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Jul. 09, 2025

秘密保持契約書(NDA)翻訳:国際取引における機密情報を守り、ビジネスを加速する要点と関係部門の役割


グローバルなビジネス環境において、企業間の提携、M&A、共同開発、技術提携、あるいは新規事業の検討など、多岐にわたる場面で機密情報がやり取りされます。これらの重要な情報を保護し、不正な開示や利用を防ぐために不可欠なのが、秘密保持契約書(NDA:Non-disclosure Agreement、またはConfidentiality Agreement)です。

NDAは、開示される情報の範囲、秘密保持義務の期間、例外規定、違反時の措置、そして準拠法などを詳細に定める法的文書であり、その正確な翻訳は、企業の競争優位性の維持、法的リスクの回避、そして将来的な紛争の防止のために不可欠です。翻訳のミスや内容の理解不足は、機密情報の漏洩、企業の信用失墜、巨額の損害賠償、さらにはビジネス機会の損失へと発展するリスクをはらんでいます。

特に、国ごとに秘密保持に関する法規(不正競争防止法、契約法など)、裁判管轄、情報の定義、損害賠償の考え方、そして国際的な商慣習が大きく異なるため、単に言葉を置き換えるだけでなく、それぞれの法制度やビジネスの性質に応じた法的・商業的ニュアンスを踏まえた上で契約内容を理解し、翻訳することが不可欠です。

本記事では、私どもが数多くの秘密保持契約書(NDA)の翻訳を支援してきた経験に基づき、翻訳における重要なポイントと、貴社の各部門がどのように翻訳されたNDAを活用し、関与していくべきかを具体的なケーススタディを交えて解説します。

貴社の国際取引において、NDAの適切な理解と運用を通じて、機密情報を確実に保護し、ビジネスを加速させるために、ぜひ本記事をお役立てください。

 

秘密保持契約書(NDA)とは何か?その目的と国際取引における重要性

秘密保持契約書(NDA:Non-disclosure Agreement)とは、当事者間で特定の機密情報を共有する際に、その情報を受け取る側(受領者:Receiving Party)が、開示する側(開示者:Disclosing Party)から受け取った情報を、契約で定められた範囲外で開示したり、利用したりしないことを約束する、法的拘束力を持つ文書です。

NDAは、以下のような様々なビジネスシーンで用いられます。

  • M&A(合併・買収):企業の財務情報、顧客リスト、事業計画など

  • 共同開発・研究:未公開の技術情報、設計図、実験データ

  • 業務提携・パートナーシップ:ビジネス戦略、顧客情報、価格情報

  • 新規事業・プロジェクトの検討:アイデア、市場調査データ、製品コンセプト

  • 技術ライセンス供与:製造ノウハウ、技術仕様

  • 外部コンサルタントやベンダーとの契約:業務上知り得る顧客情報、システム情報

この契約書は、以下の非常に多岐にわたる詳細な条項を含みます。

  • 秘密情報の定義(Definition of Confidential Information):どのような情報が秘密情報に該当するか(書面、口頭、電磁的記録など)、および例外(公知の情報、受領者が独自に開発した情報など)。

  • 秘密保持義務(Obligation of Confidentiality):受領者が秘密情報をどのように取り扱うべきか(第三者への開示禁止、目的外利用の禁止、複製制限など)。

  • 秘密保持期間(Term of Confidentiality):秘密保持義務が継続する期間(通常、契約期間終了後も一定期間継続)。

  • 返還・破棄義務(Return or Destruction of Confidential Information):契約終了時や開示者の要求に応じて、秘密情報を返還または破棄する義務。

  • 例外規定(Exclusions):秘密保持義務が適用されない情報(例:公知の情報、既に合法的に保有していた情報、司法・行政命令による開示義務がある場合など)。

  • 目的外利用の禁止(Prohibition of Unauthorized Use):秘密情報を契約で定められた目的以外に利用することを禁止する規定。

  • 損害賠償(Damages):秘密保持義務違反があった場合の損害賠償責任、または差止請求の可能性。

  • 準拠法と紛争解決(Governing Law and Dispute Resolution):契約に適用される法律、紛争が発生した場合の解決方法(裁判、国際仲裁など)。

  • 契約解除条件(Termination):契約違反による解除の条件。

国際取引においてNDAが特に重要なのは、以下の理由からです。

  • 知的財産と企業価値の保護:国際的な競争が激化する中で、未公開の技術やビジネス戦略は企業の最も重要な資産の一つです。NDAはこれらの資産が不正に利用されたり、競合他社に渡ったりするのを防ぎます。

  • 法制度の違いへの対応:各国で秘密保持義務に関する法規制(不正競争防止法など)や裁判管轄が異なります。NDAはこれらの違いを契約で明確にし、将来的な法的リスクを最小限に抑えます。

  • 信頼関係の構築:NDAは、当事者間に信頼関係を構築し、安心して機密情報を共有できる環境を提供します。これは、国際的な共同事業やM&Aを成功させる上で不可欠です。

  • 多様なビジネスシーンへの適用:M&A、共同開発、業務提携、技術ライセンスなど、あらゆる国際ビジネスにおいて、交渉の初期段階からNDAが締結され、プロジェクトを安全に進めるための土台となります。

英文秘密保持契約書(NDA)の特徴と和文契約書との違い

国際的な秘密保持取引では、多くの場合、英文でNDAが作成されます。その特徴は、日本の和文NDAとは異なる点がいくつかあります。

  • Definition of Confidential Information(秘密情報の定義)の厳密さ:

    • 英文NDAでは、どのような情報が「秘密情報」に該当するのかを非常に詳細かつ網羅的に定義します。書面、口頭、電磁的記録、視覚的な情報など、形態を問わず広範に含めるのが一般的です。一方で、**秘密情報とならない例外(Exclusions)**の規定も明確です。例えば、「公知の情報 (Public Domain)」、「受領者が独自に開発した情報 (Independently Developed)」などです。

    • 和文NDAでも定義は重要ですが、英文NDAはより詳細で網羅的なリストアップを求める傾向があります。

  • Term of Confidentiality(秘密保持期間)の明確な規定:

    • 秘密保持義務がいつからいつまで継続するのか、契約期間中だけでなく、契約終了後も何年間継続するのか(例:5年間、無期限など)を明確に規定します。特に、ノウハウや顧客情報など、企業の根幹に関わる情報については、長期間または無期限の保持義務が設定されることがあります。

  • Permitted Use and Prohibited Use(許諾された利用と禁止された利用):

    • 秘密情報を**どのような目的で利用することが許されるのか(Permitted Purpose)**を具体的に記載し、それ以外の目的での利用を厳しく禁止します。これは目的外利用によるリスクを制限する上で重要です。

  • Return or Destruction(返還または破棄)の義務:

    • 契約終了時や開示者の要求に応じて、受領者が秘密情報の全てのコピー(書面、電子データ含む)を返還または破棄する義務が明確に規定されます。その証明(Certification of Destruction)を求める条項もよく見られます。

  • Remedies / Injunctive Relief(救済措置/差止請求):

    • 秘密保持義務違反があった場合に、金銭的な損害賠償だけでなく、**情報の不正な開示を停止させるための差止請求(Injunctive Relief)**の可能性について言及されることが一般的です。これは、機密情報が一度流出すると金銭では測り知れない損害が生じるため、その事前防止に重点を置くためです。

  • Governing Law and Dispute Resolution(準拠法と紛争解決):

    • 契約に適用される法律、および紛争が発生した場合の解決方法(国際仲裁、裁判など)、管轄地、仲裁機関、仲裁規則が詳細に指定されます。国際取引では、自社にとって有利な準拠法や紛争解決地を指定することが戦略上重要です。

  • Survival Clause(存続条項):

    • 秘密保持義務などの特定の条項が、契約期間の終了後も有効に存続することを明確に規定します。

  • Entire Agreement Clause(完全合意条項):

    • 契約書に記載されている内容が、当事者間の最終的かつ完全な合意であることを明確にし、それ以前の口頭合意などを無効とします。

日本の和文NDAに比べ、英文NDAは、秘密情報の定義とその例外、目的外利用の制限、違反時の救済措置、そして国際的な準拠法・紛争解決メカニズムに関して、より詳細かつ厳密な記述が求められる傾向が強いです。翻訳においては、これらの法的・商業的ニュアンスを正確に反映した表現を用いることが不可欠です。

秘密保持契約書(NDA)翻訳における重要ポイント

秘密保持契約書(NDA)の翻訳は、貴社の国際取引における機密情報保護、法的リスク、そして事業の成否に直接影響するため、極めて高い精度と専門性、そして法務・事業戦略・知的財産に関する視点が求められます。以下のポイントを押さえることが、成功への鍵となります。

  1. 秘密情報の定義(Definition of Confidential Information)と例外規定の厳密な翻訳

    • どのような情報が「秘密情報」として保護されるのか、その形態(書面、口頭、電子データなど)と具体的な範囲を明確に翻訳することが最も重要です。同時に、秘密情報とならない例外(Exclusions)、例えば「公知の情報」「受領者が独自に開発した情報」「第三者から合法的に取得した情報」なども厳密に翻訳すべきです。これらの定義が曖昧だと、将来的に「どの情報が秘密情報か」を巡って紛争に発展しかねません。

  2. 秘密保持義務の範囲と目的外利用禁止の明確化

    • 受領者が秘密情報をどのように取り扱うべきか(第三者への開示禁止、複製制限、アクセス権者の限定など)を正確に翻訳することが不可欠です。また、契約で定められた「目的(Permitted Purpose)」以外での利用を厳しく禁止する条項も、その目的が具体的に何であるかを明確に翻訳すべきです。これにより、機密情報が意図しない形で利用されるリスクを防ぎます。

  3. 秘密保持期間(Term of Confidentiality)の明確な規定

    • 秘密保持義務がいつからいつまで継続するのか、特に契約期間終了後も何年間継続するのか(例:5年間、無期限など)を明確に翻訳することが不可欠です。企業の根幹に関わる重要なノウハウや顧客情報など、情報の性質に応じた適切な期間が設定されているか確認が必要です。

  4. 返還・破棄義務(Return or Destruction)と証明(Certification)

    • 契約終了時や開示者の要求に応じて、秘密情報の全てのコピー(書面、電子データ含む)を返還または破棄する具体的な義務、そしてその実行の証明(Certification of Destruction)を求める条項を正確に翻訳することが重要です。これにより、情報漏洩リスクを最小限に抑えます。

  5. 損害賠償(Damages)と差止請求(Injunctive Relief)の可能性

    • 秘密保持義務違反があった場合に、金銭的な損害賠償を請求できるか、またその範囲(直接損害のみか、間接損害も含むかなど)、そして情報の不正な開示を停止させるための差止請求(Injunctive Relief)の可能性について、明確に翻訳することが不可欠です。NDAにおいては、損害が金銭で測りきれないため、差止請求の可能性が重要視されます。

  6. 準拠法と紛争解決(Governing Law and Dispute Resolution)

    • 契約に適用される法律、そして紛争が発生した場合の解決方法(国際仲裁、調停、裁判など)、仲裁地の選定、仲裁機関、仲裁規則、仲裁人の数、仲裁判断の拘束力などを正確に翻訳することが不可欠です。国際取引では、自社にとって有利な準拠法や紛争解決地を指定することが戦略上重要であり、その内容を正確に把握すべきです。

  7. AI翻訳の適切な活用と専門家による最終確認

    AI翻訳技術は、初稿の作成や用語の統一に役立ちますが、NDAのような法的・専門的に極めて複雑な文書、特に秘密情報の定義、例外規定、責任制限、救済措置といった条項においては、法的ニュアンス、各国の不正競争防止法、契約法、裁判管轄に関する知見を完璧に理解することは困難です。AIを効率化ツールとして最大限活用しつつも、法務知識と国際商取引の実務経験を持つ専門の翻訳者による徹底したレビューと校正が不可欠です。人間による精査が、潜在的なリスクを最小限に抑え、安全な国際取引の基盤となります。

  8. 強固な情報セキュリティ体制

    NDAには、企業の競争力や事業の成否に直結する極めて機密性の高い情報(未公開技術、事業計画、顧客リストなど)が含まれることが一般的です。これらの情報が外部に漏洩した場合、企業の競争力低下、信用失墜、法的な責任問題など、甚大な損害を被る可能性があります。そのため、翻訳を依頼する際には、翻訳会社が厳格な情報セキュリティポリシーを定め、技術的・物理的・人的な対策を徹底しているかを必ず確認すべきです。私どもは、お客様の機密情報を最高レベルで保護するため、徹底したセキュリティ管理を実践しています。

  9. 「総コスト」での評価と信頼できる翻訳会社の選定

    翻訳にかかる費用は、単純な料金だけでなく、翻訳後の社内での確認・修正にかかる時間や労力、そして将来的な紛争リスクといった「総コスト」で評価すべきです。初期費用が安価でも、翻訳品質が低ければ、結果的に大きな損失に繋がりかねません。実績、専門性、セキュリティ体制、そして提供されるサービスの質を総合的に判断し、貴社の国際取引における戦略的パートナーとして信頼できる翻訳会社を選定することが重要ですし、私どもはこのような観点から、お客様に安心してご利用いただける最適なサービスを提案しています。

  10. 現地の弁護士・コンサルタントとの連携

    翻訳されたNDAをベースに、必ず現地の契約法、不正競争防止法、訴訟手続きに詳しい弁護士やコンサルタントと連携し、契約内容の法的妥当性、リスク、そして管轄権に関する最終確認を行うことが不可欠です。翻訳は「理解の橋渡し」であり、最終的な法的判断は現地の専門家が行うべきです。

秘密保持契約書(NDA)の翻訳は誰に必要なのか?ケーススタディで見る関係部門の役割

秘密保持契約書(NDA)は、国際取引における機密情報の保護と事業機会の確保を左右するため、多岐にわたる部門や関係者がその内容を理解し、翻訳された情報に基づいて連携することが不可欠です。

 

ケーススタディ1:海外企業とのM&A交渉(日本企業)

状況: 日本のIT企業が、米国スタートアップ企業を買収する可能性を検討しており、デューデリジェンスの初期段階で英文NDAを締結するケース。

 

  • 経営企画部/M&A担当部:

    • 必要性: 開示される情報(財務情報、技術情報、顧客情報、事業計画など)の範囲、秘密保持義務の期間、例外規定、違反時の措置、目的外利用の禁止など、M&A戦略に直結する商業的・法的条件を詳細に確認します。

    • ケース: NDAに記載された「秘密情報の定義と、M&A検討目的以外での利用禁止」や「M&A交渉が不調に終わった場合の情報の返還・破棄義務」を和訳で確認し、情報漏洩リスクと交渉戦略への影響を評価します。過去には、秘密情報の定義が曖昧だったため、開示された情報の一部が秘密情報と認識されず、不正に利用されてしまった事例がありました。私どもは、このような秘密情報の定義や目的外利用に関する条項の正確な翻訳を特に重視しています。

  • 法務部:

    • 必要性: 契約全体の法的妥当性、リスク管理、特に秘密保持義務の範囲、責任制限、損害賠償、差止請求、準拠法、紛争解決条項の適切性を確認します。米国の契約法、州法、日本の不正競争防止法への対応が求められます。

    • ケース: NDAに記載された「秘密保持義務違反があった場合の損害賠償請求の可能性と範囲」や「紛争発生時の準拠法と裁判管轄」を和訳で確認し、法的リスクと紛争解決戦略を評価します。

  • 情報システム部/情報セキュリティ部:

    • 必要性: 電子的な機密情報の取り扱い、保管、アクセス管理、返還・破棄に関する規定を確認し、社内の情報セキュリティポリシーとの整合性を確保します。

    • ケース: NDAに記載された「秘密情報の電子データ管理と、契約終了後の消去義務」を和訳で確認し、システム面での情報漏洩対策を講じます。

 

ケーススタディ2:海外研究機関との共同開発プロジェクト(日本の製薬企業)

状況: 日本の製薬企業が、ドイツの研究機関と新薬開発に関する共同研究を行うため、英文NDAを締結するケース。

 

  • 研究開発部:

    • 必要性: 開示される技術情報、実験データ、知見の範囲、秘密保持義務の期間、共同研究目的での利用許可範囲、得られた成果の取り扱いに関する規定など、研究開発戦略に直結する技術的・商業的条件を詳細に確認します。

    • ケース: NDAに記載された「共同研究で得られた新規知見の秘密保持義務と、その後の特許出願に関する協力義務」を和訳で確認し、研究成果の知的財産化と利用戦略への影響を評価します。

  • 知的財産部:

    • 必要性: 開示される技術の特許性、新規性、営業秘密としての保護、そして共同研究によって生まれる知的財産権の帰属、ライセンスに関する条項を詳細に確認します。

    • ケース: NDAに記載された「開示される既存技術と新規開発技術の線引き」や「第三者からの特許侵害訴訟が発生した場合の協力義務」を和訳で確認し、知的財産保護戦略を策定します。

  • 法務部:

    • 必要性: 契約全体の法的妥当性、リスク管理、特に秘密保持義務の範囲、表明保証、責任制限、準拠法、紛争解決条項の適切性を確認します。ドイツの契約法、知的財産法、国際私法への対応が求められます。

    • ケース: NDAに記載された「秘密保持義務違反があった場合の差止請求の可能性」や「紛争解決における国際仲裁の選択とその規則」を和訳で確認し、法的リスクと対応戦略を評価します。

よくある質問(FAQ)

秘密保持契約書(NDA)の翻訳に関して、お客様からよくいただくご質問とその回答をまとめました。

Q1: NDAにおける「秘密情報の定義(Definition of Confidential Information)」と「例外規定(Exclusions)」の条項は、翻訳でどのように注意すべきですか? 

A1: これらの条項は、NDAの根幹をなすものです。翻訳においては、どのような情報が秘密情報として保護されるのか(書面、口頭、電子データなど、その形態と範囲)を網羅的かつ具体的に表現することに加え、秘密情報とならない例外(例:公知の情報、受領者が独自に開発した情報、第三者から合法的に取得した情報など)を明確に表現することが不可欠です。これらの定義が曖昧だと、将来的に情報が「秘密情報」であるか否かを巡って深刻な紛争に発展するリスクがあります。

Q2: 「秘密保持期間(Term of Confidentiality)」の翻訳で、特に注意すべき点は何ですか? 

A2: 秘密保持期間は、情報保護の効力がいつまで続くかを定める重要な条項です。翻訳においては、NDA自体の契約期間と、秘密保持義務が継続する期間(通常、契約終了後も一定期間継続することが多い)を明確に区別し、それぞれ具体的な期間(例:5年間、無期限など)を正確に表現することが不可欠です。特に無期限の義務は、ビジネス上の影響が大きい可能性があるため、その旨を明確に伝える必要があります。

Q3: 国際的なNDAで、「損害賠償(Damages)と差止請求(Injunctive Relief)」の条項はなぜ重要視されますか? 

A3: 機密情報が漏洩した場合、その損害は金銭では測りきれないことが多く、企業の競争力や信用に甚大な影響を与えます。翻訳においては、**秘密保持義務違反があった場合に金銭的な損害賠償を請求できるか、その範囲(直接損害のみか、逸失利益のような間接損害も含むかなど)**に加え、情報の不正な開示を停止させるための差止請求(Injunctive Relief)の可能性について、明確に表現することが極めて重要です。差止請求は、情報がこれ以上流出するのを食い止めるための効果的な法的手段であり、NDAにおいては特に重視されます。

Q4: 契約終了時の「返還・破棄義務(Return or Destruction)」に関する条項は、どのように注意して翻訳すべきですか? 

A4: 契約終了後の情報漏洩リスクを管理するための重要な条項です。翻訳においては、秘密情報の全てのコピー(書面、電子データ、その他複製物含む)を、いつまでに、どのように(例:開示者の指示に従い)、返還または破棄すべきかを具体的に表現することが重要です。また、破棄の証明(Certification of Destruction)を求めるか否かも明確に伝える必要があります。これにより、情報が不適切に残り続けるリスクを最小限に抑えます。

Q5: NDAで「準拠法と紛争解決」の条項が非常に重要と言われるのはなぜですか? 

A5: 準拠法(Governing Law)は、契約の解釈、有効性、義務の履行、そして違反時の法的効果を判断する際に適用される法律です。国によって秘密保持義務に関する法規制や裁判管轄、損害賠償の考え方などが大きく異なります。準拠法を誤ると、契約条項の法的有効性が失われたり、予期せぬ義務が生じたり、あるいは紛争解決が著しく困難になったりする可能性があります。また、国際取引では紛争解決方法として国際仲裁が一般的であり、その仲裁地、仲裁機関、仲裁規則、仲裁人の選定方法、仲裁判断の拘束力も極めて重要であり、専門的な知識をもって正確に翻訳・理解する必要があります。これにより、将来的な紛争解決のプロセスと費用が明確になります。

 

まとめ

秘密保持契約書(NDA)の翻訳は、単なる言語の変換に留まらず、企業が国際ビジネスにおいて最も価値のある資産である機密情報を確実に保護し、円滑な事業推進を可能にするための極めて重要な戦略的要素です。英文と和文のNDAが持つそれぞれの特徴を深く理解し、経営企画、法務、研究開発、情報システムといった各部門が連携しながら、専門知識を持つ翻訳者の力を借りることが不可欠ですし、これまでの経験から私どもはこれを強く認識しています。

特に、秘密情報の定義と例外規定、秘密保持義務の範囲と期間、返還・破棄義務、損害賠償と差止請求、そして準拠法と紛争解決といった条項は、潜在的なリスクを最小限に抑え、国際取引における継続的な成功への鍵となります。

 

私どもは、このような複雑な秘密保持契約書(NDA)の翻訳において、貴社の各部門のニーズを理解し、最高品質の翻訳とサポートを提供することをお約束します。貴社の海外ビジネスにおけるNDA契約の翻訳に関してご不明な点やご相談がありましたら、ぜひお気軽にお問い合わせください。

 

契約書の翻訳-1WIPジャパンは、東京弁護士共同組合神奈川県弁護士共同組合をはじめとする全国23の弁護士共同組合の特約店に認定されています。
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日本法令外国語訳推進会議「法令用語日英標準対訳辞書」(PDF)
Publiclegal(英文契約書のテンプレートや書式を無料で提供)
日本法令外国語訳データベースシステム(法務省が開設した日本の法令の英訳サイト)
weblio 英和辞典・和英辞典
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