<img src="https://trc.taboola.com/1341089/log/3/unip?en=page_view" width="0" height="0" style="display:none">
  • Twitter
  • facebook
  • LINE
  • pocket
  • はてな
Nov. 30, 2021

その英語で大丈夫?~街中で見つかるおかしな英語~

 

Engrishという単語をご存じでしょうか?

 Englishの造語であるEngrishは、「アジア系言語話者の使用する、語表現やスペリングの誤用を伴った英語を揶揄する俗語」です1)。具体的には、不自然な英語表現によって意味が解釈できなかったり、意図せず笑いを誘ったりするものをいいます。

 

 

観光立国を目指して歩みを続ける日本では、訪日外国人の増加も影響して、英語が街中に多く見られるようになりました。

 

ところが英語を母語としない私たちが書いた英語は、時として外国人の方々にとって奇妙に映り、混乱や失笑を招いてしまうことも少なくありません。本記事では、日本の街中に溢れる実は間違っているおかしな英語、Engrishをご紹介します。



1. New Open(新規開店)

おそらく多くの人が見たことのある英語だと思います。New OpenをGoogleで画像検索してみると、相当数が宣伝文句として使われていることが分かります。

 

ところが、実はこの英語間違っているんです。

 

「開店」という意味でのopenは、基本的には動詞です。newは形容詞ですので、動詞のopenを修飾することはできません。正しい文法に沿って書くとNewly OpenあるいはNewly Openedとなります。

 

ちなみにGrand Openという広告もよく見かけますが、これも同じく間違った英語です。正しくはGrand Openingです。一方、newを使ってNew Openingとすると、求人情報における「新規の求人募集」といった意味になります。

 

つまり「新規開店」にあたる正しい英語はNewly Open/Openedか、あるいはNew Shop Openingなども英語圏ではよく見かける表現です。



2. Because you are dangerous, you must not enter. (あぶないから、はいってはいけません)

(画像出典:www.engrish.com

 

この表示は名古屋城にあったものです。同じ英語表示が工事現場の看板に掲載されていることもあるそうです2)

 

この英語をそのまま訳せば、「あなたは危険人物なので、入ってはいけません」となります。確かに「あぶないから、はいってはいけません」をそう解釈できなくもなく、文字だけ見れば誤訳とは言えないのですが・・・

 

「ここは危険です。入らないでください」という日本語の意味ではIt is dangerous; Do not enter.が正しい英語です。



3. Please use the restroom beautifully. (トイレはきれいにつかってください)

(画像出典:Language Log

 

「トイレはきれいにつかってください」が平仮名で書かれているのは、日本語能力検定を受ける外国の方への配慮でしょうか。

 

その下に書かれたPlease use the rest room beautifully.は、やはりどこかおかしい英語です。

 

「きれいに」にあたる英語にbeautifullyが使われていますが、この場合の「きれいに」は「清潔に」「汚すことなく」という意味です。「美しく」という意味ではありません。

 

Please use the restroom beautifully.だと、「(たとえばダンスを踊るかのように)美しくドアを開け、美しい所作でトイレをしてください」という意味になってしまいます・・・

 

「トイレを清潔に」という意味ではPlease keep the restroom clean.などが一般的な表現です。



4. Please do not get nervous on a tatami mat. (畳の上に上がらないでください)

(画像出典:www.engrish.com

 

私が最初にこの英語をみたとき、なんで「畳の上に上がらないでください」がその英語になるのかすぐには理解できませんでした。

 

「上がる」が「緊張して落着きを失う」という意味の「上がる」と解釈され、get nervousと訳したものと思われますが、おそらく機械翻訳によるものでしょう。

 

ここまで紹介してきたEngrishは、間違った英語ながらも何を言わんとしているのかは想像できるものでしたが、このEngrishは「畳を踏まないでほしい」という意図が伝わりませんね(むしろ畳の上でくつろいでしまうかも・・・)。



5. Passengers going to Kyoto, please go backward. (京都方面は、後ろ寄りの車両をご利用ください。)

関西のとある駅のホームに掲載されていた英語です(個人のSNSで発見したため画像引用は控えます。興味のある方はこの英語を完全一致検索してみてください)。

 

「車両の後方に行ってください」と言いたかったのかもしれませんが、go backwardの意味は「戻る」「後ずさりする」という意味です。この英語だけを見れば、京都行きの電車が来るホームから来た道を戻ってしまうかも知れません。

 

仮に戻らなかったとしても「後ろ寄りの車両に乗る」という意味が伝わりません。後ろ寄りの車両に乗ってないと京都方面に行けないのだとしたら、この間違った英語によって目的地に着けない可能性もあります。

 

公共機関では、正しい英語表記を使いたいものです。

 

「京都方面は、後ろ寄りの車両をご利用ください。」を表す正しい英語はPassengers going to Kyoto, please use the cars at the rear of the train.です。



6. For Restrooms, Go back toward your behind. (化粧室は後方へ)

(画像出典:www.engrish.com

 

新幹線の仙台駅にあった表示です(現在でもあるのかは確認できておりません)。

 

まずbehindが「後方」という意味で使われるときは前置詞です。よってtoward your behindとすると文法的に間違っているのですが、仮に「後ろ」を意味していると解釈されたとしても、直訳すると「後方に向かって後方に進む」なので化粧室がいったいどこにあるのか理解されません。

 

名詞のBehindには「お尻」という意味があり、もしそう判断するなら「お尻に向かって後方に進んでください」となり、どちらにせよ伝わらないでしょう。

 

英語圏の公共機関などではRestrooms located behind you.という表現をよく見かけます。



7. Translate server error(餐厅)

(画像出典:Bonehead-Of-The-Day Award

 

最後にご紹介する舞台は、日本ではなく中国です。

 

「レストラン」を意味する中国語「餐厅」の横に書かれているのは、Translate server errorという英語。

 

おそらくインターネットの翻訳サイトを使っていたのでしょう。不具合でエラーメッセージが出たのを英語訳だと思い込んでしまったようです。

 

もはやここまでの間違いだとEngrishとは言えないですね・・・

 

画像出典元のサイトにも書かれていますが、”Don't use a translation program if you can't discern the translation from the error message.”(執筆者試訳:翻訳とエラーメッセージを間違えてしまうなら、翻訳プログラムは使わないように)するのが一番です。

 

 

さいごに

こうしたEngrishは、英語が苦手な方が書いたか、あるいは機械翻訳を使って得た訳文をきちんと確認せずに掲載したことによるものだと思います。

 

Engrishの中には、たとえば上で挙げた “Because you are dangerous, you must not enter.” のように明らかに間違いだと気付く英語もあれば、“For Restrooms, Go back toward your behind.” のように日本人だと気付きにくい間違いもあります。

 

外国人の方が違和感を覚えたり失笑したりする程度であれば、まだいいのかもしれません。しかしたとえば、駅の交通案内に書かれた間違った英語のために目的地に行けなかったり、なにかトラブルにつながってしまったりする可能性だってあります

 

訪日外国人への親切心で英語を併記したとしても、間違った英語なら書かない方が良かったということだってありえます。

 

そんな事態を避けるためには、英語が母国語の翻訳者に翻訳してもらうか、少なくともチェックしてもらうことが重要です。英語を母国語としない私たちが書いた英語は、母国語とする人から見たらどうしたって不自然だったり分かりにくかったりするものです。

 

正しく自然で混乱を招くことがない英語が少しずつ街中に増えていけば、日本人の親切心やおもてなしも少しずつ伝わっていくのではないでしょうか。

 

執筆:田村嘉朗
大手通信会社ロンドン支社勤務を経て、2013年より翻訳者として活動
専門は通信、マーケティング

参考URL
1. Wikipedia
https://ja.wikipedia.org/wiki/Engrish#cite_note-5
2. エイミー・ワインスティン著 『ネイティブは見た!ヘンな英語』 ディスカヴァー・トゥエンティワン

  • Twitter
  • facebook
  • LINE
  • pocket
  • はてな

翻訳会社を選ぶおすすめの依頼方法:失敗しない10のキホン

WIPの翻訳をつくるサービスはこちら