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Nov. 25, 2025

【翻訳者キャリアの未来図 Vol.2】AIでは絶対に担えない!SDSをGHS/JISに完全適合させる「知識の翻訳者」の責務 ⚠️

AI翻訳技術の進化は止まりませんが、その限界もまた明確になってきました。AIは大量の文章を処理できても、「法規制の整合性」や「科学データの真偽」を判断することはできません。

 

これは、化学物質の安全データシート(SDS)の分野で顕著です。SDSの作成・更新は、企業にとってのコンプライアンスの生命線であり、単なる言語能力を超えた「知識の翻訳者」でなければ担えない領域です。

 

前回のVol.1で薬機法を扱いましたが、今回は「SDSを最新の日本のGHS(JIS規格)に完全適合させる」という、さらに技術的かつ法的な厳密さが求められる作業に焦点を当て、この分野で活躍する翻訳者が持つべきハイブリッドスキルと、その市場価値を深掘りします。

 

1. 専門翻訳者が直面する「日本語SDS」の3つの壁

企業が保有する既存の日本語SDSを最新のGHS基準に適合させる際、翻訳者(または専門家)が直面する課題は、単なる用語の置き換えではありません。

 

1-1. 【壁①】規格の「陳腐化」と最新性への追従

多くの既存SDSは、作成時のJIS規格や法令に基づいていますが、GHS基準(国連GHS)は2年ごとに改訂され、これに追従して日本のJIS Z 7252(分類)とJIS Z 7253(作成)も随時改正されています。

  • 知識の翻訳者の責務: 翻訳者は、自身の専門知識を最新のJIS規格で絶えず更新し、既存のSDSが最新の規格に適合しているかを判断する「監査役」としての役割を担います。古い知識や過去のSDSを流用することは、そのまま法令違反のリスクに直結します。

1-2. 【壁②】H文・P文の「定型文」厳守

GHSラベル要素に含まれるH文(危険有害性情報)とP文(注意書き)は、翻訳者の主観やセンスが一切許されない極めて特殊な文書です。

  • AI・汎用翻訳の限界: AIや汎用翻訳者が、H文・P文を自己流の自然な日本語に翻訳すると、その厳密な法的・技術的意味が変わってしまいます。

  • 知識の翻訳者のスキル: 翻訳者は、分類結果に基づき、最新のJIS Z 7252/7253で定められた「定型文」コードを正確に参照し、それを厳密に記載しなければなりません。これは、言語能力ではなく、「規格の適用能力」です。

1-3. 【壁③】国内法令との「整合性」の複雑さ

GHS適合SDSの最終的な難関は、日本の国内法令との統合です。

SDSの「15. 適用法令」の項目は、労働安全衛生法(安衛法)、化審法(化学物質の審査及び製造等の規制に関する法律)、PRTR法など、複数の法律にまたがる規制情報を整理し、記載する専門性が求められます。

  • 単なるリストアップではない: 翻訳者は、これらの法令情報が最新の改正内容を反映しているかをチェックし、SDS全体で矛盾がないように「再統合」する能力が必要です。

 

2. 翻訳者から「SDS適合のプロ」へと進化する6つのステップ

AI時代に価値を最大化する翻訳者は、以下の6つの実務ステップを理解し、実行できる「SDS適合のプロ」です。これは、企業がリスク回避のために最も高く評価するスキルセットです。

 

2-1. ステップ①:既存データの「最新性」再評価

既存SDSに記載された物理化学的データや毒性データが、最新の文献やデータベース(NITEなど)と照合しても依然として有効かを確認します。古いデータに基づく分類は、後のリスクとなります。

 

2-2. ステップ②:最新JIS Z 7252に基づく「再分類」

物質・混合物を、最新のJIS Z 7252の分類基準に照らし合わせ、分類カテゴリーの変更がないかを厳密にチェックします。

特に混合物の場合、既存の計算結果を鵜呑みにせず、JISの混合物分類原則(濃度カットオフ値など)に則って再計算・再評価できる化学的知識が不可欠です。

 

2-3. ステップ③:JIS Z 7253準拠16項目への「情報補完と統一」

既存のSDSを、最新のJIS Z 7253の厳格な16項目構成にマッピングし直します。

この際、旧規格では要求されなかった項目や、日本の国内法令に基づく必須の情報が漏れていないかを補完します。

 

2-4. ステップ④:GHSラベル要素の「コードと定型文」適用

再分類の結果に基づき、絵表示、注意喚起語、H文、P文を抽出します。ここで重要なのは、最新JIS規格の「定型文コードと文言」を正確に適用することです。

 

2-5. ステップ⑤:国内法令(安衛法・化審法など)との「最終統合」

SDSの「15. 適用法令」の項目を、日本の最新の安衛法、化審法、PRTR法の改正内容と照らし合わせて更新します。この情報は企業の法令遵守を直接証明するものであり、翻訳者は高度なコンプライアンス知識が求められます。

 

2-6. ステップ⑥:SDSとラベルの「整合性」検証

作成したSDSの「2. 危険有害性の要約」に記載された情報が、製品に添付されるラベル表示と完全に一致しているかを最終検証します。この検証を怠ると、現場での情報混乱や法令違反につながります。

 

 

3. なぜ「知識の翻訳者」への需要は揺るがないのか

AI時代、SDS適合のプロへの需要は、以下の理由でさらに高まっています。

 

3-1. リスクヘッジとしての高い報酬

SDSの誤り、特に分類ミスや法令記載漏れは、企業に製品の回収、罰金、信用失墜という甚大なリスクをもたらします。そのため、このリスクを排除できる「SDS適合のプロ」には、翻訳業界の中でも非常に高い報酬と安定した仕事が約束されます。企業の目線は、「安い翻訳」から「リスクをなくす投資」へと完全にシフトしています。

 

3-2. 複数の専門知識の「同時運用能力」

SDS適合には、化学、法規制、JIS規格、そして言語学(定型文)という複数の知識分野を同時に運用し、矛盾なく統合する能力が求められます。

この「ハイブリッド運用能力」は、特定の専門知識しか持たない人材では実現できず、AIが得意とする単一的なパターン認識の領域からも大きく外れています。

 

3-3. 恒常的な「監視とアップデート」の業務

GHSやJIS規格は静的なものではなく、常に更新されます。一度作成したら終わりではなく、恒常的な「監視(ウォッチャー)」と「メンテナンス」の業務が発生するため、SDS適合のプロの需要は一時的なものではなく、持続的です。

 

 

結論:SDSは翻訳者が「プロ」として差別化できる最高の舞台

SDS適合の専門家は、単に「英語ができる化学者」でも「化学知識のある翻訳家」でもありません。それは、「法規制と科学的データを最新のJIS規格に厳密に適合させられるコンプライアンスの専門家」です。

AI翻訳の波が押し寄せる今、SDS分野は、翻訳者がその高度な専門性と付加価値を最大限に発揮し、市場での地位を確固たるものにできる最高の舞台を提供しています。

「知識の翻訳者」として、自身のキャリアをさらに高めたいとお考えであれば、ぜひその専門性を活かしてください。

 

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