一般的に「旅行」は、旅行前の準備、旅行の最中、旅行後の期間に分けることができます。インバウンドを含め最近では、これを「旅マエ」「旅ナカ」「旅アト」ということが多くなっています。「旅マエ」よりも前の、旅行先を決める段階となる「プレ旅マエ」もあります。それぞれ次のような特徴があります。
- プレ旅マエ:訪日の約4ヶ月以上前、旅行へ行くかどうか、旅行先を決める期間
旅マエ:訪日の約1ヶ月~3ヶ月前、旅行先での計画を立てる期間
旅ナカ:旅行中
旅アト:帰国後1ヶ月程度、旅の思い出をSNSに投稿したりお土産を配ったりする期間
「旅アト」のススメ
それでは「旅アト」とは外国人観光客にとってどのようなものでしょうか。
外国人観光客は「旅アト」で、SNSに動画や写真を投稿したり、お土産を渡したりして、旅行の余韻に浸るといわれています。私たちも国内・海外問わず旅行をした後は、似たような行動が多いと思われます。
その時、ふと旅行先のお土産をまた買いたいと思うことはないでしょうか?お土産を渡された人も、自分も買いたいと思うかもしれません。
そんな旅アトの消費活動に、役立つのが越境ECといえます。越境ECでは、WEBプラットフォームを通して、外国の消費者に商品を販売することができます。訪日旅行で商品の魅力を知った外国人観光客に、さらには、それをお土産として受け取った人に、越境ECを通して商品をリピート購入または新規購入してもらい、消費を促すことが可能です。
日本の歴史的資源や体験型観光などで、それに伴う商品や伝統文化に魅力を感じてもらえたのなら、それらを一過性のものにするのは非常に勿体ないです。自国にいながら、日本の商品や伝統文化に触れてもらい購入してもらう、周りに魅力を伝えてもらう。インバウンドの「旅アト」期間は、商品の継続的な購入やリピーター獲得、新規顧客獲得の絶好の機会となります。
さらに、「旅アト」という帰国後一か月程度の期間だけではなく、その後もファンとして自国で購入し続けてもらえる可能性もあります。一方で、越境ECに未対応であったり、多言語対応が不十分だったりすると、折角の「旅アト」市場を逃してしまいかねません。
「訪日時に発見した商品や、購入した商品を帰国後に越境ECで購入したことはありますか?」という質問に対して、35.4%が経験ありと回答したアンケート結果があります。その際、商品のリピート購入など以外に、家電やアウトドア用品などの大きさや重さがある商品に対しても、越境EC活用の傾向がみられたそうです。
2023年7~8月 「海外旅行および訪日旅行における消費行動と越境EC」に関するアンケート調査
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出典:BEENOS株式会社 越境ECを利用する海外のお客様749名に聞いた、海外・訪日旅行の消費行動と越境EC利用に関するアンケート
ところで、越境ECサイトにはどのようなものがあるのでしょうか。外国人観光客の国や地域ごとで、人気のECサイトは異なるかもしれません。以下は訪日外客数の2023年各国・地域別の内訳となります。韓国、中国、香港、アメリカの順に訪日外客数が多いことがわかります。
2023年 各国・地域別の内訳
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出典:日本政府観光局(JNTO) 日本の観光統計データ
https://statistics.jnto.go.jp/graph/#graph--trends--by--country
以下はそれらの国の越境ECの代表例です。
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G-market:韓国最大の越境EC、日本版のG-market JAPANもある
天猫国際(Tmall Global):中国最大の越境ECであり、日本企業の出展も多い
Amazon:世界最大の越境ECとなり、多言語や多様な通貨に対応可能
国や地域ごとで人気の越境ECが異なることは、「旅アト」消費を促していく際に留意したいところです。
日本の越境ECへの取り組み
日本貿易振興機構(JETRO)では、日本企業が越境ECを通じて外国市場での販売を促進できるように、複数の事業が立ち上げられています。2023度では、上述の天猫国際(Tmall Global)が運営する直営店への出品販売を支援していました。(https://www.jetro.go.jp/services/tmall_global.html)
2024年度では以下のようなものがあります。
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JETROの日本企業に対する越境ECを通じた販売支援事業
JAPAN MALL事業:
世界各国で連携するECバイヤーに商品を紹介する事業
(https://www.jetro.go.jp/services/japan_mall.html)
JAPAN STORE事業:
米国/英国Amazon越境ECへの出品支援事業
両事業ともに既に実績があり、食料品や化粧品、包丁などの日用品、伝統工芸などさまざまな商品や企業が、これを機に海外に紹介されています。
インバウンド市場へのアピールに必要な多言語対応
上述でインバウンドにおける「プレ旅マエ」「旅マエ」「旅ナカ」「旅アト」それぞれの特徴に触れました。インバウンド市場は総じて、多言語対応が不可欠なものであるといえます。
「旅」の期間ごとに必要な多言語対応
「プレ旅マエ」「旅マエ」では旅の計画や準備として多言語WEBサイトが最も活躍するでしょう。多言語対応のものを用意しなくとも、スマートフォンやPCにある自動翻訳機能を使って魅力を知ってもらい、来てもらえば良いと思う人もいるかもしれません。しかし、文化や母語の異なる人に、すべてをアピールするのは容易ではありません。
「旅ナカ」では多言語対応の案内板やガイドブックが大いに役立ちます。旅行中にふと寄ってみようと思った際の現地ツアーの申し込みなどでは、多言語WEBサイトが活躍します。既に外国人観光客の集客に成功している多くの観光地は、マーケティングに力を入れながら、観光インフラを整備している傾向にあります。
そして消費活動の促進という観点から、「旅アト」では越境ECが特に活躍します。多言語対応や支援事業を活用して海外に情報発信することで、リピーター獲得だけでなく、新規顧客の獲得も期待できます。
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「旅」の期間ごとに活躍する多言語対応
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「プレ旅マエ」「旅マエ」:多言語WEBサイト
「旅ナカ」:多言語対応の案内板やガイドブック、多言語WEBサイト
「旅アト」:越境EC
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