お客様からこのようなご相談を受けることが多くあります。
- 「ネイティブチェックもお願いします」
- 「翻訳にはネイティブチェックは含まれますか」
そもそも、ネイティブチェックって何でしょうか。文字通りに解釈すれば「ネイティブによるチェック」という意味になるのですが、簡単なようで実は簡単ではないのが「ネイティブチェック」の定義です。ここでは以下の4点について解説しながら、日本語から英語に翻訳する場合を例に、ネイティブチェックについて考えたいと思います。
そもそも、ネイティブチェックって何でしょうか?
まず初めに申し上げますと、WIPに翻訳を依頼すればネイティブチェックの必要はありません。
例えば、日本語から英語に翻訳する場合、WIPでは「英語ネイティブのプロの翻訳者が翻訳」をします。そして、日本人の英日バイリンガルチェッカーが日本語特有の表現・文化に起因する誤訳がないか、ケアレスミスはないか、お客様指定の仕様を満たしているかなどを確認し、お客様にご納品しています。ですので、WIPの翻訳ならばネイティブチェックの必要はありません。
つまり、ネイティブチェックが必要となるのは、翻訳者が翻訳後の言語のネイティブではない場合です。例えば、日本人が英訳を担当し、英語ネイティブが仕上りを確認するというような、価格を抑えたサービスを提供している翻訳会社もあります。このときの「英語ネイティブが仕上りを確認する」ことをネイティブチェックということが多くあります。
また、弊社のように英語ネイティブが英訳した場合であっても、さらに品質を向上させるため、別の英語ネイティブがもう一度目を通してチェックすることもあります。この場合も、ネイティブチェックと呼ばれることがあります。
ネイティブチェックを含むサービスの注意点とは
もしあなたが、ある翻訳会社に「ネイティブチェックもお願いします」と相談したら、どのような回答が返ってくるでしょうか。2つのケースに分けて考えてみます。
ケース1:「英語ネイティブによる英訳(弊社を含む)+ チェック」の翻訳フローを採用する翻訳会社A
- お客様:「ネイティブチェックもお願いします」
➡ - 翻訳会社A:「ネイティブチェックは別途料金が発生します」
ケース2:「日本人による英訳 + (ネイティブ)チェック」の翻訳フローを採用する翻訳会社B
- お客様:「ネイティブチェックもお願いします」
➡ - 翻訳会社B:「ネイティブチェックは当社サービスに含まれています」
あなたなら、AとBのどちらの翻訳会社の依頼しますか。もしかすると翻訳会社Bのほうがお得に感じられるかもしれませんが、少し注意が必要です。
翻訳会社Aの場合では、ネイティブチェックは基本フローに含まれていませんが、ネイティブチェックをしなくてもすでにネイティブの仕上りになっています。翻訳会社A(弊社を含む)に(追加で)ネイティブチェックを依頼することは、翻訳品質への付加価値となります。
これに対して、翻訳会社Bではネイティブチェックは品質維持のための必要条件です。その場合、ネイティブチェックは付加的な価値ではなく、その翻訳品質の必須要素となっています。
ですから、翻訳会社がどのようなフローで翻訳を行っているのかを、事前に確認をしておく必要があります。
ネイティブチェックを依頼する前に原稿を確認しておく
お客様側で翻訳をしてから相談をしている場合も同様です。まず、どのような人が翻訳をしたのかを確認しておきましょう。翻訳した人が翻訳後の言語のネイティブであるかどうかで、翻訳会社が対応する条件も変わってきます。また最近、AI翻訳したものをネイティブチェックしてほしいというご相談も増えています。
そこで、翻訳が人間による出力なのか、AI翻訳による出力なのか、また日本語原稿があるのか、日本語原稿がないのかによって、以下にパターン分けをしてみました。(※日本語原稿がなければAI翻訳はできませんので除外しています。そういったことを可能にするAI技術はありますが、まだ一般に実用化できるレベルでないとの認識です。例えば、キーワードからニュース記事を作成するようなAI技術が研究されています。)
人間による出力 | AI翻訳による出力 | |
日本語の原稿がある | [I] | [III] |
日本語の原稿がない | [II] | / |
ほとんどのお客様が[I]か[II]になるのではと思いますが、パターン[III]のお問合せも実際にはあります。
パターン [I]:
日本語原稿が存在し、それをもとに英語ネイティブが翻訳(翻訳会社A)、あるいは英語非ネイティブが翻訳(翻訳会社B)をした場合です。
パターン [II]:
学術論文などのように日本語の資料を元に(日本語の論文を参考に)、著者自身が英訳をした場合などです。
パターン [III]:
お客様側で日本語原稿をAI翻訳した場合となります。
ネイティブチェックがベストな解決策でない場合も?
では上述のパターンにおいてネイティブチェックを依頼する場合、お客様にとってベストな提案とはどういうものになるでしょうか。以下に、弊社によくお問合せのある典型的なご相談内容と、翻訳品質、ご提案するサービスについてまとめてみます。
お客様の中での品質認識 | 元原稿のネイティブ度合い (弊社判断) |
最終的なご提案 | |
[I]-1(原文あり) | 現状の翻訳品質に問題はない(誤訳はない) | ◎ | ブラッシュアップ |
[I]-2(原文あり) | 現状の翻訳品質にやや不安がある | 〇 | 文法・表現チェック |
[I]-3(原文あり) | 現状の翻訳品質に不安がある | △ | 文法・表現チェック |
[I]-4(原文あり) | 現状の翻訳品質に不満をもっている | × | 再翻訳 |
[II]-1(原文なし) | 現状の翻訳は完成形に近い | ◎ | ブラッシュアップ |
[II]-2(原文なし) | 現状の翻訳は下書きに近い | △ | サービス対象外 |
[III]-1(AI翻訳) | AI翻訳をそのまま使っても会社的には問題ないが、一応チェックがほしい | 〇 | ライトポストエディット |
[III]-2(AI翻訳) | AI翻訳でコストを最小限にし、効果を最大化したい | × | 再翻訳 |
ネイティブチェックのご相談:ケース1([I]-1 原文あり)
- ご相談内容
実力のある翻訳者に翻訳を依頼したが(現状の翻訳品質に問題はない)、第三者の目線で念のためもう一度確認をお願いしたい。あるいは、英語表現をもう少し向上させたい。 - お客様の中での品質認識
現状の翻訳品質に問題はない(誤訳はない)
➡ - 元翻訳のネイティブ度合いの判定
◎(そのままでも十分通用する翻訳品質) - 最終的なご提案
「英語ネイティブによるブラッシュアップ作業」をご提案します。対象読者や、マーケティング層に合わせて、よりよい文章になるように、英語ネイティブがチェックし、必要に応じて修正します。
ネイティブチェックのご相談:ケース2([I]-2 原文あり)
- ご相談内容
英訳に慣れた翻訳者に翻訳を依頼したが(現状の翻訳品質にやや不安がある)、文法や表現が本当にネイティブに響くものになっているかチェックしてほしい。 - お客様の中での品質認識
現状の翻訳品質にやや不安がある
➡ - 元翻訳のネイティブ度合いの判定
〇(翻訳をしただけで、チェックが入っていない状態の可能性あり) - 最終的なご提案
「英語ネイティブによる文法・表現チェック作業」をご提案します。 英訳に慣れた翻訳者でも、自分の専門分野以外となると、不自然な用語や表現となる場合があります。WIPでは専門分野にマッチした人材によって作業をいたします。
ネイティブチェックのご相談:ケース3([I]-3 原文あり)
- ご相談内容
社内で翻訳したが(現状の翻訳品質に不安がある)、英語に問題がないかチェックしてほしい - お客様の中での品質認識
現状の翻訳品質に不安がある
➡ - 元翻訳のネイティブ度合いの判定
△(ネイティブでない人、あるいは翻訳に慣れていない人が翻訳をしている可能性あり) - 最終的なご提案
「英語ネイティブによる文法・表現チェック作業」をご提案します。 翻訳の分野によっては決まった言い回しがあります。翻訳に慣れているかどうかで、品質も大きく変わってきます。元の翻訳のネイティブ度合いが極端に低い場合は、品質向上があまり見込めませんので、再翻訳をお勧めします。
ネイティブチェックのご相談:ケース4([I]-4 原文あり)
- ご相談内容
他の翻訳会社で翻訳したが品質が悪く(現状の翻訳品質を疑っている、不満をもっている)、再度チェックをお願いしたい。 - お客様の中での品質認識
現状の翻訳品質に不満をもっている
➡ - 元翻訳のネイティブ度合いの判定
×(誰が、どのように翻訳したのかわからない。品質的には粗悪。) - 最終的なご提案
「英語ネイティブによる再翻訳」をご提案します。残念ながら、粗悪な翻訳はいくら磨いてもよくなりません。お客様にとっては追加の費用発生となり、さらに頭を悩ませる結果かもしれません。しかし、粗悪な翻訳が引き起こしていたかもしれない将来的なクレームと、再翻訳によるコストのどちらが大きくなりそうでしょうか。予算が限られている場合は、どうしても必要な個所だけ再翻訳するなど、ベストなご提案をさせていただきます。
ネイティブチェックのご相談:ケース5([II]-1 原文なし)
- ご相談内容
日本語の資料を元に、英文作成能力のある方が英語で直接原稿を作成した(現状の文章は完成形に近い)。このままの文章で、意味が伝わるかチェックしてほしい。 - お客様の中での品質認識
現状の文章は完成形に近い
➡ - 元翻訳のネイティブ度合いの判定
◎(そのままでも十分通用する翻訳) - 最終的なご提案
「英語ネイティブによるブラッシュアップ作業」をご提案します。 ただし、お客様が英語に慣れているということが条件です。日本語原文がありませんので、修正した箇所について、最終的な理解・判断できるのはお客様ご自身だけです。もちろん、特にご質問したい個所がある場合などについては、修正意図についてフィードバックしご説明することも可能ですが、文章全体に渡ってフィードバックをすることはできません。
ネイティブチェックのご相談:ケース6([II]-2 原文なし)
- ご相談内容
日本語の資料を元に、辞書で調べながら英語で直接原稿を作成した。ネイティブに伝わるような表現に修正してほしい。 - お客様の中での品質認識
現状の文章は下書きに近い
➡ - 元翻訳のネイティブ度合いの判定
△(ドラフト的な品質で、完成度合いが低い状態) - 最終的なご提案
大変申し訳ございませんが、弊社(および通常の翻訳会社)のサービス対象外となります。 論文作成サービスを提供している業者に相談するのが最善でしょう。
ネイティブチェックのご相談:ケース7([III]-1 AI翻訳)
- ご相談内容
AI翻訳で出力したものを少し修正した。文法や表現がネイティブにわかるようになっているかチェックしたい。 - お客様の中での品質認識
AI翻訳をそのまま使っても自社的には問題ないが、一応チェックがほしい
➡ - 元翻訳のネイティブ度合いの判定
〇(そのままでも意味は通じる状態) - 最終的なご提案
「ライトポストエディット」をご提案します。場合によっては、弊社で採用しているAI翻訳エンジンを使用させていただきます。AI翻訳後、英語ネイティブがAI翻訳特有のエラーの除去し、また自然な表現になるように修正いたします。ただし、よりネイティブらしい文章にしたい場合は、一から英語ネイティブによる再翻訳をする方がよいでしょう。
ネイティブチェックのご相談:ケース8([III]-2 AI翻訳)
- ご相談内容
AI翻訳で出力したものを少し修正した。集客目的で使用したいので、ネイティブに伝わるかチェックしてほしい。 - お客様の中での品質認識
品質よりも、AI翻訳でコストを最小限にしたい
➡ - 元翻訳のネイティブ度合いの判定
×(いくら修正してもお客様の目的には届かない品質の状態) - 最終的なご提案
品質とコストは比例します。コストを最小限にして、品質を最大化させることはできません。もし翻訳にコストをかけなかったことが原因で、集客目標が達成できなかったとしたら、本末転倒ではないでしょうか。品質とコストには、よいバランスが保たれる場所がどこかにあるはずです。弊社では、お客様の目的に適った翻訳フローの提案をさせていただいています。それが、再翻訳となるのか、AI翻訳を活用したフローになるのか、一度じっくりとお客様のビジネスについてお話をお聞かせください。
ネイティブチェックですべて解決するのか?
さて、8つのケースについて詳細をみてきました。ネイティブチェックで、すべて解決できそうでしょうか。残念ながらネイティブチェックという言葉は、何か翻訳品質を劇的に向上させてくれる魔法の言葉や保険のようなものではありません。そもそも、ネイティブチェックを必要としない翻訳フローもあります。
翻訳コストを下げるために、非ネイティブが翻訳したものをネイティブがチェックして品質を担保することもある程度は可能でしょう。しかし、それでビジネスの目的は達成されそうでしょうか。もしそうであるならば、心配することはないでしょう。
しかし、必要以上に品質を下げてまでコストを圧縮しているような場合、本当の意味でコストを削減しているのかを考える必要がありそうです。結果として、「追加の翻訳費用が発生してしまった」、「クレームが多く逆に社内コストが増えた」、「思ったように売れない」など、粗悪な翻訳が原因でコストが増大してしまう可能性はないでしょうか。
品質と翻訳コストは比例します。しかし、翻訳コストを限りなくかければいいというものでもありません。お客様にとっての費用対効果を最大にさせるような品質とコストのバランスが存在するはずです。
WIPジャパンでは、お客様のビジネス目的に合わせて、品質とコストのバランスの取れた最適解をご提案しています。お客様の最大の関心はどこにありますか。ぜひ、お客様の課題をお聞かせください。
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