<img src="https://trc.taboola.com/1341089/log/3/unip?en=page_view" width="0" height="0" style="display:none">
  • Twitter
  • facebook
  • LINE
  • pocket
  • はてな
2020.Feb.20

翻訳者にとっての必須スキル、英文読解力について考える

 

先日の記事 『翻訳者に聞いてみた - 001「外国語が分かれば、翻訳なんて誰でもできるんじゃないの?」』 の中で、語学力と翻訳力は違うこと、そして翻訳力は主に英文読解力+日本語表現力+専門知識の3つのスキルで構成されていることについて書きました。

*上記の記事では英語から日本語への翻訳を前提にしています。本記事においても同様に英文和訳を前提にします。

本記事では、この翻訳力を構成する3つのスキルのうち、英文読解力について突っ込んで考えてみたいと思います。

英文読解力について考える前に、読解力についてみてみましょう。

読解力について、大辞林では以下のように解説しています。

 

“文章を読んで、その内容を理解すること。”
引用:https://kotobank.jp/word/読解-583850

読んで字のごとしですね(笑)

ただ、ここであえて「英文読解力」から「読解力」を分けたのには理由があります。

前述の『翻訳者に聞いてみた #001』の記事で次のように書きました。

 

(中略)日本語読解力がない場合は英語読解力もない場合がほとんどです。

英文和訳をするには原文である英語を読む必要がありますが、読解力は英語力そのものではありません。もし英文読解力=英語力だとすれば、英語力をもつ人は英文読解力をもつことになりますが、必ずしもそうではありません。

日本語に置き換えてみれば分かると思います。日本で生まれ育ち、日本の学校に通った私たち日本人の多くは日本語力をもっていますが、皆が皆、大辞林の解説にある読解力「文章を読んでその内容を理解する力」をもっているとは限りません。

英語力と読解力の関係について、具体例を挙げましょう。

アラフォー既婚男の私が一通のメールを受け取りました。差出人は、ロンドン支社赴任時代の同僚であるスペイン人女性からです。メールは英語で書かれており、文末には“I love you”と書かれていました。

もし私に読解力がなければ、愛をささやかれたと勘違いし動揺し舞い上がり、妻とケンカした際にはロンドンでも行っちゃうか!なんて思ってしまうかもしれません。しかしながら、私には多少の読解力があるため、実際にロンドンに行ってしまったことを想像するとゾッとできます。

“I love you”を「愛している」と捉えてしまうのが読解力なしの英語力だとすれば、差出人がどういった意図をもって“I love you”と書いたのかを把握できるのが英文読解力です。私は、このスペイン人の元同僚が幸せな結婚をし、子ども達と楽しくロンドン生活を満喫しているのを知っており、かつ異性として私は彼女のタイプではないことを重々承知していたため、この“I love you”を「元同僚としてあなたが好きだ」と解釈できたワケです。

極端で悲しい例ではありますが、英文読解力がどういったものであるかご理解いただけたかと思います。英文読解力は「英語で書かれた文章の内容(意図)を理解する力」です。つまり、「読解力」は日本語や英語といった言語の種類にかかわらず、「文章の内容(意図)を理解する力」であるといえます。

このように考えると、英文読解力を次のようにとらえることができます。

英文読解力=読むための英語力(語彙・語法、文法などの知識)+読解力

語彙や語法、文法などの知識を習得する必要があることは特記することでもないと思いますので、この記事では省きます。

では、読解力を身につけるにはどうしたらいいのでしょうか。

そもそも人はなぜ文章を書くのかを考えてみると、誰かに伝えたいことがあるからです。だとすると、文章の書き手が伝えたいことを理解することが、文章を読解するということです。読解に苦手意識を持つ人の多くは、この「理解しよう」という意識が低いように思います。表面的に文字をなぞっているだけなのです。

特に英語初学者は、英文を訳して日本語にすることが英語を理解することだと思いがちです。そうではありません。読解力がないまま英文を訳して日本語にしたとしても、“I love you”を勘違いしてしまう可能性があります。訳すことが読解することではありません。訳す訳さないにかかわらず、文章を通して書き手が伝えたいことを理解することが読解するということです。

この読解力を身につけるには、文章を読む際に、字面を追うだけでなんとなく読むのではなく、書き手の伝えたいことをきちんと「理解しよう」とする意識を持つ必要があります。

対象は読むための知識があるのであればどんな言語で書かれていても構いませんが、母国語で書かれたものの方が文法や語彙などに意識をさほど奪われなくて済むため、理解に集中できます。意欲を継続するために、好きな書き手の文章や興味を持てる内容を選びます。人に説明することやSNSでアウトプットすることを前提に文章を読むと理解を深めることができ、読解力のさらなる向上に役立つでしょう。

以上、英文読解力とはなにか、また英文読解力を身につける方法をみてきました。

書き手の伝えたいことを読み取るのに必要な英文読解力は、正確な翻訳のための土台となります。このスキルがないと誤訳のある不正確な訳文しかつくることができませんが、身につけることで原文に照らし合わせて正確な訳文をつくりだすことができます。

ただし、英文読解力だけでは十分な翻訳力をもっているとは言えません。訳文の読み手にあった日本語をつくるためには、表現力が必要になります。この翻訳力を構成するスキルのひとつ「日本語表現力」については、またの機会にあらためてじっくりと考えてみたいと思います。

 

 

執筆:田村嘉朗
大手通信会社ロンドン支社勤務を経て、2013年より翻訳者として活動
専門は通信、マーケティング

  • Twitter
  • facebook
  • LINE
  • pocket
  • はてな
WIPの翻訳をつくるサービスはこちら