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Jul. 24, 2025

中国語繁体字契約書翻訳:台湾市場の法務と商習慣を理解する

 

日本と経済的な結びつきが強く、親日的な国民性を持つ台湾は、高度なIT産業、堅調な経済成長、そして活気ある市場を背景に、多くの日本企業にとって重要なビジネスパートナーです。近年では、サプライチェーン再構築の動きの中で、その重要性がさらに高まっています。

しかし、日本とは異なる法制度、独特の商習慣、そして中国との複雑な関係性など、台湾でのビジネス展開には特有の注意が必要です。特に、中国語繁体字契約書の正確な理解と適切な取り扱いは、法的リスクを管理し、ビジネスを成功に導くための鍵となります。

台湾は、大陸法を基盤としつつも、日本の法制度の影響も強く受けており、独自の発展を遂げています。中国語(繁体字)が公用語であり、公式文書は原則として繁体字で作成されます。香港も同様に中国語繁体字を公用語としていますが、イギリスの統治下にあった歴史的背景から英語も広く使用され、ビジネス契約においては英語が主流となることが多いです。しかし、台湾では、より中国語繁体字が契約書の主要な言語となる傾向が強く、英語契約書だけで完全にリスクを回避できるとは限りません。

特に中国語繁体字契約書の翻訳は、単なる言語の置き換えに留まらず、台湾民法(民法典)公司法(会社法)個人資料保護法(個人情報保護法)勞動基準法(労働基準法)といった主要な法律や、頻繁に改正される規制への深い理解が不可欠です。これらの要素を無視した翻訳は、契約の解釈、履行、そして将来的な紛争解決において深刻な問題を引き起こす可能性があります。

長年の国際契約書翻訳の経験に基づき、日本企業が台湾企業と契約を交わす際に直面する「中国語繁体字契約書 翻訳」の重要性、その特有の法的背景、準拠法、紛争解決、そして言語戦略の観点から、具体的な対応策を深掘りして解説します。台湾市場でのビジネスを安全かつ確実に展開し、その潜在能力を最大限に引き出すための羅針盤となる情報を提供します。

1. 知っておくべき台湾の法体系:大陸法を基盤とするも日本法の影響色濃い制度

台湾の法体系を理解することは、中国語繁体字契約書を取り扱う上で最も重要な前提となります。台湾は大陸法(成文法主義)を基本としていますが、日本の統治時代の影響を強く受け、民法や商法など多くの法律が日本の制度を参考に制定されています。そのため、日本の法律を理解している日本人にとっては比較的馴染みやすい部分もありますが、独自の発展を遂げている点も多く、注意が必要です。

 

主要な法律と改正の動向

台湾の主要な法律には以下のようなものがあります。

  • 民法(民法典): 契約、所有権、債務、不法行為など、私法関係の基本的な原則を定めます。日本の民法と多くの共通点がありますが、細部には違いがあります。

  • 公司法(会社法): 会社の設立、運営、組織再編、解散など、会社に関する事項を定めます。株式会社(有限公司)、合同会社(有限公司)、無限公司、両合公司の4種類の会社形態があります。

  • 個人資料保護法(個人情報保護法): 個人情報の収集、処理、利用に関する規制を定めており、日本やEUの個人情報保護法と同様に厳格な規定が設けられています。越境移転に関する規制も存在します。

  • 勞動基準法(労働基準法): 労働者の権利保護を目的とした法律で、労働時間、賃金、解雇、労働災害などに関する基準を定めます。日本と同様に労働者の権利が強く保護されています。

  • 公平交易法(公正取引法): 独占禁止、不公正な競争行為の規制などを定めます。日本の独占禁止法に相当する法律です。

  • 專利法(専利法)、著作權法(著作権法)、商標法(商標法)などの知的財産関連法: 知的財産権の保護に力を入れており、関連する契約(ライセンス契約、共同開発契約など)では詳細な規定が求められます。

  • 外國人投資條例(外国人投資条例): 外国人による台湾への投資を促進するための特別法であり、投資奨励措置や権利保護などを定めています。

商習慣と文化的背景

法制度の違いに加えて、台湾の商習慣や文化的背景も、契約の交渉や履行に影響を与えます。

  • 「人情(rénqíng)」と関係重視: 台湾のビジネス文化では、「人情」と呼ばれる人間関係や信頼が非常に重視されます。長期的な関係構築を重視し、契約書だけでなく、日頃のコミュニケーションや相互の信頼関係がビジネスの成否を左右することがあります。

  • 交渉と柔軟性: 台湾のビジネスパーソンは、交渉において粘り強く、細部にまでこだわる傾向があります。一方で、状況に応じて柔軟に対応する姿勢も持ち合わせています。

  • 契約の重視: 口頭での合意も一定の効力を持つと考えられますが、最終的には書面化された契約書が法的効力を持つことが強く認識されています。特に重要な取引においては、詳細かつ明確な中国語繁体字契約書が不可欠です。

  • 政府・行政機関との関係: 特定の産業や投資においては、政府や行政機関との良好な関係が円滑な事業運営に繋がることがあります。

2. 契約の「羅針盤」:準拠法(準據法 / Zhǔnjù Fǎ / Applicable Law)の選び方

中国語繁体字契約書の解釈、有効性、履行、そして違反時の法的効果などを決定するために適用される法律、それが準拠法です。日本企業と台湾企業間の契約において、この準拠法の選択は、契約関係の方向性を決定づける最も重要な要素の一つです。

 

選択肢とそれぞれの特徴・留意点

  1. 日本法を準拠法とする場合

    • メリット: 当社にとって最も馴染み深く、自社の法務部門や顧問弁護士が契約内容を容易に理解し、リスクを評価できます。予測可能性が高く、国内の法務リソースを最大限に活用できます。

    • デメリット: 台湾企業にとっては外国法となるため、内容の理解に専門的なサポートが必要となり、交渉が難航する可能性があります。また、万が一紛争が台湾で発生し、現地の裁判所が関与する場合、外国法(日本法)の適用や強制執行には、時間とコスト、そして手続き上の複雑さが伴うことがあります。特に、台湾の強行法規(例えば、公平交易法、労働基準法など)と矛盾する条項は、現地の裁判所によって無効と判断されるリスクがあります。

  2. 台湾法を準拠法とする場合

    • メリット: 相手方企業にとっては自国法であり、理解しやすいため、台湾国内での法的執行が比較的スムーズに進む可能性があります。台湾でのビジネス展開を重視する場合や、相手方企業側の交渉力が強い場合に選択されることがあります。

    • デメリット: 当社にとっては、台湾の法律に関する専門知識が不可欠です。民法、公司法、個人資料保護法、労働基準法など、日本の法体系と類似点が多いとはいえ、異なる部分も存在し、現地の法務実務や商慣習を深く理解していなければ、予期せぬ落とし穴にはまるリスクがあります。特に、外資規制、労働法規制、知的財産保護など、台湾法特有のルールを把握しておく必要があります。中国語繁体字契約書の条文が繁体字であるため、より一層の専門知識と正確な中国語繁体字契約書 翻訳が求められます。

  3. 第三国法を準拠法とする場合

    • メリット: 英国法(特にイングランド法)や米国ニューヨーク州法、またはシンガポール法など、国際商取引で広く受け入れられている法律を選択するパターンです。これらの法律は国際的な判例が豊富に蓄積されており、契約解釈の予測可能性が高いという大きなメリットがあります。どちらの当事者にとっても外国法であるため、中立性が保たれやすいと認識されることもあります。

    • デメリット: 当事者双方にとって外国法となるため、双方ともにその法律に精通した専門家(国際弁護士など)のサポートが必須となり、法務コストが増大する可能性があります。また、第三国法が台湾の強行法規と大きく異なる場合、台湾の裁判所での執行に課題が生じる可能性も考慮に入れる必要があります。

準拠法選択の経験的アドバイス

準拠法の選択は、取引の性質、当事者の交渉力、取引額、リスクの度合い、そして将来的な紛争発生時の執行の容易さなどを総合的に考慮して決定すべきです。台湾での事業活動が主となる場合、台湾法を準拠法とするケースも多く見られますが、その際は台湾法に精通した弁護士によるリーガルチェックが必須です。また、中立性や国際的な執行可能性を重視し、国際仲裁と組み合わせる形で第三国法(例:シンガポール法)を選択するケースも多く見られます。特に、ITや知的財産関連の複雑な取引では、国際的な判例が豊富な第三国法が選ばれることがあります。

 

3. 万が一の「出口戦略」:紛争解決(爭議解決 / Zhēngyì Jiějué / Dispute Resolution)の選択肢

どれだけ完璧な中国語繁体字契約書を作成しても、予期せぬ事態や解釈の相違から紛争が発生する可能性はゼロではありません。そのため、契約締結時に、紛争が起きた際の解決方法を具体的に定めておく「出口戦略」は極めて重要です。

 

主要な紛争解決手段

  1. 友好的解決・調停(友好解決・調解 / Yǒuhǎo Jiějué, Tiáojiě / Negotiation, Mediation)

    • 台湾のビジネス文化においても、訴訟に至る前に当事者間の話し合いや調停(通常、中立な第三者機関や個人の仲介)による解決を試みることが一般的です。契約書においても、まずは友好的な解決を試みる旨の条項が設けられることがあります。

  2. 裁判(訴訟 / Sùsòng / Litigation)

    • 日本の裁判所: 当社にとっては有利な立場ですが、台湾企業が判決に従わない場合、現地でその判決を強制執行するには、別途「外国判決の承認及び執行」という複雑な手続きが必要です。日本と台湾の間には国交がないため、相互承認・執行に関する取り扱いは、法的な枠組みが確立しているとは言えません。

    • 台湾の裁判所: 現地での執行は比較的容易ですが、当社にとっては現地の司法制度に関する知識や、中国語繁体字契約書の解釈において言語の壁が存在します。現地の法務知識と裁判実務に精通した弁護士の存在が不可欠です。台湾の司法制度は比較的透明性が高いと評価されています。

  3. 国際仲裁(國際仲裁 / Guójì Zhōngcǎi / International Arbitration)

    • 国際商取引における紛争解決手段として、最も推奨される選択肢の一つです。特に日本と台湾のように法制度が異なる地域同士の取引でその優位性が際立ちます。

    • メリット:

      • 中立性: 特定の国の司法制度に依存せず、中立的な仲裁地(シンガポール、香港、ロンドン、または台湾国内の中華民國仲裁協會(Chinese Arbitration Association, Taipei)など)と国際的に信頼性の高い仲裁機関を選択できます。これにより、特定の国の裁判所での「ホームアドバンテージ」を避けることができます。

      • 執行可能性: 多くの国がニューヨーク条約(外国仲裁判断の承認及び執行に関する条約)に加盟しており、日本も加盟国です。台湾は正式な加盟国ではありませんが、仲裁判断の執行を認める国内法を有しており、一定の条件下で仲裁判断の執行が期待できます。

      • 専門性: 複雑な商取引や技術的な紛争において、その分野の専門知識を持つ仲裁人を選任することが可能です。

      • 秘密保持: 仲裁手続きは原則非公開であり、ビジネス上の機密情報が守られやすいです。

      • 迅速性: 原則として、仲裁判断は最終的なものであり、二審制や三審制のような上訴手続きがありません。これにより、迅速な紛争解決が期待できます。

    • 注意点: 仲裁条項の作成には専門知識が必要です。仲裁機関、仲裁地、仲裁言語、仲裁人の数などを具体的に定める必要があります。

紛争解決条項設定の経験的アドバイス

日本企業と台湾企業間の契約では、国際仲裁を選択することが最も実用的で安全な選択肢と言えます。特に、執行可能性を考慮すると、ニューヨーク条約加盟国を仲裁地とすることが望ましいですが、台湾の中華民國仲裁協會(CAA)も地域における実績と専門性から有力な選択肢となります。

 

4. 言葉の壁を越える:中国語繁体字契約書 翻訳の戦略と重要性

中国語繁体字契約書がどの言語で作成され、どの言語が正文となるかは、契約内容の正確な理解と将来的な解釈の齟齬を防ぐ上で非常に重要です。香港との違いとして、台湾ではビジネスシーンにおいても中国語繁体字が主要な言語として用いられ、契約書も繁体字で作成されることが一般的です。英語契約書だけで完全にリスクを回避できるとは限りません。

 

主要な言語パターンと中国語繁体字契約書 翻訳の役割

  1. 日本語と中国語繁体字(いずれか、または双方が正文)

    • 活用場面: 双方の母国語での詳細な理解を重視する場合に、中国語繁体字契約書または日本語契約書が用いられます。

    • 留意点: どちらかの言語(例:中国語繁体字版)を正文とし、もう一方(例:日本語版)を参考訳とすることが一般的です。両言語を正文とする場合は、解釈の齟齬が生じた際の優先順位(例:「中国語繁体字版が優先する」)を明確に定める「優先言語条項」を必ず盛り込む必要があります。中国語繁体字契約書 翻訳の品質が直接、法的リスクに直結します。台湾法の概念を正確に日本語で表現できるかが重要です。

  2. 英語を正文とし、日本語・中国語繁体字の参考訳を作成

    • 活用場面: 国際ビジネスで一般的なパターンであり、台湾との取引でも用いられます。英語が国際的な法的文書の標準語として広く認知されているため、専門家によるレビューもしやすく、将来的な国際訴訟や仲裁においても用いられます。

    • 留意点: 英語が唯一の正文となる場合でも、台湾側の当事者が中国語繁体字契約書の翻訳を求め、それを理解の基礎とするケースが多くあります。この中国語繁体字契約書 翻訳の質が低いと、誤解や紛争の原因となり得ます。特に、政府機関への提出書類や登記書類、労働関連の書類など、公式文書の一部で中国語繁体字での提出が義務付けられることがあります。

  3. 中国語繁体字のみを正文とする

    • 活用場面: 台湾国内での取引や、契約相手の交渉力が非常に強く、かつ英語での対応が難しい場合に採用されます。

    • 留意点: 当社は中国語繁体字の法的文書を完全に理解できる体制を構築する必要があります。

中国語繁体字の契約書が特に重要となる場面

台湾ではビジネスの主要言語として中国語繁体字が広く使われており、以下の状況では中国語繁体字の契約書が特に重要になります。

  1. 政府機関への提出書類や登記書類

    会社設立登記、投資申請、各種許認可申請など、台湾の政府機関や行政機関への公式提出書類は、原則として中国語繁体字で作成される必要があります。英語で締結した契約書であっても、これらの手続きのためには、公式な中国語繁体字翻訳(多くの場合、公証翻訳)が必須となるケースが非常に多いです。

  2.  

    公証(公證 / Gōngzhèng)を伴う契約

    台湾でも、不動産取引、会社設立時の定款、重要な金銭消費貸借契約など、公証人(公證人 / Gōngzhèngrén)による公証が義務付けられている契約が存在します。公証手続きでは、通常、中国語繁体字の正本が必須とされ、外国語の契約書であっても中国語繁体字訳の添付が求められます。

  3.  

    労働契約書

    勞動基準法に基づき、雇用契約書は原則として中国語繁体字で作成される必要があります。労働者の権利保護の観点から、その徹底が求められます。英語と併記することも可能ですが、解釈の相違が生じた場合は中国語繁体字版が優先されると考えられます。

  4.  

    消費者向け契約や規約

    消費者保護法に基づき、商品販売、サービス提供など、一般消費者を対象とした契約や利用規約は、消費者が理解しやすいよう中国語繁体字で提供されることが義務付けられています。

  5.  

    中小企業や個人との取引

    国際的な取引を行う大企業は英語に対応できる場合もありますが、台湾の中小企業や個人事業主、あるいは一般消費者の中には、英語での契約内容を完全に理解するのが難しいケースも少なくありません。誤解を防ぎ、円滑な関係を築くためには、中国語繁体字での契約書作成、または英語契約書への中国語繁体字訳の添付が極めて重要です。

  6.  

    紛争解決における現地の司法手続き

    万が一、契約を巡る紛争が台湾の裁判所で争われる場合、裁判の進行は原則として中国語繁体字で行われ、提出される証拠書類も中国語繁体字のものが求められます。英語で締結された契約書であっても、裁判所に提出するためには、正式な中国語繁体字への翻訳(多くの場合、公証翻訳)が不可欠となります。


これらの点から、台湾でのビジネス展開においては、英語契約書が主要であっても、特定の場面で中国
語繁体字の契約書、または公式な中国語繁体字訳
が不可欠であることを認識し、適切な言語戦略を立てることが重要です。香港とは異なり、台湾ではより中国語繁体字が契約の中心となることが多い点を理解しておく必要があります。

 

中国語繁体字契約書 翻訳における専門性

言語戦略の選択に関わらず、中国語繁体字契約書専門翻訳は極めて重要です。

  • 法的・専門用語の正確性: 台湾法に由来する法律用語は、中国本土で使われる簡体字の用語とは異なる場合があります。台湾法の概念と日本の法概念、そして英語の概念を理解し、台湾の法律や商慣習に合致した適切な用語選択と表現が必要です。

  • 文脈と言語のニュアンス: 中国語は、地域や文脈によって言葉のニュアンスが大きく変わることがあります。台湾で用いられる繁体字の表現や言い回しに精通している必要があります。

  • 書式と構造: 台湾の法律文書特有の表現や構成に精通している必要があります。

  • 各種規制への適合: 台湾民法、公司法、個人資料保護法、勞動基準法など、特定の規制への適合性を確認しながら翻訳を進める必要があります。特に、登記や許認可申請に必要な中国語繁体字での正式文書作成に対応できるかが重要です。

  • E-E-A-T原則に基づいた翻訳: 経験、専門知識、権威性、信頼性(E-E-A-T)を重視し、翻訳者も法務や金融分野での実務経験を持つプロフェッショナルが担当します。AI翻訳を効率化ツールとして活用しつつも、最終的なレビューと校正は、人間の専門家が徹底して行い、法的リスクを最小限に抑えます。

5. 具体的な「実践」:ケーススタディで見る中国語繁体字契約書の落とし穴と成功例

実際のビジネスシーンでは、どのような契約戦略が採られるのでしょうか。具体的なケーススタディを通して、準拠法、紛争解決、言語選択の重要性を深掘りします。

 

ケーススタディ1:台湾企業との技術ライセンス契約

  • 状況: 日本の精密機器メーカーA社が、台湾の電子部品メーカーB社に対し、特定の製造技術に関するライセンス契約(授權契約 / Shòuquán Qìyuē / License Agreement)を締結するケース。ライセンス範囲、ロイヤリティ、技術改良、知的財産権の保護、秘密保持、そして台湾民法、專利法、公平交易法が主要な論点。

  • 課題と検討ポイント:

    • 準拠法: 知的財産権の保護と契約の安定性を重視し、日本法を準拠法とすることで合意。ただし、契約の履行地が台湾であること、B社の事業活動が台湾国内で行われることを考慮し、台湾の強行法規に抵触しないよう慎重に条項を作成しました。

    • 紛争解決: 専門性と中立性を重視し、第三国であるシンガポールの国際仲裁センター(SIAC)での仲裁を選択。知的財産に関する紛争は専門的な知識を要するため、仲裁人の選定についても合意しました。

    • 言語: 契約交渉は英語で行われましたが、契約書の正文は英語としつつ、B社の理解促進のため、高品質な中国語繁体字契約書訳を添付。特に、技術の内容、知的財産権の範囲、ロイヤリティの計算方法など、重要な条項については、中国語繁体字での正確な表現に細心の注意を払いました。

  • 成功要因: 準拠法を日本法としつつも、履行地である台湾の法規制を考慮した点、紛争解決に国際仲裁を選択した点、そして相手方の理解を深めるために高品質な中国語繁体字契約書訳を提供した点が挙げられます。

ケーススタディ2:台湾企業との販売代理店契約

  • 状況: 日本の食品メーカーC社が、台湾の流通企業D社に対し、自社製品の台湾国内での販売を委託するための販売代理店契約(經銷合約 / Jīngxiāo Héyuē / Distribution Agreement)を締結するケース。独占販売権の範囲、販売目標、マーケティング協力、契約期間、解除条件、そして台湾民法、公平交易法が主要な論点。

  • 課題と検討ポイント:

    • 準拠法: 台湾国内での販売活動が中心となるため、台湾法を準拠法とすることで合意。ただし、C社は日本の法務部門が台湾法の内容を把握するため、台湾法に詳しい顧問弁護士のサポートを得ました。

    • 紛争解決: まずは友好的な協議による解決を原則とし、それでも解決しない場合は、台湾の裁判所を第一審の管轄裁判所とすることで合意。D社との長期的な関係構築を重視し、訴訟による対立はできる限り避けたいという意向がありました。

    • 言語: 契約書は中国語繁体字を正文とし、C社の内部確認のため、高品質な日本語訳を作成。販売地域、販売目標、解除条件など、重要な条項については、中国語繁体字での明確な表現を徹底しました。

  • 成功要因: 準拠法を台湾法とし、現地の法規制に則った契約とした点、紛争解決にまずは協議を優先する姿勢を示した点、そして契約書を中国語繁体字で作成することで、D社との信頼関係を構築した点が挙げられます。

6. よくある質問(FAQ):中国語繁体字契約書 翻訳に関する疑問を解消

日本企業のお客様からよくいただく、中国語繁体字契約書に関するご質問とその回答をまとめました。

  1.  


 

Q1: 台湾とのビジネスで、なぜ英語契約書だけでは不十分な場合が多いのですか?香港とは違うのでしょうか?

A1: 台湾では、中国語繁体字が公用語であり、政府機関への提出書類や登記書類、労働関連書類、消費者向け契約など、多くの公式文書が繁体字で作成・提出されることが義務付けられています。 香港も中国語繁体字を公用語としますが、イギリスの統治下にあった歴史的背景から英語も広く使われ、ビジネス契約においては英語が主流となることが多いです。しかし、台湾ではより中国語繁体字が契約書の主要な言語となる傾向が強く、英語契約書だけでは法的な手続きに対応できない場合や、相手方との意思疎通に齟齬が生じる可能性があります。

  1.  


 

Q2: 中国語繁体字契約書を正文とするメリット・デメリットは何ですか?

A2:

  • メリット: 台湾国内での法的実行力が最も高まります。現地の裁判所や行政機関が関与する際に、言語の障壁がなくスムーズです。相手方企業への敬意を示し、信頼関係を深めることにも繋がります。

  • デメリット: 当社は台湾の法律知識に加え、中国語繁体字の法的表現を正確に理解する必要があります。このため、専門性の高い中国語繁体字契約書 翻訳とリーガルチェックが不可欠となり、費用や時間がかかる場合があります。


 

Q3: 契約書の中国語繁体字翻訳は、どのような点に注意が必要ですか?

A3: 最も重要なのは、台湾の法律用語やビジネス慣習に合致した正確な翻訳です。中国本土で使われる簡体字の用語との混同を避け、台湾で一般的に用いられる表現を選ぶ必要があります。また、台湾の法制度(大陸法を基盤としつつ日本法の影響も受けている点)を理解した上で、法的概念を正確に翻訳することが重要です。

  1.  


 

Q4: 中国語繁体字契約書の翻訳を依頼する際のポイントは何ですか?

A4:

  1. 1. 台湾法務に強い翻訳者: 台湾の法律制度やビジネス慣習に精通した翻訳者を選ぶことが重要です。


  2. 2. 繁体字ネイティブチェック
    : 台湾で使用される繁体字のネイティブスピーカーによるチェックは必須です。


  3. 3. 翻訳実績
    : 法務関連の翻訳実績が豊富かどうかを確認しましょう。


  4. 4. 秘密保持契約
    : 機密情報を含む契約書の翻訳を依頼するため、秘密保持契約を締結できる翻訳会社を選びましょう。


  5. 5. リーガルチェック
    : 必要に応じて、台湾の弁護士によるリーガルチェックを依頼できるか確認しましょう。

  1.  


 

Q5: 台湾の強行法規で、特に注意すべきものは何ですか?

A5: 具体例としては、公平交易法(独占禁止、不公正な競争行為の規制)、勞動基準法(労働者の権利保護、解雇規制など)、個人資料保護法(個人情報の取り扱いに関する規制)、外國人投資條例(外国人投資に関する規制)などが挙げられます。これらの分野の契約では、台湾の強行法規に違反する条項は無効となる可能性があります。

  1.  


 

7. 日本と台湾の主要ビジネス分野と契約書の種類

日本と台湾は、半導体、電子部品、機械、化学、サービス業など、多岐にわたる分野で緊密な経済関係を築いています。これらの取引を円滑に進める上で、専門的な中国語繁体字契約書翻訳が不可欠となる主要な分野と、そこで頻繁に交わされる契約書の種類について解説します。

 

7.1. 日本と台湾で現在ビジネスが盛んな分野・業界・ジャンル

現在、日本と台湾で特に活発なビジネスが見られるのは以下の分野です。

  1. 1. 半導体・電子部品: 相互に重要なサプライチェーンを構成しており、設計・開発、製造、部材供給など幅広い協力関係があります。

  2.  
  3. 2. 精密機械・工作機械: 高度な技術を持つ日本企業と、それを活用する台湾企業間の取引が活発です。

  4.  
  5. 3. 化学・素材: 高機能材料、工業薬品などでの取引があります。

  6.  
  7. 4. 再生可能エネルギー: 太陽光発電、風力発電など、環境エネルギー分野での協力が進んでいます。

  8.  
  9. 5. サービス業: 観光、飲食、教育、コンサルティングなど、様々な分野で日本企業の進出が見られます。

  10.  
  11. 6. IT・ソフトウェア: ソフトウェア開発、クラウドサービス、AI関連技術などでの協業が進んでいます。

 

7.2. 翻訳が必要となる可能性が高い主要な契約書の種類

上記の活発なビジネス分野を踏まえると、以下のような契約書が中国語繁体字への翻訳、または中国語繁体字からの翻訳を頻繁に必要とします。これらの契約書は、台湾の法規制や商習慣を考慮した専門的な翻訳が求められます。

  1. 1. 合弁事業契約書 (合資經營契約 / Hézī Jīngyíng Qìyuē / Joint Venture Agreement): 新たな事業体を共同で設立・運営する場合に必要です。公司法との関連が重要です。

  2.  
  3. 2. 公司章程(公司章程 / Gōngsī Zhāngchéng / Articles of Incorporation): 会社の設立時に必須となる書類で、公証や登記が必要です。

  4.  
  5. 3. 技術移転契約書 (技術移轉契約 / Jìshù Yízhuǎn Qìyuē / Technology Transfer Agreement): 技術やノウハウの供与に関する規定。專利法や營業秘密保護法との関連が重要です。

  6.  
  7. 4. ライセンス契約書 (授權契約 / Shòuquán Qìyuē / License Agreement): 知的財産権の利用許諾に関する規定。

  8.  
  9. 5. 販売代理店契約書 (經銷合約 / Jīngxiāo Héyuē / Distribution/Agency Agreement): 製品・サービスの販売を台湾の代理店に委託する際に必要です。公平交易法に注意が必要です。

  10.  
  11. 6. 製造委託契約書 (委託製造契約 / Wěituō Zhìzào Qìyuē / Manufacturing Agreement): 製品の製造を台湾企業に委託する際に必要です。

  12.  
  13. 7. 秘密保持契約書 (保密合約 / Bǎomì Héyuē / Confidentiality Agreement / NDA): 交渉や共同開発の初期段階で情報共有を行う際に不可欠です。

  14.  
  15. 8. 雇用契約書 (勞動契約 / Láodòng Qìyuē / Employment Contract): 台湾で従業員を雇用する際に必須です。勞動基準法に基づく規定が重要です。

  16.  
  17. 9. 不動産賃貸借契約書 (不動產租賃契約 / Búdòngchǎn Zūlìn Qìyuē / Property Lease Agreement): オフィス、工場、店舗などの賃貸借に必要です。

  18.  
  19. 10. 投資契約書 (投資契約 / Tóuzī Qìyuē / Investment Agreement): 株式取得や事業への投資に関する契約。外國人投資條例との関連も重要です。

まとめ

台湾企業とのビジネスにおいては、香港とは異なり、中国語繁体字契約書が非常に重要な役割を果たします。「英語でも大丈夫だろう」という安易な考えは避け、台湾の法制度、商習慣、そして繁体字契約書の重要性を正しく理解することが、ビジネス成功の鍵となります。特に、政府機関との手続き、公証が必要な契約、労働契約、消費者向け契約などにおいては、中国語繁体字の契約書または翻訳が必須となることを覚えておく必要があります。

文化や法制度が異なる海外企業との取引においては、契約書のわずかな文言の解釈の違いが、将来的に大きな法的・財務的リスクへと発展する可能性があります。そのため、国際契約に精通した弁護士のアドバイスを受けるとともに、台湾の法律やビジネス慣習を深く理解し、法的・ビジネス的なニュアンスを正確に翻訳できる専門の翻訳者のサポートが不可欠です。

長年にわたる国際契約書翻訳の経験と、日本、台湾、英語圏の法務・ビジネスに関する深い知見を活かし、当社のグローバルビジネスを法的な側面から強力にサポートいたします。あらゆる種類の中国語繁体字契約書について、貴社のニーズに応じた最適な翻訳サービスを提供し、グローバルな取引を安全かつ円滑に進めるお手伝いをさせていただきます。

中国語繁体字契約書に関して、ご不明な点や具体的なご相談がございましたら、どうぞお気軽にお問い合わせください。

 

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これらの課題の解決策をお教えします。

翻訳発注に失敗しないためには、知らないではすまされない重要なポイント!

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契約書翻訳に役立つリンク集

法務省大臣官房司法法制部「法令翻訳の手引き」(PDF)
日本法令外国語訳推進会議「法令用語日英標準対訳辞書」(PDF)
Publiclegal(英文契約書のテンプレートや書式を無料で提供)
日本法令外国語訳データベースシステム(法務省が開設した日本の法令の英訳サイト)
weblio 英和辞典・和英辞典
英辞郎 on the web

 

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