その3:その他
企業が海外人材や外国語人材を採用する方法として、前々回で派遣受け入れについて、前回で直接雇用について説明しました。今回は、その他の方法として、現地社員の企業内異動と技能実習制度活用の2つを採り上げます。
現地社員の企業内異動:
多くの国際的な企業が採用する方法として、現地の拠点や子会社からの社員異動が考えられます。これには、現地の文化やビジネス習慣に詳しい社員を母国のオフィスに持ち込むメリットがあります。逆に、母国の社員を現地の拠点へ異動させることで、現地の市場や顧客への理解を深めることができます。しかし、異動する社員の言語能力や異文化適応力を考慮する必要があります。
企業が現地の子会社や関連会社からの社員を日本に招聘する場合の在留資格取得における要件は以下の通りです。
- 1. 関係性: 「親会社」、「子会社」、もしくは「関連会社」間での出向も該当します。
- 2. 勤務経験: 候補者は、直前の1年間を現地企業で勤務していることが必要です。
3. 学歴: 特定の学歴要件は求められません。
- 4. 給与: 支払いについては、日本側での支給でも、現地側での支給でも問題ありません。
対象職種:
主な分野:人文知識・国際業務、技術分野など。
具体的な職種:「通訳・翻訳」、「貿易業務」、「技術開発」など、高度な専門知識や技術を必要とする職種が該当します。
例:機械工学の専門家、通訳、デザインの専門家、企業向けの語学教師、マーケティングの専門家などが考えられます。
これらの要件を満たすことで、企業は現地の子会社や関連会社の社員を日本に招聘し、効果的に組織の多様性やビジネスの拡大を進めることができるでしょう。
技能実習制度の活用:
この制度は、日本の技術や知識を海外に移転することを目的としており、一定の期間、実習生として日本の企業で働くことができます。技能実習生は、特定の業種や職種に従事することができ、企業にとっては人手不足の解消や低コストでの採用が可能となります。
しかし、技能実習制度には批判の声も上がっており、実習生の待遇や権利を保護するための適切な対策が求められています。
技能実習制度を利用する際の条件を以下に整理します。
- 1. 送り出し側の条件
・現地の送り出し団体が必要となります。
・実習生の条件:
- 単純作業でない技能の習得を目指している。
- 18歳以上で、帰国後に日本で学んだ技能を用いた業務につく計画がある。
- 母国での技能習得が難しい。
- 本国の公的団体からの推薦を受けている。
- 日本での技能実習と同種の経験がある。
- 送り出し団体や監理団体から保証金を取られない。また、違約金に関する契約を結んでいない。
- 2. 日本側の条件
・監理団体が必要です。
・JITCO(国際人材揚力機構)による認可・承認が必要です。
・営利目的は認められません。
・監理団体が技能実習の適正性を確認し、指導します。
・監理団体として認められる組織
‐ 商工会議所、商工会‐ 中小企業団体
‐ 職業訓練法人
‐ 農業や漁業協同組合
‐ 公益社団法人、公益財団法人
‐ 法務大臣の告示に基づく団体
・監理団体の要件:
‐ 公的な援助や指導を受けての運営‐ 3ヶ月に1回以上の監査を実施
‐ 技能実習生への相談体制の確立
‐ 適正な技能実習計画の作成
‐ 実習中の月1回以上の訪問指導
‐ 入国後の講習実施
‐ 他にも監理費用の透明性や帰国旅費、宿舎の確保など
・実習生受入れ企業の条件
‐ 技能実習指導員や生活指導員の配置‐ 技能実習日誌の作成・保存
‐ 技能実習生への報酬が日本人と同等以上
‐ 他にも宿舎の確保や労働保険などの措置。
以上が技能実習制度の利用条件になります。
まとめ
海外人材や外国語人材の採用方法として、派遣、直接雇用に続き、現地社員の企業内異動や技能実習制度の活用は有効な選択肢と言えるでしょう。しかし、これらの方法を採用する際には、以下の点を慎重に考慮する必要があります。
法律上のルール: 技能実習制度などの採用方法には特定のルールが存在します。企業側はこれらのルールを適切に理解し、遵守する必要があります。
コミュニケーション: 異文化の背景を持つ人材と効果的にコミュニケーションをとるためには、言語の壁を超える努力や文化的な違いへの理解が不可欠です。
待遇と福利厚生: 海外人材の満足度や継続的な雇用を確保するためには、公平な待遇や適切な福利厚生の提供が重要です。
育成とキャリアパス: 長期的な視点で海外人材とともにビジネスを展開するためには、定期的な研修やキャリアパスの提供が欠かせません。
最後に、企業が海外人材や外国語人材の採用を検討する際には、単なる人手不足の解消や短期的な目的だけでなく、長期的なビジネス展開や多様性を高める組織作りの一環として捉えることが求められます。各企業のニーズや状況に合わせて、最適な採用方法を選択し、成功へと導くための戦略を練ることが重要です。
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