その場合には、官公庁や大手企業と取引があるか否かのような表面的な事柄だけにとらわれるのではなく、「そのような大手企業にどの分野のどのような翻訳を提供したのか」まで確認する必要があります。
たとえ大手企業との取引があったとしても、例えば社内文書の翻訳であった場合や、マニュアル翻訳であった場合、契約書の翻訳とは大きく異なるため参考にはなりません。もし実績がわからない場合には、遠慮せずその分野の実績や経験を尋ねてみましょう。良い翻訳会社であれば、そのような質問にも真摯に答えてくれますし、専門外の案件を安易に引き受けたりはしないはずです。
セキュリティやコストなど、実務的要素に関するポイント
ここでは、セキュリティ対策やコスト・納期など、実務的な部分に関するポイントを紹介します。翻訳の質と直接的には関係ありませんが、翻訳を依頼する際には重要になるポイントです。
ポイント6:セキュリティ対策を確認する
契約書は、企業にとって重要な機密情報です。特にM&A契約の場合や、業務の一部を外部に委託する業務委託契約を結ぶ場合などには厳重な管理が必要です。なぜなら、例えばM&A契約において、公表前に情報が流出してしまうと、不安に感じた社内の人材が流出してしまったり、ライバル入札をひきつけてしまったり、などのリスクが生じます。
また、業務委託契約では、相手方に自社のノウハウなどの機密情報を提供しなければならない場合があります。このような情報が第三者へと流出してしまうと、その他ライバル社に自社のノウハウが知られてしまうだけでなく、情報管理に対する姿勢を問われ、信用を損ねてしまう可能性があります。
したがって、翻訳を依頼する際には、その会社が機密情報や個人情報を扱うにあたり、適正な管理体制を整備しているか確認することが重要です。それらの基準として以下のような事項を確認するとよいでしょう。
ⅰ. 情報セキュリティポリシーが策定されているか
・セキュリティポリシーとは、秘密保持に関する方針、対策基準などを定めたものです。
・自社のweb上でセキュリティポリシーを公表しているかどうか確認しましょう。
ⅱ. 技術的対策が行われているか
・顧客から預かった情報が、ファイアウォール等で保護されたサーバの下に置かれているか?
・担当者以外が情報にアクセスできないようになっているか?
・エンドポイント対策としてウイルス対策ソフトを導入、定期的にアップデートしているか?
など
ⅲ. 物理的対策が行われているか
・社内で入退出管理が行われているか?
・出力原稿はどのように処分されるか?
など
ⅳ. 人的対策が行われているか
・社員に対するセキュリティ教育を行っているか?
・社員、契約社員、協力企業との間に秘密保持契約(NDA)を結んでいるか?
など
WIPジャパンは、東京弁護士共同組合、神奈川県弁護士共同組合をはじめとする全国23の弁護士共同組合の特約店に認定されています。
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ポイント7:コストを確認する
翻訳にかかるコストを翻訳料金だけだと考えていませんか?
実は翻訳コストは翻訳料金だけではなく、総コストとして考えるべきものです。総コストとは、「(A)翻訳料金」+「(B)翻訳会社からの納品後、訳文チェックや修正にかかるコスト」+「(C)翻訳会社からの納品後、レイアウト・書式・図式処理にかかるコスト」を指します。
したがって、翻訳を発注する際には、翻訳料金だけでなく、その他のコストも総合的に判断する必要があります。翻訳料金が相場平均よりも高くても、チェック体制がしっかりしていて翻訳後の修正がほとんど必要ない場合には、総コストとしては安くなる場合があります。
反対に、相場よりも大幅に安い場合には、翻訳後のネイティブチェックや校正が含まれず、チェックや修正にかかるコストが発生してしまい、結果的に安物買いの銭失いとなってしまうことがあります。表面上の言葉に惑わされず、中身を精査し総合的に判断するようにしましょう。
ポイント8:翻訳会社が信頼できるかチェックする
翻訳業界や翻訳会社に関する正確な情報を手に入れることは難しいのが実情です。翻訳業界は倒産件数・参入件数の両方が多い業界であるといわれています。入れ代わりが激しい翻訳会社の中から、信頼できる企業を見つけることは難しくもありますが、翻訳会社を見極める際に押さえるべきポイントがいくつかあります。
ⅰ. 企業情報がweb上に公開されているか
企業情報の公開は基本中の基本です。これがなされていない翻訳会社も散見されますが、そのような企業はまず信用に値しません。
ⅱ. 経営陣の写真・プロフィールが掲載されているか
経営陣の顔写真やプロフィールが公開されていることは、企業が情報開示や透明性を重視しているという1つの指標になります。また、何か問題が起きたときに、責任を取るべき人物が全世界に公開されているともいえます。欧米の大企業では、経営陣の顔写真をweb上に公表することは企業の信頼性向上の点からも基本的なことであり、そうでないと信用に値しないとみなされてしまうこともあります。
ⅲ. 翻訳者・翻訳コーディネーターのプロフィールが掲載されているか
翻訳者のプロフィールから、どのようなバックグラウンドを持ち、どの分野に強い翻訳者が在籍しているのか確認することができます。翻訳者やコーディネーターのプロフィールを公開する翻訳会社は少ないですが、だからこそ企業を選別する基準となりえます。
まとめ
契約書翻訳のポイントを「翻訳の質」と「実務的要素」の2つの観点から考察してきました。
契約書の翻訳は、一般文書の翻訳とは大きく異なる、法体系・商慣習の専門性が必要とされるものです。「契約」という側面から、トラブルのリスクを最小限にし、厳密に正確な翻訳をする必要もあります。情報公開があまりなされない翻訳業界において、数ある翻訳会社の中から最適な会社を選ぶことは時に難しいかもしれませんが、今回挙げた8つのポイントが参考になれば幸いです。
WIPジャパンは、東京弁護士共同組合、神奈川県弁護士共同組合をはじめとする全国23の弁護士共同組合の特約店に認定されています。
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契約書翻訳に役立つリンク集
・法務省大臣官房司法法制部「法令翻訳の手引き」(PDF)
・日本法令外国語訳推進会議「法令用語日英標準対訳辞書」(PDF)
・Publiclegal(英文契約書のテンプレートや書式を無料で提供)
・日本法令外国語訳データベースシステム(法務省が開設した日本の法令の英訳サイト)
・weblio 英和辞典・和英辞典
・英辞郎 on the web
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