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日本は今後、人口急減に直面するが、特に地方では一層の問題となる。そんな中、国内市場だけに目を向けていては、地方の衰退は加速する。「日本語以外の市場」、すなわち外国語市場へ目を向ける必要があり、中でも訪日外国人観光客の集客は、地方の経済活性化における大きなチャンスとなるだろう。
今年1月、ニューヨーク・タイムズ紙の「2024年に行くべき52カ所」に山口市が選出され、2月にはワシントンポスト紙でも福井県が紹介された。この選出により地方が世界的に注目を集め、インバウンド需要の急増が予想される。
今後も、予期せぬ形で海外からの注目を集める地域が出現するだろう。突然のインバウンド需要の増加に備え、各地域で対応策を講じることが重要だ。
外国人観光客が滅多に訪れない地域では、魅力的な文化や自然がありながら、外国人視点の魅力に気づいていないことがある。しかも地域の事業者は外国人観光客を呼び込むための知識やネットワーク、資金が不足していることが多く、地域経済発展を妨げる要因となっている。
このような状況において、地域金融機関は重要な役割を担う。事業者への資金提供、経営サポート、専門家による教育啓発活動を通じて、事業者が以下のような持続可能なビジネスを展開できるよう支援することが求められている。
具体的にはまず、訪日前の情報発信が重要だ。地方の自然、文化、伝統行事などの魅力を、ウェブサイトやソーシャルメディアを通じて外国語で積極的に紹介し、外国人観光客の興味を引く。多言語での情報提供を行い、地域独自の魅力が伝わる内容にすることが大切だ。
訪日中の観光客に向けたサポート体制を整備も必要だ。決済方法の多様化や免税カウンターの設置、多言語に対応した接客などは非常に重要である。
また、体験型の活動は特に注目されている。地方の祭りやイベント、伝統工芸品の製作過程の見学、地元食材を使った料理教室などは、地域の文化や歴史を深く知ることができる絶好の機会だ。日本の伝統的な生活様式を体験できる古民家を活用した宿泊施設は、外国人観光客にとって魅力的で特に人気がある。
帰国後のフォローアップも重要だ。通信販売を活用して地域の特産品や工芸品などを提供し、リピート購入を促すことで長期的な関係構築を目指す。これにより、一度の訪問だけでなく、継続的な関心と経済効果を生み出すことができる。
こうしたビジネスを継続的にサポートし、新たな観光トレンドや技術の進展に敏感であれば、地域金融機関は単なる資金提供者としての役割を超え、地域の文化的・経済的な発展を担うキーパートナーとなることができる。
上田輝彦
WIPジャパン株式会社 代表取締役社長
住友銀行(現三井住友銀行)、ケンブリッジ大院を経て、多言語と海外市場を対象としたビジネスを展開、約1.2万社との取引実績。クールジャパン協議会理事、PRプランナー、インバウンド実務主任者等の肩書も持つ。