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Jan. 28, 2026

世界の陶磁器とスイーツで巡る言葉の旅 (レシピ付き)

 

本格的に寒くなり、温かい紅茶やコーヒー、何よりスイーツが美味しい季節になりました。それに使う陶磁器が素敵なら、さらに気分が上がります。世界の名だたる陶磁器ブランドを中心に、それに映えるスイーツやお茶、異文化間の憧れと、そこから生まれた素敵な勘違いなど、言葉や歴史ネタをご紹介します。「薬菓」と「パラチンタ」はレシピ付き。

 

国名:陶磁器ブランド(言葉・歴史ネタ):おすすめスイーツ + お茶/コーヒー

東洋

  • 中国:景徳鎮(地名が世界共通語に):月餅 + 普洱茶(プーアルチャ)

  • :高麗青磁(小説の登場人物が色名に):薬菓 + とうもろこし茶(オクススチャ)

  • :有田焼(港名がブランド名を書き換え):練り切り + 抹茶

西洋

  • ドイツ:マイセン(視覚的な誤訳がベストセラーに):バームクーヘン + エチオピア産モカコーヒー

  • ギリス:ウェッジウッド(階級別マーケティングの成功):スコーン + アッサム・ティー

  • ンガリー:ヘレンド(地理的誤訳が覚えやすい):パラチンタ + エスプレッソ

1. 始まり —— 東洋の陶磁器

中国の陶磁器:景徳鎮 11世紀頃(北宋時代)~

  • 磁器は「China」

「陶磁器」は主に「カオリン」という物質の含有量などにより、「磁器」「炻器」「陶器」の3種類に分けられます。英語でこの「カオリン」が主原料となる「磁器」を、PorcelainやChinaと呼びます。国名としてのChinaは秦(Qin)王朝由来ですが、磁器をChinaと呼ぶのは、景徳鎮の白磁が世界中で名声を得ていたことによるといわれています。また、「カオリン」自体も、景徳鎮近郊の「高嶺(Kaoling)」という地名が語源。地名がそのまま物質名として世界共通語になったエピソードです。

 

  • おすすめのスイーツ + お茶:ユエビン(月餅) + 普洱(プーアル)茶

月餅の丸い形には「円満」の意味が込められています。濃厚な餡が詰まった月餅は、中国茶と共に。中国茶は発酵度合いにより6種類に大別されます。こってりした月餅に合うお茶として、発酵度の高い黒茶の普洱茶(プーアル茶)がおすすめです。

 

韓国の陶磁器:高麗青磁 10世紀頃(高麗王朝時代)~

韓国の陶磁器:高麗青磁 10世紀頃(高麗王朝時代)~

 

  • 小説のキャラクターが色名に

高麗青磁の神秘的な青緑色は、世界中で「セラドン(Celadon)」と呼ばれています。諸説ありますが、17世紀のフランス小説『アストレ(L'Astrée)』に登場する「羊飼いセラドン」の服の色に由来するといわれています。東洋の至宝が、西洋の小説のキャラクターの名前で広まった、興味深い「文化の翻訳」の事例です。

 

  • すすめのスイーツ + お茶:ヤックァ(薬菓) +とうもろこし茶(オクススチャ)

蜂蜜や胡麻を使った伝統的な揚げ菓子。「薬」という字がつくのは、古くから蜂蜜などが健康に良いとされ、「医食同源」の思想が東アジアに広く共有されてきた背景があるためです。韓国といえば薬膳茶や代用茶が有名ですが、甘いものも意外とあります。薬菓に甘さが既にあるので、香ばしくほんのりとした甘さのとうもろこし茶(オクススチャ)などが良いかもしれません。

薬菓を筆者も作ってみました。正式版だと2~3時間かかってしまうので、初めて作るのに勝手に時短。本当は生地を30分冷蔵庫でねかせたり、シロップ液に1時間以上漬け込んだりする工程があります。とはいえ、香りも甘さもちょうどよかったです。(所要時間:約40分)

【材料】15個分
生地:薄力粉3/4カップ、砂糖大さじ1、シナモンパウダー小さじ1/2、ごま油大さじ1、蜂蜜大さじ1、水大さじ2
その他:植物油 適量、熱湯1/2カップ、砂糖1カップ、すりおろし生姜小さじ1

【手順】
生地を混ぜる&こねる&型を取る→植物油を入れた鍋で弱~強火で揚げる→熱湯&砂糖&すりおろし生姜を混ぜた液に5分漬け込む→液から出したら、クッキングペーパーやお皿の上で5分放置

 

日本の陶磁器:有田焼(伊万里焼) 1616年頃(江戸時代)~

  • 有田焼?伊万里焼?

有田焼は、17世紀の海外の王侯貴族に人気を博し、「IMARI」と呼ばれました。これは積み出し港である佐賀県の「伊万里港」の名に因んだものです。産地がブランド名になる例は多いですが、「港の名前」が製品名として定着したのは面白い事例です。当時の物流事情が、言葉の定義を書き換えたといえます。

 

  • おすすめのスイーツ + お茶:練り切り + 抹茶

繊細な和菓子は、陶磁器の美しさを引き立てます。菓銘(お菓子の名前)に季語などを用いる点は、「文学的なお菓子」といえます。また、「濃茶」(通常の2~4倍程度の濃度で点てた格式高い抹茶)の主菓子として発達したこともあり、抹茶が合うでしょう。

 

2. 発展—— 西洋の陶磁器

ドイツの陶磁器:マイセン(Meissen) 1710年頃(ザクセン選帝侯国時代)~

  • 表作は誤訳

名実ともにヨーロッパ最高峰の陶磁器メーカーであるマイセン。その代表作「ブルーオニオン(青い玉ねぎ模様)」は、実は「視覚的な誤訳」から生まれたとされています。元の中国陶磁器には、子孫繁栄を意味する「ザクロ」や「桃」が描かれていましたが、実物を見たことがないドイツの職人が「タマネギ」と勘違いして描いてしまったのです。しかし、この誤訳がドイツ人の好みに合い、世界的なベストセラーになりました。

 

  • おすすめのスイーツ + コーヒー:バウムクーヘン(Baumkuchen) + エチオピア産モカコーヒー

繁栄と長寿を象徴する、年輪のような層を持つ伝統菓子。直訳すると「木(baum)とケーキ(kuchen)」です。ドイツはビールのイメージが強いですが、世界有数のコーヒー消費国でもあります。エチオピアや南米の豆を用いることが多く、バウムクーヘンにも、エチオピアのモカコーヒーが合うのではないでしょうか。

 

イギリスの陶磁器:ウェッジウッド(Wedgwood) 1759年頃(産業革命)~

  • 階級別マーケティングの成功

産業革命の時代に発展したのがウェッジウッド。芸術品は上流~中産階級に、産業製品は中産~労働者階級に。それぞれの階級に合った商品を作りました。現代のブランドのファーストラインやセカンドラインに通ずるものがあります。上流~中産階級向けにショールーム、また、現代の販売促進にもみられるカタログ販売やダイレクトメールも始めました。写真はウェッジウッドが開発した炻器、ジャスパーウェア。現代も生産され続けているギリシャ・ローマ神話風の絵柄は、当時の上流階級に人気でした。

 

  • すすめのスイーツ + お茶:スコーン(Scone) + アッサム・ティー

紅茶とスコーンの組み合わせは、英国気分に浸らせてくれます。スコーンに塗る「クロテッドクリーム」は非常に乳脂肪分が高いので、それに負けないコクを備えたアッサムなどの紅茶が合うといえます。

 

ハンガリーの陶磁器:ヘレンド(Herend) 1826年頃(オーストリア=ハンガリー帝国時代)~

 

  • インドの華はどこの花?

産業革命が進んだ時代に発展、他社が産業製品を量産していく中、現在も手造り・手塗りを追求し続けるのがヘレンド。そんなヘレンドの名作「インドの華」ですが、絵柄はどう見ても東アジアの影響を受けています。菊をほうふつとさせる花は、有田焼の柿右衛門様式のよう。なぜ「インド」なのでしょうか? これは、かつて東洋の品々のほとんどが「東インド会社」の船で運ばれていたため、「東方のもの=全部インド」と大雑把にカテゴライズされていた時代の名残です。「地理的な誤訳」のエピソードといえます。ちなみに前述のマイセンにも同名のシリーズがありますが、同様の誤訳が発生しています。

 

  • すすめのスイーツ + コーヒー:パラチンタ(Palacsinta) + エスプレッソ

パラチンタは、いわば、ハンガリー風のクレープ。ガス入りミネラルウォーター(炭酸水)が入っているものも多く、他のクレープよりもちもちしています。「パラチンタ」の語源はラテン語の「プラケンタ(平らなケーキ)」。ローマ帝国の影響が東欧の地まで広がっていたことを証明しています。もちもちで甘いパラチンタには(甘くない食事用もあります)、エスプレッソなど濃いコーヒーが合うといえます。

パラチンタを筆者も作ってみました。炭酸水のおかげか、もちもちして美味しかったです。デザートとして食べましたが、中身を変えて朝ごはんにしても良いと思いました。(所要時間:約30分)

【材料】4枚分
生地:薄力粉1カップ、塩大さじ1/4、砂糖大さじ1&1/2、卵1個、牛乳3/4 + 炭酸水1/4カップ
その他:植物油 適量、ジャム(杏など) 適量、お好みで粉砂糖

【手順】
生地を混ぜる&濾す→植物油をひいたフライパンに適量入れ中火で焼く→焼いた生地にジャムを薄く伸ばして巻く→粉砂糖をかける

 

まとめ

タマネギと間違われたザクロ、インドと呼ばれた東アジアの柄。世界の食卓は、こうした「楽しい誤解」や「独自の解釈」で彩られています。私たちWIPジャパンも、言葉を扱うプロとして、こうした文化的背景(コンテキスト)を大切にしています。

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