翻訳品質とは何か?
「翻訳品質」と聞いて、何をイメージされるでしょうか? 訳文の文法・表現の正確さ? 外国語としての自然さ? 読み手への伝わりやすさ?
翻訳品質について、一般にはこのように「訳文そのもののクオリティー」を指すと理解されることが多く、実際、翻訳業界でもそうしたニュアンスで語られるのが普通です。
もちろん、これはこれで正しいのですが、私たちはやや違った角度で「翻訳品質」をとらえています。
WIPが考える翻訳品質の定義:
仕上り、スピード、料金という3つの要素から総合的に判断される(翻訳会社が提供する)翻訳サービス全体の品質
たとえば、仕上りのよい翻訳データを提供できたとしても、納期に遅れたり、予算を超えてしまったりしては、その翻訳会社の翻訳品質はお客様にとって満足のいくものとは言えません。ベストな翻訳品質とは、仕上り、スピード、料金のそれぞれにおいてお客様が事前に納得され、そのお客様の要望通りにサービスが提供できている状態です。
ところで、仕上り、スピード、料金の3つの要素のバランスは、お客様の業種や案件によっても変わってきます。そこでWIPジャパンでは、お客様へのヒアリングを通して3つのバランスが最適解となるような翻訳品質への提案を行っています。
ヒアリングでは、お客様はどのようなことを重視されているのか、業種や案件に特徴的なことは何か、お客様が悩んでおられる課題は何か、などを詳しく聴き取っていきます。
では、お客様の課題によって、どのようにすればベストな翻訳品質を得られるのかについて以下に説明していきます。やや簡略化していますが、仕上り、スピード、料金のそれぞれを優先した場合に分けて事例を紹介していますのでご参考となりましたら幸いです。
優先別で考える翻訳品質と事例
お客様が重視されているのは、仕上りでしょうか、スピード、あるいは料金でしょうか。例えば仕上りを重視したい場合であっても、お客様の目的によってベストな翻訳品質はケースバイケースで異なってきます。
では、仕上り、スピード、料金のそれぞれを重視したい場合に分けて、「ベストな翻訳品質とは何か」をみていきます。
1. 仕上り重視の事例
仕上りは全体的な翻訳品質に大きく影響することもあり、お客様の最優先事項であることが多い印象です。では、仕上りを重視したい場合に(できれば翻訳会社に問い合わせる際に)、確認しておくべきポイントを説明したいと思います。
実は翻訳における仕上りというのは、本来「良し悪し」で定義されるものではありません。例えば「仕上りの悪い」訳文があったとすると、それはそもそも仕上りが悪いのではなく、単に訳文としての基準が満たされていないだけという場合が結構あります。この「訳文としての基準」は、翻訳会社としての「当たり前品質」あるいは「実力」と言い換えることもできます。当然のことながら、翻訳会社によって「当たり前品質(実力)」も違いますので、まずは信頼できる翻訳会社の選び方がポイントになってきます。
では、仕上りとはいったい何でしょうか。
WIPジャパンではヒアリングの際に「翻訳を使用される目的は何ですか?」とお客様に質問します。つまり、仕上りとは、お客様の目的に適った訳文の度合い(レベル)なのです。これはある意味、ドレス選びに似ているかもしれません。お客様が必要とするシーンに相応しい演出となるように、訳文の仕上りレベルの設定が重要となります。
どのような目的で、あるいはどのようなビジネスシーンで翻訳が必要となるのかを、まず翻訳会社の担当者にお伝えください。その情報を元に、適切な仕上りレベルをご提案させていただきます。
以下に、仕上り重視のお客様への提案例の事例をご紹介します。
仕上り重視の事例1
【企業ジャンル】和食・日本酒
【お客様の課題】
- ・ネイティブが読みやすい良質の訳文テキストで、英語版WEBサイトを充実させたい
- ・英語だけでなく、その他の言語でも情報発信し、幅広いビューワーを獲得したい
【お客様が感じられたメリット】
- ・外国語版WEBサイトをご覧になったお客様から、「魅力的な写真に加えて、とても読みやすいテキストのおかげで楽しめた」との好意的な声を多数いただいた
- ・さまざまな国・地域のお客様へ、多言語での情報発信が可能になった
【WIPのソリューション】
- ・方向性について、事前にオンラインでヒアリングを実施
- ・ヒアリングを元に、適材適所の翻訳チームを編成
- ・パイロット版として試訳を作成し、ご検収後にフル翻訳に移行
仕上り重視の事例2
【企業ジャンル】出版社
【お客様の課題】
- ・世界の企業エグゼクティブや目の肥えた読者にとって魅力的な読み物を作りたい
- ・オリジナル記事(日本語)が培ってきたテイストや世界観(=エンドクライアントから要請されている刊行誌としての品位)を損なわずに翻訳してほしい
【お客様が感じられたメリット】
- ・別の案件で翻訳を依頼していて、翻訳のクオリティーと担当者の対応に安定感を感じた
- ・今回の翻訳は日本文化・日本特有な内容が多かったが、テイストや世界観も期待どおりに仕上げてもらえた
【WIPのソリューション】
- ・パイロット版試訳による方向性/訳文テイストなどのすり合わせ
- ・専任スタッフの固定化、事前スケジュール調整(同じ翻訳者とチェッカーが長期的に担当)
2. スピード(納期)重視の事例
お客様の中には翻訳のお問い合わせをする時点で、すでに納期が決まっているという場合があります。翻訳作業はお客様のプロジェクトの一部であり、翻訳に割ける期間が限定されているというのが現実ではないでしょうか。また、急に仕事が発生し、至急翻訳をお願いしたいというお問い合せもあります。
お客様が通常の翻訳スピードをご存じであることは稀です。実はざっくりと計算することができるのですが、例えば日英翻訳のビジネス分野であれば、全体の文字数(例:1万文字)を2,000~2,500で割った数字+3がおおよその通常納期(例:4~5+3=7~8営業日)となります。「大体、それぐらいの日数になるのだなあ」と参考までに覚えておいてください。実際には、言語ペアや、文章の内容、専門性によって納期は多少変わってきます。
一般的に、急ぐと雑になるというイメージをもたれるかもしれませんが、納期を早めるからといって、その翻訳会社の「当たり前品質」が変わるということではありません。お客様の目的に適った仕上りにならないのであれば、翻訳会社としても急いでも意味がないからです。では、当たり前品質を変えずに、通常納期よりも納期を早める方法には、どのようなものがあるのでしょうか。
納期を早める方法と、納期を早めることで全体的な翻訳品質をバランスどのように調整すればよいのか、以下にスピード重視のお客様への提案例の事例をご紹介します。
スピード重視の事例
【企業ジャンル】グルメ情報サイト
【お客様の課題】
- ・決して難しい内容ではないが、とにかくボリュームが多い
- ・プロジェクトの関係で、翻訳に割ける期間が短い(短納期)
【お客様が感じられたメリット】
- ・無理な納期にも、しっかりと間に合わせてもらえて、たいへん助かった
- ・大量の翻訳にもかかわらず、品質レベルを維持してもらえた
【WIPのソリューション】
- ・AI翻訳と人力翻訳のストロングポイントを掛け合わせた提案
- ・大規模プロジェクト、大量翻訳の実績を活かした制作体制の安定感
3. 料金(予算)重視の事例
まずは翻訳会社の翻訳料金表で、大まかな金額を把握しておきましょう。料金表にある金額がそのまま実際の翻訳料金になるわけではなく、お客様の案件の条件によって料金は安くもなり、高くもなります。
翻訳会社によっては「お客様ができるコスト削減の方法」を教えている場合があります。また、翻訳会社が提示した通常納期よりも納期を長めにできるのであれば、値下げの交渉を優位に進めることができます。必ずディスカウントとなるわけではありませんが、値引き交渉の際のカードとして事前に用意しておくのもよいでしょう。
そして何よりも、翻訳にかかるコストを翻訳料金だけで判断しないことも重要です。例えば、ヒアリングの際にお客様からこのような失敗談を伺うことがあります。「料金を重視して翻訳会社を選んだが、社内で想定外の修正や対応が必要となってしまった…」と。その翻訳会社はおそらく無料で修正に応じてくれたことでしょう。しかし、そのために社内のスタッフが翻訳会社に連絡をしたり、追加で社内確認作業を行ったりと、予想外の社内人的コストが発生することがあります。
ですから、翻訳コストを、「翻訳会社の翻訳料金」と「社内検収にかかるコスト」を合わせたものと考えるのが一番よいのです。翻訳料金を抑えすぎることで、逆に社内コストが増大するようなことがないように、WIPジャパンでは適切なコスト管理をお客様にお勧めしています。
では、適切なコストバランスは実際にはどのようになっているのか、以下に料金重視のお客様への提案例の事例をご紹介します。
料金重視の事例1
【企業ジャンル】広報・マーケティング
【お客様の課題】
- ・コストをできるだけ削減したいが、一定程度の品質は確保したい
- ・急に翻訳が必要になるときでも対応してほしい
- ・シーン別でどのようなソリューションがベストか相談したい
【お客様が感じられたメリット】
- ・望んでいた通りのクオリティーで、料金とのバランスにも納得している
- ・短期間の納期でも確実に対応してもらえる体制だった
- ・内容によって使い分けられるサービス(ソリューション)も案内してもらえた
【WIPのソリューション】
- ・PE(ポストエディット)ライトによる翻訳コスト低減+納期短縮
- ・簡単な文章の内容確認に最適な24時間/365日対応のYAQS(訳す)
料金重視の事例2
【企業ジャンル】建築・建設業関係
【お客様の課題】
- ・とにかくコスト削減
- ・社内資料用に翻訳が必要なのだが、予算に限りがある
【お客様が感じられたメリット】
- ・無事、予算内でプロジェクトを終えることができた
- ・翻訳の質についても、十分満足のいくレベルだった
【WIPのソリューション】
- ・PE(ポストエディット)ライトフローにより、通常の英日翻訳料金よりも30%コスト削減
- ・翻訳実績20年の制作管理体制で、コスト削減でも納得の品質を提供
まとめ
今回はわかったようでいてわかりにくい「翻訳品質」について、仕上り、スピード、料金という3つの重視項目別に紹介をさせていただきました。仕上り、スピード、料金のバランスをどのように実現させているのかについて、ご参考いただければ幸いです。