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May. 29, 2026

登記事項証明書の海外提出と翻訳:履歴事項全部証明書と現在事項証明書の選び方


海外の行政機関や金融機関への手続きで、日本の登記事項証明書の提出を求められることがあります。その際、「履歴事項全部証明書」と「現在事項証明書」のどちらを用意すればよいか、迷う方は少なくありません。

結論から言うと、「どちらが正解」という一律のルールはありません。提出先が何の目的でどの情報を必要としているかによって、適切な書類は変わります。

本記事では、海外提出の実務でよく出てくる事例をもとに、2種類の証明書の使い分けと、事前に確認すべきポイントを整理します。

※本記事は一般的な実務上の参考情報を提供するものです。提出可否・法的有効性の判断は、提出先機関や専門家にご確認ください。

 

 

1. 2種類の証明書の違い

登記事項証明書には複数の種類があります。まず代表的な2種類の違いを確認します。

種類 主な内容 特徴
履歴事項全部証明書 現在の登記事項 + 一定期間内の変更履歴 情報量が多い。ページ数が増えやすい
現在事項証明書 現在有効な登記事項を中心に記載 ページ数を抑えやすい

現在事項証明書は「現在の情報のみ」ではありません。法務省の定義によれば、現在有効な登記事項に加え、会社の成立年月日、役員の就任年月日、直前の商号・本店変更情報なども記載されます。提出先が「現在の法人情報を確認したい」という目的であれば、現在事項証明書でも一定の情報をカバーできます。

履歴事項全部証明書も「会社の全歴史」ではありません。法務省の定義では、請求時点からさかのぼった一定期間(おおむね直近3年程度)の変更履歴が対象です。それ以前の非常に古い履歴が必要な場合は、閉鎖事項証明書など別途追加資料が必要になることがあります。

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2. 提出先によって必要な書類が変わる——実際の事例

海外の機関は、日本の「履歴事項全部証明書」「現在事項証明書」という区分をそのまま前提にしていないことが多く、要件の書き方は機関によってさまざまです。

 

履歴事項全部証明書を名指しで指定している例

事例:Wise(ワイズ)日本事業者向けKYC

法人番号・取締役情報・実質的支配者情報とともに、発行から6か月以内の「履歴事項全部証明書(Certificate of Registered Matters)」を明示的に求めています。書類の種類が名指しで指定されている場合は、その指定に従うことが基本です。

機能ベースで現在の法人情報を求めている例

多くの海外機関は書類の種類を名指しせず、確認したい情報の内容で要件を示しています。

事例:Wise(一般の事業者確認)

「certificate of incorporation(設立証明書)」「official registry excerpt(登記抄本相当)」などを例示。特定の日本書類を指定していません。

事例:Airbnb(法人確認)

日本の事業者向けに「登記謄本(Touki)」を提出書類の一つとして挙げていますが、「履歴事項全部」か「現在事項」かは特定していません。

事例:シンガポール ACRA(外国会社の支店登録)

設立証明書・定款・必要に応じた財務諸表を要求しており、日本特有の書類名は要求していません。ただし英語以外の書類には認証済みの英訳が必要です。

事例:英国 Companies House(海外会社の登録)

現在の取締役・登録住所・会社目的等を示す書類を求めており、現在の登録情報の証明を重視した設計です。


これらの事例から、「海外提出だから必ず履歴事項全部証明書が必要」とは限らないことがわかります。まず提出先が何の情報を求めているかを確認することが、最初のステップです。

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3. 翻訳・認証で確認すべきポイント

証明書の種類だけでなく、翻訳・認証に関する要件もあわせて事前確認が必要です。

確認チェックリスト

履歴事項全部証明書が必須か、現在事項証明書でも受理されるか

全文翻訳が必要か、必要な箇所のみでも可能か

翻訳証明書(翻訳会社による証明)が必要か

アポスティーユ・公証・認証が必要か

原本の発行日に有効期限の条件があるか

英訳の形式・書式に指定があるか

登記事項証明書以外に追加書類(定款・株主名簿・財務諸表など)が必要か

発行日の有効期限は「日本側」と「提出先」の両方を確認

発行日の要件は、日本側の認証手続きと提出先側で異なる場合があり、両方を満たす必要があります。

確認先 有効期限の条件
外務省(アポスティーユ・公印確認) 発行日から 3か月以内 の原本
Wise(日本事業者向け) 発行日から 6か月以内
シンガポール ACRA(支店登録) 認証日から 4か月以内

たとえば「WiseへのKYC提出にアポスティーユが必要」な場合は、外務省の3か月要件とWiseの6か月要件の両方を満たすタイミングで手続きを進める必要があります。

注意:登記情報提供サービスのPDFは正式書類ではありません
法務局の登記情報提供サービスから取得できるPDFには、証明文や公印が付加されないため、海外提出用の正式な登記事項証明書の代替にはなりません。海外提出には、法務局の窓口またはオンライン申請で取得した正式な証明書が必要です。

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4. 翻訳費用を抑えたい場合の選択肢

履歴事項全部証明書は変更履歴を含むため、会社によってはページ数が多くなり、翻訳費用も高くなりやすいです。費用を抑えたい場合、以下の選択肢を検討できます。

選択肢 内容・向いているケース 注意点
安全重視 履歴事項全部証明書を全文翻訳。提出先から指定されている場合や差し戻しを避けたい場合に向いています。 費用は高くなりますが、手戻りリスクを最小化できます。
コスト重視 事前確認が取れた場合に限り、現在事項証明書を翻訳。ページ数を抑えられるため費用の削減が見込めます。 後から履歴事項全部証明書が必要になった場合は追加費用が発生します。
翻訳範囲の調整 履歴事項全部証明書を使用しつつ、翻訳範囲を現在有効な事項に絞る。費用を一定程度抑えられる可能性があります。 全文翻訳が必要な場合は受理されないことがあります。事前確認が必要です。

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まとめ

  • 提出先が書類の種類を指定している場合:その指示に従う(例:Wise Japanは履歴事項全部証明書を指定)
  • 機能ベースで要件が書かれている場合:現在事項証明書で対応できる可能性がある(提出先への事前確認が必要)
  • 要件が不明で差し戻しのリスクが大きい場合:履歴事項全部証明書が安全寄りの選択
  • 翻訳・認証の条件も必ず確認:発行日の有効期限、アポスティーユの要否、翻訳証明の要否など

提出先の要件は機関によって異なります。まず提出先に確認し、書類の種類・翻訳範囲・認証の要否をあわせて決定することが、手戻りを防ぐ最短ルートです。

 

 

参考資料
・法務省「商業・法人登記 Q&A」https://www.moj.go.jp/MINJI/minji69.html#01
・外務省「公印確認・アポスティーユとは」https://www.mofa.go.jp/mofaj/toko/page22_000548.html
・Wise「How do I verify my Japanese business?」https://wise.com/help/articles/2972549/how-do-i-verify-my-japanese-business
   「How can I verify my business?」https://wise.com/help/articles/2769792/how-can-i-verify-my-business
・Airbnb Help Center「Providing business documents in order to get verifiedhttps://www.airbnb.com/help/article/3444
・Singapore ACRA「Registering as a foreign company branch」https://www.acra.gov.sg/register/foreign-business/foreign-company-branch/
・UK Companies House「Register as an overseas company」https://www.gov.uk/register-as-an-overseas-company
※各URLは変更される場合があります。最新情報は各機関の公式ウェブサイトでご確認ください。

 

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