共同研究費用分担契約書 翻訳:国際共同研究を成功に導く費用管理とリスク分散
今日のグローバルな研究開発において、企業や研究機関が単独で大規模なプロジェクトを進めることは、費用やリスクの面で大きな負担となることがあります。そこで有効なのが、複数の当事者が協力し、費用を分担しながら研究開発を進める共同研究費用分担契約書(Cost Sharing Agreement for Joint Research / Joint Research Funding Agreement)です。
この契約書は、共同研究全体を規定する共同研究契約書(Joint Research Agreement)に付随する、またはその一部として、各当事者の具体的な費用負担、支払い条件、経費精算、監査、予期せぬ費用発生時の対応などを詳細に定めます。
その正確な翻訳は、円滑な共同研究の推進、予算の透明性の確保、そして将来的な金銭トラブルや紛争の防止のために不可欠です。翻訳のミスや内容の理解不足は、予算の超過、不公平な費用負担、会計監査上の問題、国際的な信用失墜、さらには高額な法的紛争へと発展するリスクをはらんでいます。
特に、国ごとに会計慣行、税法、独占禁止法、そして研究開発に関する商慣習が大きく異なるため、単に言葉を置き換えるだけでなく、それぞれの法制度や会計処理、研究の性質に応じた法的・商業的なニュアンスを踏まえた上で契約内容を理解し、翻訳することが不可欠です。
本記事では、これまでの経験に基づき、共同研究費用分担契約書の翻訳における重要なポイントと、貴社の各部門がどのように翻訳された契約書を活用し、関与していくべきかを具体的なケーススタディを交えて解説します。
貴社のグローバルな共同研究において、費用分担契約の適切な理解と運用を通じて、イノベーション創出の成功と費用管理の最適化を図るために、ぜひ本記事をお役立てください。
共同研究費用分担契約書とは何か?その目的と国際共同研究における重要性
共同研究費用分担契約書(Cost Sharing Agreement for Joint Research)は、複数の当事者が共同で研究開発を行う際に、発生する研究費用をどのように分担するかを詳細に定めた契約です。これは、研究開発プロジェクトの財政的側面を明確にし、すべての当事者がそのコミットメントと責任を理解するように設計されています。
国際的な共同研究において、共同研究費用分担契約は以下のような多岐にわたる場面で利用されます。
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大規模なR&Dプロジェクト: 新薬開発、航空宇宙技術開発、大規模ITインフラ構築など、多額の費用と長期間を要するプロジェクトで、複数の企業や政府機関が費用を分担する場合。
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国際的な産学連携: 海外の大学や研究機関と企業が共同で基礎研究や応用研究を行う際に、それぞれの機関の費用負担を明確にする場合。
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標準化に向けた共同開発: 業界標準となる技術を共同開発する際、各参加企業が開発費用を分担し、公平な負担を定める場合。
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リスク分散: 特定の技術開発に高いリスクが伴う場合、複数のパートナーと費用を分担することで、単独での負担を軽減する場合。
この契約書は、以下の非常に多岐にわたる詳細な条項を含みます。
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費用負担の割合と総額(Cost Contribution Ratio and Total Amount):各当事者が負担する費用の割合、または具体的な金額上限。
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対象となる費用項目(Eligible Cost Categories):共同研究の対象となる費用の範囲(人件費、設備費、材料費、旅費、間接費、特許出願費用など)。どの費用が共同負担の対象となるかを明確に定義します。
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支払いスケジュールと方法(Payment Schedule and Method):費用の支払い時期(前払い、マイルストーン達成時払い、定期払いなど)、支払い通貨、支払い口座。
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経費の報告と精算(Cost Reporting and Reconciliation):各当事者が費用をどのように報告するか、報告の頻度、精算方法。
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会計監査(Audit Rights):各当事者が相手方の費用報告の正確性を確認するための監査権限の有無と範囲。
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予算超過時の対応(Treatment of Cost Overruns):当初予算を超過した場合の追加費用負担の有無と割合。
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研究中止時の費用処理(Cost Treatment upon Termination):共同研究が途中で中止された場合の、発生済み費用および将来発生しうる費用の処理(返還、精算など)。
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税務上の取り扱い(Tax Implications):国際取引における源泉徴収税、消費税、付加価値税、移転価格税制など、費用分担に関連する税務上の処理。
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費用分担の変更手続き(Amendment to Cost Sharing):費用負担割合や総額を変更する場合の手続き。
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準拠法と紛争解決(Governing Law and Dispute Resolution):契約に適用される法律、費用分担に関する紛争が発生した場合の解決方法。
国際的な共同研究において共同研究費用分担契約書が特に重要なのは、以下の理由からです。
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各国の会計基準と税法: 費用計上方法、税務上の処理(例:研究開発税制、移転価格税制)、源泉徴収税の適用などが国によって大きく異なります。これらの違いを理解し、適切に契約に反映しないと、予期せぬ税務上の不利益や会計上の問題が発生する可能性があります。
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通貨変動リスク: 異なる通貨で費用を分担する場合、為替レートの変動が各当事者の実質的な負担額に影響を与えるため、為替リスクのヘッジや負担方法を明確にする必要があります。
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監査と透明性: 共同出資される費用が適切に使用されているかを相互に確認するため、監査権限や報告義務に関する規定が重要です。特に政府機関からの資金が投入される場合、厳格な監査要件が課されることがあります。
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紛争解決: 費用負担に関する紛争は、金銭が絡むため感情的になりやすく、関係悪化の原因となりがちです。紛争解決メカニズムを明確にしておくことで、円滑な解決を目指せます。
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予算管理の厳格化: 各当事者が自身の財政的コミットメントを正確に理解し、予算管理を厳格に行うための基準となります。
英文共同研究費用分担契約書の特徴と和文契約書との違い
国際的な共同研究取引では、多くの場合、英文で共同研究費用分担契約書が作成されます。その特徴は、日本の和文契約書とは異なる点がいくつかあります。
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Detailed Definition of Eligible Costs(対象費用の詳細な定義):
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共同で負担する「費用(Costs)」の範囲が非常に厳密に定義されます。具体的には、人件費(Personnel Costs: 例:〇〇ドルの時間単価、特定の役職の費用のみ対象)、設備費(Equipment Costs: 例:購入費用、減価償却費、リース費用)、材料費(Material Costs)、旅費(Travel Expenses)、第三者への委託費用(Subcontracting Costs)、間接費(Indirect Costs / Overhead: 例:固定割合、または特定の計算方法)などが細かくリストアップされます。日本の契約書よりも詳細な定義が求められる傾向が強いです。
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Specific Billing and Payment Procedures(具体的な請求および支払い手続き):
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請求書発行の頻度(例:四半期ごと)、請求書に記載すべき項目(例:各費用項目の内訳、プロジェクト参照番号)、支払い期日(例:請求書受領後30日以内)、支払い通貨、支払い口座情報が非常に具体的に定められます。
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Audit Rights and Reporting Requirements(監査権および報告義務)の厳格な規定:
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各当事者が相手方の費用報告の正確性を確認するための監査権(Audit Rights)が詳細に規定されます。監査の頻度、通知期間、監査対象となる記録(会計帳簿、領収書など)、監査費用負担、そして監査結果に基づく精算方法などが明記されます。また、定期的な費用報告の形式や内容(例:四半期ごとの詳細な支出報告、予算との差異分析)も厳密に定められます。
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Tax Implications and Withholding Taxes(税務上の影響および源泉徴収税)の明確化:
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国際的な費用分担では、各国での税務上の取り扱いが異なるため、源泉徴収税の適用有無、その税額の負担者、租税条約の適用に関する規定などが明確に記載されます。また、付加価値税(VAT)や消費税の取り扱いについても言及されることがあります。
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Force Majeure and Termination Provisions related to Costs(不可抗力および終了に関する費用規定):
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不可抗力事由(地震、戦争、ストライキなど)が発生した場合の費用負担の中断や変更、共同研究が契約期間満了前に終了した場合の費用精算方法、返還義務、未発生費用の取り扱いが詳細に規定されます。
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Currency Fluctuation Risk Allocation(通貨変動リスクの配分):
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異なる通貨で費用を分担する場合、為替レートの変動リスクをどちらの当事者が負うか(例:固定レートの適用、特定期間内の平均レート、ヘッジ費用の負担など)が明確に合意されることがあります。
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Confidentiality of Financial Information(財務情報の秘密保持):
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共同研究の費用に関する情報自体が、秘密情報として扱われることが多く、その開示制限が秘密保持条項の中で強化されることがあります。
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Governing Law and Dispute Resolution(準拠法と紛争解決):
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国際的な共同研究費用分担契約では、特定の国の法律を準拠法とし(例:デラウェア州法、英国法、シンガポール法、日本法など)、国際仲裁を紛争解決手段として指定することが一般的です。仲裁地、仲裁機関、仲裁規則、仲裁人の数などが明確に定められ、紛争解決の予測可能性を高めます。
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日本の和文共同研究費用分担契約書に比べ、英文共同研究費用分担契約書は、対象費用の詳細な定義、請求・支払い手続きの具体性、厳格な監査権と報告義務、税務上の影響の明確化、通貨変動リスクの配分に関して、より詳細かつ厳密な記述が求められる傾向が強いです。翻訳においては、これらの会計・税務・法務上のニュアンスを正確に反映した表現を用いることが不可欠です。
共同研究費用分担契約書翻訳における重要ポイント
共同研究費用分担契約書の翻訳は、貴社の国際共同研究における財務管理、リスク分散、そしてパートナーシップの健全な維持に直接影響するため、極めて高い精度と専門性、そして経理、法務、研究開発部門など多岐にわたる視点が求められます。以下のポイントを押さえることが、成功への鍵となります。
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対象となる費用項目(Eligible Cost Categories)の厳密な翻訳
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共同で負担する費用の範囲(人件費、設備費、材料費、旅費、間接費など)を、曖昧さなく厳密に翻訳することが不可欠です。特に、間接費の計算方法(固定割合、または特定の計算ロジック)や、特許出願費用、外部委託費用など、どこまでが共同負担の対象となるかを明確に理解し、表現すべきです。この部分の誤訳は、将来の経費精算におけるトラブルや不公平感につながります。
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支払いスケジュールと方法(Payment Schedule and Method)の正確な翻訳
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費用の支払い時期(前払い、マイルストーン達成時払い、定期払いなど)、支払い通貨、支払い口座、そして為替レートの適用時期や変動リスクの負担に関する規定を正確に翻訳することが極めて重要です。国際送金に関わる手数料や、税務上の源泉徴収義務についても言及がある場合は、それらを正確に反映すべきです。
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会計監査権(Audit Rights)と報告義務(Reporting Requirements)の徹底的な翻訳
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各当事者が相手方の費用報告の正確性を確認するための監査権の範囲(監査の頻度、通知期間、監査対象となる記録、監査費用負担など)を徹底的に翻訳することが不可欠です。また、定期的な費用報告の形式や内容(例:四半期ごとの詳細な支出報告、予算との差異分析)も明確に表現し、予算の透明性を確保すべきです。この部分の理解不足は、不正な会計処理や不透明な費用管理を招くリスクがあります。
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予算超過時の対応(Treatment of Cost Overruns)の明確な翻訳
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当初予算を超過した場合の追加費用負担の有無、その割合、および承認プロセスを明確に翻訳することが不可欠です。事前にこの点を合意しておかないと、予期せぬ追加費用が発生した際に紛争に発展する可能性が高まります。
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研究中止時の費用処理(Cost Treatment upon Termination)の慎重な翻訳
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共同研究が途中で中止された場合の、発生済み費用および将来発生しうる費用の処理(返還、精算など)、未払い費用の精算責任を慎重に翻訳することが不可欠です。予期せぬ契約終了時の金銭的リスクを最小限に抑えるために、この条項の正確な理解が重要です。
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税務上の取り扱い(Tax Implications)に関する条項の正確な翻訳
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国際的な費用分担では、各国での税務上の取り扱いが異なるため、源泉徴収税の適用有無、その税額の負担者、租税条約の適用に関する規定などを正確に翻訳することが不可欠です。必要に応じて、現地の税務専門家と連携して内容を確認すべきです。
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準拠法(Governing Law)と紛争解決(Dispute Resolution)の正確な指定
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契約に適用される法律、そして費用分担に関する紛争が発生した場合の解決方法(国際仲裁、調停、裁判など)、仲裁地の選定、仲裁機関、仲裁規則、仲裁人の数、仲裁判断の拘束力などを正確に翻訳することが不可欠です。国際的な共同研究では、自社にとって有利な準拠法や紛争解決地を指定することが戦略上重要であり、その内容を正確に把握すべきです。
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当社は、このような複雑な準拠法と紛争解決に関する条項の正確な翻訳を特に重視しています。
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AI翻訳の適切な活用と専門家による最終確認
AI翻訳技術は、初稿の作成や用語の統一に役立ちますが、共同研究費用分担契約書のような会計・税務・法務的に極めて複雑な文書においては、各国の会計基準、税法、独占禁止法、そして専門的な経理・財務用語を完全に理解することは困難です。AIを効率化ツールとして最大限活用しつつも、会計・税務・法務知識、および国際取引の実務経験を持つ専門の翻訳者による徹底したレビューと校正が不可欠です。人間による精査が、潜在的なリスクを最小限に抑え、安全な国際共同研究の基盤となります。
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強固な情報セキュリティ体制
共同研究費用分担契約書には、貴社の予算計画、財務状況、研究開発費用に関する機密性の高い情報が含まれることが一般的です。これらの情報が外部に漏洩した場合、企業の競争力低下、信用失墜、法的な責任問題など、甚大な損害を被る可能性があります。そのため、翻訳を依頼する際には、翻訳会社が厳格な情報セキュリティポリシーを定め、技術的・物理的・人的な対策を徹底しているかを必ず確認すべきですし、当社はこれを徹底しています。
共同研究費用分担契約書の翻訳は誰に必要なのか?ケーススタディで見る関係部門の役割
共同研究費用分担契約書は、グローバルな共同研究の財政的側面を管理し、リスクを分散するために不可欠な文書であり、多岐にわたる部門や関係者がその内容を理解し、翻訳された情報に基づいて連携することが不可欠です。
ケーススタディ1:日本の大手自動車メーカーと欧米の大学・サプライヤーによるEVバッテリー共同研究
状況: 日本の大手自動車メーカーA社が、ドイツの大学B(基礎研究担当)と米国のバッテリーサプライヤーC社(応用開発・量産化担当)と共同で次世代EVバッテリーの基礎技術から量産技術までを研究開発するケース。共同研究契約書とは別に、共同研究費用分担契約書を締結。
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経理部/財務部:
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必要性: 各当事者(A社、B大学、C社)の費用負担割合、支払いスケジュール、支払い通貨、為替リスク負担、源泉徴収税の取り扱いを詳細に確認します。プロジェクト全体の予算管理と国際会計処理に直結します。
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ケース: 契約書に記載された「人件費の計算方法(例:B大学は学術的な時間単価、C社は商業的な時間単価)と負担割合」、「材料費の精算方法と領収書提出義務」、「ドイツと米国における源泉徴収税の取り扱いと租税条約の適用」を和訳で確認し、費用管理の透明性と税務コンプライアンスを評価します。過去には、間接費の計算方法が不明確だったため、精算時に大きな認識のずれが生じた事例がありました。当社は、このような費用計算方法の正確な翻訳を特に重視しています。
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法務部:
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必要性: 契約全体の法的妥当性、予算超過時の追加費用負担の有無と割合、監査権限の範囲、研究中止時の費用精算方法、準拠法(例:ニューヨーク州法)、紛争解決条項の適切性を確認します。
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ケース: 契約書に記載された「各当事者の会計帳簿に関する監査権(年1回、30日前通知)と監査費用負担」、「プロジェクトが中止された場合の、既に発生した費用と将来のキャンセル費用の精算ロジック」、「ニューヨーク州法を準拠法とし、ニューヨークでの国際仲裁を紛争解決手段とする条項」を和訳で確認し、法的リスクとコンプライアンスを評価します。
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研究開発部/プロジェクトマネジメント部:
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必要性: 各費用項目(人件費、設備費、材料費、旅費、外部委託費など)の定義と対象範囲、各フェーズにおける予算配分、費用報告の頻度と形式を理解します。プロジェクトの進捗と予算実績を管理するために不可欠です。
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ケース: 契約書に記載された「特定実験設備のリース費用が共同負担の対象となるか否か」、「月次費用報告書の提出義務と必須項目(活動内容、人件費時間、材料費内訳)」を和訳で確認し、プロジェクト予算の実行可能性と管理体制を評価します。
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ケーススタディ2:日本のIT企業とインドのスタートアップによるAIプラットフォーム共同開発
状況: 日本のIT企業D社と、インドのAIスタートアップE社が、新しいAIプラットフォームを共同開発するケース。技術開発契約書とは別に、共同研究費用分担契約書を締結。
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経理部/財務部:
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必要性: 各当事者の費用負担割合(例:D社が70%、E社が30%)、支払いスケジュール(マイルストーン達成時払い)、支払い通貨(USD)、為替リスク、インドにおける源泉徴収税の取り扱い、移転価格税制への影響を詳細に確認します。
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ケース: 契約書に記載された「ソフトウェア開発の人件費単価の基準(例:両社の合意による固定単価、または各社の人件費実績に基づく割合)」、「クラウド利用料や外部API利用料の負担割合」、「インドから日本への支払いに関する源泉徴収税率と、その負担者」を和訳で確認し、費用管理の透明性と国際税務コンプライアンスを評価します。
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法務部:
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必要性: 契約全体の法的妥当性、予期せぬ費用(例:追加ライセンス費用)発生時の対応、契約違反時の費用負担、準拠法(シンガポール法)、紛争解決条項の適切性を確認します。
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ケース: 契約書に記載された「AIプラットフォームのセキュリティ脆弱性対策にかかる追加費用の負担者」、「契約終了時の未精算費用に関する債務の取り扱い」、「シンガポール国際仲裁センター(SIAC)を仲裁地とする紛争解決条項」を和訳で確認し、法的リスクと紛争予防策を評価します。
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開発部/プロジェクトマネジメント部:
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必要性: 共同開発における各フェーズの予算、特定のツールのライセンス費用、外部コンサルタント費用など、開発に直接かかる費用の対象と報告方法を理解します。
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ケース: 契約書に記載された「開発用ソフトウェアライセンス費用の共同負担の有無と割合」、「開発に用いるオープンソースソフトウェアのライセンス費用に関する免責」を和訳で確認し、開発計画と予算執行の管理体制を評価します。
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よくある質問(FAQ)
共同研究費用分担契約書の翻訳に関して、お客様からよくいただくご質問とその回答をまとめました。
Q1: 共同研究費用分担契約書における「対象となる費用項目(Eligible Cost Categories)」の条項は、翻訳でどのように注意すべきですか?
A1: この条項は、共同研究で発生する費用が具体的に何を含み、何を含まないのかを明確にするため、極めて重要です。翻訳においては、人件費の計算方法(例:時間単価、特定の役職の費用のみ対象)、設備費(購入費、減価償却費、リース費)、材料費、旅費、特許出願費用、外部委託費用、そして間接費(Overhead/Indirect Costs)の定義と計算方法を、曖昧さなく厳密に表現することが不可欠です。特に、間接費の計算方法は、国の会計慣行や機関のポリシーによって大きく異なるため、その具体的な内容を正確に捉え、日本の経理・財務部門が明確に理解できる表現にすることが極めて重要ですし、当社はこれを強く認識しています。
Q2: 「会計監査(Audit Rights)と報告義務(Reporting Requirements)」の翻訳で、特に注意すべき点は何ですか?
A2: これらの条項は、共同費用が適切に管理・使用されているかを相互に確認し、透明性を確保するために不可欠です。翻訳においては、監査の頻度(例:年に1回、または特定の条件発生時)、監査の通知期間、監査対象となる記録(会計帳簿、領収書など)、監査費用負担の当事者、そして監査結果に基づく精算方法を詳細かつ正確に表現することが極めて重要です。また、定期的な費用報告の形式、提出頻度、記載すべき項目(例:活動内容、支出の内訳、予算との差異)も明確に翻訳し、実務で運用可能な内容にすべきです。
Q3: 国際共同研究で、「予算超過時の対応(Treatment of Cost Overruns)」の取り扱いはなぜ重要視されますか?
A3: 大規模な研究開発プロジェクトでは、予期せぬ要因により当初予算を超過することが少なくありません。この条項は、そのような場合に備えて、追加費用の負担の有無、その割合、そして追加費用発生時の承認プロセス(例:書面による両当事者の合意が必要)を明確に定めるものです。翻訳においては、これらの条件を厳密に表現することが不可欠です。この部分が不明確だと、追加費用が発生した際に、どの当事者が、どの程度負担するのかを巡って深刻な金銭トラブルや関係悪化に発展するリスクが高まります。
Q4: 共同研究費用分担契約における「税務上の取り扱い(Tax Implications)」の翻訳は、どのように注意すべきですか?
A4: 国際的な費用分担では、各国での税務上の取り扱いが異なるため、この条項は極めて重要です。翻訳においては、源泉徴収税(Withholding Tax)の適用有無、その税額の負担者、租税条約(Tax Treaty)の適用に関する規定、消費税(VAT/GST)や付加価値税の取り扱い、さらには移転価格税制(Transfer Pricing)への言及などを正確に表現することが不可欠です。これらの税務上の規定は各国の税法に深く根差しており、誤訳や理解不足は予期せぬ高額な税負担や税務当局との紛争につながる可能性があるため、必要に応じて現地の税務専門家と連携して最終確認を行うことを強く推奨します。
Q5: 共同研究費用分担契約書で「準拠法(Governing Law)と紛争解決(Dispute Resolution)」の条項が非常に重要と言われるのはなぜですか?
A5: 準拠法は、契約の解釈・有効性・履行に適用される法律であり、紛争解決は問題発生時の解決プロセスを定めます。国際的な共同研究費用分担契約では、金銭が絡むため紛争が発生しやすい傾向にあります。そのため、どの国の法律が契約全体に適用されるのか、特に費用に関する紛争が発生した場合にどの法律が適用されるのかを明確に合意しておくことが不可欠ですし、当社はこれを強く認識しています。また、紛争が生じた場合にどの国で、どのような方法(国際仲裁、調停、裁判など)で解決するのかを明確に合意しておくことが、予測可能性を高め、紛争解決のコストと時間を削減するために極めて重要ですし、自社にとって有利な条件を確保すべきです。翻訳においては、これらの条項を正確に理解し、必要に応じて現地の法律専門家と連携して最終確認を行うことが不可欠です。
まとめ
共同研究費用分担契約書の翻訳は、単なる言語の変換に留まらず、企業がグローバルな共同研究プロジェクトを財務的に健全に進め、リスクを適切に管理し、パートナーシップを円滑に維持するための極めて重要なプロセスです。
英文と和文の契約書が持つそれぞれの特徴を深く理解し、経理、法務、研究開発といった各部門が連携しながら、専門知識を持つ翻訳者の力を借りることが不可欠ですし、これまでの経験から当社はこれを強く認識しています。
特に、対象となる費用項目の厳密な定義、支払いスケジュールと方法、会計監査権と報告義務、予算超過時の対応、税務上の取り扱い、そして準拠法と紛争解決といった条項は、潜在的な金銭的・法的リスクを最小限に抑え、グローバルな共同研究を成功させるための鍵となります。
当社は、このような複雑な共同研究費用分担契約書の翻訳において、貴社の各部門のニーズを理解し、最高品質の翻訳とサポートを提供することをお約束します。貴社の海外ビジネスにおける共同研究費用分担契約に関してご不明な点やご相談がありましたら、ぜひお気軽にお問い合わせください。
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契約書翻訳に役立つリンク集
・法務省大臣官房司法法制部「法令翻訳の手引き」(PDF)
・日本法令外国語訳推進会議「法令用語日英標準対訳辞書」(PDF)
・Publiclegal(英文契約書のテンプレートや書式を無料で提供)
・日本法令外国語訳データベースシステム(法務省が開設した日本の法令の英訳サイト)
・weblio 英和辞典・和英辞典
・英辞郎 on the web
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