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翻訳の価格と品質には、どのような関係がありますか?|翻訳会社WIPジャパン

作成者: WIP japan|May. 26, 2022

 

翻訳業界において「価格が上がれば質も上がり、価格が下がれば質も下がる」という関係は成立するのでしょうか。この記事では、翻訳会社における翻訳品質と価格について検証していきます。

 

翻訳会社の多くは、実際の下訳作業を専門性の高いフリーランスに外注する業務委託の形式をとっています。したがって、外部委託の翻訳者のスキル・レベルが、翻訳会社の品質と価格に大きく影響することになります。そこで、以下では翻訳者の学習コストと品質レベルの関係、翻訳者のレベルと翻訳会社の品質との関係、そしてコストを変動させたときにどうすれば品質を担保できるのかを順に見ていきます。

 

翻訳における信頼度成長曲線とは

「信頼度成長曲線」とは、主にソフトウェア開発における品質管理に関連する概念です。「バグ曲線」とも呼ばれており、開発したソフトウェアをテストするにしたがい(横軸が経過時間)、バグの累積発生率がどのようになっているか(縦軸がバクの累積発生率)を数式化したものです。特徴としては、テスト初期では知見が少ないこともありバグの検出が少なく、知見が増えるとともにバグの検出も増え、そして一定量のバグが見つかるとバグ発生が収束していくというものです。

 

ソフトウェアにおける「バグ」を「翻訳エラー」に置き換えてみると、翻訳においてもこの「信頼度成長曲線」が成立していることが筆者の経験から類推されます。横軸を翻訳スキルアップにかけた経過年数(あるいは学習コスト)、縦軸を翻訳エラーの累積発生量(失敗から学んだ経験量=翻訳品質)とすることができるでしょう。これを図にしたものが、図1の赤い曲線になります。横軸を翻訳者の学習コスト、縦軸を翻訳者がアウトプットする翻訳の品質としています。

 

図1:翻訳における信頼度成長曲線

この「信頼度成長曲線」よって、翻訳者のレベルと、翻訳品質の振舞いがどのようになっているのかをある程度説明することができます。以下に、こうした「信頼度成長曲線」の特徴をヒントに、翻訳者のレベルと翻訳会社の品質との関係、および価格帯別の品質コントロールについて解説していきます。

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翻訳者の品質レベルと学習コストが大きく関係している

誰もがすぐに翻訳者になれるわけではありません。それは、語学力がそのまま翻訳力とはならないからです。翻訳会社が認める品質を出すためには、語学の習得はもちろんのこと、専門知識、ライティング力、調査力など、翻訳者が身に着けるべき能力は多岐にわたります。ですが、学習コストをかけると品質レベルがすぐに上がるかというと、そうでもありません。図2では例として、信頼度成長曲線に翻訳者のレベルを対応させています。

 

図2:信頼度成長曲線と翻訳者レベルの関係

 

初学者(図2の①)は必ずどこかで壁にぶつかります。そして急に能力が発揮できるようになる瞬間があります。これは翻訳者からもよく聞く経験談です。ある点(図2の②)から急激に品質レベルが上がっていますが、ここが「プロの翻訳者」と「プロでない翻訳者」と分ける境界線とも言えます。

 

  • ①のレベルの翻訳者は、必要とされる語学力をまだまだマスターしなければならず、また専門知識も習得中の、駆け出しの翻訳家といったところでしょうか。翻訳会社で必要とされる品質レベルには届いていない状態です。
  • それに対して②のレベルの翻訳者では、語学はある程度マスターできているが、まだ安定的にいいアウトプットができていない状態です。十分な経験がないということもあるでしょうし、プロの翻訳者レベルのスピード力を持ち合わせていないのかもしれません。結局、納期に間に合わせるためだけの作業になってしまい、アウトプットの品質レベルは大きく上下します。
  • ③のレベルの翻訳者は、いわゆるプロの翻訳者です。もちろん専門知識を日々アップデートしていく必要はありますが、最初から学び直すこともないので品質に対する学習コストの上昇も緩やかになります。ただ、品質レベルは永遠に向上するわけではなく、「これ以上時間をかけても、もはやアウトプットは変わらない」という限界もあります。

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翻訳会社の品質と価格の関係

翻訳者の学習コストは、そのまま翻訳会社の外注費に反映されることになりますので、翻訳会社の品質と価格の関係(「品質曲線」)は、翻訳者の品質と学習コストの関係(「信頼度成長曲線」)と似たものになります。これを図にしたものが、図3の「品質曲線」(赤い曲線)です。

 

図3:翻訳会社の品質曲線の例

 

翻訳者の品質レベルと同じように、価格が上がる(下がる)と品質も上がる(下がる)という傾向となっています。点線の領域はある翻訳会社Aの品質コントロールを表したもので、品質曲線(赤い曲線)が品質コントロール領域内にある場合に「品質が保たれている(品質と価格のバランスがよい状態)」ということを意味しています

 

ではどこまでなら翻訳コスト(価格)を下げても大丈夫と言えるのでしょうか。あるいは、どういう場合なら、翻訳コストをかけるべきなのでしょうか。

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価格を下げても品質レベルが保たれる場合

価格を下げても品質レベルが保たれる場合とそうでない場合があります。まず、価格を下げても品質レベルが保たれる場合として、具体的にどのようなものがあるのかを見ていきます。

 

図4のように、「品質曲線」(赤い曲線)が点線で示された翻訳会社の品質コントロール内にある場合、品質と価格のバランスが取れた状態となっています(参考:「品質×納得価格」の翻訳づくり)。

 

図4:ビジネス品質と訴求力品質の例

 

価格が下がると品質も変化していますが、品質の差は翻訳の用途の違いとも言えます。高い訴求力が求められるような広告コピーでは、高品質高価格(「訴求力品質」)が求められますが、通常のビジネス用途ではちょうどよい品質と価格(「ビジネス品質」)が必要でしょう。どちらの場合も、品質と価格のバランスが保たれていて、品質に差があること自体は問題ではないのです。

 

※あとで紹介するAI翻訳を活用した手法も、低価格で品質を維持したい場合のオプションになり得ます。

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価格を下げると品質レベルが保たれない場合

価格を下げても品質レベルが保たれる場合を説明しましたが、価格を下げると品質レベルが保たれない場合もあるので注意が必要です。

 

例えば、図5の黄色で囲まれた部分(図5の②)まで価格を下げてしまった場合、品質レベルが急降下してしまうことがあります。(※翻訳会社Aの場合であれば、品質コントロール外となっていますので、実際にはこの翻訳会社ではこのような低価格帯での提供しないということになります。

 

図5:価格を下げると品質レベルが保たれない場合の例

 

実際には、翻訳会社Aよりも低価格帯で翻訳サービスを提供している翻訳会社もあります。翻訳会社の規模や社内業務効率化の度合い(社内コストの圧縮)、また外部リソース(フリーランス翻訳者)の効率・効果的な開拓によって、低価格帯でも品質コントロール内で管理できている場合もあります。ただ、そのように品質管理が十分にできている翻訳会社もあれば、図2の②レベルにあるような、品質の安定しない翻訳者をアサインして低価格を実現している場合もあるので注意が必要です(※図2の①と②が図5の①と②にそれぞれ対応)。

 

また灰色で囲まれた部分(図5の①)の超低価格になると、その価格帯のなかでの品質レベルの差こそなくなりますが、ビジネス品質との差は歴然としています。場合によっては、自社でAI翻訳にかけたほうが自然で読みやすいアウトプットになったということもあり得るでしょう。

 

価格を下げたサービスを選ぶことが本当に自社メリットになるのか、このような視点で考えてみてもいいのではないでしょうか。

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高コストでメリットとなる場合

翻訳をする目的によっては、コストを下げるのではなく、コストをかけてでも品質を上げたい場合もあります。図6で「訴求力品質」となっている範囲が該当します。

 

例えば商品コピーでは、表現やニュアンスの微妙な違いで、消費者に与える印象や購買意欲も大きく変わってきます。また、訴求力がある文章に仕上げるためには、クリエイティブさも求められます。このように少しの翻訳品質の差が大きなビジネスアウトプットの差となるようなビジネスシーンでは、翻訳にコストをかけるメリットが大きいと言えます。

 

図6:高コストでメリットとなる場合の例

 

ただしここで注意したいのが、高価格帯での品質とコストの関係です。「翻訳者の品質レベルと学習コスト」でも述べたとおり、高価格帯ではコストの増加に対する品質の上昇はやや緩やかになります。ですので、どこまで翻訳にコストをかけるべきなのかは、品質上昇に見合うだけの効果がビジネスシーンで期待できるのかを検討して決めるべきです。「訴求力品質」と「ビジネス品質」の違いは、お客様のビジネスシーンによって大きくもなり、小さくもなるのです。

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低コストでメリットを最大化する

最後に、低コストでメリットを最大化させる方法について紹介します。

 

「価格を下げると品質レベルが保たれない場合」で説明したとおり、「品質レベルが急激に下がる領域」(黄色で囲まれた領域)があります。「品質曲線」が垂直方向に立っているところです。主に、コスト圧縮や納期圧縮による品質低下が原因で、この価格帯では品質レベルがなかなか安定しません。従来の翻訳手法では、コストの大幅な圧縮のためには翻訳者のレベルを下げざるを得ず、また納期圧縮のためには翻訳工程の一部を省略することが必要でした。

 

こうしたコスト・納期圧縮のデメリットを回避する手段として、最近注目されているのが「AI翻訳を活用した翻訳フロー」です。

 

ちょうど「品質が急激に下がる領域」のデメリットを解消するような手法となっています。以下の図7をご覧ください。

 

図7:低コストでメリットを最大化できる例

 

コスト圧縮のために翻訳者のレベルを下げることで生じる品質レベルの不安定さは、ディープラーニングによる精度の高いAI翻訳で補完されます。また一次翻訳をAIが担当するので、納期圧縮が自然と達成されています(長くても数分でAI翻訳が完了します)。もちろん、AI翻訳エンジンをゼロから構築するためには膨大なデータと学習時間を要するわけですが、ビジネス用途としてすでに提供されているAI翻訳エンジンを利用することでそのような時間とコストも発生しません。

 

社内向けの資料、頻繁に更新が必要なSNSへの投稿、ライフサイクルが比較的短い情報など、できるだけコストを抑えたいビジネスシーンでの用途に向いています。そのような場合、「AI翻訳を活用した翻訳フロー」であれば、低コストでも品質コントロールが可能であり、低コストでのメリットを最大化することができるでしょう。

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まとめ

今回は、翻訳の品質とコストについて説明しました。翻訳品質とコストの関係を正しく理解すれば、翻訳を依頼する際に効果的なコスト感がわかるようになります。どのようにすればコストを下げても品質を維持できるのか、また品質を上げるためにはどのようにコストをかけるべきなのかについて、この記事が一助となれば幸いです。