海外で商品やサービスを展開するとき、ネーミングは単に「日本語を外国語に翻訳する」だけでは決められません。
日本では好意的に受け取られる名前でも、現地では別の意味を持っていたり、スラングやネガティブな言葉を連想させたりすることがあります。
そのため、グローバルブランドでは、最終的なブランド名を決める前に、対象市場の言語や文化を踏まえたネーミング調査を行うことがあります。
では、実際にはどのようなことを調べるのでしょうか。
本記事では、特定企業の案件や実績ではなく、海外展開を行う企業で一般的に想定されるネーミング調査の事例を取り上げ、どのような問題を確認し、どのように候補名を絞り込んでいくのかを解説します。
【結論】海外ネーミング調査では、「問題がない名前か」だけでなく、「現地でどのように受け取られるか」まで確認することが重要です。
一般的には、候補名について、現地語での意味、スラング、発音、ネガティブな連想、文化的なイメージなどを確認します。
さらに候補名を複数用意し、現地のターゲット層に評価してもらうことで、「どの名前が最も受け入れられやすいか」を比較する方法もあります。
また、言語・文化面の調査と商標調査は別の確認です。海外でブランド名として使用する場合は、必要に応じて商標面も別途確認することが重要です。
1.海外ネーミング調査では、まず何を確認する?
海外ネーミングの調査では、まず候補名を対象国の言語に照らして確認します。
確認する項目は、単純な翻訳だけではありません。
| 確認項目 | 確認する内容 |
|---|---|
| 意味 | 現地語で別の意味や好ましくない意味を持たないか |
| スラング | 俗語や口語表現として問題がないか |
| 発音 | 発音すると別の単語や表現に聞こえないか |
| 連想 | 現地の人がどのような言葉・商品・イメージを連想するか |
| 文化 | 文化・宗教・社会的背景から問題となる可能性がないか |
この段階では、「良い名前を決める」というよりも、まず海外で使用するうえで問題のある候補を除外するという考え方が基本になります。
2.事例①:日本では意味のない造語を海外で使うケース
海外向けの商品では、日本語として明確な意味を持たない造語をブランド名として使用するケースがあります。
この場合、一見すると特定言語の意味を持たないため安全に思えます。しかし、文字の組み合わせや発音が、現地語の単語やスラングに近い可能性があります。
例えば、候補名を英語圏、中国語圏、フランス語圏など複数の市場で使用する場合、言語ごとに発音や連想を確認する必要があります。
こうしたケースでは、辞書的な翻訳よりも、現地ネイティブによる「この名前を聞いたとき何を連想するか」という確認が重要になります。
3.事例②:日本語の名前をそのまま海外で使うケース
日本で認知されている商品名やサービス名を、そのまま海外でも使用するケースもあります。
この場合、名称そのものを変更しなくても問題ないことがありますが、海外の人がその名前をどう発音するのか、何を意味するように聞こえるのかは確認したほうがよいでしょう。
特に日本語由来の名前では、現地の人にとって意味のない音の組み合わせになる場合もあります。
一方、日本語の意味が現地でポジティブに受け取られるケースもあります。そのため、「外国語だから名称を変える」のではなく、現地市場でどのように受け止められるかを確認してから判断することが重要です。
4.事例③:複数候補から、現地で受け入れられやすい名前を選ぶケース
海外展開では、名称をゼロから調べるだけでなく、社内ですでに複数候補を作成したうえで、その中から有力な名前を選ぶケースもあります。
例えば5つの候補名について、現地のターゲット層にアンケートを行い、次のような項目を評価してもらいます。
-
覚えやすいか
-
好感が持てるか
-
高品質な印象があるか
-
商品・サービスをイメージしやすいか
-
購入してみたいと思うか
この方法では、単に「問題がない名前」を探すだけでなく、「複数候補の中で、どの名称がターゲットに最も好意的に受け止められるか」を比較できます。
候補名の決定を社内の感覚だけに頼らず、現地消費者の評価を参考にできる点が特徴です。
5.事例④:国によって候補名の評価が異なるケース
複数国で同じブランドを展開する場合、国によってネーミングの評価が異なることがあります。
例えば、候補Aは市場Xでは好意的に受け止められているものの、市場Yでは別の意味を連想される可能性があります。
このような場合、「世界共通で最も評価が高い名前」を探すだけではなく、各市場の評価を比較したうえで、
①グローバルで同じ名称を使う
②一部市場だけ名称を変える
③ブランド名と商品名を分ける
といった選択肢を検討することもできます。
つまり、ネーミング調査の結果は「採用・不採用」の二択だけではなく、ブランド戦略そのものを考える材料になる場合があります。
6.事例⑤:ネーミングのイメージを調べるケース
ネガティブな意味がないことを確認した後は、現地の消費者がその名前からどのようなイメージを持つのかを調べることもできます。
例えば、高級感を訴求したい商品であれば、「高級」「上質」「信頼できる」と感じる名前なのかを確認します。
反対に、若年層向けの商品であれば、「親しみやすい」「現代的」「楽しそう」といったイメージとの相性を確認することも考えられます。
この調査では、ネーミングそのものだけでなく、ブランドが目指すポジショニングと名称の印象が一致しているかを見ることがポイントです。
7.事例⑥:ネーミングの問題が発売後に発覚することを防ぐ
海外ネーミング調査の重要な役割の一つが、発売後の問題を未然に防ぐことです。
商品名が決まった後には、パッケージ、Webサイト、広告、営業資料、展示会など、多くのマーケティング活動で名称が使用されます。
その段階で現地語の問題が見つかると、名称の変更だけでなく、すでに作成した広告物やWebコンテンツなども修正する必要が生じる可能性があります。
そのため、候補名がある程度絞り込まれた時点で、海外市場での使用を想定したチェックを行うことが重要です。
8.ネーミング調査だけで商標の問題まで分かる?
ここは特に注意が必要です。
現地ネーミング調査と商標調査は、基本的に別の確認です。
ネーミング調査では、現地語の意味、スラング、発音、イメージなどを確認します。
一方、商標調査では、対象国・地域に同一または類似する商標が登録・出願されていないか、対象となる商品・サービスとの関係で問題がないかなどを確認します。
そのため、海外で長期的にブランドを展開する予定であれば、ネーミングの言語・文化面と商標面の両方を確認することが重要です。
9.一般的なネーミング調査の進め方
海外ネーミング調査は、次のような流れで進めると整理しやすくなります。
| 段階 | 主な内容 |
|---|---|
| ①候補作成 | 商品コンセプトやブランド方針をもとに複数候補を作成 |
| ②一次チェック | 辞書、検索、AIなどを使って明らかな問題を確認 |
| ③現地確認 | ネイティブによる意味、スラング、発音、文化的な連想などを確認 |
| ④イメージ調査 | 必要に応じて現地ターゲット層に候補名を評価してもらう |
| ⑤商標確認 | 対象国・地域での商標登録・出願状況などを確認 |
| ⑥最終決定 | 調査結果をブランド戦略や事業計画と合わせて名称を決定 |
すべてのケースでこの工程をすべて実施する必要があるわけではありません。商品の重要度、展開国数、候補名の数、ブランドの使用期間などに応じて、必要な調査を組み合わせます。
10.グローバルブランドのネーミング調査で重要なのは「現地の視点」
海外ネーミングの検証では、日本側から見た「良い名前」だけでは判断できないことがあります。
例えば、発音のしやすさ、言葉から受ける印象、文化的な連想などは、実際にその言語を使う人でなければ分かりにくい場合があります。
だからこそ、海外展開するブランドでは、現地のネイティブやターゲット消費者の視点を調査に取り入れることが重要です。
ただし、ネーミング調査で分かるのはあくまで消費者側から見た言語・文化面や印象です。商標、事業性、競合環境などについては、それぞれ別の視点から確認する必要があります。
まとめ:海外ネーミング調査では、実際の市場での「受け取られ方」を確認する
海外ネーミング調査では、候補名が現地語でどのような意味を持つのかだけでなく、スラング、発音、文化的な連想、ブランドとしての印象などを確認することが重要です。
一般的なケースでは、まず候補名を社内で作成し、一次チェックを行ったうえで、最終候補を現地ネイティブやターゲット消費者に確認してもらうという進め方が考えられます。
複数候補を比較する場合には、好感度や高級感、親しみやすさ、商品との適合性などを評価してもらい、どの候補が現地市場に適しているかを検討することもできます。
また、現地語・文化面の確認と商標確認は別の作業です。海外で長期的に使用するブランド名については、必要に応じて両方の観点から事前確認することが重要です。
海外ネーミング調査をご検討の方へ
WIPジャパンでは、海外展開を検討する企業向けに、商品名・サービス名・ブランド名などについて、現地語やスラング、発音、現地でのイメージなどを確認する海外ネーミング調査を行っています。
「候補名が現地語で問題ないか確認したい」「複数候補を現地で比較したい」など、調査目的や対象国・地域に応じて調査内容を検討できます。
海外展開前のネーミングについて、どこまで確認すべきか整理したい場合にも、まずは候補名と対象市場を明確にすることが重要です。










Oct 8, 2026, 3:29:18 PM