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Jul. 23, 2025

ベトナム語契約書翻訳:社会主義市場経済の法を理解し、ビジネスチャンスを掴む

 

急速な経済成長を続けるベトナムは、多くの日本企業にとって魅力的な投資先・ビジネスパートナーとなっています。しかし、この国とのビジネス展開において、「英語契約書があれば十分」という安易な考えは大きなリスクを伴います。なぜなら、ベトナムは社会主義市場経済という独自の法・経済システムを持つ国であり、その法制度や商習慣が欧米諸国や他のアジア諸国とも異なる特性を持つからです。

特にベトナム語契約書の翻訳は、単なる言語の置き換えに留まらず、ベトナム民法典(Bộ luật Dân sự)商法典(Luật Thương mại)投資法(Luật Đầu tư)企業法(Luật Doanh nghiệp)といった独自の法体系への深い理解が不可欠です。これらの要素を無視した翻訳は、契約の解釈、履行、そして将来的な紛争解決において深刻な問題を引き起こす可能性があります。


長年の国際契約書翻訳の経験に基づき、日本企業がベトナム企業と契約を交わす際に直面する「ベトナム語契約書 翻訳」の重要性、その特有の法的背景、準拠法、紛争解決、そして言語戦略の観点から、具体的な対応策を深掘りして解説します。欧米の法制度とは一線を画すベトナムの法と文化を理解し、この活気ある市場でビジネスチャンスを掴むための羅針盤となる情報を提供します。

1. 知っておくべきベトナムの法体系:社会主義市場経済の特性

ベトナムの法体系を理解することは、ベトナム語契約書を取り扱う上で最も重要な前提となります。欧米諸国が採用する大陸法や英米法とは異なり、ベトナムの法制度は社会主義市場経済の原則に基づいています。

 

社会主義市場経済における法の特徴

ベトナムの法体系は、大陸法(特に旧ソ連法やフランス法)の影響を受けつつも、社会主義国家としての特性が色濃く反映されています。

  • 国家の介入と許認可: 経済活動に対する国家の介入度合いが比較的高く、特定の事業活動や投資に対しては、政府機関からの許認可(Giấy phép / License)や承認が必須となるケースが多く見られます。契約の有効性や履行可能性は、これらの許認可の取得に大きく左右されるため、契約書にその旨を明記することが重要です。

  • 強行法規の多さ: 労働法、投資法、独占禁止法など、多くの分野で当事者の合意よりも優先される強行法規(Quy định bắt buộc / Mandatory Provisions)が存在します。これらの強行法規に反する契約条項は、たとえ当事者間で合意されたとしても無効と判断されるリスクがあります。

  • 契約の自由の制限: 欧米諸国に比べ、契約の自由が一部制限されることがあります。特に、国有企業や特定の戦略分野との取引においては、国家の利益や計画に合致しているかが重視される場合があります。

  • ベトナム語が公式言語: 法律や公式文書はベトナム語で作成されることが義務付けられており、ベトナム語版が法的正文となることが一般的です。

商習慣と文化的背景

ベトナムの商習慣や文化的背景も、契約の交渉や履行に影響を与えます。

  • 人間関係と信頼: ビジネスにおいても人間関係や相互の信頼が非常に重視されます。「Cảm ơn(ありがとう)」や「Xin lỗi(ごめんなさい)」といった基本的な挨拶から、食事を共にするなど、個人的な関係構築がビジネスを円滑に進める上で重要です。

  • 交渉と柔軟性: 交渉には時間をかける傾向があり、合意後も状況に応じて柔軟な対応を求めることがあります。

  • 書面主義の徹底: 口頭での約束よりも、最終的には書面化された契約書が重視されます。

2. 契約の「羅針盤」:準拠法(Luật Áp dụng / Applicable Law)の選び方

ベトナム語契約書の解釈、有効性、履行、そして違反時の法的効果などを決定するために適用される法律、それが準拠法です。日本企業とベトナム企業間のベトナム語契約書において、この準拠法の選択は、契約関係の方向性を決定づける最も重要な要素の一つです。

 

選択肢とそれぞれの特徴・留意点

日本法を準拠法とする場合

  • メリット: 日本企業にとって最も馴染み深く、自社の法務部門や顧問弁護士がベトナム語契約書の日本語訳内容を容易に理解し、リスクを評価できます。予測可能性が高く、国内の法務リソースを最大限に活用できます。

  • デメリット: ベトナム企業にとっては外国法となるため、内容の理解に専門的なサポートが必要となり、交渉が難航する可能性があります。また、万が一紛争がベトナムで発生し、現地の裁判所が関与する場合、外国法(日本法)の適用や強制執行には、時間とコスト、そして手続き上の複雑さが伴うことがあります。特に、ベトナムの強行法規と矛盾する条項は、現地の裁判所によって無効と判断されるリスクがあります。

ベトナム法を準拠法とする場合


    • メリット: 相手方企業にとっては自国法であり、理解しやすいため、ベトナム語契約書として締結することで国内での法的執行が比較的スムーズに進む可能性があります。ベトナムでのビジネス展開を重視する場合や、相手方企業側の交渉力が強い場合に選択されることがあります。

    • デメリット: 日本企業にとっては、ベトナムの法律に関する専門知識が不可欠です。ベトナム民法典(Bộ luật Dân sự)商法典(Luật Thương mại)労働法典(Bộ luật Lao động)など、日本の法体系とは異なる部分が多く、現地の法務実務や商慣習を深く理解していなければ、予期せぬ落とし穴にはまるリスクがあります。特に、投資許認可、外資規制、労働法規制、独占禁止法など、ベトナム法特有のルールを把握しておく必要があります。ベトナム語契約書の条文がベトナム語であるため、より一層の専門知識と正確なベトナム語契約書 翻訳が求められます。

    第三国法を準拠法とする場合

    • メリット: 英国法(特にイングランド法)や米国ニューヨーク州法など、国際商取引で広く受け入れられている法律を選択するパターンです。これらの法律は国際的な判例が豊富に蓄積されており、契約解釈の予測可能性が高いという大きなメリットがあります。どちらの当事者にとっても外国法であるため、中立性が保たれやすいと認識されることもあります。

    • デメリット: 当事者双方にとって外国法となるため、双方ともにその法律に精通した専門家(国際弁護士など)のサポートが必須となり、法務コストが増大する可能性があります。また、第三国法がベトナムの強行法規と大きく異なる場合、ベトナムの裁判所や行政機関での執行に課題が生じる可能性も考慮に入れる必要があります。

準拠法選択の経験的アドバイス

準拠法の選択は、取引の性質、当事者の交渉力、取引額、リスクの度合い、そして将来的な紛争発生時の執行の容易さなどを総合的に考慮して決定すべきです。ベトナムでの事業活動が主となる場合、ベトナム法を準拠法とするケースも多く見られますが、その際はベトナム法に精通した弁護士によるリーガルチェックが必須です。また、中立性や国際的な執行可能性を重視し、国際仲裁と組み合わせる形で第三国法(例:シンガポール法)を選択するケースも多く見られます。

 

3. 万が一の「出口戦略」:紛争解決(Giải quyết tranh chấp / Dispute Resolution)の選択肢

どれだけ完璧なベトナム語契約書を作成しても、予期せぬ事態や解釈の相違から紛争が発生する可能性はゼロではありません。そのため、契約締結時に、紛争が起きた際の解決方法を具体的に定めておく「出口戦略」は極めて重要です。

 

主要な紛争解決手段

  1. 友好的解決・調停(Thương lượng, hòa giải / Negotiation, Mediation)

    • ベトナムでは、紛争を裁判に持ち込む前に、当事者間の話し合いや調停(通常、中立な第三者機関や個人の仲介)による解決を試みることが一般的です。契約書においても、まずは友好的な解決を試みる旨の条項が設けられることがあります。

  2. 裁判(Tòa án / Litigation)

    • 日本の裁判所: 日本企業にとっては有利な立場ですが、ベトナム企業が判決に従わない場合、現地でその判決を強制執行するには、別途「外国判決の承認及び執行」という複雑な手続きが必要です。ベトナムにおける外国判決の承認・執行は、特定の条件が厳しく、時間とコスト、不確実性が伴うことが多いです。

    • ベトナムの裁判所: 現地での執行は比較的容易ですが、日本企業にとっては現地の司法制度に関する知識や、ベトナム語契約書の解釈において言語の壁が存在します。現地の法務知識と裁判実務に精通した弁護士の存在が不可欠であり、日本の常識が通用しない場面も想定されます。

  3. 国際仲裁(Trọng tài Quốc tế / International Arbitration)

    • 国際商取引における紛争解決手段として、最も推奨される選択肢の一つです。特に日本とベトナムのように法制度が異なる国同士の取引でその優位性が際立ちます。

    • メリット:

      • 中立性: 特定の国の司法制度に依存せず、中立的な仲裁地(シンガポール、香港、パリなど、そしてベトナム国際仲裁センター(VIAC)など)と国際的に信頼性の高い仲裁機関を選択できます。これにより、特定の国の裁判所での「ホームアドバンテージ」を避けることができます。

      • 専門性: 複雑な商取引や技術的な紛争において、その分野の専門知識を持つ仲裁人を選任することが可能です。

      • 執行可能性: 最も重要なメリットの一つです。日本もベトナムもニューヨーク条約(外国仲裁判断の承認及び執行に関する条約)の加盟国であるため、一国の仲裁機関で下された仲裁判断は、加盟国である相手国でも比較的容易に強制執行することができます。これにより、外国での判決執行の困難さを克服できます。

      • 秘密保持: 仲裁手続きは原則非公開であり、ビジネス上の機密情報が守られやすいです。

      • 迅速性: 原則として、仲裁判断は最終的なものであり、二審制や三審制のような上訴手続きがありません。これにより、迅速な紛争解決が期待できます。

    • 注意点: 仲裁条項の作成には専門知識が必要です。仲裁機関、仲裁地、仲裁言語、仲裁人の数などを具体的に定める必要があります。

紛争解決条項設定の経験的アドバイス

日本企業とベトナム企業間のベトナム語契約書では、国際仲裁を選択することが最も実用的で安全な選択肢と言えます。特に、ニューヨーク条約の枠組みを利用することで、相互の執行可能性を高めることができます。仲裁地としては、中立性が高く、国際仲裁の実績が豊富なシンガポールや香港、またはベトナム国内のベトナム国際仲裁センター(VIAC)も有力な選択肢となります。



4. 言葉の壁を越える:ベトナム語契約書 翻訳の戦略と重要性

ベトナム語契約書がどの言語で作成され、どの言語が正文となるかは、契約内容の正確な理解と将来的な解釈の齟齬を防ぐ上で非常に重要です。「英語契約書があれば十分」という考えは、ベトナムとのビジネスにおいては特に大きなリスクを伴います。

 

主要な言語パターンとベトナム語契約書 翻訳の役割

  1. 日本語とベトナム語(いずれか、または双方が正文)

    • 活用場面: 双方の母国語での詳細な理解を重視する場合に、ベトナム語契約書または日本語契約書が用いられます。

    • 留意点: どちらかの言語(例:ベトナム語版)を正文とし、もう一方(例:日本語版)を参考訳とすることが一般的です。両言語を正文とする場合は、解釈の齟齬が生じた際の優先順位(例:「ベトナム語版が優先する」)を明確に定める「優先言語条項」を必ず盛り込む必要があります。ベトナム語契約書 翻訳の品質が直接、法的リスクに直結します。ベトナム法の概念を正確に日本語で表現できるかが重要です。

  2. 英語を正文とし、日本語・ベトナム語の参考訳を作成

    • 活用場面: 国際ビジネスで一般的なパターンですが、ベトナムでは注意が必要です。英語が国際的な法的文書の標準語として広く認知されているため、専門家によるレビューもしやすく、将来的な国際訴訟や仲裁においても用いられます。

    • 留意点: 英語が唯一の正文となる場合でも、ベトナム側の当事者がベトナム語契約書の翻訳を求め、それを理解の基礎とするケースが多くあります。このベトナム語契約書 翻訳の質が低いと、誤解や紛争の原因となり得ます。また、現地の強行法規の中には、ベトナム語での記載を求めるものや、ベトナム語の解釈を優先するものも存在するため、注意が必要です。特に、投資登録証明書(IRC)や事業登録証明書(ERC)など、行政機関に提出する書類はベトナム語が必須です。

  3. ベトナム語のみを正文とする

    • 活用場面: ベトナム国内での取引や、契約相手の交渉力が非常に強い場合に採用されます。

    • 留意点: ベトナム語が唯一の正文である場合、日本企業はベトナム語の法的文書を完全に理解できる体制を構築する必要があります。後述の強行法規が適用される場合は、英語契約書のみでは不十分となる可能性も否めません。

ベトナム語契約書 翻訳における専門性

言語戦略の選択に関わらず、ベトナム語契約書専門翻訳は極めて重要です。

  • 法的・専門用語の正確性: ベトナム民法典(Bộ luật Dân sự)などに由来する「Bất khả kháng(不可抗力)」、「Thiệt hại(損害)」、「Thời hiệu khởi kiện(時効期間)」といった法律用語は、単なる直訳では法的意味合いを正確に伝えられません。ベトナム法の概念と日本の法概念、そして英語の概念を理解し、ベトナムの法律や商慣習に合致した適切な用語選択と表現が必要です。

  • ニュアンスの理解: ベトナム語は声調言語であり、同じ発音でも声調が異なれば意味が変わる場合があります。また、文化的背景や文脈によって言葉のニュアンスが大きく変わることがあります。法律文書においては、曖昧さを避け、正確な意味を伝える翻訳が求められます。

  • 書式と構造: ベトナム語の法律文書特有の表現や構成に精通している必要があります。

  • 許認可に関する知識: ベトナムの事業活動において重要な許認可に関する専門用語や手続きに関する知識が必要です。

  • E-E-A-T原則に基づいた翻訳: 経験、専門知識、権威性、信頼性(E-E-A-T)を重視し、翻訳者も法務や金融分野での実務経験を持つプロフェッショナルが担当します。AI翻訳を効率化ツールとして活用しつつも、最終的なレビューと校正は、人間の専門家が徹底して行い、法的リスクを最小限に抑えます。

5. 具体的な「実践」:ケーススタディで見るベトナム語契約書の落とし穴と成功例

実際のビジネスシーンでは、どのような契約戦略が採られるのでしょうか。具体的なケーススタディを通して、準拠法、紛争解決、言語選択の重要性を深掘りします。

 

ケーススタディ1:ベトナム企業との製造委託契約

  • 状況: 日本の製造業A社が、ベトナムの製造工場B社に対し、A社製品の部品製造を委託する製造委託契約を締結するケース。品質管理、納期、費用、秘密保持、製造物責任、そしてベトナムの労働法規や環境規制が主要な論点。

  • 課題と検討ポイント:

    • 準拠法: ベトナム国内での製造を伴うため、ベトナム法を準拠法とすることで合意。A社はベトナム法に精通した弁護士を起用し、特に品質管理、製造物責任、秘密保持、そしてベトナムの労働法(Bộ luật Lao động)や環境法に関する条項を詳細に交渉しました。労働者の雇用や労働条件に関する規定は、ベトナムの労働法に厳密に準拠する必要がありました。

    • 紛争解決: ベトナム国内での製造事業に関わるため、まずはベトナム国際仲裁センター(VIAC)での仲裁を選択。VIACはベトナム国内の仲裁機関であり、製造業に関する専門知識を持つ仲裁人も期待できるため、適切な選択でした。

    • 言語: 法的拘束力とベトナム国内での執行を重視し、ベトナム語を正文とし、日本語と英語の参考訳を作成。特に品質基準、秘密保持義務、製造物責任に関する規定は、ベトナム法の概念と厳密なベトナム語契約書 翻訳が求められました。

  • 成功要因: ベトナム法の適用を受け入れる一方で、重要なリスクポイント(品質、秘密保持、製造物責任、労働法順守)については、ベトナム法の下で最大限自社の利益を保護できるよう専門家のアドバイスを受けながら交渉した点。また、ベトナム国内の仲裁機関を活用することで、紛争解決の効率性と執行可能性を高めました。

ケーススタディ2:ベトナム企業へのITサービス提供契約

  • 状況: 日本のIT企業C社が、ベトナムのスタートアップ企業D社に対し、特定のクラウドベースのソフトウェアサービスを継続的に提供するSaaS利用契約を締結するケース。データ保護、サービスレベル合意(SLA)、料金、責任制限、そしてベトナムの個人情報保護法やサイバーセキュリティ法が主要な論点。

  • 課題と検討ポイント:

    • 準拠法: 国際的なITサービス契約の慣行と、ベトナムのデータ保護規制を考慮し、シンガポール法を準拠法とすることで合意。しかし、ベトナムのサイバーセキュリティ法や個人情報保護に関する規定は強行法規として適用される可能性があるため、これらへの遵守を契約条項に明記しました。C社はベトナムのサイバーセキュリティ法に詳しい弁護士を起用し、特にデータ処理、SLA、責任制限に関する条項を詳細に交渉しました。

    • 紛争解決: サービスの性質上、迅速な解決が求められる可能性があるため、中立性が高く、国際仲裁の実績が豊富なシンガポール国際仲裁センター(SIAC)での仲裁を選択。

    • 言語: 国際的なITサービス取引の慣行に合わせ、英語を正文とし、D社のために高品質なベトナム語契約書訳を参考として提供。特に、データ処理の同意、SLA、責任制限、そしてベトナムのサイバーセキュリティ法および個人情報保護に関する規定は、厳密なベトナム語契約書 翻訳が求められました。

  • 成功要因: 中立的な第三国法(シンガポール法)を準拠法としてリスクを分散しつつ、ベトナムの強行法規であるサイバーセキュリティ法や個人情報保護に関する規定への遵守義務を明確に契約書に盛り込むことで、法的なリスクを最小限に抑えつつビジネスを進めた点。また、中立的な国際仲裁機関を選択することで、紛争解決の公平性と執行可能性を確保しました。

6. よくある質問(FAQ):ベトナム語契約書 翻訳に関する疑問を解消

日本企業のお客様からよくいただく、ベトナム語契約書に関するご質問とその回答をまとめました。

 


 

Q1: 「英語契約書があれば十分」という考えは、ベトナムとのビジネスにおいてなぜ危険なのですか?

A1: ベトナムは社会主義市場経済であり、投資法、企業法、労働法、サイバーセキュリティ法など、多くの分野で当事者の合意よりも優先される強行法規が存在します。これらの強行法規に反する条項は無効となる可能性があります。また、行政機関への提出書類はベトナム語が必須であるため、英語契約書だけでは対応できない場面が多々あります。

 


 

Q2: ベトナム語契約書を正文とするメリット・デメリットは何ですか?

A2:

  • メリット: ベトナム国内での法的実行力が最も高まります。現地の裁判所や行政機関が関与する際に、言語の障壁がなくスムーズです。相手方への敬意を示し、信頼関係を深めることにも繋がります。

  • デメリット: 日本企業はベトナム法の知識に加え、ベトナム語の法的表現を正確に理解する必要があります。このため、専門性の高いベトナム語契約書 翻訳とリーガルチェックが不可欠となり、費用や時間がかかる場合があります。


 

Q3: 契約書のベトナム語翻訳は、どのような点に注意が必要ですか?

A3: 最も重要なのは、法的概念の正確な対応です。ベトナム民法典などに由来する法律用語は、単なる直訳では法的意味合いを正確に伝えられません。ベトナム法の概念と日本の法概念、そして英語の概念を理解し、ベトナムの法律や商慣習に合致した適切な用語選択と表現が必要です。また、声調言語であるベトナム語のニュアンスを正確に捉えることも重要です。

 


 

Q4: ベトナム語契約書の翻訳を依頼する際のポイントは何ですか?

A4:

  1. 1. 法律翻訳の専門性: 法律分野、特にベトナム法に特化した翻訳会社や、弁護士資格を持つ翻訳者など、法律文書の翻訳経験が豊富なプロを選びましょう。

  2. 2. ネイティブチェック: ベトナム語のネイティブスピーカーによるチェックはもちろん、ベトナムの法務
    分野に詳しいネイティブ
    によるチェックが行われるか確認しましょう。


  3. 3. 情報セキュリティ体制
    : 契約書は機密情報を含むため、情報セキュリティ管理が徹底されている翻訳会社を選びましょう。


  4. 4. リーガルチェックの連携
    : 翻訳だけでなく、必要に応じてベトナム現地の弁護士によるリーガルチェックまで含めて依頼できるか、連携体制を確認しましょう。

     


     

Q5: ベトナムの強行法規とは具体的にどのようなものがありますか?

A5: 具体例としては、労働法(解雇規制、労働時間、最低賃金、社会保険など)、投資法(外資参入規制、優遇措置など)、企業法(企業形態、設立手続きなど)、サイバーセキュリティ法・個人情報保護法(データ越境移転規制、サーバー設置義務など)、独占禁止法などが挙げられます。これらの分野の契約では、当事者の合意内容がベトナムの強行法規に反する場合、その条項が無効となるリスクがあります。

7. 日本とベトナムの主要ビジネス分野と契約書の種類

日本とベトナムは、製造業、IT、インフラ、農業など、多岐にわたる分野でビジネス交流を行っています。これらの取引を円滑に進める上で、専門的なベトナム語契約書翻訳が不可欠となる主要な分野と、そこで頻繁に交わされる契約書の種類について解説します。

 

7.1. 日本とベトナムで現在ビジネスが盛んな分野・業界・ジャンル

現在、日本とベトナムで特に活発なビジネスが見られるのは以下の分野です。

  1. 1. 製造業: 日本企業はベトナムを「チャイナ・プラス・ワン」の生産拠点として重視しており、電子機器、自動車部品、繊維製品などの製造工場進出が活発です。

  2. 2. IT・デジタル分野: ベトナムは優秀なIT人材が豊富であり、ソフトウェア開発、システムインテグレーション、BPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)などの分野で協力が進んでいます。


  3. 3. インフラ・建設
    : ベトナムは交通網、発電所、都市開発など、大規模なインフラ整備が進行中であり、日本の技術や資金が投入されています。


  4. 4. 小売・流通
    : ベトナムの消費市場は拡大しており、日本の小売業や食品メーカーが進出しています。


  5. 5. 農業・食品
    : 高品質な農産物や水産物の供給、農業技術の移転、食品加工など。


  6. 6. 金融・銀行
    : 日本の金融機関がベトナムでの事業を拡大しています。

 

7.2. 翻訳が必要となる可能性が高い主要な契約書の種類

上記の活発なビジネス分野を踏まえると、以下のような契約書がベトナム語への翻訳、またはベトナム語からの翻訳を頻繁に必要とします。これらの契約書は、ベトナムの法規制や商習慣を考慮した専門的な翻訳が求められます。

  1. 1. 投資登録証明書(IRC)関連書類: ベトナムでの事業設立に必須。

  2. 2. 事業登録証明書(ERC)関連書類: 投資プロジェクト実施のために必須。


  3. 3. 合弁事業契約書 (Hợp đồng Liên doanh)
    : 新たな事業体を共同で設立・運営する場合に必要です。


  4. 4. 製造委託契約書 (Hợp đồng Gia công / Hợp đồng Sản xuất)
    : 製品の製造をベトナム企業に委託する際に必要です。


  5. 5. 部品供給契約書 (Hợp đồng Cung cấp linh kiện)
    : 製造業において、部品の継続的な供給を規定します。


  6. 6. 売買契約書 (Hợp đồng Mua bán)
    : 製品・商品の輸出入、原材料などの取引で必要となります。


  7. 7. 秘密保持契約書 (Thỏa thuận Bảo mật / NDA)
    : 交渉や共同開発、M&Aの初期段階で情報共有を行う際に不可欠です。


  8. 8. 雇用契約書 (Hợp đồng Lao động)
    : ベトナムで従業員を雇用する際に必須です。ベトナム労働法典(Bộ luật Lao động)に基づく厳格な規定(労働時間、解雇保護、社会保険など)が多数あります。


  9. 9. サービス提供契約書 (Hợp đồng Cung cấp Dịch vụ)
    : ITサービス、コンサルティング、物流サービスなどで必要です。


  10. 10. ライセンス契約書 (Hợp đồng Chuyển giao Quyền Sở hữu Trí tuệ / Hợp đồng Chuyển giao Công nghệ)
    : 知的財産(特許、商標、ソフトウェアなど)の使用許諾や技術移転を定めます。


  11. 11. 不動産賃貸借契約書 (Hợp đồng Thuê Bất động sản)
    : 工場用地、オフィス、店舗などの賃貸借に必要です。



まとめ

日本企業がベトナム企業と契約を交わす際には、「英語契約書があれば十分」という安易な判断は避け、 ベトナム語契約書の重要性を正しく認識することが成功への第一歩です。社会主義市場経済の法特性、準拠法、紛争解決手段、そしてベトナム語契約書の言語戦略といった契約の骨格を成す要素を、取引の具体的な内容、当事者の関係性、そしてベトナムの最新の法規制や商習慣を踏まえて慎重に検討し、決定することが成功の鍵となります。

特に、文化や法制度が異なる国際間取引においては、ベトナム語契約書のわずかな文言の解釈の違いが、将来的に大きな法的・財務的リスクへと発展する可能性があります。そのため、国際契約に精通した弁護士のアドバイスを受けるとともに、法的・ビジネス的なニュアンスを完全に理解したベトナム語の専門翻訳者のサポートが不可欠です。

長年にわたる国際契約書翻訳の経験と、日本、ベトナム、英語圏の法務・ビジネスに関する深い知見を活かし、貴社のベトナムビジネスを法的な側面から強力にサポートいたします。あらゆる種類のベトナム語契約書について、貴社のニーズに応じた最適な翻訳サービスを提供し、グローバルな取引を安全かつ円滑に進めるお手伝いをさせていただきます。

ベトナム語契約書に関して、ご不明な点や具体的なご相談がございましたら、どうぞお気軽に問い合わせください。

契約書の翻訳-1WIPジャパンは、東京弁護士共同組合神奈川県弁護士共同組合をはじめとする全国23の弁護士共同組合の特約店に認定されています。
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契約書翻訳に役立つリンク集

法務省大臣官房司法法制部「法令翻訳の手引き」(PDF)
日本法令外国語訳推進会議「法令用語日英標準対訳辞書」(PDF)
Publiclegal(英文契約書のテンプレートや書式を無料で提供)
日本法令外国語訳データベースシステム(法務省が開設した日本の法令の英訳サイト)
weblio 英和辞典・和英辞典
英辞郎 on the web

 

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