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May. 23, 2025

多言語化と医療翻訳の現場から見る「地元地域病院」の本当の課題~在留外国人急増時代の医療インフラを支えるために~

 

 

「医療の多言語化」は本当に進んでいるのか

いまや日常のあちらこちらで外国の方と出会うのは珍しい出来事ではありません。2010年代後半から続く在留外国人の着実な増加。観光客だけでなく、労働力や留学生としての「暮らす外国人」の存在感が全国津々浦々に広がっています。

では、医療現場ー特に地元地域の病院やクリニックは、この変化に本当に対応できているのでしょうか。

あらためて現場の視点で、医療翻訳≒メディカル翻訳の本質と、見過ごされることの多い問題点・改善策について掘り下げます。

 

 

目次
1. 在留外国人の「急増」と地域医療現場の現実
2. 外国人患者の「病院での困りごと」—どこが壁?
3. 「多言語化したいが予算がない」の現実
4. JMIP認証医療機関とは? 現場の認識と課題
5. 急速な外国人増加に追いつけない「日本の生活インフラ全体」— 医療以外の課題
6. 地域病院でよく使われる「多言語ドキュメント」の現実
7. 医療翻訳/メディカル翻訳の現場で起きていること—「外注」と「現場連携」の壁
8. 解決策—現場主導×専門翻訳サービスの融合を
9. 今後求められるスタンス—「病院の個性」に合わせたメディカル翻訳
10. まとめ~「多様化する患者とともに進化する」医療翻訳のこれから

 

1. 在留外国人の「急増」と地域医療現場の現実

日本の在留外国人数は年々増加傾向にあり、ご存知の通り都市部だけでなく地方部にも波及しています。技能実習制度や、高度人材の受け入れ拡大、家族帯同のケースの増加など、多様な背景があります(法務省等各種公的データより)。

地域密着の中小病院・クリニックでも、対応を求められる場面が着実に増えているのが現実です。しかし—。

「急患で来た中国人、英語もほとんど通じずにスタッフが大混乱」
「多言語の問診票はネットからダウンロードしただけ、内容がズレていて患者に伝わらない」
「通訳や多言語AI端末が導入されたが、専門用語の壁に現場が困惑」

各地の医療現場で実際に語られる声の数々。表面的な整備だけでは、根本解決には至っていません。



  • 「急患で来た中国人、英語もほとんど通じずにスタッフが大混乱」
  • 「多言語の問診票はネットからダウンロードしただけ、内容がズレていて患者に伝わらない」
  • 「通訳や多言語AI端末が導入されたが、専門用語の壁に現場が困惑」

各地の医療現場で実際に語られる声の数々。表面的な整備だけでは、根本解決には至っていません。

 

 

 

2. 外国人患者の「病院での困りごと」—どこが壁?

主な困りごと一覧

患者側の困りごと 病院側の困りごと
日本語の受付手続きが分からない スタッフが外国語や他文化に不慣れ
問診票・診断書など書類が読めない/理解できない 医療通訳者が不在/予算的に雇用が難しい
症状や既往歴を伝えられない 多忙な中で十分な説明・翻訳対応ができない
処方や注意事項などの情報が理解できない 市販の多言語ツールや自動翻訳の精度・限界
支払い方法や保険制度が分からない 医療法・個人情報保護の制約で柔軟な対応が困難な場合
緊急時の案内・サポート体制が分からない 「院内掲示」ひとつ、どこまで多言語にするか悩む


具体的な失敗事例

  • 症候群の漢字が正しい中国語になっておらず意図が伝わらない
  • 英語の説明書なのに「Name(名前)」が「製品名」と誤訳されていた
  • インド出身の患者が宗教的理由で『絶食』の説明が伝わらずトラブルに

医療・健康というセンシティブな領域ゆえ、「なんとか意思が伝わればよい」は通用しない。わずかな誤訳・誤解が重大なミスや訴訟リスクを招きかねません。



3. 「多言語化したいが予算がない」の現実

外国語対応の必要性は年々認識が広がっています。一方、小規模なクリニックや地域病院には、「多言語化=コスト負担」という壁が。

  • そもそも日常の業務で手一杯。専門の人員や予算どころではない
  • 多言語翻訳の外注費用が想像以上に高い
  • 多言語AI端末導入も、ランニングコストや運用の手間が侮れない
  • 構造的に「日本語話者」前提の国内医療インフラでは、国や自治体のサポートが限定的

大規模な病院や自治体が導入した「最新の多言語ツール」のニュースばかりが目立ちますが、「自分たちには縁のない話」と諦めムードの医療機関も多いのが現実です。



予算配分のリアル~多言語化vs AI端末投資

投資対象 初期費用 運用コスト 現場の満足度 課題
医療翻訳(人による翻訳) 中~高 低~中 作業後のアップデートや修正作業が負担
多言語AI端末 微妙な会話や医療専門用語で精度不足、導入負担
オンライン医療通訳 中~高 回線や端末のトラブルに弱い
ネット上多言語資料DL 現場ニーズとのズレ、責任が不明確

 

 

4. JMIP認証医療機関とは? 現場の認識と課題

JMIP(外国人患者受入れ医療機関認証制度)は、日本で外国人患者を安心して受け入れられる体制を整えた医療機関に付与される認証制度です。多言語対応力、医療従事者の異文化理解、コミュニケーション支援など幅広い基準が問われます。

しかし、国内のJMIP認証取得数はまだごく一部に留まり、地方の地元病院、街のクリニックまでカバー
できていません。また、JMIPクリア病院でも実務的な課題が山積みです。

  • 実際に現場職員まで意識が浸透していない
  • 「認証をとったが、それ以降アップデートが停止」
  • 本来必要な『書類』や『掲示物』レベルの多言語化が未了

 

 

5. 急速な外国人増加に追いつけない「日本の生活インフラ全体」— 医療以外の課題

「医療現場」だけでなく、交通・金融・不動産・学校などあらゆる地域生活インフラが多言語対応に四苦八苦しています。

 

医療分野との類似点・相違点

分野 既存の多言語対応 専門性・複雑さ 制度・法的制約 課題例
医療 遅れている~一部 極めて高い 高い 説明責任・トラブル多発
交通 一部進んでいる 中程度 一部 案内の誤訳
不動産 遅れている 中~高 中程度 契約の誤訳
教育 地域差が大きい 高い 高い 進学・進級関係の壁

医療分野は緊急対応・リスク・プライバシー面で最も高いハードルがあり、表面的な多言語化だけでは追い付けません。


 

6. 地域病院でよく使われる「多言語ドキュメント」の現実

現場で多言語化が求められる代表的なツール・書類

  • 受診案内書、院内掲示、予約案内
  • 問診票(一般/診療科別)
  • 検査説明・注意事項
  • 同意書・説明書・薬剤説明
  • 医療費・支払い窓口案内
  • 院内ウェブサイト
  • 緊急時対応マニュアル

それぞれの課題

  • ネット上のフリーフォーマットを流用すると自院の運用に合わず混乱
  • 医療現場特有の表現・専門用語が誤訳されやすい
  • 多言語更新の際、改訂履歴や整合性管理が不十分
  • 「翻訳して終わり」ではなく、現場で使われる/メンテナンスできることが絶対条件

 

7. 医療翻訳/メディカル翻訳の現場で起きていること—「外注」と「現場連携」の壁

多言語化=外部翻訳会社へ丸投げ、で本当に良いのでしょうか?

専門性の高い医療分野では

  • 「医学的表現・ニュアンスまで正確さが必須」
  • 「病院ごとの運用・現場ルール・地域性(文化・言語)」まで反映が必要
  • 「最新の医学知識/制度改定」に合わせてアップデートする柔軟性

外注翻訳だけに頼ると、必ず「運用時のギャップ」が生まれがちです。

理想は「現場と連携しつつ、専門的な医療翻訳サービスを活用する」ことといえます。


成功ケース・失敗ケースの比較

ケース 概要 成果・課題
A 翻訳会社と現場担当が直接連携 専門ニュアンスも反映、現場で混乱少。運用負担大だが成果高
B 自動翻訳・AIツール導入 コスト・工数減も、医療用語誤訳や実情合わず再修正が発生
C 汎用テンプレ流用のみ 実運用時にトラブル多発。対応スタッフが混乱

 

8. 解決策—現場主導×専門翻訳サービスの融合を

一方的な「翻訳→納品」で終わらない

  • 必要に応じて現場関係者(医師・看護師・事務担当)と打ち合わせ
  • 翻訳版の現場確認、現場テストを踏んだうえで最終稿に仕上げる
  • 地域事情や外国人患者層の特性に応じた言語選択
  • 改訂・アップデートも現場の実情をフィードバック
 

小規模病院でも柔軟に導入可能なステップ型サービスも増加中

  • まずは「頻出ドキュメント」から段階導入
  • 専門チームによるコンサルティング+翻訳で「現場主義」の多言語化
  • 国・自治体による補助金やプロモーションも活用

 

9. 今後求められるスタンス—「病院の個性」に合わせたメディカル翻訳

地元・地域病院にとって最大の強みは「患者ファースト」「地域密着の運用」です。

  • 自院の診療科・来院層に合わせた実践的な多言語翻訳
  • 院内掲示やドキュメントのデザイン部分まで一貫した運用
  • 更新・フィードバックも含めた「持続可能な体制づくり」

 

10. まとめ~「多様化する患者とともに進化する」医療翻訳のこれから

「医療 翻訳」「メディカル 翻訳」というキーワードが単なるIT・AIツール導入のトレンドワードではなく、『現場で患者と医療従事者の命を守るインフラ』に進化する時代がやってきています。

どれだけ機械化・自動化が進んでも、「翻訳の質=命綱」という医療翻訳・多言語化現場のリアルを、いま改めて見つめ直すことが大切です。

 

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