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Jul. 10, 2025

事業譲渡契約書 翻訳:グローバルな事業再編と成長戦略を確実に推進するために

 

今日のめまぐるしく変化するグローバルビジネス環境において、企業は成長戦略の一環として、あるいは経営効率化や事業再編のために、特定の事業部門や一部の資産を売却・譲渡するケースが増えています。このような取引の中心となるのが事業譲渡契約書(Business Transfer Agreement / Asset Purchase Agreement)です。

この契約書は、譲渡される事業の範囲、資産・負債の特定、対価、そして譲渡後の当事者間の権利義務関係を詳細に定義する、極めて重要な法的文書です。

その正確な翻訳は、関係者間の認識齟齬を防ぎ、事業譲渡の法的有効性を確保し、将来の紛争リスクを最小限に抑えるために不可欠です。翻訳のミスや内容の理解不足は、譲渡の無効、予期せぬ債務の承継、税務上の問題、そして企業の信用失墜へと発展する重大なリスクをはらんでいます。

特に、国際的な事業譲渡においては、各国で異なる会社法、税法、競争法、労働法、そして商慣習などが複雑に絡み合います。単に言葉を置き換えるだけでなく、それぞれの法制度やビジネス上のニュアンスを踏まえた上で内容を理解し、翻訳することが不可欠です。

当社は、これまでの経験に基づき、事業譲渡契約書翻訳における重要なポイントと、貴社の各部門がどのように翻訳された契約書を活用し、関与していくべきかを具体的なケーススタディを交えて解説します。

貴社のグローバルな事業再編や成長戦略において、事業譲渡契約書の適切な理解と運用を通じて、円滑かつ確実な事業承継を実現するために、ぜひ本記事をお役立てください。

 

事業譲渡契約書とは何か?その目的と国際ビジネスにおける重要性

事業譲渡契約書(Business Transfer Agreement / Asset Purchase Agreement)は、企業がある特定の事業部門、またはそれに付随する資産・負債・契約・人材などを包括的に別の企業に譲渡することを合意する文書です。株式譲渡によるM&Aとは異なり、個別の資産や負債を選別して譲渡できる点が特徴です。

国際ビジネス環境において、この事業譲渡契約書は以下のような多岐にわたる場面で利用されます。

  • 事業ポートフォリオの最適化: 収益性の低い事業部門を売却し、成長分野にリソースを集中させる。

  • 非中核事業の売却: 本業と関連性の低い事業を売却し、経営資源を効率化する。

  • 市場からの撤退: 特定の国や地域での事業から撤退する際に、既存の事業を他社に譲渡する。

  • 特定技術・ノウハウの取得: 買い手企業が特定の技術、顧客基盤、ブランドなどを迅速に獲得する。

  • 事業再生・再編: 経営不振の事業を切り離したり、複数の事業を統合したりする。

事業譲渡契約書は、主に以下の重要な要素を含みます。

  • 当事者(Parties): 事業の譲渡人(Seller / Transferor)と譲受人(Buyer / Transferee)。

  • 譲渡対象事業の特定(Identification of the Transferred Business): 譲渡される事業の具体的な範囲、事業名称、関連する製品・サービス、顧客、サプライヤーなど。

  • 譲渡対象資産の特定(Transferred Assets): 譲渡される有形資産(工場、設備、在庫など)および無形資産(知的財産権、顧客リスト、ブランド、許認可など)。これらは通常、詳細な別添(Schedule)でリストアップされます。

  • 承継される負債の特定(Assumed Liabilities): 譲受人が引き継ぐ負債の範囲と種類(特定の債務、契約上の義務など)。引き継がれない負債(Excluded Liabilities)も明記されます。

  • 譲渡対価(Consideration): 事業譲渡の対価(金銭、株式など)、支払い方法、支払いスケジュール、アーンアウト(将来の業績連動報酬)などの条件。

  • 表明保証(Representations and Warranties): 譲渡対象事業、資産、負債、契約、許認可、財務状況、訴訟の有無などに関する譲渡人の保証。譲受人も自社の権限などについて表明保証を行います。

  • コベナンツ(Covenants): クロージングまでの両当事者の義務(事業運営の維持、競業避止義務、秘密保持義務、従業員の引継ぎ、債権者・債務者への通知協力など)。

  • 前提条件(Conditions Precedent): 取引実行(クロージング)のための条件(例:許認可の取得、株主総会の承認、第三者同意の取得、重要契約の譲渡同意など)。

  • クロージング(Closing): 譲渡実行の手続き、日付、場所。

  • 補償(Indemnification): 表明保証違反や特定の事由により生じた損害に対する補償義務。

  • 準拠法(Governing Law): 契約書の解釈と法的効力に適用される法律。

  • 紛争解決(Dispute Resolution): 契約書に関する紛争が発生した場合の解決方法(協議、調停、仲裁、裁判など)。

国際ビジネスにおける事業譲渡契約書の重要性は、以下の理由から非常に高いです。

  • 事業戦略の柔軟性: 企業がグローバルな市場環境の変化に迅速に対応し、事業ポートフォリオを戦略的に再編する上で不可欠です。

  • リスクの選別: 不要な資産や負債を引き継ぐことなく、譲受人にとって必要な事業部分だけを獲得できるため、リスクをコントロールしやすいという利点があります。

  • シナジー効果の追求: 買い手企業は、特定の事業を獲得することで、既存事業とのシナジー効果を追求し、競争力を強化できます。

  • 法的確実性の確保: 国境を越えた複雑な取引において、譲渡の範囲、資産・負債の帰属、当事者の権利義務を明確にすることで、法的紛争を回避します。

  • 税務・会計処理の明確化: 取引の法的構成を明確にすることで、各国での税務処理や会計処理を適切に行うための基礎となります。

英文事業譲渡契約書(Asset Purchase Agreement)の特徴と和文契約書との違い

国際的な事業譲渡取引では、多くの場合、英文で事業譲渡契約書(Asset Purchase Agreement)が作成されます。その特徴は、日本の和文契約書とは異なる点がいくつかあります。

  • "Asset Purchase" vs. "Stock Purchase" の明確な区別: 英文契約では、「Asset Purchase(資産購入)」と「Stock Purchase(株式購入)」を明確に区別します。事業譲渡契約書は「Asset Purchase Agreement」と呼ばれることが多く、これは個別の資産・負債を選別して譲渡する取引であることを示します。これにより、譲受人が不要な負債や偶発債務を引き継ぐリスクを軽減できます。

  • Precise Identification of Transferred Assets and Assumed Liabilities(譲渡資産と承継負債の厳密な特定): 譲渡される資産(例:特定の設備、在庫、顧客リスト、知的財産権)と承継される負債(例:特定の仕入債務、リース債務)は、詳細なSchedule(別添)で網羅的にリストアップされます。同時に、Excluded Assets(除外資産)とExcluded Liabilities(除外負債)も明確に定義されることが一般的です。これは、譲受人が引き受ける範囲を明確にし、予期せぬリスクを避けるために極めて重要です。和文契約書でも行われますが、その詳細さと網羅性がさらに強調されます。

  • Extensive Representations and Warranties (広範な表明保証): 譲渡対象事業、資産、負債、契約、許認可、財務状況、税務、環境、労働関係、訴訟の有無など、多岐にわたる項目について、譲渡人が行う表明保証の範囲が非常に詳細かつ厳密に記述されます。違反時の補償義務(Indemnification)と合わせて、譲受人のリスク保護の重要なメカニズムとなります。

  • Detailed Covenants (詳細な誓約事項): クロージング(譲渡実行)までの期間における譲渡人の事業運営に関する義務(例:通常の営業の維持、重要顧客との関係維持、経営陣の変更禁止)や、両当事者のクロージング義務(例:第三者同意の取得、許認可の取得、通知義務、秘密保持義務、競業避止義務)が具体的に列挙されます。

  • Conditions Precedent (前提条件) の厳密性: クロージングに至るための前提条件が非常に詳細に記述されます。これには、関連許認可の取得、第三者(債権者、顧客、サプライヤーなど)からの同意の取得、特定の契約の譲渡合意、表明保証の真実性、コベナンツの遵守などが含まれます。これらの条件が満たされない場合、取引は実行されません。

  • Indemnification (補償) 条項の明確化: 表明保証違反、コベナンツ違反、または譲渡対象外の負債(Excluded Liabilities)に関連して生じた損害に対する補償義務が詳細に規定されます。補償の範囲、期間、上限額、手続きなどが厳密に定められ、買収後のリスクを明確化します。

  • Governing Law and Dispute Resolution (準拠法と紛争解決) の厳密な選択: 契約自体の準拠法(例:デラウェア州法、英国法)と、紛争解決のメカニズム(例:国際仲裁機関(ICC, AAA, LCIAなど)による仲裁、特定の国の裁判所管轄)が明確に指定されます。これは、国際的な事業譲渡における法的確実性を確保するために極めて重要です。

  • Due Diligence (デューデリジェンス) に関する条項: 譲受人がデューデリジェンスを実施した事実と、その結果に基づいて取引を実行する旨が記載されることもあります。

日本の和文事業譲渡契約書に比べ、英文Asset Purchase Agreementは、譲渡対象範囲の厳密な特定(除外項目を含む)、表明保証と誓約事項の広範かつ詳細な記述、前提条件の明確な設定、補償条項の充実、そして各国の法制度を踏まえた準拠法・紛争解決の厳密な選択に関して、より厳密かつ戦略的な記述が求められる傾向が強いです。翻訳においては、これらの法的・商業的なニュアンスを正確に反映した表現を用いることが不可欠です。

 

事業譲渡契約書(Business Transfer Agreement)翻訳における重要ポイント

事業譲渡契約書(Business Transfer Agreement)の翻訳は、貴社のグローバルな事業再編、M&A、および成長戦略に直接影響するため、極めて高い精度と専門性、そして法務、財務、事業、人事、税務といった多様な部門の連携と視点が求められます。以下のポイントを押さえることが、成功への鍵となります。

譲渡対象事業および資産・負債の正確かつ網羅的な特定

  1. 譲渡される事業の具体的な範囲、関連する有形・無形資産(知的財産権、顧客リスト、許認可など)、そして承継される負債が、詳細な別添(Schedule)を含め、漏れなく正確に翻訳されているかを確認することが不可欠です。同時に、譲渡対象外の資産・負債(Excluded Assets/Liabilities)の記載も極めて重要です。この特定が曖昧だと、将来の紛争や予期せぬリスク承継につながります。

    表明保証(Representations and Warranties)条項の厳密な翻訳

    譲渡対象事業の財務状況、法的遵守状況(コンプライアンス)、訴訟の有無、環境問題、労働問題、知的財産権の有効性など、譲渡人が行う多岐にわたる保証の内容を、一言一句正確に翻訳することが不可欠です。これらの表明保証違反は、譲渡人が多額の補償責任を負う原因となるため、その範囲を正確に理解できるよう訳します。

    前提条件(Conditions Precedent)条項の明確な翻訳

    取引実行(クロージング)のために満たされるべき条件(例:許認可の取得、第三者同意の取得、株主総会の承認など)を、期限や責任分担を含めて明確に翻訳することが不可欠です。これらの条件が満たされない場合、取引が実行されない可能性があるため、その意味合いを正確に把握できることが重要です。

    補償(Indemnification)条項の正確な翻訳

    表明保証違反、特定のリスク事由、または譲渡対象外負債に関連して発生する可能性のある損害に対する補償の範囲、期間、上限額、および手続きを正確に翻訳することが不可欠です。これは、買収後のリスクマネジメントにおいて極めて重要な条項です。

    労働者承継に関する条項の厳密な翻訳

    譲渡対象事業に従事する従業員の引継ぎに関する条件(雇用契約の承継、労働条件、退職金、年金、組合との合意など)は、各国法(労働法)によって大きく異なります。これらの条項を、現地の法規制に照らして正確に翻訳し、人事部門が適切に対応できるよう、当社はこれを強く認識しています。

    競業避止義務(Non-Compete)および秘密保持義務(Confidentiality)条項の厳格な翻訳

    譲渡人に対する競業避止義務の期間、地域、事業範囲、および秘密保持義務の対象範囲を正確に翻訳することが不可欠です。これらは、譲渡後の事業価値保護に直結します。

    準拠法(Governing Law)と紛争解決(Dispute Resolution)の正確な指定

    契約書自体の準拠法と、紛争解決の手段(裁判、国際仲裁など)、裁判管轄、仲裁地などを正確に翻訳することが不可欠です。これは、国際的な事業譲渡における法的確実性を確保するために極めて重要です。

    強固な情報セキュリティ体制

    事業譲渡契約書には、企業の財務情報、顧客情報、技術情報、人事情報など、極めて機密性の高い情報が含まれます。これらの情報が外部に漏洩した場合、企業の法的責任問題、信用失墜、ビジネス上の損害など、甚大な影響を被る可能性があります。そのため、翻訳を依頼する際には、翻訳会社が厳格な情報セキュリティポリシーを定め、技術的・物理的・人的な対策を徹底しているかを必ず確認すべきですし、当社はこれを徹底しています。

    AI翻訳の適切な活用と専門家による最終確認

    AI翻訳技術は、初稿の作成や定型表現の翻訳に役立ち、翻訳プロセスを効率化できますが、事業譲渡契約書のような法的拘束力、複雑な法務・税務・労働法上のニュアンス、各国法制度の違いが極めて重要な文書においては、その複雑な意味合いを完全に理解することは困難です。AIを効率化ツールとして最大限活用しつつも、国際契約法務、財務、税務、労働法、当該ビジネス分野の専門知識を持つ専門の翻訳者による徹底したレビューと校正が不可欠です。人間による精査が、潜在的なリスクを最小限に抑え、グローバル取引の法的確実性を確保します。

事業譲渡契約書翻訳は誰に必要なのか?ケーススタディで見る関係部門の役割

事業譲渡契約書は、企業の経営戦略、財務、法務、人事、税務に深く関わる文書であり、多岐にわたる部門や関係者がその内容を理解し、翻訳された情報に基づいて連携することが不可欠です。

 

ケーススタディ1:日本企業が欧州の子会社事業を現地企業に譲渡

 

状況: 日本のIT企業A社が、経営効率化のため、ドイツに持つAI開発子会社B社の事業(特定の顧客契約、開発チーム、知的財産権を含む)を、ドイツの競合企業C社に譲渡する。ドイツ語で事業譲渡契約書(Asset Purchase Agreement)を締結。この契約書を、日本のA社本社関係者(法務部、経営企画部、財務部、人事部、税務部)向けに日本語に翻訳する必要がある。

  • 法務部: 必要性: 譲渡対象事業・資産・負債の範囲が正確に定義され、法的に問題なく譲渡されるか、表明保証の内容とそのリスク、ドイツ法における事業譲渡の法的要件(例:顧客契約の承継における同意の要否)、前提条件の充足状況、補償条項の範囲を詳細に確認します。将来の法務リスクを排除し、コンプライアンスを確保します。 ケース: 翻訳された契約書に記載された「譲渡される特定の顧客契約リストと、その契約承継に必要な第三者同意の取得状況」、「B社の知的財産権(特許、ノウハウ)がC社に完全に移転する旨」、「クロージングまでのB社の事業運営に関するコベナンツ」、「表明保証違反時の補償責任の範囲と期間」を和訳で確認し、法的リスクとコンプライアンスを評価します。

  • 経営企画部: 必要性: 事業譲渡の戦略的意義、譲渡対象事業の評価、今後のポートフォリオ戦略、そして譲渡後のA社の事業展開への影響を評価します。C社との長期的な関係構築や、譲渡対価が戦略目標に合致しているかを確認します。 ケース: 翻訳された契約書に記載された「譲渡対価の算定根拠と支払いスケジュール」、「譲渡後のA社の残存事業とB社事業の分離・統合プロセス」、「C社との協力関係の可能性」を和訳で確認し、企業戦略への影響と今後の計画を評価します。

  • 財務部/税務部: 必要性: 譲渡対価の金額、支払い方法、そしてそれに伴う財務・税務上の影響(譲渡益の計上、VAT/消費税、法人税、譲渡後のキャッシュフローなど)を正確に理解します。各国税法の適用関係を把握し、最適な税務処理を計画します。 ケース: 翻訳された契約書に記載された「譲渡対価の最終確定方法(例:売上連動型アーンアウト)」、「譲渡に関連する費用負担(例:弁護士費用、税金)」、「ドイツにおける事業譲渡の税務上の取り扱いと、日本のA社における税務上の影響」を和訳で確認し、財務計画と税務コンプライアンスを評価します。

  • 人事部: 必要性: ドイツの労働法に基づき、譲渡対象事業に従事する従業員の雇用契約、退職金、年金、社会保障、労働組合との関係などがC社に適切に承継されるか、また、A社に残る従業員への影響はないかを確認します。 ケース: 翻訳された契約書に記載された「譲渡対象従業員のリストと、雇用条件の承継に関する詳細な規定」、「従業員への通知義務と、その履行状況」、「ドイツ労働法におけるTUPE(Transfer of Undertakings (Protection of Employment) Regulations)のような従業員保護規定の適用有無」を和訳で確認し、人事管理と労働法遵守を評価します。


 

ケーススタディ2:米国企業がアジアの製造事業を現地企業から譲り受ける

 

状況: 米国の多国籍企業D社が、ベトナムの製造業E社から、特定の製品ラインの製造事業(工場設備、生産ノウハウ、既存のサプライヤー契約を含む)を譲り受ける。ベトナム語で事業譲渡契約書(Business Transfer Agreement)を締結。この契約書を、米国のD社本社関係者(法務部、サプライチェーン部、経営層)向けに英語に翻訳する必要がある。

  • 法務部(米国側): 必要性: ベトナム法における事業譲渡の法的有効性、工場設備の所有権移転手続き、知的財産権の承継、サプライヤー契約の第三者同意の取得状況、およびベトナム法と米国法の抵触回避策、紛争解決条項の適切性を詳細に確認します。現地の法務リスクを理解し、国際的な事業買収スキームを構築します。 ケース: 翻訳された契約書に記載された「譲渡される工場設備リストと、その登記・移転手続きに関する規定」、「E社が保有する生産ノウハウの開示と譲渡に関する条項」、「主要サプライヤー契約の承継に必要な同意取得状況」、「ベトナムの法律が準拠法であり、シンガポール国際仲裁センター(SIAC)を紛争解決の管轄とする条項」を英訳で確認し、法的リスクとコンプライアンスを評価します。

  • サプライチェーン部/生産部: 必要性: 譲受対象の工場設備の現状と稼働状況、生産ノウハウの引継ぎ方法、既存サプライヤーとの関係維持、そしてベトナムにおける生産拠点としての将来的な適合性を評価します。譲渡後のスムーズな生産体制移行とサプライチェーンの安定化に責任を持ちます。 ケース: 翻訳された契約書に記載された「工場設備の現況に関する表明保証と、引き渡し時の状態に関する規定」、「生産ノウハウに関するトレーニングや情報共有の義務」、「既存サプライヤー契約の条件と、D社との新たな契約締結のスケジュール」を英訳で確認し、生産・サプライチェーン管理を評価します。

  • 経営層(米国側): 必要性: 今回の事業譲受が、D社のグローバル製造戦略、市場シェア拡大、コスト競争力強化にどのように貢献するかを評価します。ベトナム市場への進出戦略と、買収後の事業統合計画に役立てます。 ケース: 翻訳された契約書に記載された「本事業譲渡がD社の特定製品ラインの生産能力を拡大する旨」、「ベトナム市場におけるD社のプレゼンス強化」、「譲渡後の事業統合計画と、それに伴う初期費用および期待されるシナジー効果」を英訳で確認し、企業統治と戦略への影響を評価します。

よくある質問(FAQ)

事業譲渡契約書(Business Transfer Agreement)の翻訳に関して、お客様からよくいただくご質問とその回答をまとめました。

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Q1: 事業譲渡契約書において「譲渡対象事業および資産・負債の特定」で最も注意すべき点は何ですか?

A1: 譲渡対象の範囲は、事業譲渡契約書の最も重要な要素であり、将来の紛争を防ぐために極めて詳細かつ明確に特定される必要があります。

  • 網羅性と具体性: 単に「〇〇事業」と記載するだけでなく、その事業に関連する全ての資産(有形・無形)と負債を漏れなくリストアップし、具体的に記述することが不可欠です。例えば、工場であればその土地・建物・設備、在庫、顧客リスト、従業員、特定のサプライヤー契約、知的財産権(特許、商標、ノウハウ)、許認可、ソフトウェアライセンス、ウェブサイト、ドメイン名などが考えられます。

  • 別添(Schedule / Annex)の活用: 譲渡対象が多岐にわたる場合は、契約書本文で包括的な譲渡意思を表明し、詳細なリストを別添として添付するのが一般的です。この別添も、翻訳の対象であり、個々の品目、番号、金額、契約名などに誤記がないよう、細心の注意を払う必要があります。

  • 除外項目(Excluded Assets / Liabilities)の明確化: 譲受人が引き継がない資産や負債についても、明確にリストアップし、その範囲を限定することが非常に重要です。これにより、譲受人が意図しない債務を負うリスクを回避します。

翻訳においては、これらの特定要件をターゲット言語の法的要件に合致する形で、厳密かつ正確に表現することが不可欠です。

  1.  


 

Q2: 「表明保証(Representations and Warranties)」条項の翻訳で特に注意すべきことは何ですか?

A2: 表明保証は、譲渡対象事業の現状に関する譲渡人の保証であり、取引実行後のリスク配分を決定づける重要な条項です。

  • 広範な対象: 事業譲渡では、財務、税務、環境、労働、知的財産、訴訟、契約関係など、非常に広範な領域に関する表明保証が含まれます。それぞれの専門用語や法的概念を正確に翻訳することが求められます。

  • 「Material」などの修飾語: 「Material Adverse Effect(重大な悪影響)」「to the best of Seller's knowledge(譲渡人の知る限り)」といった修飾語は、表明保証の範囲や責任の限定に関わるため、その意味合いを正確に訳出する必要があります。

  • 違反時の補償: 表明保証が真実でなかった場合の補償(Indemnification)条項と密接に連携しています。表明保証の翻訳が不正確だと、将来の補償請求の根拠が揺らぎ、紛争につながる可能性があります。

翻訳者は、単に言葉を置き換えるだけでなく、その表明保証が持つ法的・商業的な意味合いとリスクを理解した上で、最も適切な表現を選択する必要があります。

  1.  


 

Q3: 事業譲渡契約書(Business Transfer Agreement)の翻訳を依頼する際、どのような情報を提供すれば、より良い翻訳が得られますか?

A3: より高品質な事業譲渡契約書翻訳のために、以下の情報を提供いただけると非常に役立ちます。

  • 取引の背景と目的: なぜこの事業譲渡を行うのか(事業再編、売却、買収など)を理解することで、翻訳者は文書の文脈とニュアンスをより正確に捉えられます。

  • 譲渡対象事業の詳細: 譲渡される事業の内容、主要な製品・サービス、顧客層、関連する拠点など、事業そのものの詳細な情報があれば、翻訳の精度が向上します。

  • 譲渡対象資産・負債の具体的内容: 譲渡される各資産(例:工場設備、知的財産権、ソフトウェア、顧客リスト)や承継される各負債(例:特定のローン、未払金)の詳細情報(シリアル番号、金額、関連契約書など)があれば、正確な特定に役立ちます。

  • 関与する当事者の情報: 譲渡人、譲受人の企業名、事業内容、国籍、関係性などを知ることで、適切な固有名詞の使用や、ビジネス上の意味合いを理解する手助けになります。

  • 関連する契約や文書: 譲渡対象の顧客契約、サプライヤー契約、知的財産関連契約、既存のローン契約などがあれば、用語の一貫性を保ち、法的な背景を深く理解するのに役立ちます。

  • 特定の専門用語集: 業界固有の技術用語、法務用語、会計用語、社内略語など、事前に用語集があれば、翻訳の一貫性と正確性が向上します。

  • 翻訳の目的: 内部承認用なのか、相手方への提示用なのか、あるいは公証や登記が必要なのかなど、翻訳の最終的な用途を伝えることで、翻訳のスタイルやレベルを調整できます。


 

Q4: AI翻訳を事業譲渡契約書(Business Transfer Agreement)の翻訳に活用する際の注意点は何ですか?

A4: AI翻訳は、初稿の作成や定型表現の翻訳に非常に役立ち、翻訳プロセスを効率化できますが、事業譲渡契約書のような法的拘束力、複雑な法務・税務・労働法上のニュアンス、各国法制度の違いが極めて重要な文書に単独で使用することは強く推奨されません。

  • 法的表現の正確性: AIは、譲渡対象の特定、表明保証の範囲、補償条項、前提条件といった法的概念の微妙なニュアンスや、それらが持つ法的効力を完全に理解し、正確に表現できないリスクがあります。これが最も致命的な誤訳につながる可能性があります。

  • 多岐にわたる専門用語: 法律、財務、会計、税務、人事、知的財産、特定の業界技術など、非常に多岐にわたる専門分野の用語をAIが常に正確に翻訳できるとは限りません。

  • 文脈と意図の欠落: 事業譲渡の背景にある具体的なビジネス上の目的、当事者間の交渉の経緯、微妙な力関係といった繊細な文脈をAIが正確に把握できるとは限りません。

  • 秘密保持とセキュリティ: 事業譲渡契約書には極めて機密性の高い企業戦略、財務情報、顧客情報、人事情報などが含まれるため、AI翻訳サービスへのアップロード方法や、データの取り扱いに関するセキュリティ体制を慎重に確認する必要があります。

したがって、AI翻訳を効率化ツールとして最大限活用しつつも、必ず国際契約法務、財務、税務、労働法、当該ビジネス分野の専門知識を持つ専門の翻訳者による徹底したレビューと校正を行うことが不可欠です。当社は、AIと専門家の人力翻訳を組み合わせることで、高品質かつ効率的な翻訳を提供しています。

 

まとめ

事業譲渡契約書(Business Transfer Agreement)の翻訳は、単なる言語の変換に留まらず、企業がグローバルなM&A、事業譲渡、事業再編を円滑に進める上で、リスクを正確に管理し、法的確実性を確保するための極めて重要なプロセスです。

英文と和文の事業譲渡契約書が持つそれぞれの特徴を深く理解し、法務、財務、事業、人事、税務といった各部門が連携しながら、専門知識を持つ翻訳者の力を借りることが不可欠ですし、これまでの経験から当社はこれを強く認識しています。

特に、譲渡対象事業および資産・負債の正確かつ網羅的な特定、表明保証条項の厳密な翻訳、前提条件条項の明確な翻訳、労働者承継に関する条項の厳密な翻訳、そして強固な情報セキュリティ体制といったポイントは、潜在的なリスクを最小限に抑え、グローバルな事業再編と成長戦略を確実に推進するための鍵となります。

当社は、このような複雑な事業譲渡契約書(Business Transfer Agreement)の翻訳において、貴社の各部門のニーズを理解し、最高品質の翻訳とサポートを提供することをお約束します。貴社の海外ビジネスにおける事業譲渡契約書に関してご不明な点やご相談がありましたら、ぜひお気軽にお問い合わせください。

契約書の翻訳-1WIPジャパンは、東京弁護士共同組合神奈川県弁護士共同組合をはじめとする全国23の弁護士共同組合の特約店に認定されています。
ご相談は無料です。いつでもお気軽にご連絡ください。

 

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契約書翻訳に役立つリンク集

法務省大臣官房司法法制部「法令翻訳の手引き」(PDF)
日本法令外国語訳推進会議「法令用語日英標準対訳辞書」(PDF)
Publiclegal(英文契約書のテンプレートや書式を無料で提供)
日本法令外国語訳データベースシステム(法務省が開設した日本の法令の英訳サイト)
weblio 英和辞典・和英辞典
英辞郎 on the web

 

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