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Jul. 08, 2025

設備工事契約書 翻訳:海外プラント・インフラプロジェクトを支える要点と関係部門の役割

 

グローバルなプラント建設、工場拡張、データセンター構築、エネルギーインフラ整備といった大規模プロジェクトにおいて、専門性の高い設備工事(Equipment Installation / Mechanical, Electrical, Plumbing (MEP) Works / Process Equipment Installation)は不可欠です。これらの専門工事を依頼する際に締結されるのが、設備工事契約書(Equipment Installation Contract / MEP Works Contract)です。

この契約書は、設備の種類、設置範囲、性能基準、工期、契約金額、支払い条件、品質保証、安全管理、試運転(Commissioning)、引渡し、そして責任範囲などを詳細に定める法的文書であり、その正確な翻訳は、プロジェクト全体の機能性、効率性、安全性、そして潜在的なリスクの回避のために極めて重要です。翻訳のミスや内容の理解不足は、性能不適合、工期遅延、追加費用、品質問題、責任の曖昧化、さらには高額な法的紛争へと発展するリスクをはらんでいます。

特に、国ごとに設備に関する技術基準(ISO、ANSI、JISなど)、安全基準、環境規制、契約法、そして特定の産業分野(石油化学、電力、半導体など)特有の商慣習が大きく異なるため、単に言葉を置き換えるだけでなく、それぞれの法制度や技術的要件、商慣習を踏まえた上で契約内容を理解し、翻訳することが不可欠です。

本記事では、私どもが数多くの設備工事契約書の翻訳を支援してきた経験に基づき、翻訳における重要ポイントと、貴社の各部門がどのように翻訳された契約書を活用し、関与していくべきかを具体的なケーススタディを交えて解説します。

貴社の海外プロジェクトにおいて、設備工事契約の適切な理解と運用を通じて、機能性、安全性、効率性を確保し、リスクを最小限に抑えるために、ぜひ本記事をお役立てください。

設備工事契約書とは何か?その目的と国際プロジェクトにおける重要性

設備工事契約書(Equipment Installation Contract / MEP Works Contract)とは、プラント、工場、ビルディングなどの建設プロジェクトにおいて、特定の設備(機械、電気、配管、計装、通信、HVACなど)の供給、設置、試運転、調整、性能保証といった専門的な業務を、発注者(Owner / Employer)または元請業者(Main Contractor)が、専門工事業者(Equipment Supplier / Installer / Specialist Contractor)に依頼する際に締結する、極めて重要な法的文書です。

この契約書は、以下の非常に多岐にわたる詳細な条項を含みます。

  • 設備の種類と範囲(Type and Scope of Equipment / Works): 設置する機械、電気、配管、計装、通信、HVAC(冷暖房空調)などの具体的な設備名、数量、型番、供給範囲(供給のみ、設置のみ、供給・設置両方など)、工事の具体的な内容。

  • 性能基準と保証(Performance Standards and Warranties): 設置された設備の期待される性能(例:処理能力、効率、稼働率、排出基準など)、性能試験(Performance Test)の実施要件、性能が達成されない場合の補償・ペナルティ。

  • 技術仕様と図面(Technical Specifications and Drawings): 設備に関する詳細な技術仕様、設計図面、配線図、配管図など。各種国際規格(ISO, IEC, ASMEなど)または現地規格の遵守。

  • 工期とスケジュール: 設備の製造、輸送、設置、試運転、調整、完了までの各フェーズの開始日と終了日、中間目標、工期延長の条件、遅延損害金(Liquidated Damages)。

  • 契約金額と支払い条件: 総契約金額、支払いスケジュール(マイルストーン払い、出来高払い、進捗払いなど)、支払い通貨、為替リスクの取り扱い、支払いの遅延利息。

  • 品質管理と検査(Quality Control and Inspection): 製造段階、輸送段階、設置段階での品質検査、試験の立会い、検査機関の指定。

  • 安全管理と環境規制: 設備工事に伴う労働安全衛生基準、環境関連法規の遵守義務、危険物取り扱い規定。

  • 試運転と引渡し(Commissioning and Handover): 設備の試運転計画、手順、合格基準、引渡し条件、完了証明書の発行。

  • 瑕疵担保責任(Defects Liability / Warranty Period): 引渡し後の一定期間における設備の故障や欠陥に対する修補義務、責任範囲。

  • 予備品とメンテナンス(Spare Parts and Maintenance): 予備品の供給、長期的なメンテナンスサポート、技術トレーニングの提供。

  • 秘密保持(Confidentiality): 設備に関する技術情報やプロジェクトに関する機密情報の取り扱い。

  • 責任の制限と補償(Indemnification): 設備工事の不備や事故によって生じた損害に対する責任範囲、元請業者や発注者への補償義務。

  • 契約解除条件: 契約違反、不可抗力などによる契約解除の条件、通知期間、違約金。

  • 準拠法と紛争解決: 契約に適用される法律、紛争が発生した場合の解決方法(裁判、仲裁、調停など)。

国際プロジェクトにおいて設備工事契約書が特に重要なのは、以下の理由からです。

  • プロジェクトの機能性・効率性への直結: プラントや工場において、設備は生産プロセスの中核を担います。その性能が契約通りに確保されなければ、事業全体の収益性や効率性が著しく損なわれます。

  • 高度な専門性と技術的リスク: 設備工事は専門性が高く、特定の技術やノウハウを必要とします。契約書は、これらの技術的要件とリスクを明確に分担し、管理するための基盤となります。

  • 多額の投資と長期的な影響: 高価な設備を導入する場合が多く、その初期投資は莫大です。また、設備の選定や設置の質は、その後の運用コストや維持管理に長期的に影響を与えます。

  • 国際的な技術基準と法規制への対応: 各国で設備の品質基準、安全基準、環境規制、輸出入規制、電気通信に関する法規などが異なります。これらの違いを理解せずに契約を結ぶと、予期せぬ法的リスクや多額の費用負担が生じる可能性があります。

  • サプライチェーンの複雑性: 設備は様々な国から調達されることが多く、国際的な輸送、通関、設置といった複雑なサプライチェーンを伴います。契約書は、これらのプロセスにおける各当事者の役割と責任を明確にします。

英文設備工事契約書の特徴と和文契約書との違い

国際的な設備工事取引では、多くの場合、英文で契約書が作成されます。その特徴は、日本の和文契約書とは異なる点がいくつかあります。

特に、FIDIC(国際建設コンサルタント連盟)の「イエローブック」(FIDIC Plant and Design-Build Contract)や「シルバーブック」(FIDIC EPC/Turnkey Projects Contract)などが参照されることも多く、その構造と用語には独特の慣習があります。

  • Performance Guarantees(性能保証)の厳格さ:

    • 英文契約では、設置される設備が特定の性能(例:生産量、効率、純度、消費エネルギーなど)を達成することを厳しく保証する条項が含まれることが一般的です。性能が達成されない場合の違約金(Performance Liquidated Damages)や、最悪の場合の契約解除権なども詳細に規定されます。

    • 日本の契約書に比べ、具体的な数値目標とそれを達成しなかった場合のペナルティがより明確に定められる傾向があります。

  • Commissioning and Testing(試運転と試験)のプロセス詳細化:

    • 設備の設置後に行われる試運転、性能試験、信頼性試験などの手順、合格基準、試験の立会い、不合格だった場合の再試験や責任分担が非常に詳細に規定されます。これは、設備が期待通りに稼働するかを確認する上で極めて重要です。

  • Defects Liability Period(瑕疵担保責任期間)とWarranty(保証):

    • 引渡し後の一定期間(通常12ヶ月~24ヶ月)における設備の故障や欠陥に対する供給者・設置者の修補義務、保証の範囲(部品交換、修理、出張費用など)、通知要件が詳細に定められます。機械・設備の故障は事業に直接影響するため、その対応が厳密に規定されます。

  • Spare Parts and Maintenance(予備品とメンテナンス):

    • 長期的な稼働を見据え、必要な予備部品の供給、技術トレーニングの提供、将来的なメンテナンスサービス提供に関する条項が含まれることが一般的です。

  • Title and Risk of Loss(所有権と危険負担)の移行:

    • 設備の所有権がいつ、どの段階で供給者から発注者(または元請業者)に移転するのか(例:工場出荷時、現場到着時、設置完了時、引渡し時など)、また、その段階で設備の損傷・滅失のリスクがどちらの当事者に移転するのかが明確に規定されます。これは保険の適用範囲や損害発生時の責任に直結します。

  • Hazardous Materials(有害物質)の取り扱い:

    • 特定の設備が有害物質を含む場合や、工事中に有害物質が発生する場合の取り扱い、法規制遵守、責任分担が詳細に規定されます。

  • Site Conditions and Access(現場状況とアクセス):

    • 設備設置現場の状況、アクセスルート、作業スペース、電源・水の供給などに関する発注者(または元請業者)の提供義務、および請負業者の現場調査義務が規定されます。

  • Interface Management(インターフェース管理):

    • 複数の設備業者や工事担当者が関わる場合、各々の責任範囲と連携方法、情報共有のプロトコルが規定されることがあります。

  • Compliance with Laws and Regulations(法令遵守):

    • 対象国および関連する国際法規(輸出管理、環境規制、安全基準など)の遵守義務が強調されます。

  • Liquidated Damages for Delay and Performance:

    • 工期遅延だけでなく、設備が約束された性能を達成しなかった場合の遅延損害金(または性能不達成ペナルティ)が明確に規定されます。

  • Dispute Resolution(紛争解決):

    • 国際的な取引では、国際仲裁が一般的な紛争解決手段として選択されます。仲裁地、仲裁機関、仲裁規則が明記されます。

日本の和文契約書に比べ、英文設備工事契約書は、より具体的な技術的要件、性能保証の厳格性、そして複雑なリスク分担を細部にわたって規定する傾向が強いです。翻訳においては、これらの技術的・法的ニュアンス、および国際的な産業慣行を正確に反映した表現を用いることが不可欠です。

 

設備工事契約書翻訳における重要ポイント

設備工事契約書の翻訳は、貴社の海外プロジェクトにおける設備の機能性、安全性、効率性、そして法的リスクに直接影響するため、極めて高い精度と専門性、そして法務・技術・財務・プロジェクト管理に関する視点が求められます。以下のポイントを押さえることが、成功への鍵となります。

  1. 強固な情報セキュリティ体制

    設備の種類と範囲(Scope of Equipment / Works)および性能基準の厳密な翻訳:

    • 設置する具体的な設備名、数量、型番、供給・設置範囲、そして最も重要な「性能基準」(例:処理能力、効率、稼働率、排出基準など)を、技術的・法的に誤解の余地なく厳密に翻訳することが不可欠です。一点の誤訳が、設備が意図した機能を果たさない、プロジェクト全体の生産性に影響するといった重大な問題に直結しかねません。性能試験の合格基準も正確に把握すべきです。

  2. 性能保証(Performance Guarantees)とペナルティ(Liquidated Damages for Performance)の明確化

    • 設備が契約で定められた性能を達成しなかった場合に適用される具体的なペナルティの計算方法(例:日額、月額、上限額など)、および最悪の場合の契約解除条件を正確に翻訳することが極めて重要です。これは、プロジェクトの投資回収率や事業継続性に直接影響します。

  3. 工期、中間目標、遅延損害金(Liquidated Damages for Delay)の明確化

    • 設備の製造、輸送、設置、試運転、調整、完了までの各フェーズのスケジュール、そして工期が遅延した場合に請負業者が支払うべき遅延損害金の計算方法(日額、週額、上限など)を正確に翻訳することが不可欠です。工期はプロジェクト全体の進行に大きく影響するため、厳密な理解が求められます。

  4. 契約金額と支払い条件、為替リスクの取り扱い

    • 総契約金額、支払いスケジュール(マイルストーン払い、出来高払いなど)、支払い通貨、為替リスクの負担者、支払いの遅延利息を正確に翻訳することが不可欠です。特に大規模な設備投資では為替変動リスクも大きいため、その取り決めを正確に理解する必要があります。

  5. 試運転(Commissioning)と引渡し(Handover)の手順と合格基準

    • 設備の試運転計画、手順、合格基準、引渡し条件、完了証明書の発行プロセスを詳細に翻訳することが重要です。これらのプロセスが明確でないと、引渡し遅延や費用増加の原因となり、設備の稼働開始に支障をきたす可能性があります。

  6. 品質管理と検査(Quality Control and Inspection)の要件

    • 設備の製造段階、輸送段階、設置段階での品質検査の実施時期、方法、合格基準、試験の立会い、検査機関の指定、不適合時の対応を正確に翻訳することが不可欠です。

  7. 責任の制限と補償(Indemnification)条項

    • 設備工事の不備や事故によって生じた損害に対する責任範囲、元請業者や発注者への補償義務、そして責任制限の上限を厳密に翻訳することが不可欠です。この条項は、将来的な訴訟リスクと費用負担に直接影響します。

  8. 瑕疵担保責任(Defects Liability / Warranty Period)と予備品・メンテナンス

    • 引渡し後の一定期間における設備の故障や欠陥に対する修補義務、保証の範囲、通知要件を正確に翻訳するとともに、予備品の供給、長期的なメンテナンスサポート、技術トレーニングの提供に関する条項も確認すべきです。

  9. AI翻訳の適切な活用と専門家による最終確認

    AI翻訳技術は、初稿の作成や用語の統一に役立ちますが、設備工事契約書のような法的・専門的に極めて複雑な文書、特に性能保証や技術仕様、試運転に関する条項においては、法的ニュアンス、特定の産業分野の専門用語、国際的な技術基準、そして現地法規を完璧に理解することは困難です。AIを効率化ツールとして最大限活用しつつも、法務知識、国際プラント・インフラプロジェクトの実務経験、当該国の法規制に関する知見を持つ専門の翻訳者による徹底的なレビューと校正が不可欠です。人間による精査が、潜在的なリスクを最小限に抑え、安全な国際プロジェクトの基盤となります。

  10. 強固な情報セキュリティ体制

    設備工事契約書には、独自の技術仕様、設計図面、性能データ、供給者情報、財務情報など、企業の競争力やプロジェクトの成否に直結する極めて機密性の高い情報が含まれることが一般的です。これらの情報が外部に漏洩した場合、企業の競争力低下、信用失墜、法的な責任問題など、甚大な損害を被る可能性があります。そのため、翻訳を依頼する際には、翻訳会社が厳格な情報セキュリティポリシーを定め、技術的・物理的・人的な対策を徹底しているかを必ず確認すべきです。私どもは、お客様の機密情報を最高レベルで保護するため、徹底したセキュリティ管理を実践しています。

  11. 「総コスト」での評価と信頼できる翻訳会社の選定

    翻訳にかかる費用は、単純な料金だけでなく、翻訳後の社内での確認・修正にかかる時間や労力、そして将来的な紛争リスクといった「総コスト」で評価すべきです。初期費用が安価でも、翻訳品質が低ければ、結果的に大きな損失に繋がりかねません。実績、専門性、セキュリティ体制、そして提供されるサービスの質を総合的に判断し、貴社の国際プロジェクトにおける戦略的パートナーとして信頼できる翻訳会社を選定することが重要ですし、私どもはこのような観点から、お客様に安心してご利用いただける最適なサービスを提案しています。

  12. 現地の弁護士・コンサルタントとの連携

    翻訳された契約書をベースに、必ず現地の建設法、契約法、税法、特定の産業規制に詳しい弁護士やコンサルタントと連携し、契約内容の法的妥当性、税務上の影響、そしてリスクを最終確認することが不可欠です。翻訳は「理解の橋渡し」であり、最終的な法的判断は現地の専門家が行うべきです。

設備工事契約書の翻訳は誰に必要なのか?ケーススタディで見る関係部門の役割

設備工事契約書は、海外プラント・インフラプロジェクトの機能性と安全性を確保する上で極めて重要であり、多岐にわたる部門や関係者がその内容を理解し、翻訳された情報に基づいて連携することが不可欠です。

 

ケーススタディ1:海外新工場建設における設備調達・設置(製造業企業)

状況: 日本の製造業企業が、ベトナムに新たな生産工場を建設し、製造ラインの主要設備を欧州のメーカーから調達・設置する際に、英文の設備工事契約書を締結するケース。

  • 施設建設部/工場建設部:

    • 必要性: 設備の供給範囲、設置工事のスケジュール、性能基準、試運転条件、引渡し要件、瑕疵担保責任、予備品供給など、工場稼働に直結する技術的・商業的条件を詳細に確認します。プロジェクト全体の工期と品質に大きな影響を与えるため、これらの内容を正確に反映した翻訳が不可欠です。

    • ケース: 契約書に記載された「設備の生産能力保証と、未達成の場合の賠償条項」や「試運転の合格基準と手順」を和訳で確認し、工場建設スケジュールと生産計画への影響を評価します。過去には、性能保証に関する翻訳が不十分だったため、設備が計画通りの生産性を達成せず、多大な損害を被った事例がありました。私どもは、このような性能保証や技術的要件に関する条項の正確な翻訳を特に重視しています。

  • 法務部:

    • 必要性: 契約全体の法的妥当性、リスク管理、特に責任制限、補償条項、不可抗力、保険、契約解除条件、準拠法、紛争解決(国際仲裁)条項の適切性を確認します。ベトナムの建設関連法規、国際取引法規への対応が求められます。

    • ケース: 契約書に記載された「設備の故障による間接損害に対する責任制限の範囲」や「国際仲裁の管轄地と仲裁規則」を和訳で確認し、法的リスクと紛争解決戦略を評価します。

  • 生産技術部/エンジニアリング部:

    • 必要性: 設備の技術仕様、設計図面、配線図、配管図、品質管理基準、検査項目、試運転手順、予備品リストなど、技術的な詳細を厳密に確認します。

    • ケース: 契約書に記載された「主要部品の国際規格(例:ISO準拠)」や「設備のメンテナンスマニュアル提供義務」を和訳で確認し、技術的適合性と将来の運用・保守体制を確保します。

  • 購買部:

    • 必要性: 契約金額、支払いスケジュール、為替リスク、輸送・通関費用、保証期間中の部品交換費用など、調達費用に影響する条項を詳細に確認します。

    • ケース: 契約書に記載された「設備の輸出入関税および税金の負担者」や「支払いマイルストーンとその達成基準」を和訳で確認し、正確な調達費用と支払い計画を立てます。

ケーススタディ2:海外発電プラント建設における電気設備工事(専門工事業者)

状況: 日本の電気設備専門工事業者が、インドネシアの大型石炭火力発電プラント建設プロジェクトにおいて、元請業者から英文の電気設備工事契約書を受注するケース。

  • プロジェクトマネジメント部/国際事業部:

    • 必要性: 電気設備工事の範囲、工期、契約金額、支払い条件、遅延損害金、性能保証、試運転、引渡し、変更管理、クレーム手続きなど、自社の収益性とリスクに直結する商業的条件を詳細に確認します。

    • ケース: 契約書に記載された「電気設備の性能保証(例:出力安定性、効率)と未達成の場合のペナルティ」や「工期遅延による遅延損害金の具体的な計算方法」を和訳で確認し、プロジェクトの収益性とリスクを評価します。

  • 法務部:

    • 必要性: 契約全体の法的妥当性、リスク管理、特に責任制限、補償条項、保険、不可抗力、契約解除条件、準拠法、紛争解決条項の適切性を確認します。インドネシアの電気事業法、建設関連法規、労働安全衛生法への対応が求められます。

    • ケース: 契約書に記載された「当社の過失により発生した損害に対する賠償責任の上限額」や「契約解除時の未払い費用精算条件」を和訳で確認し、法的リスクと対応戦略を評価します。

  • 現場工事部/技術部:

    • 必要性: 電気設備の技術仕様、配線図、設置手順、品質管理基準、安全管理計画、試運転手順などを詳細に確認し、現場での工事を円滑に進めます。

    • ケース: 契約書に記載された「適用される電気設備に関する国際規格(例:IEC規格)」や「現場での安全基準遵守義務」を和訳で確認し、現場での工事計画と安全管理体制を構築します。

よくある質問(FAQ)

設備工事契約書の翻訳に関して、お客様からよくいただくご質問とその回答をまとめました。

Q1: 設備工事契約書における「性能保証(Performance Guarantees)」の条項は、翻訳でどのように注意すべきですか? 

A1: 性能保証は、設備が期待通りの機能と効率を発揮するかを担保する最も重要な条項です。翻訳においては、保証される具体的な性能数値(例:生産量、効率、稼働率、消費電力など)、性能試験の実施方法、合格基準、そして性能が達成されなかった場合の具体的なペナルティ(例:性能不達成ペナルティ、違約金、または最悪の場合の契約解除)を、技術的・法的に誤解の余地なく厳密に表現することが不可欠です。これにより、事業の収益性や継続性へのリスクを正確に把握できます。

Q2: 「試運転(Commissioning)と引渡し(Handover)」に関する条項の翻訳で、特に注意すべき点は何ですか? 

A2: 試運転と引渡しは、設備が実際に稼働を開始し、所有権と責任が移転する重要なプロセスです。翻訳においては、試運転の具体的な計画、手順、期間、合格基準、不合格だった場合の対応(再試験、修理、費用負担など)、引渡し条件、完了証明書の発行プロセス、そして引き渡し後に発生する瑕疵担保責任への移行を明確に表現することが重要です。これにより、スムーズな稼働開始と責任の明確化が図れます。

Q3: 国際的な設備工事契約で、「責任の制限(Limitation of Liability)と補償(Indemnification)条項」はなぜ重要視されますか? 

A3: 設備工事は高額であり、不備や事故が発生した場合の損害が甚大になる可能性があります。翻訳においては、請負業者または供給業者の過失によって生じた損害に対する責任範囲、責任上限額(Cap on Liability)、補償義務の範囲(例:直接損害のみか、間接損害も含むか、弁護士費用含むかなど)、そして発注者への補償義務の具体的な内容を厳密に表現することが極めて重要です。これにより、将来的な訴訟リスクと費用負担が明確になります。

Q4: 契約期間中の「瑕疵担保責任(Defects Liability / Warranty Period)」に関する条項は、どのように注意して翻訳すべきですか?

A4: 設備は一度設置されると、その後の長期的な稼働が重要になります。翻訳においては、引渡し後の瑕疵担保責任期間(通常12ヶ月~24ヶ月)、その期間中に発見された故障や欠陥に対する請負業者・供給業者の修補義務、保証の範囲(部品交換、修理費用、出張費用など)、通知要件、そして修補に応じない場合の対応(第三者による修補、費用請求など)を明確に表現することが重要です。これにより、長期的な設備の安定稼働を保証し、予期せぬメンテナンス費用を回避できます。

Q5: 設備工事契約書で「準拠法と紛争解決」の条項が非常に重要と言われるのはなぜですか? 

A5: 準拠法(Governing Law)は、契約の解釈、有効性、義務の履行、そして違反時の法的効果を判断する際に適用される法律です。国によって設備の技術基準、安全規制、契約法、製造物責任の考え方などが大きく異なります。準拠法を誤ると、契約条項の法的有効性が失われたり、予期せぬ義務が生じたり、あるいは紛争解決が著しく困難になったりする可能性があります。また、紛争解決方法として国際仲裁を選択する場合、その仲裁地、仲裁機関、仲裁規則、仲裁判断の拘束力も極めて重要であり、専門的な知識をもって正確に翻訳・理解する必要があります。

 

まとめ

設備工事契約書の翻訳は、単なる言語の変換に留まらず、企業が国際市場でプラント、工場、インフラといった大規模プロジェクトの核となる設備を安全かつ効率的に導入し、長期的な事業目標を達成するための極めて重要な戦略的要素です。英文と和文の契約書が持つそれぞれの特徴を深く理解し、施設建設、法務、生産技術、購買といった各部門が連携しながら、専門知識を持つ翻訳者の力を借りることが不可欠ですし、これまでの経験から私どもはこれを強く認識しています。

特に、設備の種類と範囲、性能基準、性能保証とペナルティ、試運転と引渡し、責任の制限と補償、瑕疵担保責任、そして準拠法と紛争解決といった条項は、潜在的なリスクを最小限に抑え、国際プロジェクトにおける継続的な成功への鍵となります。

 

私どもは、このような複雑な設備工事契約書の翻訳において、貴社の各部門のニーズを理解し、最高品質の翻訳とサポートを提供することをお約束します。貴社の海外ビジネスにおける設備工事契約やプラント・インフラプロジェクトに関してご不明な点やご相談がありましたら、ぜひお気軽にお問い合わせください。

 

契約書の翻訳-1WIPジャパンは、東京弁護士共同組合神奈川県弁護士共同組合をはじめとする全国23の弁護士共同組合の特約店に認定されています。
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契約書翻訳に役立つリンク集

法務省大臣官房司法法制部「法令翻訳の手引き」(PDF)
日本法令外国語訳推進会議「法令用語日英標準対訳辞書」(PDF)
Publiclegal(英文契約書のテンプレートや書式を無料で提供)
日本法令外国語訳データベースシステム(法務省が開設した日本の法令の英訳サイト)
weblio 英和辞典・和英辞典
英辞郎 on the web

 

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