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OEM契約書(Original Equipment Manufacturer Agreement)の翻訳:国際ビジネスにおける製品開発と製造の要点|翻訳会社WIPジャパン

作成者: WIP japan|Jul. 08, 2025

 

グローバル市場において、自社ブランド製品の製造を外部の専門企業に委託するOEM(Original Equipment Manufacturer)は、開発コストの削減、生産能力の拡張、市場投入期間の短縮などを実現するための重要な戦略です。

このOEM取引の根幹となるのがOEM契約書(Original Equipment Manufacturer Agreement)であり、その正確な翻訳は、製品の品質、納期、知的財産権、責任範囲などを明確にし、海外ビジネスにおける潜在的なリスクを低減するために不可欠です。翻訳のミスや内容の理解不足は、製品不良、納期遅延、知的財産権の侵害、予期せぬ費用負担、さらには高額な法的紛争へと発展するリスクをはらんでいます。

特に、日本と海外では、製造物責任法(PL法)、知的財産権法、契約法、独占禁止法などに関する法制度や商慣習が大きく異なるため、単に言葉を置き換えるだけでなく、それぞれの法制度や慣習を踏まえた上で契約内容を理解し、翻訳することが不可欠です。

本記事では、私どもが数多くのOEM契約書の翻訳を支援してきた経験に基づき、翻訳における重要ポイントと、企業の各部門がどのように翻訳された契約書を活用し、関与していくべきかを具体的なケーススタディを交えて解説します。

貴社の国際OEMビジネスを成功させ、安心して製品開発と製造を行うために、ぜひ本記事をお役立てください。

OEM契約書とは何か?その目的と国際ビジネスにおける重要性

OEM契約書(Original Equipment Manufacturer Agreement)とは、メーカー(委託者:Client / Buyer)が、自社ブランドの製品を製造する業務を、外部の製造業者(受託者:OEM Manufacturer / Supplier)に委託する際に締結する契約書です。受託者は、委託者の設計や仕様に基づいて製品を製造し、委託者のブランド名で出荷します。

この契約書は、以下の非常に多岐にわたる詳細な条項を含みます。

  • 製品の仕様と品質基準: 製造される製品の具体的な仕様、設計、材料、品質基準、検査方法、許容される不良率など。

  • 製造と供給: 製造量、納期、生産スケジュール、原材料の調達、製造プロセスの管理、引渡し条件(インコタームズなど)。

  • 価格と支払い条件: 製造コスト、製品単価、支払い通貨、支払い方法、支払い期日、価格改定の条件など。

  • 知的財産権: 製品の設計図、技術情報、金型、製造ノウハウなどに関する知的財産権の帰属、使用許諾、秘密保持義務、特許権侵害責任など。

  • 品質保証と責任: 製品の品質保証期間、保証内容、瑕疵担保責任、製造物責任(PL責任)の分担、リコール対応、責任制限など。

  • 秘密保持: 製品の仕様、製造方法、顧客情報など、取引を通じて知り得た機密情報の取り扱い。

  • 独占条項: 委託者の競合製品を製造しない義務や、特定の地域での独占製造権など。

  • 契約期間と解除条件: 契約の期間、更新の手続き、契約違反時の解除条件、不可抗力条項など。

  • 準拠法と紛争解決: 契約に適用される法律、紛争が発生した場合の解決方法(裁判、仲裁など)。

国際ビジネスにおいてOEM契約書が特に重要なのは、以下の理由からです。

  • 品質とブランドイメージの保護: 自社ブランドで販売される製品の品質は、企業イメージと顧客からの信頼に直結します。契約書で品質基準や検査体制を厳格に定めることで、ブランド価値を守ります。

  • 知的財産権の保護: 自社の設計や技術が第三者に漏洩したり、無断使用されたりするリスクを最小限に抑えるため、知的財産権に関する条項を明確にすることが不可欠です。

  • 製造物責任(PL責任)の明確化: 製造された製品に欠陥があった場合、最終的な販売者である委託者が責任を負うことが一般的ですが、OEM契約書で製造段階での責任分担を明確にすることで、リスクを適切に配分できます。

  • コストと納期の最適化: 大量生産や特定の技術を持つOEM工場を活用することで、製造コストを削減し、市場投入までの時間を短縮できます。契約書で価格や納期、生産量を明確にすることで、計画通りの事業運営が可能になります。

  • 法規制や商慣習の違いへの対応: 各国の製造物責任法、知的財産権法、独占禁止法、労働法などは大きく異なります。これらの違いを理解せずに契約を結ぶと、予期せぬ法的リスクや費用負担が生じる可能性があります。

英文OEM契約書の特徴と和文契約書との違い

国際的なOEM取引では、多くの場合、英文でOEM契約書が作成されます。その特徴は、日本の和文契約書とは異なる点がいくつかあります。

  • 技術仕様と品質基準の極めて詳細な記述: 和文契約書と比較して、製造される製品の設計図、材料リスト(BOM)、製造プロセス、検査基準、品質保証テスト、不良品許容範囲などが、技術的な詳細を伴って厳密に記述されます。これは、製品の品質と性能を保証するために不可欠です。

  • 知的財産権(IP)条項の網羅性: 製品の設計、製造方法、金型、委託者が提供する技術情報など、広範囲な知的財産権の帰属、使用許諾範囲、秘密保持義務、OEM受託者による第三者への開示・転用禁止、特許権侵害責任、侵害時の補償(Indemnification)などが非常に詳細かつ具体的に規定されます。

  • 製造物責任(PL責任)とリコールの明確な分担: 製造された製品に起因する事故や損害が発生した場合の、委託者と受託者間の製造物責任(Product Liability)の分担、リコールが発生した場合の費用負担、原因究明、情報開示、対応義務などが詳細に定められます。

  • 独占条項(Exclusivity)の有無と範囲: 受託者が委託者の競合製品を製造しない義務や、特定の地域での独占製造権の付与など、独占性を規定する条項が盛り込まれることがあります。これは、両当事者のビジネス戦略に大きく影響するため、その範囲と期間が明確に定められます。

  • 監査権(Audit Rights)と工場査察: 委託者が受託者の製造プロセス、品質管理体制、在庫状況などを監査または工場査察する権利が規定されることが一般的です。品質管理とコンプライアンス確保のために重要な条項です。

  • 原材料調達と部品供給の責任: 誰が原材料や部品を調達するのか(委託者支給か、受託者調達か)、その場合の品質保証、納期責任などが明確に定められます。委託者支給の場合は、その管理方法や紛失・破損時の責任も規定されます。

  • 契約解除条件と在庫処理: 契約違反、支払い不履行、品質問題、独占条項違反など、契約を解除できる具体的な事由、解除のための通知期間、そして解除後の残製品や原材料の在庫処理、金型の返還などが厳密に定められます。

  • 準拠法と紛争解決の明確化: 契約書に適用される法律(例:ニューヨーク州法、英国法、CISGなど)と、紛争解決の手段(訴訟、仲裁、調停)および管轄地(どの国の裁判所、どの仲裁機関)が明確に指定されます。

一方、日本の和文OEM契約書は、比較的簡潔で、「別途協議」や「信義誠実」といった表現に依拠する部分が見られることがあります。しかし、国際的なOEM取引においては、このような曖昧さが大きなリスクとなるため、英文に翻訳する際は、その意図を明確にし、具体的な権利義務関係が読み取れるように現地の法制度や国際的な商慣習を踏まえた「再構築」する視点が不可欠です。例えば、日本の「製造物責任法」と海外の「Product Liability」の概念の違いを明確にし、契約上の責任分担を適切に反映する必要があります。

OEM契約書翻訳における重要ポイント

OEM契約書の翻訳は、貴社の製品開発、生産、品質、知的財産管理、そしてブランドイメージに直接影響するため、極めて高い精度と専門性、そして法務・技術的な視点が求められます。以下のポイントを押さえることが、成功への鍵となります。

  1. 製品の仕様、品質基準、検査方法の厳密な特定

    製造される製品の具体的な設計図、技術仕様、材料(BOM)、製造プロセス、品質基準、検査方法、許容される不良率などを、技術的・商業的に誤解の余地なく厳密に翻訳することが最も重要です。技術的な用語のわずかな誤訳が、製品の機能不全、品質問題、リコールといった重大な問題を引き起こしかねません。

  2. 知的財産権(IP)の帰属と保護

    製品の設計図、製造ノウハウ、金型、委託者が提供する技術情報などの知的財産権の明確な帰属、使用許諾範囲、OEM受託者による第三者への開示・転用禁止、特許権侵害時の責任分担と補償を正確に翻訳することが不可欠です。IP戦略と直結する非常に重要な条項です。

  3. 製造物責任(PL責任)とリコールの分担

    製造された製品に欠陥があった場合の製造物責任(PL責任)の分担、リコールが発生した場合の費用負担(回収費用、調査費用、顧客への賠償など)、原因究明、情報開示、対応義務などを明確に翻訳する必要があります。消費者保護が強化されている国では、特に注意が必要です。

  4. 品質保証(Warranty)と責任制限(Limitation of Liability)条項の正確性

    製品の品質保証期間、保証内容、瑕疵担保責任、そして契約違反が発生した場合の損害賠償の範囲と上限(例:間接損害の免責、賠償額のキャップ)を正確に翻訳することが不可欠です。OEM受託者の製造上の過失による損害に対する責任の範囲は、自社のリスクマネジメント上、極めて重要です。

  5. 独占条項(Exclusivity)の範囲と期間

    OEM受託者が委託者の競合製品を製造しない義務や、特定の地域での独占製造権の有無とその範囲(製品の種類、地域、期間)を正確に翻訳することが重要です。これにより、自社の市場戦略とサプライヤーとの関係性が明確になります。

  6. 原材料調達と部品供給の責任

    原材料や部品を委託者(自社)が支給するのか、受託者(OEM工場)が調達するのか、その場合の品質保証、納期責任、在庫管理、紛失・破損時の責任などを明確に翻訳することが重要です。特に委託者支給の場合は、その管理やトレーサビリティに関する条項も確認が必要です。

  7. AI翻訳の適切な活用と専門家による最終確認

    AI翻訳技術は、初稿の作成や用語の統一に役立ちますが、OEM契約書のような法的・技術的に極めて複雑な文書、特に製品仕様、知的財産権、製造物責任、品質保証、独占条項、責任制限といった条項においては、法的ニュアンス、製造技術、品質管理、そして各国の法規制を完璧に理解することは困難です。AIを効率化ツールとして最大限活用しつつも、法務知識、製造業における実務経験、知的財産権に関する知見を持つ専門の翻訳者による徹底的なレビューと校正が不可欠です。人間による精査が、潜在的なリスクを最小限に抑え、安全で確実なOEMビジネスの基盤となります。

  8. 強固な情報セキュリティ体制

    OEM契約書には、製品の設計図、技術仕様、製造ノウハウ、将来の製品計画、価格情報など、企業の競争力に直結する極めて機密性の高い情報が含まれることが一般的です。これらの情報が外部に漏洩した場合、企業の競争力低下、信用失墜、法的な責任問題など、甚大な損害を被る可能性があります。そのため、翻訳を依頼する際には、翻訳会社が厳格な情報セキュリティポリシーを定め、技術的・物理的・人的な対策を徹底しているかを必ず確認すべきです。私どもは、お客様の機密情報を最高レベルで保護するため、徹底したセキュリティ管理を実践しています。

  9. 「総コスト」での評価と信頼できる翻訳会社の選定

    翻訳にかかる費用は、単純な料金だけでなく、翻訳後の社内での確認・修正にかかる時間や労力、そして将来的な紛争リスクといった「総コスト」で評価すべきです。初期費用が安価でも、翻訳品質が低ければ、結果的に大きな損失に繋がりかねません。実績、専門性、セキュリティ体制、そして提供されるサービスの質を総合的に判断し、貴社の国際OEMビジネスにおける戦略的パートナーとして信頼できる翻訳会社を選定することが重要ですし、私どもはこのような観点から、お客様に安心してご利用いただける最適なサービスを提案しています。

  10. 現地の法規制と製造業の慣習への理解

    翻訳においては、単に言語を変換するだけでなく、OEM受託者の所在国の製造物責任法、知的財産権法、独占禁止法、労働法、環境規制、そして当該製品に関する安全基準や認証要件などを理解し、契約内容がそれに合致しているか、また自社にとって不利な条項が含まれていないかを確認することが非常に重要です。必要に応じて、現地の弁護士や製造業コンサルタントに相談することも検討すべきです。

OEM契約書の翻訳は誰に必要なのか?ケーススタディで見る関係部門の役割

OEM契約書は、製品開発、生産、品質管理、知的財産保護、そして販売戦略に直接関わるため、多岐にわたる部門がその内容を理解し、翻訳された情報に基づいて連携することが不可欠です。

 

ケーススタディ1:海外のEMS企業への電子機器OEM製造委託

状況: 日本のスタートアップ企業が、海外のEMS(Electronics Manufacturing Service)企業に、自社ブランドのIoTデバイスの製造をOEM委託するための英文OEM契約を締結するケース。

  • 製品開発部/R&D部:

    • 必要性: 製品の設計図、技術仕様、材料リスト(BOM)、製造プロセス、検査方法などを詳細に確認します。自社の設計が正確に製造に反映されるか、品質が維持されるかを評価するため、技術的な内容を正確に反映した翻訳が不可欠です。

    • ケース: 契約書に記載された「製造工程における特定の品質管理基準」や「受託者が使用する部品の認定基準」を和訳で確認し、自社の品質基準に適合しているかを検証します。過去には、製品の技術仕様に関する翻訳が曖昧だったため、試作品の段階で性能問題が発覚した事例がありました。私どもは、このような技術仕様に関する条項の正確な翻訳を特に重視しています。

  • 生産管理部/SCM部:

    • 必要性: 製造量、納期、生産スケジュール、原材料調達の責任、引渡し条件(インコタームズ)、品質検査プロセスなどを確認し、生産計画、在庫管理、物流手配に反映させます。

    • ケース: 契約書に記載された「納期遅延時のペナルティ」や「最低発注数量(Minimum Order Quantity:MOQ)」を和訳で確認し、生産計画と発注戦略に組み込みます。

  • 品質保証部:

    • 必要性: 製品の品質基準、検査方法、許容される不良率、品質保証期間、不良品発生時の対応(修理、交換、減額)、リコール対応、製造物責任の分担などを確認し、品質リスクを評価します。

    • ケース: 契約書に記載された「製造物責任の分担」や「リコール発生時の費用負担」を和訳で確認し、自社のリスクマネジメント計画に反映させます。

  • 法務部/知的財産部:

    • 必要性: 契約全体の法的妥当性、リスク管理、特に知的財産権の帰属・保護、製造物責任、独占条項、秘密保持、準拠法、紛争解決条項の適切性を確認します。自社の技術や設計が保護されるかを検討します。

    • ケース: 契約書に記載された「金型(Tooling)の所有権と管理責任」や「製造ノウハウの秘密保持義務」を和訳で確認し、将来的な知的財産権紛争のリスクを評価します。

  • 経理部/財務部:

    • 必要性: 製造コスト、単価、支払い条件、通貨、価格改定条件などを確認し、原価計算、予算管理、資金繰り計画に反映させます。

    • ケース: 契約書に記載された「原材料価格変動に伴う価格改定のメカニズム」を和訳で確認し、将来の原価変動リスクを予測します。

ケーススタディ2:海外の化粧品メーカーへのPB(プライベートブランド)製造委託

状況: 日本の化粧品販売会社が、海外の化粧品メーカーに自社プライベートブランド製品の製造をOEM委託するための英文OEM契約を締結するケース。

  • 商品企画部/マーケティング部:

    • 必要性: 製品コンセプト、処方、成分、パッケージデザイン、品質基準、製造許認可要件などを詳細に確認します。ブランドイメージと製品コンセプトが正確に反映されるかを評価するため、これらの内容を正確に反映した翻訳が不可欠です。

    • ケース: 契約書に記載された「使用可能な成分の制限」や「特定の国での販売に必要な認証取得の責任」を和訳で確認し、製品開発計画に組み込みます。

  • 生産管理部/品質管理部:

    • 必要性: 製造量、納期、生産スケジュール、品質基準、検査方法、不良品発生時の対応、衛生管理体制などを確認し、生産計画と品質管理に反映させます。

    • ケース: 契約書に記載された「工場監査権」や「トレーサビリティ(追跡可能性)の要件」を和訳で確認し、定期的な工場監査や品質管理体制の確認を計画します。

  • 法務部:

    • 必要性: 契約全体の法的妥当性、リスク管理、特に製造物責任、知的財産権(処方、ブランド名)、製品の安全性に関する保証、独占条項、秘密保持、準拠法、紛争解決条項の適切性を確認します。各国の化粧品規制(薬機法、FDA規制など)への準拠も検討します。

    • ケース: 契約書に記載された「化粧品の安全性に関する表明保証」や「アレルギー発生時の責任分担」を和訳で確認し、製品リスクを評価します。

  • 経理部/財務部:

    • 必要性: 製造コスト、単価、支払い条件、為替レートの影響などを確認し、原価計算と予算管理を行います。

    • ケース: 契約書に記載された「発注数量に応じた単価設定」や「最低発注金額」を和訳で確認し、調達コストを最適化します。

よくある質問(FAQ)

OEM契約書の翻訳に関して、お客様からよくいただくご質問とその回答をまとめました。

Q1: OEM契約における「知的財産権(IP)」に関する条項の翻訳で、特に注意すべき点は何ですか?

A1: 知的財産権はOEM契約の核心部分です。翻訳においては、**委託者が提供する設計図や技術情報、金型などのIPの帰属(Ownership)、そのIPをOEM受託者が使用できる範囲(License)、第三者への開示禁止、OEM受託者が独自に開発した改善点のIP帰属、特許権侵害時の責任分担と補償(Indemnification for IP Infringement)**を極めて明確に表現することが重要です。特に、受託者が委託者のIPを無断で流用したり、模倣品を製造したりするリスクを排除するための文言は、細心の注意を払う必要があります。

Q2: 「製造物責任(Product Liability:PL責任)」の分担に関する条項は、どのように注意して翻訳すべきですか?

A2: 製造物責任は、製品の欠陥によって消費者に損害が生じた場合の責任です。OEM契約では、最終販売者である委託者が主たる責任を負うことが多いですが、OEM受託者(製造者)側の製造上の過失に起因する欠陥については、その責任を明確に分担する必要があります。翻訳においては、PL責任の具体的な範囲、リコール費用、損害賠償額の分担、訴訟費用、情報開示、共同弁護義務などを明確に表現し、各当事者が負うリスクを正確に把握できるようにすることが不可欠です。各国のPL法も考慮に入れる必要があります。

Q3: OEM契約における「独占条項(Exclusivity Clause)」は、どのような点で注意して翻訳すべきですか?

A3: 独占条項は、OEM受託者が委託者の競合製品を製造しない義務や、委託者が特定の製品を当該OEM受託者のみに製造委託する義務などを定めます。翻訳においては、独占の対象となる製品の範囲(特定の製品のみか、同種製品全体か)、地域、期間、そして独占義務違反があった場合のペナルティや契約解除の条件を明確に表現することが重要です。独占禁止法(Antitrust Law)や競争法(Competition Law)との整合性も確認が必要です。

Q4: OEM契約書の「金型(Tooling)」に関する条項で、注意すべき点は何ですか?

A4: 金型は、製品の製造に不可欠なものであり、高価な投資を伴います。翻訳においては、金型の所有権(どちらに帰属するか)、金型の維持管理責任、保管場所、使用目的の制限(委託者の製品製造以外に使用しないこと)、契約終了時の金型の引き渡しまたは廃棄、費用負担などを明確に表現することが重要です。金型の管理に関する曖昧さは、将来的な製造トラブルやIP紛争の原因となりえます。

Q5: OEM契約における「最終製品の検査・受入(Inspection and Acceptance)」に関する条項は、なぜ詳細に規定されるのですか?

A5: OEM製造された製品の品質を確保するためには、最終製品の検査と受入プロセスが極めて重要です。翻訳においては、検査の場所、時期、方法、検査基準、合格・不合格の判断基準、不合格品発生時の対応(再製造、修理、廃棄、代金減額など)、再検査の権利などを詳細に表現することが不可欠です。これにより、製品の品質問題が発生した場合の対応フローと責任が明確になります。

まとめ

OEM契約書の翻訳は、単なる言語の変換に留まらず、企業が国際市場で自社ブランド製品を安全かつ効率的に製造・供給するための極めて重要な戦略的要素です。英文と和文の契約書が持つそれぞれの特徴を深く理解し、製品開発、生産管理、品質保証、法務、知的財産、経理といった各部門が連携しながら、専門知識を持つ翻訳者の力を借りることが不可欠ですし、これまでの経験から私どもはこれを強く認識しています。

特に、製品の仕様と品質基準の厳密な特定、知的財産権の明確な帰属と保護、製造物責任(PL責任)とリコールの分担、そして品質保証と責任制限、独占条項、金型管理、最終製品の検査・受入といった条項は、潜在的なリスクを最小限に抑え、国際OEMビジネスにおける継続的な成功への鍵となります。

 

私どもは、このような複雑なOEM契約書の翻訳において、貴社の各部門のニーズを理解し、最高品質の翻訳とサポートを提供することをお約束します。貴社の海外ビジネスにおけるOEM契約や製品開発・製造に関してご不明な点やご相談がありましたら、ぜひお気軽にお問い合わせください。

 

WIPジャパンは、東京弁護士共同組合神奈川県弁護士共同組合をはじめとする全国23の弁護士共同組合の特約店に認定されています。
ご相談は無料です。いつでもお気軽にご連絡ください。

 

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契約書翻訳に役立つリンク集

法務省大臣官房司法法制部「法令翻訳の手引き」(PDF)
日本法令外国語訳推進会議「法令用語日英標準対訳辞書」(PDF)
Publiclegal(英文契約書のテンプレートや書式を無料で提供)
日本法令外国語訳データベースシステム(法務省が開設した日本の法令の英訳サイト)
weblio 英和辞典・和英辞典
英辞郎 on the web

 

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