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投資契約書 翻訳:グローバルな投資の成功とリスクヘッジの要点と関係部門の役割

作成者: WIP japan|Jul. 10, 2025

 

今日のグローバル経済において、企業の成長やイノベーションを加速させるためには、国内外からの投資(Investment)の誘致、あるいは他社への戦略的な投資が不可欠です。スタートアップへの出資、事業提携を目的とした株式取得、合弁会社設立など、多様な形態で行われる投資の法的基盤となるのが投資契約書(Investment Agreement)です。

この契約書は、投資家(Investor)と被投資会社(Investee Company)またはその株主との間で、投資の目的、投資金額、株式の種類と取得条件、資金使途、表明保証、コベナンツ(投資家保護条項)、株主間関係、取締役会への参加、優先交渉権、共同売却権、出口戦略(IPO、M&Aなど)に関する条項、準拠法、紛争解決など、極めて詳細な条件を定めます。

その正確な翻訳は、投資目的の達成、投資家保護の確保、資金使途の明確化、法的リスクの回避、そして将来的な紛争の防止のために不可欠です。翻訳のミスや内容の理解不足は、予期せぬ投資回収リスク、経営権に関する紛争、追加費用の発生、国際的な信用失墜、さらには高額な法的紛争へと発展するリスクをはらんでいます。

特に、国ごとに会社法、証券法、独占禁止法、税法、そして国際的な商慣習が大きく異なるため、単に言葉を置き換えるだけでなく、それぞれの法制度や投資の性質に応じた法的・財務的・商業的なニュアンスを踏まえた上で契約内容を理解し、翻訳することが不可欠です。

本記事では、これまでの経験に基づき、投資契約書の翻訳における重要なポイントと、貴社の各部門がどのように翻訳された契約書を活用し、関与していくべきかを具体的なケーススタディを交えて解説します。

貴社のグローバルビジネスにおいて、投資契約の適切な理解と運用を通じて、投資の成功を確実に導き、潜在的なリスクを効果的にヘッジするために、ぜひ本記事をお役立てください。

 

投資契約書とは何か?その目的と国際ビジネスにおける重要性

投資契約書(Investment Agreement)とは、投資家(Investor)が被投資会社(Investee Company)またはその既存株主に対して、特定の条件のもとで資金を投じることを合意する法的拘束力のある文書です。多くの場合、株式の取得、転換社債の引受け、または新株予約権の発行を通じて行われます。

国際ビジネスにおいて、投資契約の対象となる取引は多岐にわたります。

  • ベンチャー投資/スタートアップ投資: 海外の革新的なスタートアップ企業への出資

  • M&Aにおける少数株主投資: 企業の買収ではないが、戦略的な事業提携を目的とした他社株式の取得

  • 合弁事業(JV)設立: 海外企業との共同事業を行うための新会社設立時の投資

  • プライベートエクイティ投資: 成熟企業や再生企業への投資

この契約書は、以下の非常に多岐にわたる詳細な条項を含みます。

  • 投資の目的(Purpose of Investment):投資によって達成したい目標(例:事業拡大、技術獲得、市場参入など)。

  • 投資金額と対価(Investment Amount and Consideration):投資される具体的な金額と、それと引き換えに取得する株式の種類(普通株式、優先株式など)、株式数、払込金額。

  • 資金使途(Use of Proceeds):被投資会社が投資資金をどのように使うべきかの明確化(例:研究開発、マーケティング、設備投資など)。

  • 表明保証(Representations and Warranties):被投資会社または既存株主の財務状況、法的地位、事業、知的財産権、訴訟の有無などに関する事実の表明と、それらが真実かつ正確であることの保証。

  • コベナンツ(Covenants):被投資会社が契約期間中に遵守すべき義務や制限。

    • アファマティブ・コベナンツ(Affirmative Covenants): 定期的な財務報告書の提出、事業計画の提出、保険の付保、適切な会計処理など。

    • ネガティブ・コベナンツ(Negative Covenants): 追加融資・増資の制限、重要な資産の処分制限、事業内容の変更制限、役員報酬の制限、配当制限など。

  • 投資家保護条項(Investor Protection Provisions)

    • 拒否権/同意権(Veto Rights / Consent Rights): 投資家が特定の重要事項(例:M&A、大規模な資金調達、定款変更、取締役の選任/解任など)について拒否権または事前同意権を持つ条項。

    • 情報開示権(Information Rights): 投資家が被投資会社の財務情報や経営情報を定期的に受け取る権利。

    • 株式希薄化防止条項(Anti-Dilution Provisions): 将来の増資によって投資家の株式保有比率や価値が希薄化するのを防ぐメカニズム(価格調整、株式数の追加など)。

    • 優先清算権(Liquidation Preference): 被投資会社の清算・売却時に、投資家が他の株主より優先的に投資元本またはその数倍の分配を受ける権利。

  • 株主間関係(Shareholder Relations)

    • 取締役会構成(Board Composition): 投資家が取締役を派遣する権利や取締役会の議決権に関する規定。

    • 優先引受権(Pre-emptive Rights): 被投資会社が将来増資する際に、投資家が既存の持株比率に応じて優先的に新株を引受ける権利。

    • 共同売却権(Tag-Along Right): 他の株主が株式を売却する際に、投資家も同じ条件で自身の株式を売却できる権利。

    • 共同売却請求権(Drag-Along Right): 投資家が特定の条件(例:過半数以上の株主の合意)を満たせば、他の株主に対し強制的に株式売却を要求できる権利。

  • 出口戦略(Exit Strategy):将来的に投資を回収する方法(IPO、M&Aによる売却、買戻しオプションなど)。

  • 秘密保持義務(Confidentiality):契約内容や開示された機密情報の保護義務。

  • 責任の制限と補償(Limitation of Liability and Indemnification):契約違反によって生じた損害に対する責任範囲、責任上限額、相手方への補償義務。

  • 準拠法と紛争解決(Governing Law and Dispute Resolution):契約に適用される法律、紛争が発生した場合の解決方法(裁判、国際仲裁、調停など)。

国際ビジネスにおいて投資契約書が特に重要なのは、以下の理由からです。

  • 各国の会社法と証券法: 投資先の国の会社法、証券法、外為法、競争法、税法などが適用されるため、これらの法制度の差異を契約書で適切に調整する必要があります。特に、外国企業による投資に対する規制(外資規制)が存在する場合もあります。

  • 異なるビジネス慣習: 投資先の国や地域のビジネス慣習や企業文化が異なるため、ガバナンス、意思決定プロセス、リスクに対する考え方などを契約書で明確に定める必要があります。

  • 株主間関係の複雑化: 異なる国籍の投資家や株主が関わる場合、株主間の権利義務関係を明確にし、将来的な対立を避けるための詳細な規定が不可欠です。

  • 税務処理の複雑さ: 投資の形態(株式、債務など)や資金の流動によって、各国で異なる税務処理が伴います(例:源泉徴収税、キャピタルゲイン税など)。

  • 投資回収(Exit)の確実性: 国際投資においては、将来的な投資回収の手段や条件を契約書で具体的に定めることが、投資家保護の観点から極めて重要です。

  • 紛争解決: 投資に関する紛争は、高額かつ複雑化しやすいため、国際的な契約では、紛争が発生した場合の解決方法(準拠法、仲裁など)を事前に明確にしておくことが、リスク管理上非常に重要ですし、当社はこれを強く認識しています。

英文投資契約書の特徴と和文契約書との違い

国際的な投資取引では、多くの場合、英文で契約書が作成されます。その特徴は、日本の和文契約書とは異なる点がいくつかあります。

  • Detailed Investment Structure(投資ストラクチャーの詳細化):

    • 投資金額だけでなく、取得する株式の種類(Ordinary Shares, Preferred Shares: Seed, Series A, Bなど)、それぞれの優先株式が持つ権利(優先清算権、配当優先権、議決権、転換権など)が極めて詳細に規定されます。これは、和文契約書では簡略化されがちな部分です。

  • Extensive Representations and Warranties(広範な表明保証):

    • 被投資会社の財務状況、法的地位、知的財産権、訴訟、税務、従業員関係など、非常に広範かつ詳細な事実関係が表明され、その真実性が保証されます。表明保証違反は損害賠償請求や契約解除の根拠となり得ます。

  • Comprehensive Covenants(包括的なコベナンツ):

    • 財務報告義務、事業計画提出義務、保険付保義務などのアファマティブ・コベナンツに加え、追加資金調達の制限、重要な資産の処分制限、事業内容の変更制限、役員報酬の制限、配当制限、他社との合弁事業の制限など、被投資会社の経営に直接影響を与えるネガティブ・コベナンツが厳しく規定されます。

  • Strong Investor Protection Provisions(強力な投資家保護条項):

    • 拒否権/同意権(Veto Rights / Consent Rights): 投資家が取締役会決議や株主総会決議の特定の重要事項に対して拒否権を持つ条項が詳細に規定されます。

    • 株式希薄化防止条項(Anti-Dilution Provisions): フルラチェット、ブロードベースト加重平均など、具体的な計算方法が明記されます。

    • 優先清算権(Liquidation Preference): 投資回収の優先順位と金額(投資元本単体、またはその数倍など)が明確に規定されます。

  • Shareholder Rights and Obligations(株主の権利義務)の明確化:

    • 優先引受権(Pre-emptive Rights / Right of First Refusal): 将来の増資や株式譲渡における優先権が詳細に規定されます。

    • 共同売却権(Tag-Along Right)と共同売却請求権(Drag-Along Right): 投資回収時に他の株主との関係を律する重要な条項であり、その発動条件や手続きが詳細に定められます。

    • 取締役選任権(Board Representation): 投資家が被投資会社の取締役会に取締役を派遣する権利や、取締役会における議決権に関する規定。

  • Exit Strategy(出口戦略)の具体化:

    • IPO(新規株式公開)、M&A(合併・買収による売却)、投資家による買戻しオプションなど、将来的な投資回収の手段が具体的に議論され、契約書に反映されます。

  • Conditions Precedent(前提条件)の明確化:

    • 投資資金の払込前に被投資会社が満たすべき条件(例:必要許認可の取得、既存契約の変更、法的意見書の提出など)が詳細にリストアップされます。

  • Governing Law and Dispute Resolution(準拠法と紛争解決)の指定:

    • 国際的な投資契約では、特定の国の法律を準拠法とし(例:デラウェア州法、英国法、シンガポール法など)、国際仲裁を紛争解決手段として指定することが一般的です。

日本の和文投資契約書に比べ、英文投資契約書は、投資ストラクチャーの詳細な定義、広範な表明保証とコベナンツ、強力な投資家保護条項、株主間の権利義務の明確化、そして出口戦略の具体化に関して、より詳細かつ厳密な記述が求められる傾向が強いです。翻訳においては、これらの法的・財務的・商業的ニュアンスを正確に反映した表現を用いることが不可欠です。

 

投資契約書翻訳における重要ポイント

投資契約書の翻訳は、貴社のグローバルな投資戦略、企業価値の向上、潜在的なリスクヘッジに直接影響するため、極めて高い精度と専門性、そして法務・財務・経営企画・事業開発部門など多岐にわたる視点が求められます。以下のポイントを押さえることが、成功への鍵となります。

  1. 投資ストラクチャーと対価の厳密な翻訳

    • 投資金額、取得する株式の種類(普通株式、優先株式)、優先株式が持つ具体的な権利(優先清算権、配当優先権、議決権、転換権など)、払込金額、資金使途を、曖昧さなく厳密に翻訳することが不可欠です。特に優先株式の権利内容は、投資回収の優先順位や投資家のコントロール権に直結するため、詳細かつ正確な理解と翻訳が不可欠です。

  2. 表明保証(Representations and Warranties)の徹底的な翻訳とリスク評価

    • 被投資会社の財務状況、法的地位、知的財産権、訴訟、税務、従業員関係などに関する広範な表明保証条項を正確に翻訳することが極めて重要です。表明保証違反は、投資回収リスクの増加や、契約解除、損害賠償請求につながる可能性があるため、法務部門と連携し、そのリスクを詳細に評価すべきです。

  3. コベナンツ(Covenants)と投資家保護条項の慎重な翻訳

    • 被投資会社の経営に直接影響を与えるネガティブ・コベナンツ(追加資金調達の制限、M&A制限、配当制限など)、そして投資家保護の核心となる拒否権/同意権(Veto Rights / Consent Rights)、株式希薄化防止条項(Anti-Dilution Provisions)、優先清算権(Liquidation Preference)などを慎重に翻訳することが不可欠です。これらの条項は、投資家のコントロール権と将来的な投資回収に直接影響するため、綿密な検討と正確な翻訳が求められます。

  4. 株主間関係(Shareholder Relations)と出口戦略(Exit Strategy)に関する条項の精緻な翻訳

    • 取締役会構成、優先引受権、共同売却権(Tag-Along Right)、共同売却請求権(Drag-Along Right)といった株主間の権利義務関係、そして将来のIPO、M&Aによる売却、買戻しオプションといった出口戦略に関する条項を精緻に翻訳することが極めて重要です。これらの条項は、投資の成功、投資回収の確実性、そして投資後の経営の自由度に大きく影響します。

  5. 税務関連条項(Tax Provisions)の明確化

    • 投資ストラクチャーに伴う源泉徴収税、キャピタルゲイン税、その他の税務上の取り扱いを正確に翻訳することが不可欠です。クロスボーダー投資では、各国の税法や租税条約が複雑に絡み合うため、税務部門や外部の税務専門家と連携し、予期せぬ税務コストを回避するための正確な翻訳と法的・税務的評価を行うべきです。

    • 当社は、このような国際税務に関する条項の正確な翻訳を特に重視しています。

  6. 紛争解決(Dispute Resolution)の指定

    • 投資に関する紛争は、高額かつ複雑化しやすいため、契約に適用される法律(準拠法)、そして紛争が発生した場合の解決方法(国際仲裁、調停、裁判など)、仲裁地の選定、仲裁機関、仲裁規則、仲裁人の数、仲裁判断の拘束力などを正確に翻訳することが不可欠です。国際投資では、自社にとって有利な準拠法や紛争解決地を指定することが戦略上重要であり、その内容を正確に把握すべきです。

  7. AI翻訳の適切な活用と専門家による最終確認

    AI翻訳技術は、初稿の作成や用語の統一に役立ちますが、投資契約書のような法的・財務的に極めて複雑な文書においては、法的ニュアンス、各国の会社法・証券法、税法、業界特有の専門用語を完全に理解することは困難です。AIを効率化ツールとして最大限活用しつつも、法務知識、財務・会計に関する専門知識、および国際投資の実務経験を持つ専門の翻訳者による徹底したレビューと校正が不可欠です。人間による精査が、潜在的なリスクを最小限に抑え、安全な国際取引の基盤となります。

  8. 強固な情報セキュリティ体制

    投資契約書には、貴社の投資戦略、財務状況、事業計画、機密情報など、企業の競争力や事業の成否に直結する極めて機密性の高い情報が含まれることが一般的です。これらの情報が外部に漏洩した場合、企業の競争力低下、信用失墜、法的な責任問題など、甚大な損害を被る可能性があります。そのため、翻訳を依頼する際には、翻訳会社が厳格な情報セキュリティポリシーを定め、技術的・物理的・人的な対策を徹底しているかを必ず確認すべきですし、当社はこれを徹底しています。

投資契約書の翻訳は誰に必要なのか?ケーススタディで見る関係部門の役割

投資契約書は、グローバルな投資の成功とリスクヘッジを左右するため、多岐にわたる部門や関係者がその内容を理解し、翻訳された情報に基づいて連携することが不可欠です。

 

ケーススタディ1:日本の大手企業による海外スタートアップへの戦略的投資

 

状況: 日本の大手IT企業が、欧州のAI技術系スタートアップ企業に対し、戦略的提携と将来的な技術導入を視野に入れ、少数株主としてシリーズAラウンドで出資するケース。英文の投資契約書を締結。

  • 事業開発部/経営企画部:

    • 必要性: 投資の目的(AI技術の獲得、欧州市場への足がかり)、取得する株式の種類と条件、資金使途、投資家保護条項(特に拒否権や情報開示権)、将来のExit戦略(IPO、M&A)が自社の事業戦略や投資目標と合致しているかを詳細に確認します。

    • ケース: 契約書に記載された「取得する優先株式の具体的な権利(特定の重要事項に関する拒否権、定期的な事業報告義務)」、「投資資金のAI研究開発への限定的な使途」、「将来のIPOに向けたマイルストーン」を和訳で確認し、投資の戦略的価値と事業シナジーを評価します。過去には、投資家保護条項の翻訳が不十分だったため、想定していたコントロール権が確保できなかった事例がありました。当社は、このような投資家保護に関する条項の正確な翻訳を特に重視しています。

  • 法務部/知的財産部:

    • 必要性: 契約全体の法的妥当性、表明保証、コベナンツ、知的財産権の帰属(共同開発の場合)、株式希薄化防止条項、優先清算権、共同売却権/請求権、準拠法(英国法)、紛争解決条項の適切性を確認します。欧州の会社法や証券法への対応も求められます。

    • ケース: 契約書に記載された「スタートアップが保有するAI関連特許に関する表明保証」、「将来の資金調達における株式希薄化防止条項の適用範囲」、「共同売却請求権の発動条件と行使方法」を和訳で確認し、法的リスクと投資家保護を評価します。

  • 財務部/経理部:

    • 必要性: 投資金額、払込スケジュール、会計処理、将来のバリュエーション、キャピタルゲイン税や配当に関する税務処理などを確認します。

    • ケース: 契約書に記載された「優先株式の取得価格と払込期日」、「将来の売却時におけるキャピタルゲイン税の取り扱い」、「スタートアップからの情報開示に関する会計監査の権限」を和訳で確認し、財務インパクトと税務戦略を管理します。

 

ケーススタディ2:海外プライベートエクイティファンドによる日本企業への投資

 

状況: 米国のプライベートエクイティファンドが、日本の老舗製造業企業に対し、事業再生と企業価値向上を目的とした少数株主投資を行うケース。英文の投資契約書を締結。

  • 経営企画部/IR部門:

    • 必要性: 投資の目的(企業価値向上、事業再編)、取得される株式の種類と条件、コベナンツ(特に事業計画の提出義務や特定の財務目標)、取締役会構成への影響などを詳細に確認します。既存株主への説明責任も発生します。

    • ケース: 契約書に記載された「取得される優先株式の議決権と配当優先権」、「ファンドが派遣する取締役の権限」、「四半期ごとの事業報告と監査の義務」を和訳で確認し、ファンドとの連携体制と企業価値向上戦略を評価します。

  • 法務部:

    • 必要性: 契約全体の法的妥当性、表明保証、コベナンツ(特に配当制限やM&A制限)、株式譲渡制限、優先清算権、共同売却権/請求権、準拠法(日本法)、紛争解決条項の適切性を確認します。日本の会社法、独占禁止法、金融商品取引法への対応が求められます。

    • ケース: 契約書に記載された「日本企業が遵守すべきネガティブコベナンツ(特定の事業売却制限、追加借入制限など)」、「ファンドの優先清算権の範囲と金額」、「株式譲渡制限に関する条項と将来のExitへの影響」を和訳で確認し、法的リスクと経営の自由度を評価します。

  • 財務部/経理部:

    • 必要性: 投資金額、払込スケジュール、会計処理、財務目標に関するコベナンツの遵守可能性、将来の税務インパクトなどを確認します。

    • ケース: 契約書に記載された「投資資金の使途(設備投資、運転資金など)」、「財務目標に関するコベナンツの計算基準と報告義務」、「ファンドからの投資に対する会計上の分類(資本か負債か)」を和訳で確認し、財務計画とコンプライアンスを管理します。

よくある質問(FAQ)

投資契約書の翻訳に関して、お客様からよくいただくご質問とその回答をまとめました。

  1.  

 

Q1: 投資契約書における「コベナンツ(Covenants)と投資家保護条項(Investor Protection Provisions)」の条項は、翻訳でどのように注意すべきですか?

A1: これらの条項は、投資家の権利保護と被投資会社の経営の自由度とのバランスを示す核心部分です。翻訳においては、財務報告義務、事業計画提出義務といったアファマティブ・コベナンツに加え、追加資金調達の制限、M&A制限、配当制限、役員報酬の制限といったネガティブ・コベナンツを厳密に翻訳することが不可欠です。さらに、投資家保護条項では、拒否権/同意権(Veto Rights / Consent Rights)の具体的な適用範囲、株式希薄化防止条項(Anti-Dilution Provisions)の計算方法、優先清算権(Liquidation Preference)の優先順位と金額を詳細かつ正確に表現すべきです。これらの条項の翻訳ミスは、投資回収の優先順位、投資家のコントロール権、または被投資会社の経営の柔軟性に直接影響するため、細心の注意が必要です。

  1.  

 

Q2: 「表明保証(Representations and Warranties)」の翻訳で、特に注意すべき点は何ですか?

A2: 表明保証は、契約締結時点での被投資会社または既存株主に関する事実を保証するものであり、その内容の真実性が投資家にとってのリスク評価の基礎となります。翻訳においては、財務状況、法的地位、知的財産権の有効性、係争中の訴訟の有無、税務コンプライアンス、従業員関係、環境規制への準拠など、広範かつ詳細な内容を正確に表現することが極めて重要です。表明保証違反は、投資回収リスクの増加、損害賠償請求、または契約解除につながる可能性があるため、法務部門と連携し、リスクを正確に評価するための翻訳精度が求められます。

  1.  

 

Q3: 国際的な投資契約で、「株主間関係(Shareholder Relations)」に関する条項はなぜ重要視されますか?

A3: 投資契約では、投資家が被投資会社の株主となるため、他の株主との権利義務関係を明確にする必要があります。翻訳においては、取締役会構成(投資家が取締役を派遣する権利や議決権)、優先引受権(将来の増資における優先権)、共同売却権(Tag-Along Right)、共同売却請求権(Drag-Along Right)といった条項を正確に表現することが極めて重要です。これらの条項は、将来の資金調達、株式の流動性、そして投資回収(Exit)のプロセスに直接影響するため、それぞれの権利の範囲と発動条件を明確に理解し、翻訳すべきです。

  1.  

 

Q4: 投資契約における「出口戦略(Exit Strategy)」の取り扱いは、どのように注意して翻訳すべきですか?

A4: 出口戦略は、投資家が将来的に投資を回収する方法を定めるもので、投資の成功に不可欠な要素です。翻訳においては、IPO(新規株式公開)、M&Aによる売却、投資家による買戻しオプションなど、具体的なExit手段、その条件、実行主体、およびそれに伴う他の株主の義務(共同売却請求権など)を明確に表現することが重要です。この条項の曖昧な翻訳は、将来の投資回収プロセスにおける紛争や、期待するリターンが得られないリスクにつながります。

  1.  

 

Q5: 投資契約書で「準拠法と紛争解決(Governing Law and Dispute Resolution)」の条項が非常に重要と言われるのはなぜですか?

A5: 準拠法(Governing Law)は、契約の解釈・有効性・履行に適用される法律であり、紛争解決は問題発生時の解決プロセスを定めます。国際的な投資契約では、異なる国の会社法、証券法、税法などが絡むため、どの国の法律が契約全体に適用されるのか、特に投資先の国の会社法に基づく株主間の権利義務関係がどのように解釈されるのかを明確に合意しておくことが不可欠ですし、当社はこれを強く認識しています。また、紛争が生じた場合にどの国で、どのような方法(国際仲裁、調停、裁判など)で解決するのかを明確に合意しておくことが、予測可能性を高め、紛争解決のコストと時間を削減するために極めて重要です。翻訳においては、これらの条項を正確に理解し、必要に応じて現地の法律専門家と連携して最終確認を行うことが不可欠です。

 

まとめ

投資契約書の翻訳は、単なる言語の変換に留まらず、企業がグローバルな成長戦略を実行し、あるいは革新的なビジネスモデルに投資し、同時に投資家と被投資会社の双方にとっての利益とリスクを適切に管理するための極めて重要なプロセスです。

英文と和文の契約書が持つそれぞれの特徴を深く理解し、経営企画、事業開発、法務、財務といった各部門が連携しながら、専門知識を持つ翻訳者の力を借りることが不可欠ですし、これまでの経験から当社はこれを強く認識しています。

特に、投資ストラクチャー、表明保証、コベナンツ、投資家保護条項、株主間関係、出口戦略、そして準拠法と紛争解決といった条項は、潜在的な法的・財務的リスクを最小限に抑え、グローバルな投資を成功させるための鍵となります。

 

当社は、このような複雑な投資契約書の翻訳において、貴社の各部門のニーズを理解し、最高品質の翻訳とサポートを提供することをお約束します。貴社の海外ビジネスにおける投資契約に関してご不明な点やご相談がありましたら、ぜひお気軽にお問い合わせください。

 

WIPジャパンは、東京弁護士共同組合神奈川県弁護士共同組合をはじめとする全国23の弁護士共同組合の特約店に認定されています。
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契約書翻訳に役立つリンク集

法務省大臣官房司法法制部「法令翻訳の手引き」(PDF)
日本法令外国語訳推進会議「法令用語日英標準対訳辞書」(PDF)
Publiclegal(英文契約書のテンプレートや書式を無料で提供)
日本法令外国語訳データベースシステム(法務省が開設した日本の法令の英訳サイト)
weblio 英和辞典・和英辞典
英辞郎 on the web

 

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