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講演契約書 翻訳:国際的な講演活動を成功させる要点と関係部門の役割|翻訳会社WIPジャパン

作成者: WIP japan|Jul. 09, 2025

 

グローバル化が進む現代において、企業や専門家が海外で講演を行う、あるいは海外の著名人を招いて講演会を開催する機会は増加しています。このような国際的な講演活動において、講演者と主催者の間で締結されるのが講演契約書(Speaker Agreement / Speaking Engagement Agreement)です。

この契約書は、講演の内容、日時、場所、報酬、交通費・宿泊費の負担、知的財産権の取り扱い、肖像権、キャンセルポリシー、そして準拠法などを詳細に定める法的文書であり、その正確な翻訳は、講演活動の円滑な実施、法的リスクの回避、そして将来的な紛争の防止のために極めて重要です。翻訳のミスや内容の理解不足は、講演内容の齟齬、追加費用の発生、知的財産権の侵害、キャンセル時のトラブル、さらには国際的な信用失墜へと発展するリスクをはらんでいます。

特に、国ごとに契約法、税法、知的財産権法(著作権・肖像権)、ビザ・入国管理法規、そして国際的な商慣習が大きく異なるため、単に言葉を置き換えるだけでなく、それぞれの法制度や講演の性質に応じた法的・商業的ニュアンスを踏まえた上で契約内容を理解し、翻訳することが不可欠です。

本記事では、当社が数多くの講演契約書の翻訳を支援してきた経験に基づき、翻訳における重要なポイントと、貴社の各部門がどのように翻訳された契約書を活用し、関与していくべきかを具体的なケーススタディを交えて解説します。

貴社の海外ビジネスにおいて、講演契約の適切な理解と運用を通じて、国際的な講演活動を成功に導き、リスクを最小限に抑えるために、ぜひ本記事をお役立てください。

 

講演契約書とは何か?その目的と国際ビジネスにおける重要性

講演契約書(Speaker Agreement / Speaking Engagement Agreement)とは、講演者(Speaker)が特定のテーマについて講演を行い、主催者(Organizer / Host)がその講演に対して報酬を支払うことを約束する契約です。

国際ビジネスにおいては、以下のような多様な目的で講演契約が締結されます。

  • 企業イベント: 製品発表会、セミナー、ユーザーカンファレンスでの講演

  • 学術会議・シンポジウム: 特定の専門分野に関する研究発表、パネルディスカッション

  • 業界イベント: 展示会、見本市での基調講演、専門セッション

  • PR・ブランディング: 企業ブランド向上、専門知識の発信

この契約書は、以下の非常に多岐にわたる詳細な条項を含みます。

  • 講演内容と目的(Topic and Objectives):講演のテーマ、タイトル、時間、形式(基調講演、パネルディスカッションなど)、対象聴衆、期待される学習効果。

  • 日時と場所(Date, Time and Venue):講演の具体的な日時、会場、オンライン講演の場合は使用プラットフォーム。

  • 報酬と支払い条件(Speaker Fees and Payment Terms):講演料(固定料金、時間単価など)、支払いスケジュール、支払い方法、支払い通貨、源泉徴収税の取り扱い。

  • 交通費・宿泊費の精算(Travel and Accommodation Expenses):航空券、宿泊費、現地交通費、食事代などの精算方法と上限、負担者。

  • 知的財産権の取り扱い(Intellectual Property Rights):講演資料、スライド、配布資料、音声・映像記録などの著作権、利用許諾、公開範囲。

  • 肖像権・パブリシティ権(Right of Publicity / Likeness):講演者の肖像、氏名、経歴などの利用範囲(広報、宣伝、録画・配信など)。

  • キャンセルポリシー(Cancellation Policy):講演者または主催者によるキャンセル時の条件、違約金、費用負担。

  • 守秘義務(Confidentiality):講演内容や主催者から提供された機密情報の保護義務。

  • 免責事項と責任制限(Disclaimers and Limitation of Liability):講演内容に関する免責、損害発生時の責任範囲。

  • 準拠法と紛争解決(Governing Law and Dispute Resolution):契約に適用される法律、紛争が発生した場合の解決方法(裁判、国際仲裁、調停など)。

  • ビザ・入国管理(Visa and Immigration):海外からの講演者の場合、ビザ取得に関する協力義務、費用負担。

  • 技術要件(Technical Requirements):オンライン講演の場合のインターネット環境、機材要件。

国際ビジネスにおいて講演契約書が特に重要なのは、以下の理由からです。

  • 文化・商慣習の差異: 各国で報酬体系、キャンセルポリシー、知的財産権の考え方などが異なるため、契約書でこれらの違いを明確にし、誤解を防ぐ必要があります。

  • 言語の障壁: 講演内容の解釈、指示、質疑応答などにおいて言語の壁が存在するため、契約書でコミュニケーションの方法や翻訳・通訳の手配を明確にすることが重要です。

  • 税務処理の複雑さ: 国境を越えた報酬の支払いには、源泉徴収税やVAT/GST(付加価値税/サービス税)など、複雑な税務処理が伴うため、契約書でその責任を明確にする必要があります。

  • 法的リスク(知的財産権、肖像権): 講演内容や録画・配信における知的財産権(著作権)や講演者の肖像権の取り扱いを明確にしないと、将来的な法的紛争に発展するリスクがあります。

  • 入国・ビザの問題: 海外からの講演者を招聘する場合、適切なビザの取得が必要であり、契約書でその協力義務や費用負担を明確にする必要があります。

  • 紛争解決: 国際的な契約では、紛争が発生した場合の解決方法(準拠法、仲裁など)を事前に明確にしておくことが、リスク管理上非常に重要です。

英文講演契約書の特徴と和文契約書との違い

国際的な講演取引では、多くの場合、英文で契約書が作成されます。その特徴は、日本の和文契約書とは異なる点がいくつかあります。

  • Intellectual Property Rights(知的財産権)とRight of Publicity(肖像権・パブリシティ権)の明確な規定:

    • 講演資料、スライド、配布資料、音声・映像記録などの著作権が誰に帰属するのか、主催者がこれらの資料や記録をどのように利用できるのか(例:ウェブサイトでの公開、DVD化、将来の再利用など)が詳細に規定されます。

    • 講演者の肖像、氏名、経歴などを主催者が広報、宣伝、録画・配信のためにどのように利用できるかが細かく規定され、特に商用利用の可否や範囲が重要視されます。

    • 和文契約でも重要ですが、英文契約では、特に肖像権やパブリシティ権について、より広範な利用許諾を求める傾向があります。

  • Speaker Fees and Payment Terms(講演料と支払い条件)の詳細化:

    • 講演料の金額だけでなく、支払いスケジュール、支払い方法、支払い通貨、源泉徴収税の取り扱い(誰が負担・申告するのか)などが厳密に規定されます。国際送金手数料や為替リスクの負担者も明確にされる傾向があります。

  • Travel and Accommodation Expenses(交通費・宿泊費の精算)の具体化:

    • 航空券のクラス、宿泊ホテルのグレード、現地交通手段、食事代など、精算対象となる費用の種類、上限額、精算手続き、領収書の提出義務などが非常に具体的に記述されます。

  • Cancellation Policy(キャンセルポリシー)の厳格な適用:

    • 講演者または主催者によるキャンセルが発生した場合の通知期間、違約金の発生条件、金額(例:キャンセル時期に応じた報酬の割合)、既に発生した費用の精算などが明確に規定されます。国際的なイベントでは、キャンセルに伴う費用が大きくなる可能性があるため、詳細な規定が一般的です。

  • Representations and Warranties(表明と保証)の強調:

    • 講演内容が真実であること、第三者の知的財産権を侵害しないこと、機密情報を開示しないことなどを講演者が表明し保証する条項が含まれます。これは、主催者側が講演内容に関する法的リスクを軽減するために重要です。

  • Disclaimers and Limitation of Liability(免責事項と責任制限):

    • 講演内容に関する主催者の免責(例:講演者の見解は主催者の見解ではない)、損害発生時の各当事者の責任範囲、責任の上限額などが規定されます。

  • Governing Law and Dispute Resolution(準拠法と紛争解決)の指定:

    • 国際的な講演契約では、国際仲裁を紛争解決手段として指定することが一般的であり、仲裁地、仲裁機関、仲裁規則を明確に定めます。

  • Visa and Immigration(ビザ・入国管理):

    • 海外からの講演者を招聘する場合、ビザ取得に必要な情報提供、招聘状の発行、費用負担、入国拒否された場合の取り扱いなどが規定されることがあります。

日本の和文講演契約書に比べ、英文講演契約書は、知的財産権・肖像権の利用範囲、税務処理、キャンセルポリシー、そして国際的な準拠法・紛争解決メカニズムに関して、より詳細かつ厳密な記述が求められる傾向が強いです。翻訳においては、これらの法的・商業的ニュアンスを正確に反映した表現を用いることが不可欠です。

講演契約書翻訳における重要ポイント

講演契約書の翻訳は、貴社の国際的な講演活動の成否、法的リスク、そしてブランドイメージに直接影響するため、極めて高い精度と専門性、そして法務・経理・広報・イベント運営に関する視点が求められます。以下のポイントを押さえることが、成功への鍵となります。

  1. 講演内容と目的、日時・場所の厳密な翻訳

    • 講演のテーマ、タイトル、時間、形式、対象聴衆など、講演の根幹をなす情報を曖昧さなく正確に翻訳することが不可欠です。日時・場所の誤訳は、イベント全体の混乱につながります。

  2. 報酬と支払い条件、源泉徴収税の明確化

    • 講演料固定料金、時間単価など)、支払いスケジュール、支払い方法、支払い通貨、為替リスクの負担者、そして特に海外の講演者への支払いにおける源泉徴収税の有無や税率、VAT/GST(付加価値税/サービス税)などの税務上の取り扱いを正確に翻訳することが不可欠です。不正確な翻訳は、予期せぬ費用発生や税務上のトラブルの原因となります。

  3. 交通費・宿泊費の精算ルールに関する精緻な翻訳

    • 航空券のクラス、宿泊ホテルのグレード、現地交通手段、食事代など、精算対象となる費用の種類、上限額、精算手続き、領収書の提出義務などを正確に翻訳し、経理部門と連携して適切な費用精算ができるようにする必要があります。

  4. 知的財産権(Intellectual Property Rights)と肖像権・パブリシティ権(Right of Publicity)の厳密な理解

    • 講演資料、スライド、配布資料、音声・映像記録などの著作権が誰に帰属するのか、主催者がこれらの資料や記録をどのように利用できるのか(例:ウェブサイトでの公開、DVD化、将来の再利用など)を厳密に翻訳することが極めて重要です。また、講演者の肖像、氏名、経歴などを主催者が広報、宣伝、録画・配信のためにどのように利用できるか、特に商用利用の可否や範囲が明確に翻訳されているか確認すべきです。権利の誤解や不明確な翻訳は、法的紛争やブランドイメージの毀損につながる可能性があります。

  5. キャンセルポリシー(Cancellation Policy)の正確な翻訳

    • 講演者または主催者によるキャンセルが発生した場合の通知期間、違約金の発生条件、金額(例:キャンセル時期に応じた報酬の割合)、既に発生した費用の精算などを正確に翻訳することが不可欠です。国際的なイベントでは、キャンセルに伴う費用が大きくなる可能性があるため、詳細な規定の理解が重要です。

  6. ビザ・入国管理(Visa and Immigration)に関する条項の確認

    • 海外からの講演者を招聘する場合、ビザ取得に必要な情報提供、招聘状の発行、費用負担、入国拒否された場合の取り扱いなどが規定されているか正確に翻訳し、人事・総務部門と連携して適切な手続きを進める必要があります。

  7. 準拠法と紛争解決(Governing Law and Dispute Resolution)

    • 契約に適用される法律、そして紛争が発生した場合の解決方法(国際仲裁、調停、裁判など)、仲裁地の選定、仲裁機関、仲裁規則、仲裁人の数、仲裁判断の拘束力などを正確に翻訳することが不可欠です。国際取引では、自社にとって有利な準拠法や紛争解決地を指定することが戦略上重要であり、その内容を正確に把握すべきです。

  8. AI翻訳の適切な活用と専門家による最終確認

    AI翻訳技術は、初稿の作成や用語の統一に役立ちますが、講演契約書のような法的・専門的に極めて複雑な文書、特に知的財産権、肖像権、キャンセルポリシー、税務処理といった条項においては、法的ニュアンス、各国の契約法、税法、知的財産権法に関する知見を完全に理解することは困難です。AIを効率化ツールとして最大限活用しつつも、法務知識、イベント運営知識、税務知識、および国際商取引の実務経験を持つ専門の翻訳者による徹底したレビューと校正が不可欠です。人間による精査が、潜在的なリスクを最小限に抑え、安全な国際取引の基盤となります。

  9. 強固な情報セキュリティ体制

    講演契約書には、講演内容、講演者の個人情報、報酬情報など、企業の機密情報や個人情報が含まれることがあります。これらの情報が外部に漏洩した場合、企業の信用失墜や法的な責任問題などにつながる可能性があります。そのため、翻訳を依頼する際には、翻訳会社が厳格な情報セキュリティポリシーを定め、技術的・物理的・人的な対策を徹底しているかを必ず確認すべきです。当社は、お客様の機密情報を最高レベルで保護するため、徹底したセキュリティ管理を実践しています。

  10. 現地の弁護士・税理士・イベントコンサルタントとの連携

    翻訳された契約書をベースに、必ず現地の契約法、税法、知的財産権法、ビザ・入国管理法規に詳しい弁護士や税理士、イベントコンサルタントと連携し、契約内容の法的妥当性、税務上の影響、ビザ取得の要件、コンプライアンス状況を最終確認することが不可欠です。翻訳は「理解の橋渡し」であり、最終的な法的判断は現地の専門家が行うべきです。

 

講演契約書の翻訳は誰に必要なのか?ケーススタディで見る関係部門の役割

講演契約書は、国際的な講演活動の成否とリスク管理を左右するため、多岐にわたる部門や関係者がその内容を理解し、翻訳された情報に基づいて連携することが不可欠です。

 

ケーススタディ1:海外の著名人招聘による自社イベント開催(日本のIT企業)

 

状況: 日本のIT企業が、自社が主催する国際的な技術カンファレンスで、米国の著名なAI研究者を基調講演者として招くため、英文の講演契約を締結するケース。

  • イベント企画部/広報部:

    • 必要性: 講演のテーマ、タイトル、時間、形式、対象聴衆、講演者の経歴や写真の利用範囲、広報活動での利用可否などを詳細に確認します。イベントの成功とブランドイメージ向上に直結する内容です。

    • ケース: 契約書に記載された「講演テーマの合意内容」、「講演者の氏名・肖像をイベントのプロモーションに利用できる範囲」、「録画した講演を後日ウェブサイトで公開する条件」を和訳で確認し、イベント戦略とプロモーション計画を策定します。過去には、肖像権の利用範囲の翻訳が曖昧だったため、無断で講演者の写真が広範に利用され、トラブルに発展した事例がありました。当社は、このような知的財産権・肖像権に関する条項の正確な翻訳を特に重視しています。

  • 法務部:

    • 必要性: 契約全体の法的妥当性、リスク管理、特に知的財産権の取り扱い、肖像権・パブリシティ権、キャンセルポリシー、免責事項と責任制限、準拠法、紛争解決条項の適切性を確認します。米国の契約法、著作権法、肖像権法、税法への対応が求められます。

    • ケース: 契約書に記載された「講演内容の著作権の帰属と利用許諾範囲」、「講演者がキャンセルした場合の違約金」、「紛争解決における国際仲裁の選択とその規則」を和訳で確認し、法的リスクと対応戦略を評価します。

  • 経理部/財務部:

    • 必要性: 講演料の金額、支払いスケジュール、支払い通貨、源泉徴収税の取り扱い、交通費・宿泊費の精算方法など、財務上の全てのフローを確認し、適切な会計処理と資金計画を行います。

    • ケース: 契約書に記載された「講演料の支払い条件(着手金・残金)」、「米国の源泉徴収税の有無とその税率」、「ビジネスクラス航空券の精算可否」を和訳で確認し、キャッシュフローと税務リスクを管理します。

  • 人事部/総務部:

    • 必要性: 海外からの講演者のビザ取得に関する協力義務、招聘状の発行、入国管理に関する情報提供などを確認します。

    • ケース: 契約書に記載された「ビザ取得のための招聘状発行義務」、「ビザが取得できなかった場合の契約解除条件」を和訳で確認し、必要なサポートを計画します。

 

ケーススタディ2:海外で開催される業界イベントでの講演活動(日本の専門家)

 

状況: 日本の製造業に所属する技術部門の専門家が、ドイツで開催される業界カンファレンスで、自身の研究成果について講演を行うため、主催者(ドイツの団体)との間で英文の講演契約を締結するケース。

  • 講演者本人/所属部門:

    • 必要性: 講演のテーマ、タイトル、時間、形式、主催者による講演資料の利用範囲、自身の肖像・氏名の利用範囲、報酬、旅費・宿泊費の精算、キャンセル時の取り扱いなどを確認します。

    • ケース: 契約書に記載された「講演資料の著作権が講演者本人に留保される旨」、「主催者が講演の録画を後日ウェブサイトで配信する可否」、「旅費・宿泊費の精算上限額」を和訳で確認し、自身の権利保護と費用負担を把握します。

  • 法務部:

    • 必要性: 契約全体の法的妥当性、リスク管理、特に知的財産権の取り扱い、肖像権、キャンセルポリシー、責任制限、準拠法(ドイツ法)、紛争解決条項の適切性を確認します。

    • ケース: 契約書に記載された「講演中に第三者の知的財産を侵害しないことの保証」、「講演内容に関する免責事項」、「紛争解決におけるドイツの裁判所の管轄」を和訳で確認し、法的リスクと対応戦略を評価します。

  • 経理部/総務部:

    • 必要性: 講演料の受領、源泉徴収税の取り扱い、交通費・宿泊費の精算など、財務上のフローと出張手続きを確認します。

    • ケース: 契約書に記載された「講演料の支払い時期と方法」、「ドイツにおける源泉徴収税の有無」、「航空券とホテル代の具体的な精算方法」を和訳で確認し、適切な処理を行います。

よくある質問(FAQ)

講演契約書の翻訳に関して、お客様からよくいただくご質問とその回答をまとめました。

Q1: 講演契約書における「知的財産権(Intellectual Property Rights)」と「肖像権・パブリシティ権(Right of Publicity)」の条項は、翻訳でどのように注意すべきですか?

A1: これらの条項は、講演者の権利と主催者の利用範囲を定める極めて重要な部分です。翻訳においては、講演資料、スライド、配布資料、音声・映像記録などの著作権の帰属先(講演者か主催者か)、そして主催者がこれらの資料や記録をどのように利用できるのか(例:ウェブサイトでの公開、DVD化、商用利用、二次利用など)を、曖昧さなく正確に表現することが不可欠です。また、講演者の肖像、氏名、経歴などを主催者が広報、宣伝、録画・配信のためにどのように利用できるか(特に商用利用の可否や範囲、期間)が明確に翻訳されているかを確認すべきです。権利の誤解や不明確な翻訳は、著作権侵害や肖像権侵害として法的紛争に発展するリスクがあります。

Q2: 「報酬と支払い条件」に関する条項の翻訳で、特に注意すべき点は何ですか?

A2: 講演料とその支払い条件は、講演者と主催者双方にとって最も関心が高い部分です。翻訳においては、講演料の金額、支払いスケジュール(着手金、完了時など)、支払い方法(銀行振込、小切手など)、支払い通貨、為替リスクの負担者、そして特に海外の講演者への支払いにおける源泉徴収税の有無や税率、VAT/GST(付加価値税/サービス税)などの税務上の取り扱いを正確に翻訳することが不可欠です。不正確な翻訳は、予期せぬ費用発生や税務上のトラブルの原因となります。

Q3: 国際的な講演契約で、「キャンセルポリシー(Cancellation Policy)」はなぜ重要視されますか?

A3: 国際的な講演活動では、移動や準備に多大なコストと時間がかかるため、キャンセルが発生した場合の影響が大きいです。翻訳においては、講演者または主催者によるキャンセルが発生した場合の通知期間、違約金の発生条件、違約金の具体的な金額や計算方法(例:キャンセル時期に応じた報酬の割合)、既に発生した費用の精算(航空券、宿泊費など)などを正確に翻訳することが不可欠です。これにより、予期せぬキャンセル発生時の両当事者の権利と義務が明確になり、トラブルを未然に防ぐことができます。

Q4: 海外の講演者を招聘する場合、「ビザ・入国管理(Visa and Immigration)」に関する条項は、どのように注意して翻訳すべきですか?

A4: 海外の講演者を招聘する場合、ビザの取得は必須のプロセスであり、入国管理法規は国によって厳格に定められています。翻訳においては、ビザ取得に必要な情報提供の義務、招聘状の発行義務、ビザ取得費用や関連手続き費用の負担者、ビザが取得できなかった場合や入国が拒否された場合の契約解除条件や責任分担などを正確に翻訳することが重要です。これらの条項の理解不足は、講演会の中止や法的トラブルにつながる可能性があります。

Q5: 講演契約書で「準拠法と紛争解決(Governing Law and Dispute Resolution)」の条項が非常に重要と言われるのはなぜですか?

A5: 準拠法(Governing Law)は、契約の解釈・有効性・履行に適用される法律であり、紛争解決は問題発生時の解決プロセスを定めます。国際的な講演契約では、異なる国の法律や裁判制度が関わるため、どの国の法律が適用されるのか、紛争が生じた場合にどの国で、どのような方法(国際仲裁、調停、裁判など)で解決するのかを明確に合意しておくことが、予測可能性を高め、紛争解決のコストと時間を削減するために極めて重要ですし、自社にとって有利な条件を確保すべきです。翻訳においては、これらの条項を正確に理解し、現地の弁護士と連携して最終確認を行うことが不可欠です。

 

まとめ

講演契約書の翻訳は、単なる言語の変換に留まらず、企業や専門家が国際的な舞台で講演活動を成功させ、ブランド価値を高めるための極めて重要なプロセスです。英文と和文の契約書が持つそれぞれの特徴を深く理解し、イベント企画、広報、法務、経理、総務といった各部門が連携しながら、専門知識を持つ翻訳者の力を借りることが不可欠ですし、これまでの経験から当社はこれを強く認識しています。

特に、報酬と支払い条件、知的財産権と肖像権、キャンセルポリシー、ビザ・入国管理、そして準拠法と紛争解決といった条項は、潜在的な法的・経済的リスクを最小限に抑え、国際的な講演活動を成功させるための鍵となります。

 

当社は、このような複雑な講演契約書の翻訳において、貴社の各部門のニーズを理解し、最高品質の翻訳とサポートを提供することをお約束します。貴社の海外ビジネスにおける講演契約に関してご不明な点やご相談がありましたら、ぜひお気軽にお問い合わせください。

 

WIPジャパンは、東京弁護士共同組合神奈川県弁護士共同組合をはじめとする全国23の弁護士共同組合の特約店に認定されています。
ご相談は無料です。いつでもお気軽にご連絡ください。

 

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契約書翻訳に役立つリンク集

法務省大臣官房司法法制部「法令翻訳の手引き」(PDF)
日本法令外国語訳推進会議「法令用語日英標準対訳辞書」(PDF)
Publiclegal(英文契約書のテンプレートや書式を無料で提供)
日本法令外国語訳データベースシステム(法務省が開設した日本の法令の英訳サイト)
weblio 英和辞典・和英辞典
英辞郎 on the web

 

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