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Jul. 10, 2025

株式譲渡契約書 翻訳:M&A成功とリスク回避の要点と関係部門の役割

 

今日のグローバル経済において、企業の成長戦略や事業再編を進める上で、M&A(合併・買収)は不可欠な手段となっています。M&A取引において最も中心的な役割を果たすのが、株式譲渡契約書(Share Purchase Agreement, SPA / Stock Purchase Agreement, SPA)です。

この契約書は、株式の売主(Seller)と買主(Buyer)との間で、譲渡対象となる株式、譲渡価格、決済方法、表明保証、誓約(コベナンツ)、前提条件、補償、クロージング、準拠法、紛争解決など、極めて詳細な条件を定めます。

その正確な翻訳は、M&A取引の円滑な実行、買収後の統合(PMI)の成功、予期せぬリスクの回避、そして将来的な紛争の防止のために不可欠です。翻訳のミスや内容の理解不足は、買収後の簿外債務の発覚、経営権に関する紛争、追加費用の発生、国際的な信用失墜、さらには高額な法的紛争へと発展するリスクをはらんでいます。

特に、M&A取引では、対象会社の国ごとに会社法、証券法、独占禁止法、税法、労働法、そして国際的な商慣習が大きく異なるため、単に言葉を置き換えるだけでなく、それぞれの法制度や取引の性質に応じた法的・財務的・商業的なニュアンスを踏まえた上で契約内容を理解し、翻訳することが不可欠です。

本記事では、これまでの経験に基づき、株式譲渡契約書の翻訳における重要なポイントと、貴社の各部門がどのように翻訳された契約書を活用し、関与していくべきかを具体的なケーススタディを交えて解説します。

貴社のグローバルビジネスにおいて、株式譲渡契約の適切な理解と運用を通じて、M&Aの成功を確実に導き、潜在的なリスクを効果的にヘッジするために、ぜひ本記事をお役立てください。

 

株式譲渡契約書とは何か?その目的と国際M&Aにおける重要性

株式譲渡契約書(Share Purchase Agreement, SPA / Stock Purchase Agreement, SPA)とは、企業の株式を譲渡(売買)する際に、売主(Seller)と買主(Buyer)との間で締結される法的拘束力のある文書です。対象会社の株式の全部または一部を取得することで、買主は対象会社の経営権や事業を支配下に置くことになります。

国際M&Aにおいて、株式譲渡契約は最も一般的なM&Aの手法として多岐にわたる取引で利用されます。

  • 海外企業の買収: 新規市場参入、技術獲得、事業規模拡大を目的とした外国企業の買収。

  • 海外子会社の売却: 事業再編やノンコア事業の売却。

  • ジョイントベンチャー解消時の株式売買: 合弁関係の解消に伴う一方当事者への株式譲渡。

この契約書は、以下の非常に多岐にわたる詳細な条項を含みます。

  • 譲渡対象株式(Sale Shares):譲渡される株式の種類、数、割合、取得方法。

  • 譲渡価格(Purchase Price):株式の売買価格、価格調整メカニズム(例えば、クロージング後の運転資本調整、アーンアウト条項など)。

  • 決済方法とクロージング(Payment and Closing):譲渡価格の支払い方法、クロージング(株式譲渡実行日)の日程と場所、クロージング時に満たすべき前提条件。

  • 表明保証(Representations and Warranties):売主および対象会社が、その財務状況、法的地位、事業、資産、負債、知的財産権、税務、訴訟、従業員関係、コンプライアンスなどに関して行う事実の表明と、それらが真実かつ正確であることの保証。これは買主にとって、デューデリジェンスで把握しきれなかったリスクを補填する重要な条項です。

  • 誓約(Covenants):契約締結後からクロージングまでの期間、およびクロージング後における売主または対象会社の義務や制限(例:通常の事業運営の継続、新規負債の制限、重要契約の締結制限、キーパーソンの引き抜き禁止など)。

  • 前提条件(Conditions Precedent):クロージングが実行されるために満たされなければならない条件(例:独占禁止法当局の承認、関係当局の許可、重要契約の同意取得、表明保証の真実性維持など)。

  • 補償(Indemnification):表明保証違反や特定の事由(例:税務リスク、未認識債務)によって買主が損害を被った場合に、売主が買主に対して行う損害賠償義務に関する条項。補償期間、補償限度額(キャップ)、免責金額(バスケット、ティッピング)などが定められます。

  • 契約解除条件(Termination):契約が解除される条件(例:前提条件の未充足、重大な契約違反など)。

  • 費用負担(Expenses):M&Aにかかる費用の負担者(弁護士費用、会計士費用など)。

  • 競業避止義務(Non-Compete Clause):売主(特に創業者や経営株主)が、譲渡後も対象会社と競合する事業を行わない義務。

  • 秘密保持義務(Confidentiality):契約内容や開示された機密情報の保護義務。

  • 準拠法と紛争解決(Governing Law and Dispute Resolution):契約に適用される法律、紛争が発生した場合の解決方法(裁判、国際仲裁、調停など)。

国際M&Aにおいて株式譲渡契約書が特に重要なのは、以下の理由からです。

  • 各国の法制度と規制: 対象会社の所在する国の会社法、証券法、独占禁止法、外為法、税法、労働法などが適用されるため、これらの法制度の差異を契約書で適切に調整し、コンプライアンスを確保する必要があります。特に、外国企業による買収に対する規制(外資規制)が存在する場合もあります。

  • デューデリジェンスのリスク補填: デューデリジェンス(詳細調査)で把握しきれなかった潜在的なリスク(簿外債務、訴訟リスクなど)に対して、売主の表明保証や補償条項が買主を保護する重要な役割を果たします。

  • 価格調整メカニズム: 国際M&Aでは、クロージング時点と合意時点での対象会社の財務状況の変動を考慮し、譲渡価格を調整するメカニズム(運転資本調整、アーンアウトなど)が複雑に規定されることがあります。

  • 税務上の考慮: 株式譲渡に伴うキャピタルゲイン税、印紙税など、各国の税務上の取り扱いが異なるため、税務部門や専門家との連携が不可欠です。

  • クロージング条件の複雑化: 各国の規制当局の承認、第三者からの同意取得など、国際M&Aではクロージングまでに満たすべき前提条件が複雑化する傾向があります。

  • 買収後の統合(PMI)への影響: 株式譲渡契約書に定められたコベナンツや表明保証は、買収後の対象会社の経営方針や事業運営に直接影響するため、PMI計画との整合性を考慮する必要があります。

  • 紛争解決: 国際M&Aに関する紛争は、高額かつ複雑化しやすいため、紛争が発生した場合の解決方法(準拠法、仲裁など)を事前に明確にしておくことが、リスク管理上非常に重要ですし、当社はこれを強く認識しています。

英文株式譲渡契約書の特徴と和文契約書との違い

国際的なM&A取引では、多くの場合、英文で株式譲渡契約書が作成されます。その特徴は、日本の和文契約書とは異なる点がいくつかあります。

  • Extensive Representations and Warranties(広範な表明保証):

    • 売主および対象会社の財務状況、法務、事業、資産、負債、知的財産権、税務、環境、労働関係、訴訟の有無、コンプライアンスなどについて、非常に広範かつ詳細な事実関係が表明され、その真実性が保証されます。これは、買主がデューデリジェンスで把握しきれなかったリスクに対する重要な保護となります。和文契約書に比べ、網羅性と詳細性が圧倒的に高いです。

  • Detailed Covenants(詳細な誓約):

    • 契約締結からクロージングまでの期間における対象会社の通常の事業運営の継続義務、新規負債の制限、重要契約の締結制限、資産処分制限、そしてクロージング後における売主の競業避止義務や引き抜き禁止義務など、多岐にわたる誓約が詳細に規定されます。

  • Comprehensive Indemnification Provisions(包括的な補償条項):

    • 表明保証違反、特定の未認識債務(税務、環境汚染など)、またはその他の事由によって買主が被る損害に対する売主からの補償義務が非常に詳細に規定されます。補償期間、補償限度額(キャップ)、免責金額(バスケット、ティッピング)といった具体的な数値や計算方法が明記され、その交渉がM&A交渉の中心となることも多いです。

  • Price Adjustment Mechanisms(価格調整メカニズム):

    • クロージング時点での対象会社の運転資本や純有利子負債の変動に基づき、譲渡価格を調整する条項が複雑に規定されます。また、特定の事業目標達成に応じた追加払い(アーンアウト条項)が設定されることもあります。

  • Conditions Precedent(前提条件)の厳格な記述:

    • クロージングが実行されるために売主または買主が満たさなければならない条件が厳格にリストアップされます。これには、独占禁止法当局の承認、関係当局の許可、第三者からの同意取得、表明保証の真実性維持などが含まれ、その充足状況がクロージングの可否を決定します。

  • Tax Indemnity/Covenants(税務補償/誓約)の特化:

    • 対象会社の過去の税務に関するリスク(未納税額、追徴課税リスクなど)に対する売主からの補償や、クロージング後の税務申告・調査への協力義務など、税務に特化した補償・誓約条項が詳細に規定されます。

  • Termination and Break-up Fees(契約解除とブレイクアップフィー):

    • 契約が解除される条件(例:前提条件の未充足、重大な契約違反、特定期限の到来など)が明確に規定され、特定の解除事由の場合に相手方への違約金(ブレイクアップフィー)の支払い義務が定められることがあります。

  • Governing Law and Dispute Resolution(準拠法と紛争解決)の指定:

    • 国際M&Aでは、特定の国の法律を準拠法とし(例:デラウェア州法、英国法、シンガポール法、ニューヨーク州法など)、国際仲裁を紛争解決手段として指定することが一般的です。仲裁地、仲裁機関、仲裁規則、仲裁人の数などが明確に定められ、紛争解決の予測可能性を高めます。

日本の和文株式譲渡契約書に比べ、英文株式譲渡契約書は、表明保証、補償条項、価格調整メカニズム、前提条件、税務関連条項、そして契約解除に関する詳細な規定に関して、より詳細かつ厳密な記述が求められる傾向が強いです。翻訳においては、これらの法的・財務的・商業的ニュアンスを正確に反映した表現を用いることが不可欠です。

 

株式譲渡契約書翻訳における重要ポイント

株式譲渡契約書の翻訳は、貴社のグローバルなM&A戦略、買収後の事業統合、潜在的なリスクヘッジに直接影響するため、極めて高い精度と専門性、そして法務・財務・経営企画・事業開発部門など多岐にわたる視点が求められます。以下のポイントを押さえることが、成功への鍵となります。

  1. 譲渡価格と価格調整メカニズム(Purchase Price and Adjustment)の厳密な翻訳:

    • 譲渡価格の具体的な金額、決済方法、そしてクロージング後の運転資本調整、アーンアウト条項(特定の目標達成に応じた追加支払い)などの価格調整メカニズムを、曖昧さなく厳密に翻訳することが不可欠です。特にアーンアウト条項は、将来の業績と連動するため、その計算基準、期間、目標値、支払方法を正確に理解し、翻訳する必要があります。

  2. 表明保証(Representations and Warranties)の徹底的な翻訳とリスク評価:

    • 対象会社の財務状況、法的地位、知的財産権、税務、環境、労働関係、訴訟の有無、コンプライアンスなどに関する広範な表明保証条項を正確に翻訳することが極めて重要ですし、当社はこれを強く認識しています。表明保証違反は、買収後の損害賠償請求や契約解除につながる可能性があるため、法務部門やデューデリジェンスチームと連携し、そのリスクを詳細に評価すべきです。

  3. 補償条項(Indemnification)の慎重な翻訳とリスクヘッジの明確化:

    • 表明保証違反や特定の事由(例:未認識債務、税務リスク)によって買主が被る損害に対する売主からの補償義務の範囲、補償期間、補償限度額(キャップ)、免責金額(バスケット、ティッピング)といった具体的な数値や計算方法を慎重に翻訳することが不可欠です。この条項は、買収後のリスクを売主側に負担させるための重要な防御策であり、その内容の正確な理解が買収後の安心感に直結します。

  4. 前提条件(Conditions Precedent)とクロージング(Closing)に関する条項の精緻な翻訳:

    • クロージングが実行されるために満たされなければならない独占禁止法当局の承認、関係当局の許可、第三者からの同意取得、表明保証の真実性維持といった前提条件を精緻に翻訳することが極めて重要です。これらの条件が充足されない場合、取引は実行されず、時間とコストが無駄になる可能性があるため、その条件の具体性と実現可能性を正確に把握すべきです。

  5. 誓約(Covenants)の明確な翻訳:

    • 契約締結後からクロージングまでの期間における対象会社の通常の事業運営の継続義務、新規負債の制限、重要契約の締結制限、資産処分制限、そしてクロージング後における売主の競業避止義務や引き抜き禁止義務を明確に翻訳することが重要です。これらの誓約は、対象会社の企業価値の維持と、買収後のスムーズな事業承継に直結します。

  6. 税務関連条項(Tax Indemnity/Covenants)の正確な翻訳と税務リスクの管理:

    • 対象会社の過去の税務に関するリスク(未納税額、追徴課税リスクなど)に対する売主からの補償条項や、クロージング後の税務申告・調査への協力義務など、税務に特化した条項を正確に翻訳することが不可欠です。クロスボーダーM&Aでは、各国税法の複雑性が増すため、税務部門や外部の税務専門家と連携し、予期せぬ税務コストやリスクを回避するための正確な翻訳と法的・税務的評価を行うべきです。

    • 当社は、このような国際税務に関する条項の正確な翻訳を特に重視しています。

  7. 準拠法と紛争解決(Governing Law and Dispute Resolution):

    • 契約に適用される法律、そして紛争が発生した場合の解決方法(国際仲裁、調停、裁判など)、仲裁地の選定、仲裁機関、仲裁規則、仲裁人の数、仲裁判断の拘束力などを正確に翻訳することが不可欠です。国際M&Aでは、異なる国の法制度が複雑に絡むため、自社にとって有利な準拠法や紛争解決地を指定することが戦略上重要であり、その内容を正確に把握すべきです。

  8. AI翻訳の適切な活用と専門家による最終確認:
    AI翻訳技術は、初稿の作成や用語の統一に役立ちますが、株式譲渡契約書のような法的・財務的に極めて複雑な文書においては、法的ニュアンス、各国の会社法・証券法・税法、M&A実務特有の専門用語を完全に理解することは困難です。AIを効率化ツールとして最大限活用しつつも、法務知識、財務・会計に関する専門知識、およびM&A実務経験を持つ専門の翻訳者による徹底したレビューと校正が不可欠です。人間による精査が、潜在的なリスクを最小限に抑え、安全な国際M&Aの基盤となります。

  9. 強固な情報セキュリティ体制:
    株式譲渡契約書には、貴社のM&A戦略、対象会社の財務情報、事業計画、顧客情報など、企業の競争力や事業の成否に直結する極めて機密性の高い情報が含まれることが一般的です。これらの情報が外部に漏洩した場合、企業の競争力低下、信用失墜、法的な責任問題など、甚大な損害を被る可能性があります。そのため、翻訳を依頼する際には、翻訳会社が厳格な情報セキュリティポリシーを定め、技術的・物理的・人的な対策を徹底しているかを必ず確認すべきですし、当社はこれを徹底しています。

株式譲渡契約書の翻訳は誰に必要なのか?ケーススタディで見る関係部門の役割

株式譲渡契約書は、グローバルM&Aの成功とリスク管理を左右するため、多岐にわたる部門や関係者がその内容を理解し、翻訳された情報に基づいて連携することが不可欠です。

 

ケーススタディ1:日本のIT企業による米国スタートアップの買収

 

状況: 日本の成長中のIT企業が、最先端のAI技術を持つ米国シリコンバレーのスタートアップ企業をM&Aにより買収し、技術獲得と海外市場参入を目指すケース。英文の株式譲渡契約書を締結。

  • 経営企画部/事業開発部:

    • 必要性: 買収目的(技術獲得、市場参入)、譲渡価格と価格調整メカニズム(アーンアウト)、対象会社の事業計画、主要な表明保証、契約締結からクロージングまでの誓約が自社の事業戦略と合致しているかを詳細に確認します。買収後の統合(PMI)計画の基礎となります。

    • ケース: 契約書に記載された「譲渡価格のアーンアウト条項(特定売上目標達成時の追加支払い)」、「クロージングまでの対象会社の通常の事業運営義務」、「主要な顧客契約の維持に関する表明保証」を和訳で確認し、M&Aの戦略的価値と統合計画を評価します。過去には、価格調整メカニズムに関する翻訳が不正確だったため、買収後に想定以上の支払いが発生した事例がありました。当社は、このような財務に関する条項の正確な翻訳を特に重視しています。

  • 法務部/知的財産部:

    • 必要性: 契約全体の法的妥当性、表明保証、補償条項、競業避止義務、知的財産権の帰属、前提条件(独占禁止法承認、重要契約の同意取得)、準拠法(デラウェア州法)、紛争解決条項の適切性を確認します。米国の会社法、証券法、独占禁止法、労働法への対応も求められます。

    • ケース: 契約書に記載された「対象会社のAI技術に関する知的財産権の表明保証と補償」、「創業者に対する競業避止義務の範囲と期間」、「米国の独占禁止法当局の承認を前提条件とする条項」を和訳で確認し、法的リスクと知財保護を評価します。

  • 財務部/経理部:

    • 必要性: 譲渡価格、決済方法、価格調整、税務関連条項(キャピタルゲイン税、移転価格税制)、対象会社の過去の財務諸表に関する表明保証、会計処理などを確認します。買収後の連結決算、資金計画、税務戦略に直接影響します。

    • ケース: 契約書に記載された「譲渡価格の支払スケジュール」、「対象会社の未認識債務に関する売主からの補償範囲」、「株式譲渡に伴う米国でのキャピタルゲイン税の取り扱い」を和訳で確認し、財務インパクトと税務リスクを管理します。


 

ケーススタディ2:欧州企業による日本企業子会社の買収

 

状況: ドイツの製造業大手企業が、日本の大手企業の非中核事業である子会社(製造工場含む)をM&Aにより買収し、事業ポートフォリオの最適化とアジア市場への足がかりを得るケース。英文の株式譲渡契約書を締結。

  • 売主側の経営企画部/IR部門:

    • 必要性: 売却目的(事業再編)、譲渡価格、価格調整メカニズム、表明保証、補償条項が自社の売却戦略と合致しているか、株主への説明責任を果たす上で問題ないかを確認します。売却後のグループ構造への影響も考慮します。

    • ケース: 契約書に記載された「譲渡価格の最終調整に関する計算方法」、「売却対象子会社の環境債務に関する売主からの補償範囲」、「従業員の雇用継続に関する誓約」を和訳で確認し、売却の妥当性とリスクヘッジを評価します。

  • 売主側の法務部/国際取引部:

    • 必要性: 契約全体の法的妥当性、表明保証、補償条項、競業避止義務、労働契約の承継、独占禁止法承認、準拠法(日本法または英国法)、紛争解決条項の適切性を確認します。日本の会社法、独占禁止法、労働法への対応が求められます。

    • ケース: 契約書に記載された「対象会社の過去の法的コンプライアンスに関する表明保証」、「売主のM&A後の競業避止義務の範囲と期間」、「日本での独占禁止法当局の承認を前提条件とする条項」を和訳で確認し、法的リスクと責任範囲を評価します。

  • 売主側の財務部/経理部:

    • 必要性: 譲渡価格、決済方法、税務関連条項(キャピタルゲイン税、消費税)、売却対象子会社の財務状況に関する表明保証、会計処理などを確認します。売却益の計上、税務インパクト、連結決算への影響に直接関わります。

    • ケース: 契約書に記載された「譲渡価格の受取スケジュール」、「株式譲渡に伴う日本でのキャピタルゲイン税の取り扱い」、「対象会社の税務申告に関する表明保証と補償」を和訳で確認し、財務インパクトと税務リスクを管理します。

よくある質問(FAQ)

株式譲渡契約書の翻訳に関して、お客様からよくいただくご質問とその回答をまとめました。

  1.  


 

Q1: 株式譲渡契約書における「表明保証(Representations and Warranties)」の条項は、翻訳でどのように注意すべきですか?

A1: 表明保証は、M&Aにおける買主の最も重要な保護メカニズムの一つです。翻訳においては、売主および対象会社の財務状況、法的地位、知的財産権、税務、環境、労働関係、訴訟の有無、コンプライアンスなど、広範かつ詳細な内容を正確に表現することが極めて重要です。専門用語や法律固有の表現が多く含まれるため、単なる直訳ではなく、各国の法制度やM&A実務の文脈を理解した上で、その法的含意を正確に伝える翻訳が不可欠です。表明保証違反は、買収後の損害賠償請求や契約解除につながる可能性があるため、翻訳ミスは多大なリスクを招きます。

  1.  


 

Q2: 「補償条項(Indemnification)」の翻訳で、特に注意すべき点は何ですか?

A2: 補償条項は、表明保証違反などによって買主が被る損害を売主がどこまで、どのように補償するかを定める、M&A交渉の核となる部分です。翻訳においては、補償のトリガー(どのような場合に補償義務が発生するか)、補償の範囲、補償期間、補償限度額(キャップ)、免責金額(バスケットやティッピング)、補償請求の手順、相殺の可否といった具体的なメカニズムと数値を厳密に表現することが不可欠です。これらの条件のわずかな誤訳でも、買収後の実際の金銭的負担が大きく変わる可能性があるため、極めて高い精度が求められます。

  1.  


 

Q3: 国際M&Aにおいて、「税務関連条項(Tax Indemnity/Covenants)」の取り扱いはなぜ重要視されますか?

A3: クロスボーダーM&Aでは、譲渡対象となる株式や対象会社の過去・現在の事業活動に関して、複数国の税法が複雑に絡み合います。翻訳においては、対象会社の過去の税務申告の適正性に関する表明保証、未納税額や追徴課税リスクに対する売主からの補償、クロージング後の税務申告・調査への協力義務、税務に関連する情報開示義務など、税務に特化した条項を正確に表現することが不可欠です。予期せぬ税務コストや将来的な税務調査リスクを回避するためには、税務の専門知識を持つ翻訳者と、貴社の税務部門や外部の税務アドバイザーとの連携が極めて重要です。当社は、このような国際税務に関する条項の正確な翻訳を特に重視しています。

  1.  


 

Q4: 株式譲渡契約における「前提条件(Conditions Precedent)とクロージング(Closing)」の取り扱いは、どのように注意して翻訳すべきですか?

A4: 前提条件は、M&A取引が法的に有効に成立し、譲渡が実行されるために、クロージング日までに満たされなければならない条件です。翻訳においては、独占禁止法当局の承認、関係当局の許可、重要契約の相手方からの同意取得、主要な表明保証の真実性維持、特定の訴訟リスクの解消といった具体的な条件を明確に表現することが重要です。これらの条件が満たされない場合、買主は取引を継続する義務がなくなり、場合によっては契約を解除できるため、その条件の具体性、客観性、実現可能性を正確に理解し、翻訳すべきです。

  1.  


 

Q5: 株式譲渡契約書で「準拠法と紛争解決(Governing Law and Dispute Resolution)」の条項が非常に重要と言われるのはなぜですか?

A5: 準拠法(Governing Law)は、契約の解釈・有効性・履行に適用される法律であり、紛争解決は問題発生時の解決プロセスを定めます。国際M&Aでは、異なる国の会社法、証券法、独占禁止法、税法などが複雑に絡むため、どの国の法律が契約全体に適用されるのか、特に表明保証違反や補償請求、クロージング後の問題発生時にどの国の法律が適用されるのかを明確に合意しておくことが不可欠ですし、当社はこれを強く認識しています。また、紛争が生じた場合にどの国で、どのような方法(国際仲裁、調停、裁判など)で解決するのかを明確に合意しておくことが、予測可能性を高め、紛争解決のコストと時間を削減するために極めて重要ですし、自社にとって有利な条件を確保すべきです。翻訳においては、これらの条項を正確に理解し、必要に応じて現地の法律専門家と連携して最終確認を行うことが不可欠です。

まとめ

株式譲渡契約書の翻訳は、単なる言語の変換に留まらず、企業がグローバルなM&Aを成功させ、戦略的な事業再編を効率的に実行し、同時に買収後の潜在的なリスクを効果的にヘッジするための極めて重要なプロセスです。

英文と和文の契約書が持つそれぞれの特徴を深く理解し、経営企画、事業開発、法務、財務、経理といった各部門が連携しながら、専門知識を持つ翻訳者の力を借りることが不可欠ですし、これまでの経験から当社はこれを強く認識しています。

特に、譲渡価格と価格調整メカニズム、表明保証、補償条項、前提条件、誓約、税務関連条項、そして準拠法と紛争解決といった条項は、潜在的な法的・財務的リスクを最小限に抑え、グローバルM&Aを成功させるための鍵となります。

 

当社は、このような複雑な株式譲渡契約書の翻訳において、貴社の各部門のニーズを理解し、最高品質の翻訳とサポートを提供することをお約束します。貴社の海外M&Aにおける株式譲渡契約に関してご不明な点やご相談がありましたら、ぜひお気軽にお問い合わせください。

 

契約書の翻訳-1WIPジャパンは、東京弁護士共同組合神奈川県弁護士共同組合をはじめとする全国23の弁護士共同組合の特約店に認定されています。
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法務省大臣官房司法法制部「法令翻訳の手引き」(PDF)
日本法令外国語訳推進会議「法令用語日英標準対訳辞書」(PDF)
Publiclegal(英文契約書のテンプレートや書式を無料で提供)
日本法令外国語訳データベースシステム(法務省が開設した日本の法令の英訳サイト)
weblio 英和辞典・和英辞典
英辞郎 on the web

 

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