「品質×納得価格」の翻訳づくり
翻訳会社を選ぶ際に、どうしたら「納得のいく翻訳を提供できる翻訳会社」を見定めることができるのでしょうか。
品質が高い、価格が安い、といった一般的な判断基準は、どちらも間違ってはいません。しかし、品質か価格のどちらかだけで判断してしまうと、満足のいかない結果や思わぬコスト増につながることがあります。
発注後も満足できる翻訳会社を選ぶためには、まず翻訳がどのような工程で行われ、どのようにして価格が決定されているのかを調べることが必要です。
翻訳会社では、「翻訳+チェック+検収」という3段階の工程が最も一般的です。ただし、この極めて基本的な工程であっても、少なくとも3~4人のプレーヤーが関わっています。
では、同じ基本工程を採用していても、プレーヤーのレベルに「ムラ」があるとどうなるでしょうか。これが翻訳会社によって品質に差が出てくる理由の一つです。プレーヤーが代わっても同じアウトプットを出すためには、作業工程をある程度標準化することが求められます。
自社オリジナルの工程で標準化している翻訳会社もあれば、ISOなどの国際規格を取り入れて第三者による検証を可能にしている翻訳会社もあります。
※ 翻訳の国際規格ISO17100については、こちらの記事「翻訳サービスの国際規格:ISO17100とは」を参照ください。
どちらにしても、品質管理体制についてしっかりと標準化されていることを確認しておきましょう。
「翻訳価格」の差異は、「どこに、どれだけのコストをかけるのか」という翻訳会社のスタンスの違いの表れでもあります。
一般的に翻訳の価格は、「求められる品質(+専門性)」「翻訳が必要な分量」「納期スケジュール」の3つによって変動します。しかしながら、このことは「どうして翻訳会社の間で価格の差があるのか?」ということの説明になっていません。
翻訳会社を「品質と納得価格で選ぶ」うえで、最終的に提案された翻訳価格にどのような工夫や企業努力が秘められているのかを知ることはとても有益です。
「品質」「分量」「スケジュール」という軸だけでは見えてこない、翻訳価格に表れる翻訳会社の「投資スタンス(=どこにどれだけのコストをかけるのか)」について、次に説明していきます。
ここでは、WIPジャパンの取り組み(投資スタンス)をご紹介します。
翻訳価格のうちで大きな部分を占めているのが「翻訳原価(仕入れ原価)」と呼ばれるものです。お客様にご納得いただける価格を提示するためには、この「翻訳原価」を抑える努力が必要となります。
一方、お客様に安心のサービスを提供するためには、単に「安い翻訳を仕入れたらよい(安ければいい)」わけでもありません。翻訳会社は、「よい品質の翻訳を、しかも適性価格で提供できる」協力者(仕入れ先)を探さなければなりません。そこには近道はなく、実に地道な努力の積み重ねがあります。
年間一定量の翻訳を供給し続ける翻訳会社は、おのずと多くの翻訳者を確保し、また継続的に拡充(募集)しています。そうしたリクルート活動を、私たちはとりわけ重要なこととして位置づけています。
なぜなら、それは安定した品質を維持するために必須であるだけでなく、翻訳者との絆を刷新し、より強固なものにするからです。協力者である翻訳者との深い信頼関係こそが翻訳サービスの根幹をなすものである、と私たちは考えています。
日頃から有望な翻訳者にコンタクトし、専門分野や対象言語、実績などが基準を満たす協力者であれば、登録前に品質チェック(トライアル)を実施します。WIPジャパンでは、応募から新規登録までの期間を、通常2~3週間としています。優秀な翻訳者への需要は高く、翻訳者獲得で各社が競い合うこともしばしば。スピードとタイミングは非常に重要となります。
通常業務が比較的落ち着いている時期に、特に積極的に翻訳者拡充を行っています。応募者が多数あっても、同じ分野を一括して対応することで、評価・選定時間を短縮することができます。全応募者を個別に評価することに変わりありませんが、こうした効率化の努力を続けるなか、間接コストを極限に抑えた最適な翻訳価格をお客様に提供したいと考えています。
お客様にサービスを知っていただき、さらにご発注をいただくためには、営業活動や顧客満足度(CS)調査が欠かせません。これらの活動にかかるコストに対する考え方からも、翻訳会社の投資スタンスがわかります。
現在、私たちWIPジャパンにはいわゆる「種まき営業」を行う営業専任スタッフは存在しません。潜在的な課題がありそうなお客様を一社一社訪問し、または電話をかけるなどして「お困りごと」がないかを聞いて回る営業活動の大切さを良く知る私たちですが、新型コロナウイルス感染拡大に伴う経済・社会の変化を機に、思い切って「種まき営業」をコンテンツマーケティングという手法に絞ることにしました。
コンテンツマーケティングでは、自社のサービス内容、お客様のニーズや課題解決の方法、また翻訳業界動向についてなど、翻訳発注にあたって参照いただける情報を、ブログ記事(コンテンツ)としてウェブサイトに掲載します。
また、MA(マーケティングオートメーション)ツールやCMS(コンテンツ管理システム)を導入することで、煩雑だったコンテンツ作成やサイト更新の手間も大幅に削減しました。さらにチャットツールのSlackと連携することで、お客様からのご相談やご納品後の声はもちろんのこと、社内で共有すべき情報に今まで以上に迅速に対応できるようになっています。
営業体制のスリム化で外部環境要因による余剰人員の問題も軽減され、またZoomなどのオンライン会議ツールを積極的に導入しているため、お客様の貴重な時間を不必要に奪うこともありません。
このように営業コストを大幅に圧縮することで、結果的にお客様への適正価格を実現することが第一だと考えています。
「適性価格」を実現するうえでWIPが最も重視するのが、お客様のご希望や課題をお伺いする「ヒアリング」です。翻訳づくりで多言語課題を解決するコンサルタントとして、営業コストを極限まで抑制しても、やはり時間をかけて丁寧にヒアリングする姿勢は譲れません。それが「適性価格」と「品質」に大きく影響するからです。
翻訳業界でも、フローを自動化(無人化)してすべてをウェブサイト上で完結させることも可能でしょう。にもかかわらず、時間とコストをかけて「ヒアリング」を行うのは、WIPならではの品質へのこだわりがあるからです。
翻訳を初めて依頼するお客様にとって、仕上りを比較・対照できる既成の商品はありません。つまり、作業が完成するまでどんな商品(翻訳)が届くかわからないといえます。「納品された翻訳が思っていた品質と違い、手直しが大変だった」という苦い経験をされた方もおられるかもしれません。
それは大抵の場合、お客様が求められる品質と、翻訳会社が提供している品質との間にギャップがあるからです。そのギャップを埋めるために、WIPではお客様にしっかりとヒヤリングをしてから最適な翻訳づくりを設計し、お見積り提案しています。
ヒアリングは、旅行に例えるならフライトプラン(飛行計画)に似ています。
目的地を知らないまま、飛行機に搭乗するとしたらどうでしょうか。たとえすばらしい機内サービスがあったとしても、リラックスするどころか、どんな国に到着するのかもわからず不安になるでしょう。到着して予想外に喜ぶこともあれば、期待外れでがっかりしてしまうこともあるでしょう。
お客様が思い描いている目的地(翻訳の仕上りイメージ)と、私たちが想定している目的地(翻訳会社が実際に提供する品質)をすり合わせる作業が「ヒアリング」です。ヒアリングの手間を取らず、悪い意味でお客様をサプライズさせてしまっている翻訳会社もあります。翻訳プロジェクトが進行中も、そしてプロジェクト完了後もお客様にご安心いただけるように、WIPジャパンでは詳細なヒアリングをさせていただいています。
最近は、とてもうれしいことにお客様がWIPのブログ記事などをご覧になっていて、事前にしっかりとリサーチをされていると感じることがあります。実は、翻訳業界や翻訳の技術・知識には少し特殊な面もありますので、少しでもお客様が翻訳業界に通じておられれば、WIP担当者はお客様自身のビジネスやプロジェクトのコアな部分にもっとヒアリングの時間を割くことができます。
このようにWebサイト上で予めWIP側から積極的に情報発信していくことで、ヒアリングの精度をさらに高めることができ、お客様の翻訳の目的を実現するご提案ができると考えています。
WIPでは、お客様に満足していただくことをビジネスの基本としています。
お客様の翻訳プロジェクトが予定どおりに進んだ場合も、予想外の困難に見舞われた場合も、プロジェクト終了後にすべてのお客様にアンケートへの回答をお願いしています。
市場のグローバル化によってお客様のニーズも日々変化しています。アンケートという形でご意見をいただき、少しでもお客様にご満足いただけるように、サービスの向上や、品質管理体制の見直しを行っています。
なお、さらに翻訳料金を抑える方法として、アンケートをご活用いただくこともできます。WIPのサイトに社名やロゴ(あるいはイニシャル)の掲載を許可いただける場合、お得なディスカウントを用意しています。
お客様の率直な声をいただくことは、私たちスタッフ一人ひとりにとっての大きな喜びです。サービスに一段と磨きをかけ、お客様にご納得いただける品質と価格でご対応させていただくためにも、ぜひアンケートという形で私たちにご投資いただけますと幸いです。
外注費に対する努力や営業のスリム化などでコストを下げる一方で、品質レベルを維持することが翻訳会社に求められます。
その役を担うのがプロジェクトマネージャー(PM)、あるいは制作担当者とよばれるスタッフです。社外のPMが案件を担当している翻訳会社もありますが、WIPジャパンのPMはすべて社内スタッフです。
品質管理とコストダウンは一見すると相反する概念に思えますが、不要な作業や手間を削減し、作業工程をマニュアル化することでこれらを両立させています。
マニュアルで作業を標準化することの利点の一つは、プレーヤーが判断に迷う余地(時間的なロス)が少なくなることです。PMにしてみれば、時間を短縮できる分、同時に担当できる案件数が増えることになります。そうした効率化の積み重ねは、やがて個々の案件の単価を下げられるというお客様へのメリットにもつながります。
また、効率よく作業が進むとプレーヤーのモチベーションが向上します。社員のモチベーション維持と品質確保は無関係ではありません。
このように一定水準の品質を維持するための最善の環境整備への投資こそが、結果的にお客様へのメリットとなるところに、翻訳づくりの面白さがあると思っています。
WIPジャパンではお客様と一緒になって翻訳をつくり上げていくことをモットーとしています。お客様に普段お伝えできていないような翻訳づくりの裏舞台について、これからもできるだけブログ「世界とつながるメディア」で発信をしていきたいと思っています。
分量の大きな案件や、今までフローとは異なる対応が必要な案件は、プロジェクトマネージャー(PM)の腕の見せ所であり、新たな挑戦でもあります。翻訳支援ツール(CAT)を使用して大量のデータを一度に処理したり一括外注管理するなど、プロジェクトの特性に合った様々な工夫をこらすことで、お客様へのコストダウン提案を実現しています。
大型案件では、一定期間に渡って同じ翻訳者が担当するため、品質面で安定するというメリットがあります。ただし、ファイル数が多いと対応する翻訳者の負担も大きくなりますので、スケジュール管理やフォローアップを社内PMのほうでしっかりと行います。翻訳者に効果的かつ積極的に作業をしてもらうための環境整備は、大型案件に限らず、品質管理面での重要な要素です。
また、AIをはじめとする様々な技術が開発され、翻訳会社が扱うドキュメントの種類も多様になってきています。ワードやエクセルしか受けつけない翻訳会社は、今後どんどん取り残されていくかもしれません。お客様のローカリゼーションのニーズに合わせて、独自のファイル処理やフローを構築することも社内で積極的に推奨しています。「できないではなく、どうすればできるようになるのか」を考えることは私たちの変わらぬ姿勢です。
たとえ受注に至らなかったとしても、お客様が直面している課題について一人ひとりが真剣に考えることで、新たなアイディアが生まれます。そうしたブレークスルーを活用して翻訳工程を工夫するのがWIPであり、新たなサービスやよりよい品質を常に適正価格で提供し続けたいと考えています。
WIPジャパンの根底には「質の高い翻訳」を届けたいという強い思いがあります。すでに25年以上の翻訳実績がありますが、それを支えてきたのが独自の標準作業手順書に基づく万全の品質管理体制です。
加えて、WIPジャパンのそうした品質管理体制はISO17100の認証を受けています。翻訳会社としてISOの取得は義務ではありませんが、この認証を受けたことで、品質管理に対するスタッフのさらなる意識向上につながっています。
翻訳づくりに大切な「品質」と「価格」について、翻訳会社の投資スタンスという視点で解説しました。翻訳会社選びの際は、ぜひ品質と価格の両方を考慮してご検討されることをおすすめします。
また、翻訳会社の投資スタンスを見ることで、お客様の大切な翻訳資産の形成を委ねられる、信頼できる翻訳会社かどうかをご判断いただければと思います。
ご発注の検討段階で何か気になることがありましたら、お気軽にお声がけいただけますと幸いです。ご希望でしたらZoomなどでも随時ご面談(ヒアリング)させていただきます。