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アウトソーシング契約書 翻訳:海外ビジネスを最適化する要点と関係部門の役割|翻訳会社WIPジャパン

作成者: WIP japan|Jul. 09, 2025

 

グローバルなビジネス環境において、コア業務への集中、コスト削減、専門性の活用などを目的として、業務の一部を外部の専門業者に委託するアウトソーシングは、多くの企業にとって重要な戦略の一つです。海外企業へのアウトソーシングも活発に行われており、その際に締結されるのがアウトソーシング契約書(Outsourcing Agreement)です。

この契約書は、委託する業務の範囲、サービスのレベル、期間、報酬、責任範囲、品質管理、データ保護、契約解除条件、そして準拠法などを詳細に定める法的文書であり、その正確な翻訳は、期待する成果の達成、法的リスクの回避、そして将来的な紛争の防止のために不可欠です。翻訳のミスや内容の理解不足は、サービス品質の低下、情報漏洩、追加費用の発生、責任の曖昧化、さらには高額な法的紛争へと発展するリスクをはらんでいます。

特に、国ごとに労働法、個人情報保護法、データセキュリティに関する法規制、契約法、税法、そして国際的な商慣習が大きく異なるため、単に言葉を置き換えるだけでなく、それぞれの法制度やアウトソーシングする業務の性質に応じた法的・商業的ニュアンスを踏まえた上で契約内容を理解し、翻訳することが不可欠です。

本記事では、当社が数多くのアウトソーシング契約書の翻訳を支援してきた経験に基づき、翻訳における重要なポイントと、貴社の各部門がどのように翻訳された契約書を活用し、関与していくべきかを具体的なケーススタディを交えて解説します。

貴社の海外ビジネスにおいて、アウトソーシング契約の適切な理解と運用を通じて、業務効率化、コスト削減、専門性の活用を最大限に実現し、リスクを最小限に抑えるために、ぜひ本記事をお役立てください。

 

アウトソーシング契約書とは何か?その目的と国際ビジネスにおける重要性

アウトソーシング契約書(Outsourcing Agreement)とは、企業(委託者:Client / Customer)が、特定の業務プロセスまたは機能を外部の専門業者(受託者:Service Provider / Vendor)に委託する際に締結する、法的拘束力を持つ文書です。

アウトソーシングの対象となる業務は多岐にわたります。

  • ITアウトソーシング: システム開発・運用、ヘルプデスク、データセンター管理

  • BPO(ビジネスプロセスアウトソーシング): カスタマーサポート、経理処理、人事管理、給与計算

  • 製造アウトソーシング: 製品の製造、組み立て、包装

  • 物流アウトソーシング: 倉庫管理、配送

  • マーケティングアウトソーシング: デジタルマーケティング、広告運用

  • 研究開発アウトソーシング: 新技術開発、製品テスト

この契約書は、以下の非常に多岐にわたる詳細な条項を含みます。

  • 委託業務の範囲(Scope of Services):委託する具体的な業務内容、期待される成果、サービスのレベル(SLA: Service Level Agreement)、業務遂行の方法、使用する設備やシステム。

  • 期間とスケジュール(Term and Schedule):契約期間、業務開始日と終了日、段階的な導入スケジュール、パフォーマンス評価の頻度。

  • 報酬と支払い条件(Fees and Payment Terms):サービス料金(固定料金、従量課金、成果報酬など)、支払いスケジュール、支払い通貨、費用精算(旅費交通費など)、遅延利息。

  • サービスのレベル合意(SLA: Service Level Agreement):サービス品質に関する具体的な指標(稼働率、応答時間、解決時間など)とその目標値、達成状況の評価方法、未達時のペナルティ。

  • 品質管理と監査(Quality Control and Audit):委託業務の品質を確保するための管理体制、委託者による監査権限。

  • 知的財産権の帰属(Intellectual Property Rights):委託業務の過程で生み出された成果物(ソフトウェア、データ、レポートなど)の知的財産権の帰属。

  • 秘密保持義務(Confidentiality):委託者が受託者に開示する機密情報(顧客情報、事業戦略、技術情報など)の保護義務。

  • 個人情報保護とデータセキュリティ(Data Protection and Security):個人情報を取り扱う場合の保護措置、データセキュリティに関する基準と義務、セキュリティ侵害時の対応。

  • 責任の制限と補償(Limitation of Liability and Indemnification):受託者の過失や契約違反によって生じた損害に対する責任範囲、責任上限額、相手方への補償義務。

  • 契約解除条件(Termination):契約違反、サービスの品質不良、経営状況の変化などによる契約解除の条件、通知期間、解除後の措置(データ移行、業務移管など)。

  • 準拠法と紛争解決(Governing Law and Dispute Resolution):契約に適用される法律、紛争が発生した場合の解決方法(裁判、国際仲裁、調停など)。

  • 再委託の可否(Subcontracting):受託者が業務の一部または全部を第三者に再委託できるかどうか、再委託する場合の条件や委託者の承認。

  • 事業継続計画(Business Continuity Plan):受託者側の事業継続計画とその開示義務。

国際ビジネスにおいてアウトソーシング契約書が特に重要なのは、以下の理由からです。

  • 法規制と商慣習の差異: 各国で労働法、個人情報保護法、データセキュリティに関する規制が大きく異なるため、契約書でこれらの違いを明確にし、遵守体制を確立する必要があります。

  • 文化と言語の障壁: 海外のサービスプロバイダーとの連携では、文化や言語の違いによる誤解が生じやすいため、契約書でコミュニケーションの方法や報告体制を明確にする必要があります。

  • データセキュリティとプライバシー: 国境を越えたデータの移転や保管には、各国のデータ保護法制への対応が不可欠であり、契約書で適切なセキュリティ対策と責任範囲を定める必要があります。

  • サービスの品質管理: 海外のプロバイダーに対する品質管理は、国内と比較して困難な場合があります。SLAを明確に定め、定期的な評価と改善の仕組みを契約書に盛り込むことが重要です。

  • 紛争解決: 国際的な契約では、紛争が発生した場合の解決方法(準拠法、仲裁など)を事前に明確にしておくことが、リスク管理上非常に重要です。

英文アウトソーシング契約書の特徴と和文契約書との違い

国際的なアウトソーシング取引では、多くの場合、英文で契約書が作成されます。その特徴は、日本の和文契約書とは異なる点がいくつかあります。

  • Scope of Services(サービスの範囲)とSLA(サービスレベル合意)の詳細化:

    • 提供される業務内容、期待される成果、サービスの品質基準(KPIsを含む)、目標達成レベル、測定方法、報告頻度、未達時のペナルティ(Service Creditsなど)が非常に詳細に記述されます。特にSLAは、数値目標を具体的に示すことで、サービス品質の客観的な評価を可能にします。

    • 和文契約でもSLAは重要ですが、英文契約ではより具体的かつ数値化された指標を用いる傾向があります。

  • Data Protection and Security(データ保護とセキュリティ)に関する条項の強化:

    • 個人情報や機密情報を扱う場合、GDPR(EU)、CCPA(米国カリフォルニア州)など、適用されるデータ保護法規制を特定し、データ処理の方法、セキュリティ対策の基準、データ侵害時の通知義務、責任範囲などを詳細に規定します。データの国際移転に関する規定も重要です。

  • Intellectual Property Rights(知的財産権)の明確な帰属:

    • 委託業務の過程で作成されたソフトウェア、データ、レポート、その他の成果物の知的財産権の帰属を明確にし、所有権、利用権、譲渡の可否などを詳細に規定します。特に、共同開発やカスタマイズされたシステムの場合、権利関係の明確化は不可欠です。

  • Business Continuity and Disaster Recovery(事業継続と災害復旧):

    • 受託者側の事業継続計画(BCP)および災害復旧計画(DRP)の内容、定期的なテストの実施、委託者への開示義務などを規定し、緊急時におけるサービスの中断を最小限に抑えるための対策を講じます。

  • Audit Rights(監査権限)の明記:

    • 委託者が受託者のサービス提供状況、セキュリティ体制、コンプライアンス状況などを監査する権利を詳細に規定します。監査の頻度、範囲、手続き、必要な情報開示などを定めます。

  • Termination for Convenience(都合による契約解除):

    • 契約期間の満了前に、当事者の一方が一定の予告期間をもって、理由を問わず契約を解除できる権利を規定することがあります。解除時の違約金や費用清算についても定められます。

  • Indemnification(補償)条項の範囲:

    • 受託者の過失、契約違反、第三者の権利侵害などによって委託者に損害が生じた場合に、受託者が委託者を補償する範囲(直接損害、間接損害、弁護士費用など)が詳細に規定されます。

  • Governing Law and Dispute Resolution(準拠法と紛争解決):

    • 国際的なアウトソーシング契約では、国際仲裁を紛争解決手段として指定することが一般的であり、仲裁地、仲裁機関、仲裁規則を明確に定めます。

日本の和文アウトソーシング契約書に比べ、英文アウトソーシング契約書は、サービスレベル、データ保護、知的財産権、事業継続性、監査権限、そして国際的な紛争解決メカニズムに関して、より詳細かつ厳密な記述が求められる傾向が強いです。翻訳においては、これらの法的・技術的・商業的ニュアンスを正確に反映した表現を用いることが不可欠です。

 

アウトソーシング契約書翻訳における重要ポイント

アウトソーシング契約書の翻訳は、貴社の海外ビジネスにおける業務効率化、コスト削減、専門性の活用、そして法的リスクに直接影響するため、極めて高い精度と専門性、そして法務・IT・業務運用・情報セキュリティに関する視点が求められます。以下のポイントを押さえることが、成功への鍵となります。

  1. 委託業務の範囲(Scope of Services)とサービスレベル合意(SLA)の厳密な翻訳

    • 委託する具体的な業務内容、期待される成果、サービス品質の指標(KPIs)、目標値、測定方法、報告頻度、未達時のペナルティ(Service Creditsなど)を、曖昧さなく厳密に翻訳することが不可欠です。SLAの数値目標や評価方法の誤訳は、サービス品質に関する認識のずれや紛争の原因となります。

  2. 報酬と支払い条件、費用精算、遅延利息の明確化

    • サービス料金(固定料金、従量課金、成果報酬などの計算方法)、支払いスケジュール、支払い通貨、為替リスクの負担者、費用精算ルール、遅延利息を正確に翻訳することが不可欠です。特に、従量課金制の場合、課金単位や計算方法を詳細に理解する必要があります。

  3. データ保護とセキュリティ(Data Protection and Security)に関する条項の精緻な翻訳

    • 個人情報や機密情報を扱う場合、適用される各国のデータ保護法規制(GDPR、CCPAなど)を特定し、データ処理の方法、セキュリティ対策の基準、データ侵害時の通知義務、責任範囲、データの国際移転に関する規定を正確に翻訳することが極めて重要です。法規制の誤解は、重大な法的責任につながる可能性があります。

  4. 知的財産権の帰属(Intellectual Property Rights)の明確な理解

    • 委託業務の過程で作成されたソフトウェア、データ、レポート、その他の成果物の知的財産権が、どちらの当事者(貴社かサービスプロバイダーか)に帰属するのか、または共同所有となるのかを厳密に翻訳することが不可欠です。特に、カスタム開発の場合、権利関係を明確にしておくことが重要です。

  5. 事業継続計画(Business Continuity Plan)と災害復旧(Disaster Recovery)

     

    • 受託者側の事業継続計画(BCP)および災害復旧計画(DRP)の内容、定期的なテストの実施、委託者への開示義務に関する条項を正確に翻訳し、緊急時におけるサービス中断のリスクを評価する必要があります。

  6. 責任の制限(Limitation of Liability)と補償(Indemnification)条項

    • 受託者の過失や契約違反によって貴社に損害が生じた場合の、受託者の責任の上限額、そして第三者からのクレームや訴訟が発生した場合にどちらの当事者が相手方を防御・補償するのかを厳密に翻訳することが不可欠です。責任範囲の理解は、リスク管理の観点から非常に重要です。

  7. 契約解除条件(Termination)と解除後の措置

    • 契約違反、サービスの品質不良、経営状況の変化などによる契約解除の具体的な条件、通知期間、そして解除後のデータ移行、業務移管、未払い費用の精算などに関する条項を正確に翻訳することが重要です。円滑な契約終了と業務移行のために、これらの条項の理解は不可欠です。

  8. 準拠法と紛争解決(Governing Law and Dispute Resolution)

    • 契約に適用される法律、そして紛争が発生した場合の解決方法(国際仲裁、調停、裁判など)、仲裁地の選定、仲裁機関、仲裁規則、仲裁人の数、仲裁判断の拘束力などを正確に翻訳することが不可欠です。国際取引では、自社にとって有利な準拠法や紛争解決地を指定することが戦略上重要であり、その内容を正確に把握すべきです。

  9. 再委託の可否(Subcontracting)に関する条項

    • 受託者が業務の一部または全部を第三者に再委託できるかどうか、再委託する場合の条件(委託者の承認が必要かなど)、再委託先の責任範囲などを正確に翻訳することが重要です。再委託はサービス品質や情報セキュリティに影響を与える可能性があるため、注意が必要です。

  10. AI翻訳の適切な活用と専門家による最終確認

    AI翻訳技術は、初稿の作成や用語の統一に役立ちますが、アウトソーシング契約書のような法的・専門的に極めて複雑な文書、特にサービスレベル、データ保護、責任制限、知的財産権といった条項においては、法的ニュアンス、各国の法規制、業界特有の専門用語を完全に理解することは困難です。AIを効率化ツールとして最大限活用しつつも、法務知識、IT、業務運用、情報セキュリティに関する専門知識と国際商取引の実務経験を持つ専門の翻訳者による徹底したレビューと校正が不可欠です。人間による精査が、潜在的なリスクを最小限に抑え、安全な国際取引の基盤となります。

  11. 強固な情報セキュリティ体制

    アウトソーシング契約書には、貴社の事業運営、顧客情報、技術情報など、企業の競争力や事業の成否に直結する極めて機密性の高い情報が含まれることが一般的です。これらの情報が外部に漏洩した場合、企業の競争力低下、信用失墜、法的な責任問題など、甚大な損害を被る可能性があります。そのため、翻訳を依頼する際には、翻訳会社が厳格な情報セキュリティポリシーを定め、技術的・物理的・人的な対策を徹底しているかを必ず確認すべきです。当社は、お客様の機密情報を最高レベルで保護するため、徹底したセキュリティ管理を実践しています。

  12. 現地の弁護士・コンサルタントとの連携

    翻訳された契約書をベースに、必ず現地の労働法、個人情報保護法、契約法、IT関連法規に詳しい弁護士やコンサルタントと連携し、契約内容の法的妥当性、リスク、コンプライアンス状況を最終確認することが不可欠です。翻訳は「理解の橋渡し」であり、最終的な法的判断は現地の専門家が行うべきです。

 

アウトソーシング契約書の翻訳は誰に必要なのか?ケーススタディで見る関係部門の役割

アウトソーシング契約書は、海外ビジネスにおける業務効率化とリスク管理を左右するため、多岐にわたる部門や関係者がその内容を理解し、翻訳された情報に基づいて連携することが不可欠です。

 

ケーススタディ1:海外コールセンターへの業務委託(日本のEC企業)

 

状況: 日本のEC企業が、顧客対応のキャパシティを増強するため、フィリピンのコールセンター事業者と英文のアウトソーシング契約を締結するケース。

  • カスタマーサポート部:

    • 必要性: 委託する業務範囲(電話、メール、チャット対応)、対応言語、対応時間、品質基準(KPIs)、エスカレーションルール、報告体制など、日々の業務遂行に直結する運用上の条件を詳細に確認します。SLAの目標値やペナルティ規定も重要です。

    • ケース: 契約書に記載された「応答時間、解決率、顧客満足度に関するSLAの目標値」や「エスカレーション時の連絡フロー」を和訳で確認し、期待されるサポート品質と運用体制を評価します。過去には、SLAの翻訳が不十分だったため、期待する品質が維持されず、顧客からの苦情が多発した事例がありました。当社は、このようなSLAに関する条項の正確な翻訳を特に重視しています。

  • 情報システム部/情報セキュリティ部:

    • 必要性: 顧客の個人情報や決済情報などの機密情報の取り扱い、データセキュリティに関する基準、アクセス権限、データ侵害時の通知義務など、情報セキュリティに関する条項を厳密に確認します。フィリピンの個人情報保護法制への対応も重要です。

    • ケース: 契約書に記載された「顧客データの保管場所とセキュリティ対策」や「データ侵害発生時の通知義務と対応手順」を和訳で確認し、情報漏洩リスクを評価し対策を講じます。

  • 法務部:

    • 必要性: 契約全体の法的妥当性、リスク管理、特にデータ保護、責任制限、契約解除条件、準拠法、紛争解決条項の適切性を確認します。フィリピンの契約法、個人情報保護法への対応が求められます。

    • ケース: 契約書に記載された「個人情報漏洩が発生した場合の損害賠償責任の範囲」や「紛争解決における準拠法と裁判管轄」を和訳で確認し、法的リスクと対応戦略を評価します。

 

ケーススタディ2:海外企業へのソフトウェア開発委託(日本のソフトウェア企業)

 

状況: 日本のソフトウェア企業が、開発リソースを確保するため、インドのソフトウェア開発会社と英文のアウトソーシング契約を締結するケース。

  • 開発部/プロダクトマネジメント部:

    • 必要性: 委託する開発範囲、機能要件、技術仕様、開発スケジュール、成果物の定義、品質基準、テスト計画、知的財産権の帰属など、開発プロジェクトの成否に直結する技術的・運用上の条件を詳細に確認します。

    • ケース: 契約書に記載された「開発するソフトウェアの機能要件と技術仕様」や「開発されたコードの知的財産権の帰属」を和訳で確認し、開発計画と権利関係を評価します。

  • 知的財産部:

    • 必要性: 開発されるソフトウェアの著作権、特許権などの知的財産権の帰属、権利侵害に対する責任分担、秘密保持義務などを確認します。

    • ケース: 契約書に記載された「開発されたソフトウェアの著作権の譲渡条項」や「第三者の知的財産を侵害しないことの保証」を和訳で確認し、知的財産保護戦略を策定します。

  • 法務部:

    • 必要性: 契約全体の法的妥当性、リスク管理、特に知的財産権の帰属、責任制限、契約解除条件、準拠法、紛争解決条項の適切性を確認します。インドの契約法、著作権法への対応が求められます。

    • ケース: 契約書に記載された「契約解除時のソースコードの取り扱い」や「紛争解決における国際仲裁の選択とその規則」を和訳で確認し、法的リスクと対応戦略を評価します。

よくある質問(FAQ)

アウトソーシング契約書の翻訳に関して、お客様からよくいただくご質問とその回答をまとめました。

Q1: アウトソーシング契約書における「委託業務の範囲(Scope of Services)」と「サービスレベル合意(SLA)」の条項は、翻訳でどのように注意すべきですか?

A1: これらの条項は、アウトソーシングの成否を左右する最も重要な部分です。翻訳においては、委託する具体的な業務内容、期待される成果、サービスの品質基準(KPIs)、目標値、測定方法、報告頻度、そしてサービスレベル未達時のペナルティ(Service Creditsなど)を、曖昧さなく、数値なども含めて正確に翻訳することが不可欠です。これにより、委託者と受託者の間でサービス品質に関する明確な共通認識を持つことができます。

Q2: 「報酬と支払い条件」に関する条項の翻訳で、特に注意すべき点は何ですか?

A2: 報酬体系は、アウトソーシングのコスト効率に直接影響するため、非常に重要です。翻訳においては、サービス料金の計算方法(固定料金、従量課金、成果報酬など)、支払いスケジュール、支払い通貨、為替リスクの負担者、そして旅費交通費などの費用精算ルール、遅延利息を正確に翻訳することが不可欠です。特に、従量課金制や成果報酬型の場合、その計算根拠や達成条件を詳細に理解する必要があります。

Q3: 国際的なアウトソーシング契約で、「データ保護とセキュリティ(Data Protection and Security)」に関する条項はなぜ重要視されますか?

A3: 国境を越えたデータ移転や保管は、各国のデータ保護法制(GDPR、CCPAなど)の遵守が必須であり、違反した場合の罰則も非常に厳格です。翻訳においては、適用される法規制を特定し、データ処理の方法、セキュリティ対策の基準、データ侵害時の通知義務、責任範囲、データの国際移転に関する規定を正確に翻訳することが極めて重要です。法規制の誤解は、事業継続に大きな影響を与える可能性があります。

Q4: アウトソーシング契約における「責任の制限(Limitation of Liability)」と「補償(Indemnification)」の条項は、どのように注意して翻訳すべきですか?

A4: これらの条項は、契約当事者間のリスク分担を定めるものであり、翻訳の精度が将来的な訴訟リスクに直結します。「責任の制限」では、受託者の過失や契約違反によって委託者に損害が生じた場合の、受託者の責任の上限額を正確に把握することが重要です。「補償」では、第三者からのクレームや訴訟が発生した場合に、どちらの当事者が相手方を防御し、損害を補償するのかを明確に理解する必要があります。これらの条項は、慎重かつ正確に翻訳されるべきです。

Q5: アウトソーシング契約書で「準拠法と紛争解決」の条項が非常に重要と言われるのはなぜですか?
A5: 準拠法(Governing Law)は、契約の解釈・有効性・履行に適用される法律であり、紛争解決は問題発生時の解決プロセスを定めます。国際的なアウトソーシングでは、異なる国の法律や裁判制度が関わるため、どの国の法律が適用されるのか、紛争が生じた場合にどの国で、どのような方法(国際仲裁など)で解決するのかを明確に合意しておくことが、予測可能性を高め、紛争解決のコストと時間を削減するために極めて重要です。翻訳においては、これらの条項を正確に理解し、自社に有利な条件となっているかを確認する必要があります。

まとめ

アウトソーシング契約書の翻訳は、単なる言語の変換に留まらず、企業が海外の専門リソースを最大限に活用し、効率的かつ安全にビジネスを展開するための極めて重要なプロセスです。英文と和文の契約書が持つそれぞれの特徴を深く理解し、業務部門、IT部門、法務部門、情報セキュリティ部門などが連携しながら、専門知識を持つ翻訳者の力を借りることが不可欠ですし、これまでの経験から当社はこれを強く認識しています。

特に、委託業務の範囲とSLA、報酬と支払い条件、データ保護とセキュリティ、責任制限と補償、そして準拠法と紛争解決といった条項は、潜在的なリスクを最小限に抑え、国際アウトソーシングプロジェクトの成功への鍵となります。

 

当社は、このような複雑なアウトソーシング契約書の翻訳において、貴社の各部門のニーズを理解し、最高品質の翻訳とサポートを提供することをお約束します。貴社の海外ビジネスにおけるアウトソーシング契約に関してご不明な点やご相談がありましたら、ぜひお気軽にお問い合わせください。


 

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契約書翻訳に役立つリンク集

法務省大臣官房司法法制部「法令翻訳の手引き」(PDF)
日本法令外国語訳推進会議「法令用語日英標準対訳辞書」(PDF)
Publiclegal(英文契約書のテンプレートや書式を無料で提供)
日本法令外国語訳データベースシステム(法務省が開設した日本の法令の英訳サイト)
weblio 英和辞典・和英辞典
英辞郎 on the web

 

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