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ソフトウェアライセンス契約書 翻訳:グローバル展開と知的財産権保護の要点と関係部門の役割|翻訳会社WIPジャパン

作成者: WIP japan|Jul. 09, 2025

 

現代のビジネスにおいて、ソフトウェアは企業の根幹を支える重要な要素であり、その利用はグローバルに広がっています。自社開発のソフトウェアを海外で利用させたり、海外の先進的なソフトウェアを導入したりする際には、ソフトウェアライセンス契約が不可欠です。ソフトウェアライセンス契約書(Software License Agreement)は、ソフトウェアの著作権者(Licensor)が、特定の条件のもとで第三者(Licensee)にそのソフトウェアを利用する権利を許諾する際に締結される法的文書です。

この契約書は、ライセンスの対象となるソフトウェア、許諾される利用範囲(インストール、実行、複製、改変など)、利用人数・デバイス数、利用期間、利用地域、ライセンス料、保証と免責、知的財産権の帰属、秘密保持義務、準拠法、紛争解決など、極めて詳細な条件を定めます。その正確な翻訳は、ソフトウェアの適正な利用と保護、コストの最適化、法的リスクの回避、そして将来的な紛争の防止のために不可欠です。翻訳のミスや内容の理解不足は、著作権侵害、不正利用、セキュリティリスクの増大、期待される機能の不実現、追加費用の発生、国際的な信用失墜、さらには高額な法的紛紛へと発展するリスクをはらんでいます。

特に、国ごとに著作権法、特許法、個人情報保護法、サイバーセキュリティ法、輸出管理規制、税法、そして国際的な商慣習が大きく異なるため、単に言葉を置き換えるだけでなく、それぞれの法制度やソフトウェアの特性(オンプレミス型、クラウド型、SaaS型など)、ライセンス形態(永久ライセンス、サブスクリプションライセンスなど)に応じた法的・技術的・商業的なニュアンスを踏まえた上で契約内容を理解し、翻訳することが不可欠です。

本記事では、これまでの経験に基づき、ソフトウェアライセンス契約書の翻訳における重要なポイントと、貴社の各部門がどのように翻訳された契約書を活用し、関与していくべきかを具体的なケーススタディを交えて解説します。

貴社の海外ビジネスにおいて、ソフトウェアライセンス契約の適切な理解と運用を通じて、グローバルな事業展開を成功に導き、知的財産権を確実に保護するために、ぜひ本記事をお役立てください。

ソフトウェアライセンス契約書とは何か?その目的と国際ビジネスにおける重要性

ソフトウェアライセンス契約書(Software License Agreement)とは、ソフトウェアの著作権者(Licensor / Vendor)が、エンドユーザー(Licensee / Customer)または再販業者などの第三者に対して、特定の条件の下でそのソフトウェアを利用する権利を許諾する契約です。ソフトウェアは著作物として著作権法によって保護されており、利用者は原則として著作権者の許諾なしに複製、改変、配布などを行うことはできません。ソフトウェアライセンス契約は、このような利用行為を合法的に行うための法的根拠となるものです。

国際ビジネスにおいて、ソフトウェアライセンス契約の対象となるソフトウェアは多岐にわたります。

  • オペレーティングシステム (OS)

  • アプリケーションソフトウェア (業務ソフト、生産性向上ツールなど)

  • 開発ツール (コンパイラ、IDEなど)

  • ミドルウェア (データベース管理システム、アプリケーションサーバーなど)

  • 組込みソフトウェア

  • クラウドサービス (SaaS, PaaS, IaaS)

  • モバイルアプリケーション

この契約書は、以下の非常に多岐にわたる詳細な条項を含みます。

  • ライセンスの範囲(Scope of License):許諾される利用方法(インストール、実行、複製、改変、派生物の作成など)、利用人数(ユーザーライセンス)、利用デバイス数(デバイスライセンス)、同時アクセス数、利用場所・地域、利用期間(永久ライセンス、期間ライセンス、サブスクリプションライセンスなど)、独占的か非独占的か、サブライセンスの可否。

  • ライセンス料と支払い条件(License Fees and Payment Terms):ライセンス料の体系(一括払い、月額払い、従量課金など)、支払いスケジュール、支払い方法、支払い通貨、為替リスクの負担者、源泉徴収税やVAT/GST(付加価値税/サービス税)の取り扱い。

  • 知的財産権の帰属(Intellectual Property Rights):ソフトウェアの著作権、特許権、商標権などの帰属、改良・派生物に関する権利の扱い。

  • 保証と免責(Warranties and Disclaimers):ソフトウェアの機能、性能に関する保証の範囲、瑕疵担保責任、第三者の権利を侵害しないことの保証、利用に関する免責事項。

  • 技術サポートと保守(Technical Support and Maintenance):サポートの内容、時間、連絡方法、SLA(Service Level Agreement)、アップデート・アップグレードの提供 、費用負担。

  • 秘密保持義務(Confidentiality):ソフトウェアに含まれる機密情報や、契約に関連して開示される情報の保護義務。

  • データプライバシーとセキュリティ(Data Privacy and Security):個人データの取り扱い、データ保護法規制(GDPR、CCPAなど)への準拠、セキュリティ対策、データ侵害時の対応。

  • 輸出管理規制(Export Control Regulations):ソフトウェアが輸出管理規制の対象となる場合の遵守義務、再輸出の制限。

  • 責任の制限と補償(Limitation of Liability and Indemnification):契約違反やソフトウェアの利用によって生じた損害に対する責任範囲、責任上限額、相手方への補償義務。

  • 契約期間と終了(Term and Termination):契約期間、自動更新の有無、更新条件、契約解除条件(違反、破産など)、解除後のソフトウェア利用に関する義務(アンインストール、データ返還など)。

  • 準拠法と紛争解決(Governing Law and Dispute Resolution):契約に適用される法律、紛争が発生した場合の解決方法(裁判、国際仲裁、調停など)。

国際ビジネスにおいてソフトウェアライセンス契約書が特に重要なのは、以下の理由からです。

  • 著作権法の国際的な差異: ソフトウェアの著作権保護の範囲や要件は国によって異なるため、契約書で利用地域を明確にし、準拠法を定めることが重要です。

  • 輸出管理規制: 特定の国や団体へのソフトウェアの輸出や技術移転は、国際的な輸出管理規制によって制限される場合があります。契約書でこれらの規制遵守を義務付ける必要があります。

  • データプライバシー規制: GDPRをはじめとする各国のデータプライバシー法は、個人データの収集、処理、保管、移転に関して厳格な要件を課しており、ソフトウェアの利用がこれらの規制に適合しているか契約書で確認する必要があります。

  • サイバーセキュリティ: ソフトウェアの脆弱性はセキュリティリスクに直結するため、ベンダーのセキュリティ対策や責任範囲を契約書で明確にすることが重要です。

  • クラウドサービスの特殊性: SaaSなどのクラウドサービスの場合、データの保管場所、管轄、サービスレベル、データ移行の条件などを契約書で詳細に定める必要があります。

  • 税務処理: 国境を越えたソフトウェアライセンス料の支払いには、源泉徴収税やVAT/GSTなどの税務処理が伴うため、契約書でその責任を明確にする必要があります。

  • 紛争解決: 国際的な契約では、紛争が発生した場合の解決方法(準拠法、仲裁など)を事前に明確にしておくことが、リスク管理上非常に重要です。

英文ソフトウェアライセンス契約書の特徴と和文契約書との違い

国際的なソフトウェア取引では、多くの場合、英文で契約書が作成されます。その特徴は、日本の和文契約書とは異なる点がいくつかあります。

  • Granular Scope of License(粒度の高いライセンス範囲の規定):

    • 利用目的、ユーザー数、デバイス数、同時アクセス数、利用場所・地域、利用期間、機能制限など、ライセンスの範囲が非常に細かく規定されます。特に、クラウドサービスやサブスクリプションライセンスの場合、プランごとの機能差、アップグレード・ダウングレードの条件などが詳細に記述される傾向があります。

  • Intellectual Property Rights and Ownership(知的財産権と所有権の明確化):

    • ソフトウェアの著作権、特許権、商標権などの帰属が明確にされ、ライセンシーによるリバースエンジニアリング、逆コンパイル、逆アセンブルの禁止条項が厳格に規定されることが一般的です。派生物に関する権利の扱いも明確にされます。

  • Representations and Warranties(表明と保証)の詳細な記述:

    • ソフトウェアが特定の仕様を満たすこと、第三者の知的財産権を侵害しないこと、既知のマルウェアが含まれていないことなどが、ベンダーによって詳細に表明・保証されます。免責条項も併記されることが一般的です。

  • Data Privacy and Security Clauses(データプライバシーとセキュリティ条項の強調):

    • GDPR、CCPAなどのデータプライバシー法への準拠、データの保管場所、処理方法、セキュリティ対策、データ侵害時の通知義務と対応、データ削除の条件などが詳細に規定されます。クラウドサービス契約では特に重要な項目です。

  • Service Level Agreements (SLAs)(サービスレベル合意の詳細):

    • 技術サポートの範囲、応答時間、問題解決時間、アップタイム保証などが数値化され、目標値が定められます。目標未達の場合のペナルティ(サービス料金の減額など)も規定されることがあります。

  • Export Control Provisions(輸出管理条項の明記):

    • ソフトウェアが輸出管理規制の対象となる場合、ライセンシーは関連法規を遵守し、特定の国や団体への輸出・再輸出を行わない義務が明記されます。

  • Indemnification(補償)とLimitation of Liability(責任の制限)の厳格な規定:

    • 知的財産権侵害、データ侵害、契約不履行などによって生じた損害に対する補償義務や、損害賠償責任の上限額(例:支払われたライセンス料の〇倍)が明確に規定されることが一般的です。

  • Termination and Post-Termination Obligations(契約解除と解除後の義務の詳細化):

    • 契約解除の条件(契約違反、破産、一定期間の不稼働など)、解除時の通知期間、ライセンシーによるソフトウェアのアンインストール、データの返還・削除義務などが詳細に規定されます。

  • Choice of Law and Forum(準拠法と裁判管轄の指定):

    • 国際的なソフトウェアライセンス契約では、特定の国の法律を準拠法とし、特定の裁判所を紛争解決の管轄裁判所とすることが明記されます。仲裁条項が設けられることもあります。

日本の和文ソフトウェアライセンス契約書に比べ、英文ソフトウェアライセンス契約書は、ライセンス範囲の細分化、知的財産権の保護、データプライバシーとセキュリティ、SLA、輸出管理、責任制限、契約解除後の義務、準拠法と裁判管轄に関して、より詳細かつ厳密な記述が求められる傾向が強いです。翻訳においては、これらの技術的・法的ニュアンスを正確に反映した表現を用いることが不可欠です。

ソフトウェアライセンス契約書翻訳における重要ポイント

ソフトウェアライセンス契約書の翻訳は、貴社のグローバルなソフトウェア利用戦略、知的財産権保護、データセキュリティ確保、そして法的リスク管理に直接影響するため、極めて高い精度と専門性、そして法務・IT部門・情報セキュリティ部門・経理部門など多岐にわたる視点が求められます。以下のポイントを押さえることが、成功への鍵となります。

  1. ライセンスの範囲(Scope of License)の正確かつ詳細な翻訳

    • 許諾される利用方法(インストール、実行、複製、改変、派生物の作成など)、利用人数、利用デバイス数、同時アクセス数、利用場所・地域、利用期間(永久、期間、サブスクリプション)、独占性、サブライセンスの可否などを、曖昧さなく正確に翻訳することが不可欠です。誤訳は、意図しない利用やライセンス違反につながる可能性があります。

  2. ライセンス料と支払い条件、税務処理の明確化

    • ライセンス料の体系(一括、月額、従量課金)、支払いスケジュール、支払い方法、支払い通貨、為替リスクの負担者、そして海外への支払いにおける源泉徴収税やVAT/GST(付加価値税/サービス税)などの税務上の取り扱いを正確に翻訳することが不可欠です。税務処理の誤りは、予期せぬコストや法的な問題を引き起こす可能性があります。

  3. 知的財産権の帰属と保護に関する条項の徹底的な翻訳:

    • ソフトウェアの著作権、特許権、商標権などの帰属を明確に翻訳し、ライセンシーによるリバースエンジニアリング、逆コンパイル、逆アセンブルの禁止条項、そして改良・派生物に関する権利の扱いを正確に理解することが重要です。知的財産権の保護は、自社の競争優位性を守る上で不可欠です。

  4. 保証と免責(Warranties and Disclaimers)、責任制限(Limitation of Liability)に関する条項の慎重な翻訳

    • ソフトウェアの機能、性能に関する保証の範囲、瑕疵担保責任、第三者の権利を侵害しないことの保証、そして利用に関する免責事項、契約違反やソフトウェアの利用によって生じた損害に対する責任範囲と上限額を慎重に翻訳することが不可欠です。これらの条項は、将来的な訴訟リスクと費用負担に直接影響するため、法務部門と連携して内容を精査する必要があります。

  5. データプライバシーとセキュリティ(Data Privacy and Security)に関する条項の精緻な翻訳

    • 個人データの取り扱い、GDPR、CCPAなどのデータ保護法規制への準拠、データの保管場所、処理方法、セキュリティ対策、データ侵害時の通知義務と対応、データ削除の条件などを精緻に翻訳することが極めて重要です。特にクラウドサービスを利用する場合は、データセキュリティに関する条項を詳細に確認する必要があります。

  6. 技術サポートと保守(Technical Support and Maintenance)に関する条項の正確な翻訳

    • サポートの内容、時間、連絡方法、SLA(Service Level Agreement)における目標応答時間、問題解決時間、アップタイム保証などを正確に翻訳することが重要です。アップデート・アップグレードの提供条件や費用負担についても明確に理解する必要があります。

  7. 輸出管理規制(Export Control Regulations)に関する条項の確認

    • ソフトウェアが輸出管理規制の対象となる場合、ライセンシーが関連法規を遵守し、特定の国や団体への輸出・再輸出を行わない義務が明記されているか確認し、正確に翻訳する必要があります。

  8. 契約期間と終了(Term and Termination)、終了後の義務の明確な翻訳

    • 契約期間、自動更新の有無、更新条件、契約解除条件(違反、破産など)、通知期間を正確に翻訳します。特に、契約終了後のソフトウェア利用に関する義務(アンインストール、データ返還・削除など)を明確に翻訳することが重要です。

  9. 準拠法と紛争解決(Governing Law and Dispute Resolution)

    • 契約に適用される法律、そして紛争が発生した場合の解決方法(国際仲裁、調停、裁判など)、仲裁地の選定、仲裁機関、仲裁規則、仲裁人の数、仲裁判断の拘束力などを正確に翻訳することが不可欠です。国際取引では、自社にとって有利な準拠法や紛争解決地を指定することが戦略上重要であり、その内容を正確に把握すべきです。

  10. AI翻訳の適切な活用と専門家による最終確認

    AI翻訳技術は、初稿の作成や用語の統一に役立ちますが、ソフトウェアライセンス契約書のような技術的・法的・専門的に極めて複雑な文書においては、法的ニュアンス、各国の法規制、業界特有の専門用語を完全に理解することは困難です。AIを効率化ツールとして最大限活用しつつも、法務知識、IT技術に関する専門知識、情報セキュリティに関する知識、および国際商取引の実務経験を持つ専門の翻訳者による徹底したレビューと校正が不可欠です。人間による精査が、潜在的なリスクを最小限に抑え、安全な国際取引の基盤となります。

 

ソフトウェアライセンス契約書の翻訳は誰に必要なのか?ケーススタディで見る関係部門の役割

ソフトウェアライセンス契約書は、グローバルなソフトウェア利用と知的財産権保護を左右するため、多岐にわたる部門や関係者がその内容を理解し、翻訳された情報に基づいて連携することが不可欠です。

 

ケーススタディ1:自社開発SaaSの海外展開(日本のIT企業)

 

状況: 日本のIT企業が、自社開発のSaaS型業務アプリケーションをグローバル市場で提供するため、現地の企業(顧客)と英文のソフトウェアライセンス契約(利用規約)を締結するケース。

  • プロダクト開発部/SaaS運用部:

    • 必要性: 利用可能な機能範囲、SLA(アップタイム、応答時間、サポート範囲)、データセキュリティ対策、アップデート・メンテナンス計画などを詳細に確認します。サービスの品質と安定稼働に直結する内容です。

    • ケース: 契約書(利用規約)に記載された「99.9%のアップタイム保証」、「障害発生時の目標復旧時間」、「データセンターの所在地とセキュリティ認証」を和訳で確認し、サービス提供体制とリスク管理を評価します。過去には、SLAの翻訳が曖昧だったため、サービス停止時の責任範囲が不明確になり、顧客との間で紛争が生じた事例がありました。当社は、このようなSLAに関する条項の正確な翻訳を特に重視しています。

  • 法務部/情報セキュリティ部:

    • 必要性: 契約全体の法的妥当性、リスク管理、特にデータプライバシー(GDPR、CCPA対応)、セキュリティ条項、知的財産権の帰属、責任制限、契約解除条件、準拠法、紛争解決条項の適切性を確認します。各国のデータ保護法、サイバーセキュリティ法への対応が求められます。

    • ケース: 契約書に記載された「データの保存場所とデータ移転に関する規定」、「データ侵害時の通知義務と対応プロセス」、「利用者のデータに対する権利と責任」を和訳で確認し、法的リスクとコンプライアンス戦略を評価します。

  • 営業部/カスタマーサポート部:

    • 必要性: ライセンス料の体系、支払い条件、契約期間、解約条件、サポート範囲などを確認し、顧客への説明責任とサービス提供体制を構築します。

    • ケース: 契約書に記載された「月額課金モデルの詳細と無料トライアル期間」、「サポート受付時間と対応言語」、「解約時のデータ移行に関する規定」を和訳で確認し、顧客対応と事業計画への影響を評価します。

 

ケーススタディ2:海外製業務ソフトウェアの日本国内導入(日本の製造業)

 

状況: 日本の製造業が、業務効率化のために米国のソフトウェアベンダーから基幹業務ソフトウェアのオンプレミスライセンスを購入し、英文のソフトウェアライセンス契約を締結するケース。

  • 情報システム部/購買部:

    • 必要性: ソフトウェアの機能要件、互換性、インストール条件、利用ユーザー数、サポート範囲、SLAなどを詳細に確認します。導入効果と運用体制に直結する内容です。

    • ケース: 契約書に記載された「ソフトウェアの動作環境と推奨スペック」、「初期導入支援とトレーニングの範囲」、「年間保守サービスの契約内容と費用」を和訳で確認し、導入計画と運用コストを評価します。

  • 法務部/情報セキュリティ部:

    • 必要性: 契約全体の法的妥当性、リスク管理、特にライセンス範囲の制限、知的財産権の帰属、保証と免責、責任制限、契約解除条件、準拠法(米国法)、紛争解決条項、データセキュリティ条項の適切性を確認します。

    • ケース: 契約書に記載された「ソフトウェアのリバースエンジニアリング禁止条項」、「ベンダーによるデータへのアクセス権限」、「米国における紛争解決の裁判管轄」を和訳で確認し、法的リスクとデータセキュリティポリシーへの適合性を評価します。

  • 経理部/財務部:

    • 必要性: ライセンス料、支払い条件、支払い通貨、海外への支払いにおける源泉徴収税の取り扱いなどを確認し、適切な予算管理と会計処理を行います。

    • ケース: 契約書に記載された「一括払いによるライセンス料と支払い期限」、「米国へのライセンス料支払いにおける税務処理」を和訳で確認し、キャッシュフローと税務リスクを管理します。

よくある質問(FAQ)

ソフトウェアライセンス契約書の翻訳に関して、お客様からよくいただくご質問とその回答をまとめました。

Q1: ソフトウェアライセンス契約における「ライセンスの範囲(Scope of License)」の条項は、翻訳でどのように注意すべきですか?

A1: この条項は、ソフトウェアの利用条件を定める根幹であり、極めて正確な翻訳が求められます。翻訳においては、許諾される利用方法(インストール、実行、複製、改変、派生物の作成など)、利用人数(ユーザーライセンス)、利用デバイス数(デバイスライセンス)、同時アクセス数、利用場所・地域、利用期間(永久、期間、サブスクリプション)、独占性、サブライセンスの可否などを、曖昧さなく正確に表現することが不可欠です。誤訳は、意図しない利用やライセンス違反につながり、著作権侵害のリスクを高める可能性があります。

Q2: 「データプライバシーとセキュリティ(Data Privacy and Security)」に関する条項の翻訳で、特に注意すべき点は何ですか?

A2: 国境を越えたソフトウェアの利用においては、各国のデータ保護法規制(GDPR、CCPAなど)への準拠が非常に重要です。翻訳においては、個人データの定義、収集、処理、保管、移転に関する規定、データ主体(ユーザー)の権利、データ侵害時の通知義務と対応プロセス、適用されるセキュリティ基準などを正確に翻訳することが不可欠です。この部分の不備は、法的な制裁や企業の信用失墜につながる可能性があります。

Q3: 国際的なソフトウェアライセンス契約で、「保証と免責(Warranties and Disclaimers)」と「責任制限(Limitation of Liability)」の条項はなぜ重要視されますか?

A3: これらの条項は、ソフトウェアの品質、性能、第三者の権利侵害、そして契約不履行などによって生じた損害に対するベンダーとユーザーの責任範囲を定めるものです。翻訳においては、ベンダーが提供するソフトウェアの機能、性能に関する保証の範囲、瑕疵担保責任、第三者の知的財産権を侵害しないことの保証、そして利用に関する免責事項、損害賠償責任の上限額などを正確に理解し、翻訳することが不可欠です。これらの条項の解釈ミスは、将来の紛争時に予期せぬ損失を被るリスクがあるため、慎重な対応が必要です。

Q4: ソフトウェアライセンス契約における「輸出管理規制(Export Control Regulations)」に関する条項は、どのように注意して翻訳すべきですか?

A4: 特定のソフトウェアや技術は、国際的な平和と安全の維持を目的とした輸出管理規制の対象となる場合があります。翻訳においては、ソフトウェアが該当する可能性のある輸出管理規制(例:米国のEAR、日本の外国為替及び外国貿易法)の条項が明記されているか、ライセンシーがこれらの規制を遵守する義務が課せられているかを確認し、正確に翻訳する必要があります。違反した場合、輸出者だけでなく輸入者も罰則の対象となる可能性があるため、注意が必要です。

Q5: ソフトウェアライセンス契約書で「準拠法と紛争解決(Governing Law and Dispute Resolution)」の条項が非常に重要と言われるのはなぜですか?

A5: 準拠法(Governing Law)は、契約の解釈・有効性・履行に適用される法律であり、紛争解決は問題発生時の解決プロセスを定めます。国際的なソフトウェアライセンス契約では、異なる国の法律や裁判制度が関わるため、どの国の法律が契約に適用されるのか、紛争が生じた場合にどの国で、どのような方法(国際仲裁、調停、裁判など)で解決するのかを明確に合意しておくことが、予測可能性を高め、紛争解決のコストと時間を削減するために極めて重要ですし、自社にとって有利な条件を確保すべきです。翻訳においては、これらの条項を正確に理解し、現地の法律専門家と連携して最終確認を行うことが不可欠です。

 

まとめ

ソフトウェアライセンス契約書の翻訳は、単なる言語の変換に留まらず、企業がグローバルにソフトウェアを利用・提供する上での法的基盤を確立し、リスクを管理するための極めて重要なプロセスです。英文と和文の契約書が持つそれぞれの特徴を深く理解し、法務、IT、情報セキュリティ、経理といった各部門が連携しながら、専門知識を持つ翻訳者の力を借りることが不可欠ですし、これまでの経験から当社はこれを強く認識しています。

特に、ライセンスの範囲、データプライバシーとセキュリティ、保証と免責、輸出管理規制、そして準拠法と紛争解決といった条項は、潜在的な法的・技術的リスクを最小限に抑え、グローバルな事業展開を成功させるための鍵となります。

 

当社は、このような複雑なソフトウェアライセンス契約書の翻訳において、貴社の各部門のニーズを理解し、最高品質の翻訳とサポートを提供することをお約束します。貴社の海外ビジネスにおけるソフトウェアライセンス契約に関してご不明な点やご相談がありましたら、ぜひお気軽にお問い合わせください。

 

WIPジャパンは、東京弁護士共同組合神奈川県弁護士共同組合をはじめとする全国23の弁護士共同組合の特約店に認定されています。
ご相談は無料です。いつでもお気軽にご連絡ください。

 

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契約書翻訳に役立つリンク集

法務省大臣官房司法法制部「法令翻訳の手引き」(PDF)
日本法令外国語訳推進会議「法令用語日英標準対訳辞書」(PDF)
Publiclegal(英文契約書のテンプレートや書式を無料で提供)
日本法令外国語訳データベースシステム(法務省が開設した日本の法令の英訳サイト)
weblio 英和辞典・和英辞典
英辞郎 on the web

 

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