<img src="https://trc.taboola.com/1341089/log/3/unip?en=page_view" width="0" height="0" style="display:none">
  • Twitter
  • facebook
  • LINE
  • pocket
  • はてな
Jul. 24, 2025

韓国語契約書翻訳:進化するK-ビジネス市場で法的リスクを管理する

 

日本と地理的に近く、歴史的・文化的に密接な関係を持つ韓国は、近年、エンターテイメント産業(K-POP、ドラマ)の世界的躍進に加え、半導体、自動車、ITなどハイテク産業においても世界経済を牽引する存在となっています。スタートアップエコシステムの成熟、デジタル化の加速、そしてダイナミックな市場は、多くの日本企業にとって魅力的なビジネスチャンスを提供しています。

しかし、その一方で、独特の法制度、商習慣、そして急速に変化するビジネス環境は、この国でのビジネスを一層複雑にしています。特に、韓国語契約書の重要性は、予期せぬリスクから貴社を守るための生命線となります。


韓国は大陸法を基盤としつつも、米国法の影響も受ける独自の法体系を持ちます。さらに、韓国語が公用語であり、公式文書の多くが韓国語で作成される現実があります。単に英語契約書があれば十分という認識は、韓国においては常に通用するとは限りません。

特に韓国語契約書の翻訳は、単なる言語の置き換えに留まらず、韓国商法(상법 / Sangbeop)民法(민법 / Minbeop)個人情報保護法(개인정보 보호법 / Gaeinjeongbo Bohobeop)労働基準法(근로기준법 / Geullo Gijunbeop)といった主要な法律や、頻繁に改正される規制への深い理解が不可欠です。これらの要素を無視した翻訳は、契約の解釈、履行、そして将来的な紛争解決において深刻な問題を引き起こす可能性があります。

長年の国際契約書翻訳の経験に基づき、日本企業が韓国企業と契約を交わす際に直面する「韓国語契約書 翻訳」の重要性、その特有の法的背景、準拠法、紛争解決、そして言語戦略の観点から、具体的な対応策を深掘りして解説します。変化の激しい韓国市場でのビジネスを安全かつ確実に展開し、その潜在能力を最大限に引き出すための羅針盤となる情報を提供します。

1. 知っておくべき韓国の法体系:大陸法と米国の影響が融合した現代的システム

韓国の法体系を理解することは、韓国語契約書を取り扱う上で最も重要な前提となります。韓国は基本的にドイツ法を範とする大陸法(成文法主義)を採用していますが、戦後の米軍政や米国の経済的影響により、コモン・ロー(英米法)の要素も取り入れ、ハイブリッドな特徴を持つに至っています。

 

主要な法律と改正の動向

韓国の主要な法律には以下のようなものがあります。

  • 民法(민법 / Minbeop): 契約の成立、履行、違反、不法行為など、私法関係の基本的な原則を定めます。日本の民法と類似点も多いですが、異なる点も存在します。

  • 商法(상법 / Sangbeop): 会社法、手形・小切手法、保険法、海商法など、商取引に関する特別法を定めます。会社設立、運営、合併・買収(M&A)において重要な役割を果たします。

  • 個人情報保護法(개인정보 보호법 / Gaeinjeongbo Bohobeop): データの収集、利用、提供、破棄に関する厳格な規制を定めており、違反に対する罰則も強化されています。EUのGDPRに匹敵するレベルの保護を目指しており、データ関連の契約では特に注意が必要です。

  • 労働基準法(근로기준법 / Geullo Gijunbeop): 労働者の権利保護が手厚く、労働時間、賃金、解雇規制、ハラスメント対策などに関する詳細な規定があります。雇用契約書や関連する合意は、これらの法律に厳密に準拠する必要があります。

  • 公正取引法(독점규제 및 공정거래에 관한 법률 / Dokjeomgyuje Mit Gongjeonggeoraee Gwanhan Beomnyul): 不公正取引行為、企業結合の規制などを定めます。独占規制に関する強力な権限を持つ公正取引委員会(KFTC)による運用が特徴です。

  • 特許法、著作権法などの知的財産関連法: 知的財産権の保護に力を入れており、関連する契約(ライセンス契約、共同開発契約など)では詳細な規定が求められます。

  • 外為取引法(외국환거래법 / Oegukhwan Georaebeop): 外国為替取引や海外送金に関する規制を定めており、国際取引において確認が必要です。

商習慣と文化的背景

法制度の違いに加えて、韓国の商習慣や文化的背景も、契約の交渉や履行に影響を与えます。

  • 「情(정 / Jeong)」の文化: 互いの感情や人間関係を重視する「情」の文化がビジネスにも影響を与えることがあります。長期的な関係構築を重視し、契約書だけでなく、信頼に基づく関係性が重要視される場面もあります。

  • 迅速な意思決定と実行: 韓国企業は意思決定が比較的迅速で、ビジネス展開もスピーディーな傾向があります。契約交渉においても、効率性とスピード感が求められることがあります。

  • 序列と敬意: 目上の者や経験豊富な者に対する敬意の文化が根強く、会議や交渉の場でもその側面が見られることがあります。

  • 口頭合意の限界: 商習慣上、口頭での約束も重要視される場面はありますが、最終的には書面化された契約書が法的効力を持つことを認識しておく必要があります。特に複雑な取引では、詳細な書面による合意が不可欠です。

  • 政府・行政機関の関与: 特定の産業や投資においては、政府や行政機関の承認・許認可が複雑になる場合があります。

2. 契約の「羅針盤」:準拠法(준거법 / Jungeobeop / Applicable Law)の選び方

韓国語契約書の解釈、有効性、履行、そして違反時の法的効果などを決定するために適用される法律、それが準拠法です。日本企業と韓国企業間の契約において、この準拠法の選択は、契約関係の方向性を決定づける最も重要な要素の一つです。

 

選択肢とそれぞれの特徴・留意点

  1. 日本法を準拠法とする場合

    • メリット: 当社にとって最も馴染み深く、自社の法務部門や顧問弁護士が契約内容を容易に理解し、リスクを評価できます。予測可能性が高く、国内の法務リソースを最大限に活用できます。

    • デメリット: 韓国企業にとっては外国法となるため、内容の理解に専門的なサポートが必要となり、交渉が難航する可能性があります。また、万が一紛争が韓国で発生し、現地の裁判所が関与する場合、外国法(日本法)の適用や強制執行には、時間とコスト、そして手続き上の複雑さが伴うことがあります。特に、韓国の強行法規(例えば、独占規制に関する公正取引法、特定の労働法など)と矛盾する条項は、現地の裁判所によって無効と判断されるリスクがあります。

  2. 韓国法を準拠法とする場合

    • メリット: 相手方企業にとっては自国法であり、理解しやすいため、韓国内での法的執行が比較的スムーズに進む可能性があります。韓国でのビジネス展開を重視する場合や、相手方企業側の交渉力が強い場合に選択されることがあります。

    • デメリット: 当社にとっては、韓国の法律に関する専門知識が不可欠です。商法、民法、個人情報保護法、労働基準法など、日本の法体系と類似点が多いとはいえ、異なる部分も存在し、現地の法務実務や商慣習を深く理解していなければ、予期せぬ落とし穴にはまるリスクがあります。特に、外資規制、公正取引関連法規、労働法規制など、韓国法特有のルールを把握しておく必要があります。韓国語契約書の条文が韓国語であるため、より一層の専門知識と正確な韓国語契約書 翻訳が求められます。

  3. 第三国法を準拠法とする場合

    • メリット: 英国法(特にイングランド法)や米国ニューヨーク州法、またはシンガポール法など、国際商取引で広く受け入れられている法律を選択するパターンです。これらの法律は国際的な判例が豊富に蓄積されており、契約解釈の予測可能性が高いという大きなメリットがあります。どちらの当事者にとっても外国法であるため、中立性が保たれやすいと認識されることもあります。

    • デメリット: 当事者双方にとって外国法となるため、双方ともにその法律に精通した専門家(国際弁護士など)のサポートが必須となり、法務コストが増大する可能性があります。また、第三国法が韓国の強行法規と大きく異なる場合、韓国の裁判所での執行に課題が生じる可能性も考慮に入れる必要があります。

準拠法選択の経験的アドバイス

準拠法の選択は、取引の性質、当事者の交渉力、取引額、リスクの度合い、そして将来的な紛争発生時の執行の容易さなどを総合的に考慮して決定すべきです。韓国での事業活動が主となる場合、韓国法を準拠法とするケースも多く見られますが、その際は韓国法に精通した弁護士によるリーガルチェックが必須です。また、中立性や国際的な執行可能性を重視し、国際仲裁と組み合わせる形で第三国法(例:シンガポール法)を選択するケースも多く見られます。特に、ITや知的財産関連の複雑な取引では、国際的な判例が豊富な第三国法が選ばれることがあります。

3. 万が一の「出口戦略」:紛争解決(분쟁 해결 / Bunjaeng Haegyeol / Dispute Resolution)の選択肢

どれだけ完璧な韓国語契約書を作成しても、予期せぬ事態や解釈の相違から紛争が発生する可能性はゼロではありません。そのため、契約締結時に、紛争が起きた際の解決方法を具体的に定めておく「出口戦略」は極めて重要です。

 

主要な紛争解決手段

  1. 友好的解決・調停(협상 및 조정 / Hyeopsang Mit Jojeong / Negotiation, Mediation)

    • 韓国では、紛争を裁判に持ち込む前に、当事者間の話し合いや調停(通常、中立な第三者機関や個人の仲介)による解決を試みることが一般的です。契約書においても、まずは友好的な解決を試みる旨の条項が設けられることがあります。

  2. 裁判(소송 / Sosong / Litigation)

    • 日本の裁判所: 当社にとっては有利な立場ですが、韓国企業が判決に従わない場合、現地でその判決を強制執行するには、別途「外国判決の承認及び執行」という複雑な手続きが必要です。日本と韓国の間には司法共助に関する条約などがありますが、依然として時間とコストがかかる可能性があります。

    • 韓国の裁判所: 現地での執行は比較的容易ですが、当社にとっては現地の司法制度に関する知識や、韓国語契約書の解釈において言語の壁が存在します。現地の法務知識と裁判実務に精通した弁護士の存在が不可欠です。韓国の司法制度は透明性と効率性が高いと評価されています。

  3. 国際仲裁(국제 중재 / Gukje Jungjae / International Arbitration)

    • 国際商取引における紛争解決手段として、最も推奨される選択肢の一つです。特に日本と韓国のように法制度が異なる国同士の取引でその優位性が際立ちます。

    • メリット:

      • 中立性: 特定の国の司法制度に依存せず、中立的な仲裁地(シンガポール、香港、ロンドン、または韓国国内の大韓商事仲裁院(KCAB)など)と国際的に信頼性の高い仲裁機関を選択できます。これにより、特定の国の裁判所での「ホームアドバンテージ」を避けることができます。

      • 執行可能性: 最も重要なメリットの一つです。日本も韓国もニューヨーク条約(外国仲裁判断の承認及び執行に関する条約)の加盟国であるため、一国の仲裁機関で下された仲裁判断は、加盟国である相手国でも比較的容易に強制執行することができます。これにより、外国での判決執行の困難さを克服できます。

      • 専門性: 複雑な商取引や技術的な紛争において、その分野の専門知識を持つ仲裁人を選任することが可能です。

      • 秘密保持: 仲裁手続きは原則非公開であり、ビジネス上の機密情報が守られやすいです。

      • 迅速性: 原則として、仲裁判断は最終的なものであり、二審制や三審制のような上訴手続きがありません。これにより、迅速な紛争解決が期待できます。

    • 注意点: 仲裁条項の作成には専門知識が必要です。仲裁機関、仲裁地、仲裁言語、仲裁人の数などを具体的に定める必要があります。

紛争解決条項設定の経験的アドバイス

日本企業と韓国企業間の契約では、国際仲裁を選択することが最も実用的で安全な選択肢と言えます。特に、ニューヨーク条約の枠組みを利用することで、相互の執行可能性を高めることができます。仲裁地としては、中立性が高く、国際仲裁の実績が豊富なシンガポールや香港、または韓国国内の大韓商事仲裁院(KCAB)も有力な選択肢となります。KCABはアジアでも有数の仲裁機関として国際的な評価が高く、効率的な手続きが期待できます。

4. 言葉の壁を越える:韓国語契約書 翻訳の戦略と重要性

韓国語契約書がどの言語で作成され、どの言語が正文となるかは、契約内容の正確な理解と将来的な解釈の齟齬を防ぐ上で非常に重要です。ビジネスシーンで英語が使われることも多い韓国ですが、常に英語契約書で十分とは限りません。

 

主要な言語パターンと韓国語契約書 翻訳の役割

  1. 日本語と韓国語(いずれか、または双方が正文)

    • 活用場面: 双方の母国語での詳細な理解を重視する場合に、韓国語契約書または日本語契約書が用いられます。

    • 留意点: どちらかの言語(例:韓国語版)を正文とし、もう一方(例:日本語版)を参考訳とすることが一般的です。両言語を正文とする場合は、解釈の齟齬が生じた際の優先順位(例:「韓国語版が優先する」)を明確に定める「優先言語条項」を必ず盛り込む必要があります。韓国語契約書 翻訳の品質が直接、法的リスクに直結します。韓国法の概念を正確に日本語で表現できるかが重要です。

  2. 英語を正文とし、日本語・韓国語の参考訳を作成

    • 活用場面: 国際ビジネスで一般的なパターンであり、韓国との取引でも多く用いられます。英語が国際的な法的文書の標準語として広く認知されているため、専門家によるレビューもしやすく、将来的な国際訴訟や仲裁においても用いられます。

    • 留意点: 英語が唯一の正文となる場合でも、韓国側の当事者が韓国語契約書の翻訳を求め、それを理解の基礎とするケースが多くあります。この韓国語契約書 翻訳の質が低いと、誤解や紛争の原因となり得ます。特に、政府機関への提出書類や登記書類、労働関連の書類など、公式文書の一部で韓国語での提出が義務付けられることがあります。

  3. 韓国語のみを正文とする

    • 活用場面: 韓国国内での取引や、契約相手の交渉力が非常に強く、かつ英語での対応が難しい場合に採用されます。

    • 留意点: 当社は韓国語の法的文書を完全に理解できる体制を構築する必要があります。

韓国語の契約書が特に重要となる場面

韓国ではビジネスの主要言語として英語が使われることが多いですが、以下のような状況では韓国語の契約書が特に重要になります。

  1. 政府機関への提出書類や登記書類

    会社設立登記、投資申告、特定の許認可申請など、韓国の政府機関や行政機関への公式提出書類は、原則として韓国語で作成される必要があります。英語で締結した契約書であっても、これらの手続きのためには、公式な韓国語翻訳(公証翻訳など)が必須となるケースが非常に多いです。

  2.  
  3. 公証(공증 / Gongjeung)を伴う契約

    韓国では、不動産取引(賃貸借契約を含む)、会社の設立・変更、特定の債権譲渡契約など、公証人(공증인 / Gongjeung-in)による公証が義務付けられている契約が存在します。公証手続きでは、通常、韓国語の正本が必須とされ、外国語の契約書であっても韓国語訳の添付が求められます。

  4.  
  5. 労働契約書

    労働基準法に基づき、雇用契約書は原則として韓国語で作成される必要があります。英語と併記することも可能ですが、労働者の権利保護の観点から、韓国語版が法的効力を持つことが前提となります。労働者の理解を確保するためにも韓国語版の提供は不可欠です。

  6.  
  7. 消費者向け契約や規約

    消費者保護法に基づき、銀行、保険、電気通信、オンラインサービスなど、

  8. 般消費者を対象とした契約や利用規約は、消費者が理解できるよう韓国語で提供されることが義務付けられています。

  9.  
  10. 中小企業や個人との取引

    国際的な取引を行う大企業は英語に対応できますが、韓国の中小企業や個人事業主、あるいは個人消費者の中には、英語での契約内容を完全に理解するのが難しいケースも少なくありません。誤解を防ぎ、円滑な関係を築くためには、韓国語での契約書作成、または英語契約書への韓国語訳の添付が極めて重要です。

  11.  
  12. 紛争解決における現地の司法手続き

    万が一、契約を巡る紛争が韓国の裁判所で争われる場合、裁判の進行は原則として韓国語で行われ、提出される証拠書類も韓国語のものが求められます。英語で締結された契約書であっても、裁判所に提出するためには、正式な韓国語への翻訳(必要に応じて公証翻訳)が不可欠となります。

  13.  

これらの点から、韓国でのビジネス展開においては、英語契約書が主要であっても、特定の場面で韓国語の契約書、または公式な韓国語訳が不可欠であることを認識し、適切な言語戦略を立てることが重要です。

韓国語契約書 翻訳における専門性

言語戦略の選択に関わらず、韓国語契約書専門翻訳は極めて重要です。

  • 法的・専門用語の正確性: 韓国法に由来する「불가항력 (Bulgahangnyeok / 不可抗力)」、「손해배상 (Sonhaebaesang / 損害賠償)」、「소멸시효 (Somyeolsihyo / 時効)」といった法律用語は、単なる直訳では法的意味合いを正確に伝えられません。韓国法の概念と日本の法概念、そして英語の概念を理解し、韓国の法律や商慣習に合致した適切な用語選択と表現が必要です。

  • 文脈と言語のニュアンス: 韓国語は、その文脈や文化的な背景によって言葉のニュアンスが大きく変わることがあります。法律文書においては、曖昧さを避け、正確な意味を伝える翻訳が求められます。

  • 書式と構造: 韓国語の法律文書特有の表現や構成に精通している必要があります。

  • 各種規制への適合: 韓国商法、民法、個人情報保護法、労働基準法など、特定の規制への適合性を確認しながら翻訳を進める必要があります。特に、登記や許認可申請に必要な韓国語での正式文書作成に対応できるかが重要です。

  • E-E-A-T原則に基づいた翻訳: 経験、専門知識、権威性、信頼性(E-E-A-T)を重視し、翻訳者も法務や金融分野での実務経験を持つプロフェッショナルが担当します。AI翻訳を効率化ツールとして活用しつつも、最終的なレビューと校正は、人間の専門家が徹底して行い、法的リスクを最小限に抑えます。

5. 具体的な「実践」:ケーススタディで見る韓国語契約書の落とし穴と成功例

実際のビジネスシーンでは、どのような契約戦略が採られるのでしょうか。具体的なケーススタディを通して、準拠法、紛争解決、言語選択の重要性を深掘りします。

 

ケーススタディ1:韓国企業との合弁事業契約

  • 状況: 日本の製造業A社が、韓国の同業B社と共同で新技術開発および製品製造を行うための合弁事業契約(합작투자 계약 / Hapjak Tuja Gyeyak / Joint Venture Agreement)を締結するケース。出資比率、役員構成、利益分配、技術提携、知的財産権の扱い、そして韓国商法、公正取引法、労働基準法が主要な論点。

  • 課題と検討ポイント:

    • 準拠法: 合弁会社の設立・運営が韓国国内で行われるため、韓国法を準拠法とすることで合意。A社は韓国法に精通した弁護士を起用し、特に商法に基づく会社設立・運営の規定、公正取引法に基づく支配力規制、知的財産権の共同保有に関する条項を詳細に交渉しました。

    • 紛争解決: 韓国国内での事業に関わるため、まずは大韓商事仲裁院(KCAB)での仲裁を選択。KCABは国際的な仲裁ルールに準拠しており、効率的な解決が期待できるため、適切な選択でした。より国際的な性質を重視する場合は、シンガポール国際仲裁センター(SIAC)も選択肢として検討しました。

    • 言語: 会社登記局への提出を考慮し、英語と韓国語の双方を正文とし、英語が優先する旨を規定。ただし、登記や申請書類の添付資料としては、高品質な韓国語契約書訳が必須でした。特に、技術提携の範囲、知的財産権の帰属、役員責任に関する規定は、韓国法の概念と厳密な韓国語契約書 翻訳が求められました。

  • 成功要因: 韓国法の適用を受け入れつつ、国際仲裁を選択した点。また、英語を正文としつつも、公的機関への提出義務がある部分については、質の高い韓国語訳を準備し、実務的な対応を可能とした柔軟な言語戦略が奏功しました。

ケーススタディ2:韓国企業へのITソリューション提供契約

  • 状況: 日本のIT企業C社が、韓国の現地企業D社に対し、クラウドベースのSaaS(Software as a Service)ソリューションを提供するためのサービス提供契約(서비스 제공 계약 / Seobiseu Jegong Gyeyak / Service Agreement)を締結するケース。サービスレベル合意(SLA)、データプライバシー(個人情報保護法)、責任制限、利用料金、そして知的財産権のライセンスが主要な論点。

  • 課題と検討ポイント:

    • 準拠法: 国際的なITサービス契約の慣行を考慮し、シンガポール法を準拠法とすることで合意。特に、厳格な韓国の個人情報保護法に対応するため、データ処理に関する詳細な条項を盛り込みました。

    • 紛争解決: 迅速な解決と中立性を重視し、シンガポール国際仲裁センター(SIAC)での仲裁を選択。

    • 言語: 国際的なITサービス取引の慣行に合わせ、英語を正文とし、D社のために高品質な韓国語契約書訳を参考として提供。特に、SLA、データプライバシー、知的財産権のライセンス、責任制限に関する規定は、厳密な韓国語契約書 翻訳が求められました。

  • 成功要因: 中立的な第三国法(シンガポール法)を準拠法としてリスクを分散しつつ、韓国の厳格な個人情報保護法など特定のリスクに焦点を当てた条項を盛り込むことで、将来的なリスクを低減した点。また、中立的な国際仲裁機関を選択することで、紛争解決の公平性と執行可能性を確保しました。

6. よくある質問(FAQ):韓国語契約書 翻訳に関する疑問を解消

日本企業のお客様からよくいただく、韓国語契約書に関するご質問とその回答をまとめました。

 


 

Q1: 韓国とのビジネスで「英語契約書があれば十分」という考えはなぜ危険なのですか?

A1: 韓国は国際ビジネスにおいて英語が広く使われますが、韓国語が公用語であり、法的拘束力を持つ公式文書の多くが韓国語で作成されます。特に、政府機関への提出書類や会社登記、労働関連書類、消費者向け契約では、韓国語の契約書または韓国語訳が必須となるケースが多いです。また、韓国の強行法規(例:個人情報保護法、労働基準法、一部の公正取引関連法規)に反する条項は無効となるリスクがあり、これらの法律は主に韓国語で規定されています。

 


 

Q2: 韓国語契約書を正文とするメリット・デメリットは何ですか?

A2:

  • メリット: 韓国国内での法的実行力が最も高まります。現地の裁判所や行政機関が関与する際に、言語の障壁がなくスムーズです。相手方企業への敬意を示し、信頼関係を深めることにも繋がります。

  • デメリット: 当社は韓国の法律知識に加え、韓国語の法的表現を正確に理解する必要があります。このため、専門性の高い韓国語契約書 翻訳とリーガルチェックが不可欠となり、費用や時間がかかる場合があります。


 

Q3: 契約書の韓国語翻訳は、どのような点に注意が必要ですか?

A3: 最も重要なのは、法的概念の正確な対応です。韓国法に由来する法律用語は、単なる直訳では法的意味合いを正確に伝えられません。韓国の法概念(大陸法とコモン・ローの融合)と日本の法概念、そして英語の概念を理解し、韓国の法律や商慣習に合致した適切な用語選択と表現が必要です。また、韓国語の文脈やニュアンス、ビジネス慣習への理解も不可欠です。

 


 

Q4: 韓国語契約書の翻訳を依頼する際のポイントは何ですか?

A4:

  1. 1. 法律翻訳の専門性: 法律分野、特に韓国法に特化した翻訳会社や、弁護士資格を持つ翻訳者など、法律文書の翻訳経験が豊富なプロを選びましょう。


  2. 2. ネイティブチェック
    : 韓国語のネイティブスピーカーによるチェックはもちろん、韓国の法務分野に詳しいネイティブによるチェックが行われるか確認しましょう。


  3. 3. 情報セキュリティ体制
    : 契約書は機密情報を含むため、情報セキュリティ管理が徹底されている翻訳会社を選びましょう。


  4. 4. リーガルチェックの連携
    : 翻訳だけでなく、必要に応じて韓国現地の弁護士によるリーガルチェックまで含めて依頼できるか、連携体制を確認しましょう。

 


 

Q5: 韓国の強行法規で、特に注意すべきものは何ですか?

A5: 具体例としては、個人情報保護法(データの取り扱いに関する厳格な規制)、労働基準法(労働者の権利保護、解雇規制など)、公正取引法(不公正取引行為の規制、企業結合の規制など)などが挙げられます。これらの分野の契約では、当事者の合意内容が韓国の強行法規に反する場合、その条項が無効となるリスクがあります。


 

7. 日本と韓国の主要ビジネス分野と契約書の種類

日本と韓国は、製造業、IT、コンテンツ、金融など、多岐にわたる分野でビジネス交流を行っています。これらの取引を円滑に進める上で、専門的な韓国語契約書翻訳が不可欠となる主要な分野と、そこで頻繁に交わされる契約書の種類について解説します。

 

7.1. 日本と韓国で現在ビジネスが盛んな分野・業界・ジャンル

現在、日本と韓国で特に活発なビジネスが見られるのは以下の分野です。

  1. 1. IT・デジタルコンテンツ: ゲーム、ウェブトゥーン、SaaS、AI、ブロックチェーンなどのデジタル分野で協業や投資が活発です。


  2. 2. 半導体・電子部品
    : 相互にサプライチェーンの一部を構成しており、技術提携や部材供給が頻繁に行われます。


  3. 3. 自動車・機械
    : 完成車および関連部品、産業機械などでの取引があります。


  4. 4. エンターテイメント
    : K-POP、ドラマ、映画などのコンテンツ流通、共同制作、ライセンス契約が盛んです。

  5.  
  6. 5. 流通・小売・Eコマース: 韓国ブランドの日本進出や、日本製品の韓国市場への展開。

  7.  
  8. 6. 金融・投資: スタートアップ投資、M&A、ファンド組成など。


  9. 7. バイオ・ヘルスケア
    : 医薬品、医療機器、再生医療などの分野での共同研究や事業提携。

 

7.2. 翻訳が必要となる可能性が高い主要な契約書の種類

上記の活発なビジネス分野を踏まえると、以下のような契約書が韓国語への翻訳、または韓国語からの翻訳を頻繁に必要とします。これらの契約書は、韓国の法規制や商習慣を考慮した専門的な翻訳が求められます。

  1. 1. 合弁事業契約書 (합작투자 계약 / Joint Venture Agreement): 新たな事業体を共同で設立・運営する場合に必要です。韓国商法に基づく会社設立・運営の規定が重要です。


  2. 2. 会社設立定款(정관 / Jeonggwan / Articles of Incorporation)
    : 合弁会社の設立時に必須となる書類で、公証や登記が必要です。

  3.  
  4. 3. 株主間契約書 (주주간 계약 / Jujugan Gyeyak / Shareholders Agreement): 合弁会社のガバナンス、利益分配、紛争解決などを規定します。

  5.  
  6. 4. 技術ライセンス契約書 (기술 라이선스 계약 / Gisul Raiseonseu Gyeyak / Technology License Agreement): 知的財産権の供与や利用に関する規定。特許法や著作権法との関連が重要です。

  7.  
  8. 5. 業務提携契約書 (업무 제휴 계약 / Eopmu Jehyu Gyeyak / Partnership/Alliance Agreement): 共同開発、共同マーケティングなど、幅広い業務協力に用いられます。

  9.  
  10. 6. 製造委託契約書 (제조 위탁 계약 / Jejo Witak Gyeyak / Manufacturing Agreement): 製品の製造を韓国企業に委託する際に必要です。

  11.  
  12. 7. 供給契約書 (공급 계약 / Gonggeup Gyeyak / Supply Agreement): 原材料、部品、サービスなどの継続的な供給を規定します。

  13.  
  14. 8. 販売代理店契約書 (판매 대리점 계약 / Panmae Daeijeom Gyeyak / Distribution/Agency Agreement): 製品・サービスの販売を韓国の代理店に委託する際に必要です。

  15.  
  16. 9. 秘密保持契約書 (비밀유지 계약 / Bimil Yuji Gyeyak / Confidentiality Agreement / NDA): 交渉や共同開発の初期段階で情報共有を行う際に不可欠です。

  17.  
  18. 10. 雇用契約書 (근로 계약서 / Geullo Gyeyakseo / Employment Contract): 韓国で従業員を雇用する際に必須です。労働基準法に基づく厳格な規定が多数あります。

  19.  
  20. 11. M&A関連契約書: 株式譲渡契約(주식 양도 계약 / Jusik Yangdo Gyeyak / Share Sale Agreement)、デューデリジェンス関連文書など。

まとめ

日本企業が韓国企業と契約を交わす際には、ビジネスにおける英語の汎用性を理解しつつも、韓国独自の法制度、強行法規、商習慣、そして韓国語の重要性を正しく認識することが成功への第一歩です。特に、公的機関への提出や特定の法的要件を伴う契約においては、韓国語契約書の重要性が飛躍的に高まります。

文化や法制度が異なる国際間取引においては、契約書のわずかな文言の解釈の違いが、将来的に大きな法的・財務的リスクへと発展する可能性があります。そのため、国際契約に精通した弁護士のアドバイスを受けるとともに、法的・ビジネス的なニュアンスを完全に理解した韓国語の専門翻訳者のサポートが不可欠です。

長年にわたる国際契約書翻訳の経験と、日本、韓国、英語圏の法務・ビジネスに関する深い知見を活かし、当社のグローバルビジネスを法的な側面から強力にサポートいたします。あらゆる種類の韓国語契約書について、貴社のニーズに応じた最適な翻訳サービスを提供し、グローバルな取引を安全かつ円滑に進めるお手伝いをさせていただきます。

韓国語契約書に関して、ご不明な点や具体的なご相談がございましたら、どうぞお気軽にお問い合わせください。

 

契約書の翻訳-1WIPジャパンは、東京弁護士共同組合神奈川県弁護士共同組合をはじめとする全国23の弁護士共同組合の特約店に認定されています。
ご相談は無料です。いつでもお気軽にご連絡ください。

 

【無料】PDFダウンロード

image-png-Feb-26-2025-03-24-12-5725-AM契約書の基本用語英訳50選

一言に契約書といっても、業務委託契約書(Services Agreement)、独立請負人契約書(Independent Contractor Agreement)、秘密保持契約書(Non-Disclosure Agreement)、業務提携契約書(Business Partnership Agreement)など、様々なものがあり、契約の種類も多様化しています。

契約内容を正しく理解し、法的リスクを回避するには、適切な英訳が不可欠です。本記事では、契約書における基本用語の英訳50選をご紹介します。 
>>PDFダウンロード(無料)


翻訳発注に失敗しない10のポイント「翻訳発注」に失敗しない10のポイント

翻訳の発注に失敗しないためには、どうすればいいのか。

翻訳外注コストを抑えるには、どうすればいいのか。
これらの課題の解決策をお教えします。

翻訳発注に失敗しないためには、知らないではすまされない重要なポイント!

優れた翻訳会社ほど多忙で引く手あまたです。価格が相場に比べて格段に低い翻訳会社は、良心的なのか、それとも単に制作プロセスを簡単に済ませているだけなのかをよく見極めましょう。また、同じ翻訳会社でも、制作プロセス次第で翻訳料金は大きく上下します。希望するレベルを詳細に伝えることで、翻訳会社は最適なプロセスをデザインすることができます。 >>PDFダウンロード(無料)


契約書翻訳に役立つリンク集

法務省大臣官房司法法制部「法令翻訳の手引き」(PDF)
日本法令外国語訳推進会議「法令用語日英標準対訳辞書」(PDF)
Publiclegal(英文契約書のテンプレートや書式を無料で提供)
日本法令外国語訳データベースシステム(法務省が開設した日本の法令の英訳サイト)
weblio 英和辞典・和英辞典
英辞郎 on the web

 

契約書翻訳に関連する記事

【2024年版】ビジネスで欠かせない「契約書翻訳」におすすめの8つのポイント
契約書翻訳を依頼する際に知っておいていただきたいこと
契約書の翻訳を外注するとき、特に注意すべき3点
翻訳会社のプロの法律系翻訳者が選ぶ!契約書の英訳におすすめの書籍12選
法律文書:AI翻訳時代における人力翻訳の価値とは?

  • Twitter
  • facebook
  • LINE
  • pocket
  • はてな

翻訳会社を選ぶおすすめの依頼方法:失敗しない10のキホン

WIPの翻訳をつくるサービスはこちら