・メッセージを伝える創造的な翻訳」 アズワンランゲージ株式会社

 

ざっくりとまとめると「広告系の文章を翻訳する際、原文にとらわれず、原文と同じ訴求力を持つ訳文をつくる」ということになるのでしょうか。

 

広告系以外の文章、たとえば医療や法律、特許などの文書の翻訳の場合は、言語を超えた正確な情報伝達が求められます。そうした場面では、原文に忠実に翻訳するプロセスを用います。また、アプリケーションやソフトウェアなどの説明書(マニュアル)を翻訳する際に訳文に求められることは、ユーザーが商品やサービスをスムーズに利用できることです。原文に忠実ながらもシンプルで分かりやすい訳出プロセスが必要になるでしょう。

 

広告系の文章の場合、求められることはなんでしょうか。

 

商品やサービスの紹介文書を翻訳する場合、その目的は商品やサービスの認知度、好感度を上げ、ターゲットとする読者に買ってもらうことです。そのためには、ターゲット層に対し、原文と同等の訴求力を持った訳文をつくらなければなりません。

 

たとえばアメリカの広告では、ペプシの広告に代表されるように競合他社に対して挑戦的なものも見受けられます。この広告をそのまま翻訳してしまうと、他社の商品と比較して自社商品をアピールする広告に慣れていない日本人読者には受け入れられない可能性があります。結果として、原文と同等の訴求力を持った訳文ではなくなるということになります。

 

つまり、文書の種類が違えば翻訳をする目的も違い、必然的に訳出プロセスも違ってくるということです。

 

こう考えると、トランスクリエーションは翻訳とは別のものではなく、広告系の文章に求められうる訳出プロセスを伴う、翻訳に内包されるもの(翻訳≧トランスクリエーション)であると考えた方がよさそうです。実際に翻訳会社によっては、広告やマーケティング分野の翻訳においても「トランスクリエーション」という単語を使っていない会社もあります。

 

トランスクリエーションに限りませんが、翻訳をする際、または翻訳会社や翻訳者に依頼する際は、望む訳文を得るために、その文書を翻訳する目的と対象読者を明確にしておくことが欠かせません。特に外部に依頼する場合は、「トランスクリエーション」という言葉を使うのであれば、目的と対象読者を具体的に伝え、訳文のイメージと品質を事前にすりあわせておくことが大切です。

 

翻訳会社によっては、トライアル翻訳(お客様に翻訳の品質を確認してもらうために、無料または割引価格で少量の試訳をすること)を受け付けている会社もあります。積極的に活用することをおすすめします。

WIPジャパンの無料トライアル翻訳についてはこちら

 

参考文献・URL

通訳翻訳ジャーナル 2017年4月号
https://www.amazon.co.jp/%E9%80%9A%E8%A8%B3%E7%BF%BB%E8%A8%B3%E3%82%B8%E3%83%A3%E3%83%BC%E3%83%8A%E3%83%AB-2017%E5%B9%B44%E6%9C%88%E5%8F%B7/dp/B01MRACKO3

Buckeye the Translator (井口耕二氏のブログ)
http://buckeye.way-nifty.com/translator/2017/02/post-9199.html

Mother Tongue Writers
https://www.mothertongue.com/

トライベクトル株式会社
https://www.trivector.co.jp/contents/?tag=%E3%83%88%E3%83%A9%E3%83%B3%E3%82%B9%E3%82%AF%E3%83%AA%E3%82%A8%E3%83%BC%E3%82%B7%E3%83%A7%E3%83%B3

株式会社十印
https://to-in.com/blog/2278

アズワンランゲージ株式会社
http://www.asonelanguage.com/transcreation/

執筆:田村嘉朗
大手通信会社ロンドン支社勤務を経て、2013年より翻訳者として活動
専門は通信、マーケティング

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